ワールドプロレスリング3D観戦記(13.10.11 金 イオンシネマ戸畑)
今回も前回同様一日一回上映ではあったが、開始時間を大幅にずらした結果、以前よりは集客があったみたい。でも相変わらず16時半とかからの開始なんで当然満員になるほど埋まってはいない。やはりお仕事のある方用にナイト上映一本にしてもいいと思う。でないと学生(私もそうだけど)しか見に来ることができないし。せっかくの3Dプロレスをもっと多くの人に体験してほしいのにこの時間はあまりに観客に寄り添ってない。もったいないなあ。
で、本題。
今年のG1は熱戦続きで特に大阪の大会は素晴らしいと評判だった。なんで大阪の試合をもっと見たかったんだが、構成は去年と一緒、やっぱ決勝に焦点をあてるとこういう組み立てになるのか。まあそれはそれである程度予想していたことなんで仕方ない。では内藤の勝ちがG1を制するに値する戦いであったかどうかというところと、内藤を推した新日のやり方が正しかったかどうかを検証しながら感想をのべてみよう。
やっぱりストーリーとしては前年悔しい思いをして、居場所すら失った男が逆境から這い上がって優勝を手にするという形ではほぼ理想的な展開にはなっていたと思う。しかしシリーズ通しての主役は決勝に残っていなかった飯伏や石井だったことを考えると、内藤の執念が本物だったとしても一年、主役の座を任せられる器かどうかという点には疑問が残る。とはいうもののレインメーカーを軸に未来のメインを任せられるベビーフェイスの育成は急務だったんで、タイミングとしてはこの夏に内藤に賭けたことに対しては間違ってなかったと思う。
特に膝の故障からの欠場は内藤をいい意味でも悪い意味でも大きくかえていた。いい意味でいうと、ジャベの多様。これは意外と効果があったと思う。スタミナを奪うだけでなくやり方次第では十分フィニッシュホールドになりえる完成度になっていたことはさすがだなと。もしスターダストプレスでなく、ブルマ・ブランカやポルボ・デ・エストレージャで勝ち進んでいたら、かつて蝶野がSTFで夏男の異名を不動のものにした、その再現ができていたかもしれない。それほどの完成度を誇りがらも内藤はスターダストにこだわっていた。しかしそこへもっていくためのつなぎにしかジャベを使わないのだとしたらこれはもったいない。何より一点集中攻撃の原則からいうとラストにスターダストがある限りどの技も捨て技にしか見えないところが今の内藤の欠点になるかなと思う。レインメーカーがなぜあの若さで短期間に支持を得たかといえば一点集中が徹底してるからで、そこがない内藤は、仮にIWGPをまいたとしても短期政権(膝の故障が再発することも想定すれば)で終わるのでは?という懸念をファンはもってしまう。
天才武藤敬司がなぜあれだけ飛んでも支持を得たかということと比較するとわかりやすい。武藤の場合、足殺しで立たせなくして、飛びにつないでいたという組み立てが理論的であったことに加えて、飛ぶときは自分の膝はどうなってもいいというある意味トンパチな破天荒さがあった。しかしけがをしてからの内藤は本人が着地が一番こわいともらしていたように、飛ぶことを実は恐れている。3Dでは恐ろしいことに一瞬の躊躇も容赦なくカメラがとらえていた
だから内藤の思い切りのよさは実をいうと、決勝で棚橋に徹底的に攻められてやっと引き出せたものであってこれがいつも出せるのかなという懸念も付きまとう。その棚橋も実は将来自分が飛べなくなるであろうことを考えて少しずつファイトスタイルを変化させている。ドラゴンスクリューのバリエーションを増やしたうえで、テキサスクローバーにもっていくあの流れは、いつか足殺しで試合を組みたてられるようにしてる布石かもしれない。そのくらい棚橋は実をいうと考えて試合をしている。やはりスリングブレイドにしろハイフライフローにしても、今のようにいつまでも飛べるわけではない。あのリズミカルでスピードののったコーナーワークはやはり若くないとできないこと。それを思うともってあと10年か。だとしたら、やはり飛べなくなったときに「棚橋飛べてないね。衰えたね」といわせないためには飛ばなくても勝てるパターンを自分でもっておくことはなんら悪いことではない。
努力の人である棚橋の天才的な直感はその辺でも光ってるのだけど、今レインメーカーが流行らせた首狙いの技(頭から落とす系は少ないのだけど)を誰彼もが使ってる中、あえて一人足殺しに向かってる棚橋の方向性にもそのセンスが十分うかがえる。で、内藤が今後どこまでできるかというと、やっぱスターダストにこだわってると主役の座どころか選手生命も短期で終わってしまうだろうから、なるべくそうでない方向性をジャベを使って早いうちにお客にしめして、本当ここ大一番にだけ飛ぶというスタイルにしていけば、スターダストが最終兵器に格上げされ、内藤の価値もあがるだろう。
皮肉な話だけど3Dで映えると思っていた内藤のスターダストは意外にもそれほどすごいとは思えなかった。むしろロープのない状態でみられたジャベの完成度の高さがはっきりしたという点では、今後の内藤の可能性がみえた感じがした。そう考えると面白いものだなあと思う。実際に会場でみて沸く技とは、違うものが浮き彫りになる3Dプロレスはやっぱほかの3D映画とは一線を画してると思う。鑑賞料2000円が高いか安いかでいえば決して安くはないけどでも、損はしないよとだけはいっておこう。結果がわかっていても違った視点で楽しめるのも3Dプロレスの醍醐味だからねえ。
さて、今後ドームへむかってひかれていくであろう内藤推しの路線が吉とでるか凶とでるか注目してみていきたいと思う。