プロレス居酒屋がむしゃら周年祭!!がむしゃら大感謝祭’09~10周年目突入だ!バカヤロー!!~
(2009年11月23日・月:小倉北体育館)
イントロダクション
がむしゃらプロレスというのは、実は北九州の社会人プロレス団体として数年前に旗揚げしたらしい。らしいというのは今年になるまでがむプロの存在自体を知らなかったためで、それもそのはず、試合ポスターとかそういう宣伝活動を一切していない。
チケットはすべて前売りのみで当日券販売がないし、何もかもが異色づくめで始まる前は「とんでもないものがみられそうだ」という良くない期待感^^の方が先に立っていた。
大会開始前
小倉北体育館というのは駐車スペースがないので、開始2時間前には会場に到着していないといけない(昔は来場者に解放されていたが、この時代くらいから貸し出さなくなった)と思っていた。 なので17時開始なのに、13時半に家を出て、渋滞にまきこまれつつも、14時半にはついてしまった。
試合までかなり間があるので、がむしゃらプロレス観戦を誘ってくれたメディコさんと共にメディアドーム初潜入。競輪も開催しつつのイベントで、レースは撮影禁止というのを知らずに撮っていたら注意されてしまった。
開始前
そして体育館に戻ってみると、なんと列が出来ている。確かに全席自由の2000円!という破格の値段で好きな席に座れるんだから、そりゃ並びもするだろうけど、チケットあるのにみんな並んでいた。
かといってみんな前に陣取るかというとそうでもなかったりして。この辺がフツーのプロレス興業とも違っていた。
あろうことか、開始早々には体育館が8分の入り。ほぼ満員!ここまで入っていたのは、ちょっと記憶にないくらい。入場ゲートまであるし(この日専用のもので、使い回しが出来ない。チケットもパンフもそう。
パンフなんてオールカラーでちゃんとした印刷で500円!会場費とゲストのギャラ差し引いたら、所属選手はノーギャラでやっていたとしか思えない。)
そしてレンタルで応援グッズ(パタパタハンド)も配られて、みんなそれをならしての観戦ということになった。
オープニング①
本部席には女子のリングアナと男性の太ったリングアナの二人と、秘書、コミッショナーが陣取っていた。このリングアナ氏、あがり症なのか試合前にこっそり発泡酒を一本あけていた。そのせいか声量たっぷりの堂々としたコールをしていたけど。
ちなみにそれを差し入れていたのは女子の方。ギャルっぽい格好に、当日大会大戦カードいりTシャツを着て、ちゃっかりグッズアピールもしていた。着る人が着るとプロレスグッズもおしゃれに見えるんだなあと感心してしまった^^
16時過ぎにちびっ子プロレス教室が開催され、若手が基本を見せていたが、結構綺麗な動きをする。当たり前のことがきちんと出来ているといった感じだった。この予感は実ははずれることはなかったのであるが。
オープニング②
教室が終わると、今度は地元バンドの生演奏。そして、いつの間にかリングには若手が三人上がって、件のバンドの生演奏で熱唱し始めたのが、なんと「がむしゃらプロレスのテーマ」!(テーマ曲があったのはかなり衝撃的だった)
それから、菊タローと女性リングアナのルール説明があった後、コミッショナーと金髪の女性秘書(でも日本人^^)があがって、ここまでの因縁や抗争、軍団の説明をひとしきり。そして入場式があって、ここで正規軍が挨拶していると、入場テーマが変わって、悪役のLOC(リージョン.オブ.カオス)が登場。
前コミッショナーのドン.タッカーが蛍光ライト付きの台車^^ に乗せられて登場。ひとしきり、演説をぶった後、ストーリーの波乱を予告。
で、ここからやっと試合が始まるのである...(長い...)
第一試合 レイ.タクマ.二夜.七海健大デビュー戦!!20分一本勝負
●二夜&レイ・タクマ&尾原毅 対 七海健大&一輝&○ダークネス.ニッキー
簡単に説明しておくと、二夜がこの団体唯一の女子選手。第一試合のレイ&七海健大&一輝と共に本日がデビュー戦。 一方の先輩チームは悪役というわけではないのだけど、自然にそう言う役回りを演じていた。
試合が始まってびっくりしたのは、ほぼ男子は全員上半身裸で闘っていたこと。キャラクターレスラーは例外として、これは最後まで守られていた。 話が脱線してばっかりで申し訳ないが、この試合目を見張ったのは、尾原のUスタイル、レイの初代タイガーばりのムーブ(ついでながら、当然ミステリオ.リスペクトで619も披露)、二夜の石頭キャラ(メディコさんが彼女に直接聞いた話では、本当に頭が固いのでこういうキャラになったんだそうだ)。みんなきちんとした色を持っていること。これは驚嘆した。
そして試合が「できる」のだ。二夜は正直まだデビューには不足だなと言うところがあったけど、ほかの二人はどっかの団体にいたんじゃないかという位、完成しきっている。基本的な動きから、グラウンド、受け身も完璧。そしてキックが鋭い。 これは全体的に言えたことだけど、格闘技系の練習を積んでいる選手が多いんだろうか?蹴りはみんなうまかった。 石頭キャラなんて女子では異端もいいところである。
第二試合 異色タッグ対決!!20分一本勝負
●力龍&竹の子王子&炎!修市 対 ○阿蘇山&白波佑介&アリマティ
力龍はフリー、阿蘇山と白波は九州プロレス(当時)。炎!が大分プロレス所属。もともと阿蘇山の中身の人が教えた事がきっかけでがむプロは誕生したらしいので、いわばお師匠さんの査定試合かな?がむプロ勢は炎!修市のテーマ、小林旭の「熱き心に」で入場。
この試合もみんな実力派揃いで、とにかく派手な動きをしない、危険な大技に頼らない、相手の技は受けるという基本的なことがすべて出来ていた。 後でわかったことだけど前座は前座のセオリーを守って、そうしていたみたい。見事な心がけである。プロレスって実はチームワークで「俺が、俺が」だけでは通じないところのある奥深さがあるのだ。
お笑いかと思っていた竹の子もローンバトルを耐え抜いて、試合は一進一退の末、阿蘇山が竹の子から勝利。と書くとなんかしょぼい試合だったように思われるかもしれないが、これが大まじめにおもしろかったから凄い。もうここらで完全に観戦モードはどインディーのそれではなくなっていた。
第三試合 林祥弘デビュー戦!!20分一本勝負
林祥弘&YUJI 対 Dr.CHAOS&DIESEL
これは林にとっては苦いデビュー戦になった。相手は変幻自在のLOCだし、ジュニア戦士であるディーゼルの動きがよい。以前はこんなによくはなかったんだそうだ。
選手コール時に「パパ頑張って!」と黄色い声援が。家族ぐるみで公認されているというのは幸せなことだと思う。危険と隣り合わせで決して楽ではない稼業なのに。 試合はディーゼルが散々かき回して、カオスにタッチしていくのだけど、こいつがいまいち動きが鈍い。まあ、この中ではということだけど。
LODの乱入にディーゼルの毒霧とやりたい放題で正規軍の若手をいたぶり尽くして、試合を決めてしまった。決して一方的にはならなかったけど、結果を残せなかったのが残念。次がなかなかないというのも、モチベーションを上げにくいだろうけど、頑張ってほしいものだ。
ディーゼルは顔にひび割れのペイントにカラーコンタクトと、赤い髪の毛が印象的だったが、試合終了後は至ってフツーの感じの人で、にこやかに観客を見送っていた^^
第4試合 九州ダイナマイト級王者決定戦!!「34」分一本勝負
○TA-KI 対●グレート.フランケン
(TA-KIが初戴冠)
とにかくTA-KIの会場人気がものすごい。みんな知っていて、知らないのは私だけ状態だった。
一方のフランケンは入場テーマが全日版「移民の歌」とくればそう、ブロディスタイルの継承者かと思いきや、顔にはペイントでコスチュームには、がむしゃら愚零闘夢多といれてあるように、ムタのパクリ?いや、リスペクトレスラー。
でも毒霧ははかないし、チェーンは振り回すし、キングコングニーはやるし、試合スタイルはブロディ。これが不思議なのですよ!本当にものすごいチョイスとしているというか、組み合わせ方が凄い。
よくムタとブロディをミックスしようなんて考えついたものだと思う。それで特筆しておかないといけないのは、皆15分以上の試合をこなしていると言うこと。シングルでもそれなのだ。
それでいて息が一つも上がっていない。スタミナも抜群なのだ。これは普段ハードな練習をいかに積んでいるかがよくわかろうというもの。
この試合も基本的な手四つの攻防からとにかくきちんとセオリーをかたくなに守って、それでいてタイトル戦らしい重厚な試合運で、TA-KIが勝った。
マイクで「段ボールのベルトですけど」とばらしてしまったのはご愛敬だったけど^^その後コミッショナーとのマイク合戦(コミッショナーといってもセコンド業務もこなしていたし。ここはヒール、ベビー関係なしに試合の終わったものが順に後の試合の手伝いを率先してやっていた。)で、本日お休みのジュニア王座挑戦を直訴したが、「手薄な正規軍同士が抗争するのは不毛」との理由で却下。
ここらへんは遺恨を残す形で「続く」となった。
第5試合 がむプロおまけ試合 疲れない程度一本勝負
●ダイナマイト九州&パンチ君&菊タロー 対○ミル.ブラック☆スティック&GAM島聡&ランジェリー武藤
要するにかつての大阪プロレスの第一試合を想像していただければわかりやすい。キャラクターレスラー総登場でとても楽しい試合だった。 このメンツだから菊タローが試合を作っていくんだろうなあと思っていたら、実は試合のキーを握っていたのはランジェリー武藤だった。
この人、とにかく動きが半端無く武藤に似ている。テーマ曲もシンボル(当時の武藤のテーマ)でシンバルもって入場したときは「ちょっとマニアックすぎるだろ」と思ったものの、試合のムーブでやっていないのは、ムーンサルトくらいで後は完璧に本家のコピーをしていた。
武藤の物まねでは菊タローも第一人者だけど、彼が別に何もしなくてもいいくらい、きちんとプロレスの出来る人だった。GAM島は元違うリングネームでやっていて、「引退」させられたそうで、そのことを菊タローにマイクでつっこまれるとさかんに「俺はGAM島聡だ」と否定していた。
菊タローは自前のオリジナルタオルを持参して、チョーク攻撃に使っては、会場に広げてPR。しっかり休憩時間には売りまくっていた。一本1000円。もちろん買わない^^
前半5試合終わったところでで休憩。ここまででもうおなかいっぱいなんだけど、まだあるの?って感じ。なんということか...カメラのバッテリーがここで切れてしまった。ペース配分もへったくれもない撮影が災いしてしまった。ここで既に19時半過ぎ。
まだ4試合あるぞ...大丈夫なのか?体中が痛くなり始めていた。見ると若手勢が最近滅多に見なくなったリング調整をしている。リングの掃除もしていて、これはなかなか好感がもてた。今はメジャーでも余りやらなくなってきたものね...商売道具なんだから大事にして当然なのに。
第6試合 スペシャルマッチPART1ノータッチルール30分一本勝負
●谷口勇武(華☆激)&旭志織(K-DOJO)対 ○めんたいキッド(九州プロレス)&MIKAMI(DDT)
ここから二試合は、ほぼプロレス一本で食べている人達の試合が続いた。まあ、しかしあきれるほど豪華な顔ぶれである。
MIKAMIもラダー持参で、自前の興業でもないのに、律儀にはしごを使いこなし、いつも以上のファイトを心がけていた。見上げたプロ根性である。はっきりいっちゃうとあまりに試合がめまぐるしすぎて、ケータイでも追いつかないくらいのド迫力の試合展開だったため、ぶっちゃけバッテリーが持っていても、試合は撮れなかったと思う。そのくらいのめり込んで試合を見ていた。
とにかく繰り出される技に対して単純に「おおー」「すげー」「うわー」といっていればいいんだから、本当に楽である。
何も考えさせる余地を与えないプロレスというのもなくてはならないものなんじゃないかな?っていうかプロレスって元々そう言うものだったはずだし。
谷口も地元のテリトリーで負け役を引き受けたというのは勇気がいったとおもうが(ましてや普段交わることの絶対ない九州プロレスとの対抗戦である)、よく耐え抜いたし、はっきりいってホームリングよりいい試合をしていた。
ここまでできるとは夢にも思わなかった。
第7試合 スペシャルマッチPART230分一本勝負
●久保希望(華☆激)&澤宗紀(バトラーツ)&関本大介(大日本)対 ○田中純二(九州プロレス)&HARASHIMA(DDT)&真霜拳號(K-DOJO)
なんだ、この顔合わせは!!
これがセミ前なんてうそだろうという顔合わせである。とにかく団体のエース格が一堂に会している信じられないタッグ戦は、真霜組の急襲からスタート。とにかくここから約20分、選手が全く止まらないのだ。展開を追うだけでとにかく唖然呆然の連続。とにかく目を見張ったのは、体の厚みとオーラ。
こればかりは潤沢な練習環境と豊富な試合経験がなくてはどうにもならない。
つまりは自分の持っているものすべてを出し切らないと、兼業レスラーに食われてしまうという危機感の裏返しではなかったかと思う。自前の興業でもないし、ゲストなんだから顔だけ見せておしまいですよ、なんてことをしてもよさそうなものなのに、みんな手抜きどころかとにかく必死。形相からして違うのだ。圧巻だったのは、関本が真霜の渾身のミドルキックを二の腕で受けてしまったこと。しかもそれではね返す有様。これは凄かった。リングサイド一列目でみていて良かった。とにかくものすごい迫力なのだ。
そしてぶっこ抜きジャーマンにアルゼンチン...そうまさにこれはバチバチだった。バトラーツ出身者(田中と澤)がいたから、こうなったというわけではなかろうが、キャラも普段やっているスタイルも一切忘れて、ただのレスラーとして、内容だけで勝負していった彼らには尊敬の念すら抱いた。
間違いなく今年見た中ではベストバウトである。この後、セミとメインが控えているというのに、それすらおかまいなしにひたすら撃ち合い、受け合いをただひたすらに繰り返した6人には賞賛の拍手を送るしかなかった。
とにかくこの試合でのどがかれてしまい、声が出にくくなってしまった。今こうして振り返っている現在ものどが痛い。そのくらい凄かったのだ。
何度も言うがこの6人は本当に凄い。凄すぎる。そして久保!あんたはよくやった。普段小さい華☆激の中ではヘビー級の役回りを引き受けている彼だけど、この日は自分より体格のある相手に対して一歩がひかないファイトを見せてくれた。
たぶん限界ギリギリまで自分を追い込むことの出来るファイトが出来て完全燃焼できたのではないかと思う。試合後はノーサイドで、帰り際澤がふざけて田中のふんどしを、ぎゅっとあげて、田中が悶絶するという一幕をのぞけば^^
第8試合 GWAタッグチャンピオン決定戦!!60分一本勝負
●マイケル.ジェロニモ.ニコラス今中ジョリー 対 ○ブルート健介.マスクド.PT
LOC組がタッグ王座戴冠
前の試合の興奮冷めやらぬ内に、はじまってしまったタイトルマッチ。どうやっても前の試合は超えられそうにないのに、どうするんだ?がむプロ...と思っていたら、ここに持ってきたのは、いつもの興業でやっているらしい、正規軍対LOCの因縁抗争。ストーリー性のあるこの抗争劇ははじめて見るものにもわかりやすい演出が施されていた。
ブルート健介は特に背丈が大きいわけでもないが、体の厚みは半端無い。そして受けるときはしっかり胸を出して受ける。これが絵にならないとただのおっさんなのだが、そこが大きく違うところ。
だから、技は基本的なムーブばかりなのに、どれも説得力があって、なおかつヒールとしてのすごみも加わっているから、迫力十分。背丈は私より小さい(というか全員そうなんだけど)けれど、リング上では大きく見えた。
これもプロレスラーとしての必要最低条件を兼ね備えていた。
試合は正規軍ジェロニモがニコラスを裏切っての、まさかのヒールターン。会場大ブーイング。といっても事前にこれは試合開始前に懇切丁寧な説明があったので、予定通りといえばそれまだなんだけど、前の二試合が凄すぎて、観客の誰しもがそういうストーリーが用意されていることを忘れ去ってしまっていた。
もしここまで計算してこのマッチメークをしたとしたらこれは相当頭の切れる人がいるに違いない。
いや、恐れ入りました。
あれだけの熱戦の後にまた観客の視線を、がむプロに戻したというのも凄い。これは全員一致で取り組んだチームワークのたまものでしょう。
第9試合 GWAヘビー級選手権試合!!60分一本勝負。
⚫︎王者.JOKER 対 ○挑戦者.SMITH
SMITHが新王者に。
前の試合もそうだったが、がむプロのベテラン選手はオリジナルムーブや必殺技も持っている。この二人にもオリジナルムーブがあって、ジョーカーは腕に決めるドラゴンスクリューや、変形のスイングDDT、スミスにはこれまた変形のエクスプロイダー(メディコさんの話によると、彼本人が「あれはエクスプロイダー」といっていたそうだ)を使っていた。そしてこの二人は何よりオリジナルのキャラクターを持っていたと言うこと。あえて似ているところを探せばないことはないけど、ROCのスミスは黒の、正規軍のジョーカーは白のコスチュームで見た目にもわかりやすい。
ところが入場はジョーカーの方がヒールっぽくて、スミスはマグナムばり?(それは言い過ぎだけど^^)のダンス付き入場とスタイルは正反対。
この試合には前の試合の流れをくんで、前半ROCがやりたい放題に介入して、試合をむちゃくちゃにしていたのだが、スミスが「正々堂々とやらしてくれ」と懇願。憮然とした感じでROCが引き上げていった、そこからが本当にこの試合の凄いところだった。とにかく腕なら腕、足なら足の一点攻めを両者がセオリー通りにきちんと展開していたのだ。
まさにオールド.ファッション.プロレスリング!!
試合前メディコさんに「いわゆるフツーのプロレスは期待しない方がいいですよ」と釘を刺されていたものだから、よもやの展開にうれしい悲鳴。
まさか、社会人プロレスでこんなオーソドックスなプロレスらしいプロレスの攻防が見られるなんて思っても見なかった。そしてこの二人がこんなに出来る選手だなんて知らなかった。特にスミスは、はっきりいってプロレス一本で食べていけなければおかしいくらいの人材である。
そのくらい徹底的にオーソドックスな、そしてそれでいて洗練されたムーブには息をのまされた。まさに一進一退でこれほど試合にのめり込めようとは、誰が事前に想像していたであろう。
そしてこれだけ熱狂的な小倉北体育館を見たのは、たぶんセカプロの旗揚げ以来ではないだろうか?
試合前に菊タローがマイクで「ここは選手間でも沸かない会場って有名なんですよ」とこぼしていたが、ここが小倉北ということ自体も忘れていた。とにかくタイトルマッチにふさわしい試合だった。
これが出来るんだから、全国どこへ出しても恥ずかしくないレベルだと思う。プロレス一本で食べているであろう選手たちに危機感を持たせたのだから、それは本物である
何よりの証だろう。だてに10年は活動していないのである。それを思い知らされた。
浮き雲のように現れては消える、北九州のプロレス文化の灯はここが灯し続けていたんだなあという気持ちと同時に、「ああ、この10年間を共に体感したかった」と言う無念もかみしめねばならなくなってしまった。
とにかくこれは文句なしのベストバウトである。
「いや、一つの興業にベストがふたつはおかしいやろ!」そこのあなた!この試合を見てから言ってほしいですね。
試合はどっちが勝っても納得のいく攻防の末、スミスが勝利してヘビー級タイトルは移動。ここでLOCが出てきて、自分たちのヒーローに祝福するものの、スミスがマイクをとって語りはじめた。曰く「自分は6年前がむプロに入ってきて、いきなり靱帯断裂、ヘルニアにもなり、ヒールにもなった。でもベルトをとりました!ジョーカー、あんた強かったよ」と、前王者をたたえ、そして「いままでどうもお世話になりました」とこれまたまさかのベビー転向を宣言!
仲間を呼び寄せると用意していたおそろいのはっぴを着て「がむスターズ」(当然元ネタはドリフ)の結成を発表。これに激怒したROC総帥のドン.タッカーが「次回、4月25日の大会でおまえをたたきのめしてやる」と鬼も笑わないくらい気の早ーーーーーーーーーーーい抹殺宣言をして、退散。
「これからは明るくて楽しいプロレスをしていきたいと思います」とスミスのマイクでハッピーエンド。興業は締めくくられたのであった。
エンディング
試合終了後、撤収はヒール.ベビー共にノーサイドで手伝っていた。終了時間はなんと21時半過ぎ。驚くべき事に5時間強の超大興業であった。会場賃貸料やゲストへのギャラも考えたら、チケットが前売り(しかも有名プレイガイドには一切置いていない)だけというのは無謀にもほどがある。
しかし口コミと、手売りだけでリピーターを徐々に増やしてここまで大きくしてきたという事実に対しては素直に賞賛したい。
試合終了後にはスミスとめんたいキッドからサインをもらった。そしてスミスにサインを求めると、周りの関係者たちから「おおーっ」とどよめきが。はっぴを着たままの新王者は、ものすごい好青年で照れながらサインしてくれ「明日からまたサラリーマンに戻ります。一生懸命練習しますのでまた見に来てください」と握手までしてくれた。こちらもいい人だった。
後記
全体的に言えることは、素人が陥りがちな、いい格好をリングで見せたいだけのプロレスをしたいのではなくて、基本的な練習からリングを組んだり撤収したり、そう言ったことまで含めてのすべてに対してのプロレスLOVEにあふれていた興業だったと思う。
たぶん興業も好きなんだろうけど、普段の練習の方も大好きな練習の虫ばかりなんじゃないかと思う。そして基本的にみんなまじめ。
後、お子さんに対しての配慮も、プロレス教室だけでなくて、会場隅に色とりどりの風船を置いたりと、気配りも半端無かった。子供が飽きずに声援を送っていたというのは、何も関係者や知人や身内だからというわけではないと思う。
今のプロレスが忘れ去ってしまっている大切なものを、がむプロはかたくなに守り続けて来たんだと思う。それが積もり積もってのプロレス居酒屋の10周年。これはとてつもなく重く、尊いものであるといっていいと思う。