イベント試合がむしゃらプロレス八児大会(2018年11月11日(日)会場/北九州市立 八児小学校 体育館・開場/13:30 開始/14:00 来場者330名)
この日は朝からバタバタ。実家の父が救急車で搬送され、腰の骨を圧迫骨折していた事が判明。日曜なんでなかなか外来もあいておらず、包括支援センターもケアマネジャーが休み。仕方ないので痛み止めの注射して、薬を出してもらって帰宅。とりあえず月曜にならないと、どうにもならないので、小倉の部屋から必要な荷物を持ち出して、八幡経由で実家に戻ることにした。
しかしまあ、自分が事故られて半月後に親が搬送されるとは。しかも親父は175センチ(75キロ)あるので、並みの成人でも一人では到底持ち上げられない。実際救急隊員が三人がかりで父をかかえていたので、私一人でどうにかできるレベルの話ではないのだ。
幸い父は痛み止めが効いている様子なんで、日曜ではこれ以上私にできることもない。まあ、こういう事態を想定しているから普通の勤め人ができないのだ。でも逆にいうと、わずかでも時間の余裕を持つことができるのは、強みでもある。で、時間を見たら間に合いそうだったので、八児小へ向かうことになった。
という事で開場スレスレで八児小学校に到着。ちょうど列が体育館の中に入るタイミングだったのも幸いした。中に入ると結構な入り。皆、がむしゃらプロレスを待ち焦がれていたかのようだった。
試合開始前にプロレス教室もあって、こちらも大盛況。参加したお子さんたちには11.11がポッキーの日という事で、ポッキーをプレゼント。あまりに参加者が多かったので、箱いっぱいのポッキーがあっという間になくなってしまった。
▼オープニングタッグマッチ(20分1本勝負)
①ブラック☆ステック & パンチくん & ×ダイナマイト九州 vs TOSSHI & ○KENTA & 鉄生
(17分40秒)
久々登場のブラック☆ステック (黒棒)を加えたおまけ軍に対するは、今をときめくLCR。いかんせん一筋縄ではいかない上に何をしてくるのかわからない相手である。いかに人気絶頂のLCRといえども、ペースを狂わされたら、試合全部を持っていかれかねない。観る方としては非常に興味深い顔あわせである。
さて、試合はほぼおまけ軍がやりたい放題。握手求めてハグしたかと思えば、試合開始前に全員がカーテンコールやったり、はたまた金的やったり、いったんはLCRが仕切り直しで場外戦を申し込んだら、おまけ軍は散り散りに逃げ回るなど自由すぎ!黒棒に至っては二階までハシゴで逃げ出す始末で、まじめに悪役やっているLCRがしんどそうにしている有様。
あまりに長い場外戦にしびれを切らしたKKレフェリーが「長い!」といってキレていたが、あれは両者カウントアウトでもよかったと思う。どっちもいうこときかないし(笑)
リングに上がってようやくLCRが攻勢に転じたかと思いきや、なぜかLCRのコーナーに黒棒が控えていて、しばらくパンチくんがローンバトルになる始末。ここでも見せ場はしれっとおまけ軍が奪っていく。
のらりくらりしながら、時折思い出したかのようにまじめな攻撃をしてくるので、LCRもいつも通りの闘いがなかなかできないまま、時間だけが過ぎていくという展開に。特にパンチくんには一升瓶、黒棒にはブラックスティックがあるため、凶器をもたない悪役のLCRは大苦戦!
最後こそ何とか畳み掛けて、九州と黒棒を分断して、KENTAがスーパーノヴァでパンチくんをピンフォール。一矢報いた形にはなったが、正直これほどやりづらい相手はいないだろう、というくらいの試合だった。
勝ち名乗りをうけるLCRの全員からは疲労の色が色濃く滲んでいたようにみえた。
▼GWA Jrヘビー級&GWAヘビー級選手権 前哨戦6人タッグマッチ(30分1本勝負)
②BIG-T & ×YASU & 陽樹 vs 力 雷汰 & トゥルエノ・ゲレーロ & ○SMITH
(20分41秒)
11月25日にタイトルマッチを控えたGWAヘビー級戦。しかし、11日になってもまだ挑戦者が決まらない。チャレンジャーに名乗りをあげている陽樹にしても、GAM1で優勝を逃している分、強くは出られない。まあ、それをいいことにチャンピオン・スミスがのらりくらりしているのが現状。だとしたら、この試合で陽樹は実力行使するしかないのだが、果たしてチャンピオンは陽樹に対してまともに向き合うだろうか?
試合前にマイクを握ったのはやはりgWo。前哨戦と謳われている以上、自分が挑戦者でいいのかどうか?は気になって当然だろう。たしかにYASU対ゲレーロは既定路線で間違いない。だが、陽樹対スミスに関しては…
チャンピオン、またしてもはぐらかす。そうこうしているうちに、タイトルと関係ない力とBIG-Tがグダグダなマイク合戦をはじめたため、急いでゲレーロがマイクを取り上げ、それを合図にドリームチューバーが奇襲をかける形で試合がスタート。
で、前哨戦になっていたのは、やはりゲレーロとYASUの絡みだけで、陽樹とスミスの絡みは一度きり。確かにタイトルにからんでいない力やBIG-Tの出番では、試合のテーマがぼやけるし、そもそもスミスは陽樹をはぐらかす気が満々なんで、手の内を見せようとはしない。
ただ、不思議なことに、今までならスミスのやり口に対してカッカきて、突っかかっていった陽樹が不思議と冷静だったのだ。むしろ、アピールするならガンガン前に出ても良かったのに、それをしなかったのは不気味ですらあった。
そして試合自体があまりにスミスペースになり過ぎていたのだ。最後もなぜかYASU対スミスの絡みになり、YASUに対してエクスプロイダーからダイビングエルボードロップでスミスが貫禄の勝利。試合後、陽樹を挑発し張り手合戦でも優位に立ったチャンピオン・スミス。しかし、いつもならセコンド陣がとり押させないといけないくらいに怒りまくるはずの陽樹が、ここでもおとなしかったのが引っかかる。果たしてスミスを欺く手を陽樹は隠し持っているのか?それとも・・・・
結局、休憩時間に本部が協議の結果、25日にチャレンジャー陽樹対チャンピオン・スミスを正式決定したことをアナウンス。さてこれを踏まえてパステルホールでは何が起きるだろうか?
▼GWA無差別タッグ選手権試合(45分1本勝負)
③×【挑戦者】ジェロニモ & MIKIHISA vs 美原 輔 & ○サムソン澤田【王者】
(14分29秒)
あの難攻不落と思われた土屋&YASU組から執念で勝利を勝ち取った新チャンピオンに対するチャレンジャーは、共にタッグチャンピオンの経験があるジェロニモとMIKIHISA。MIKIHISAはまだしも、ジェロニモはベルトこそ巻いたことがあるけれど、防衛経験がゼロという結果しか出せておらず、ベテランらしい実績が残っていない。そういう意味ではかつて巻いたベルトではあるけれど、自分の腰に巻いて一回は防衛をしたいはず。そのために日々特訓を積んでこの日を迎えていた。
しかし、だからといって美原&サムソンも三度目の正直を成就したばかりのチャンピオンである。初防衛に失敗したようではYASU&土屋に勝った事実が「まぐれ」扱いにされかねない。こちらも真剣そのもの。
ナスティサイドはこの日試合がなかったドラゴンウォリアーまでセコンドについてチーム一丸となってタイトル奪取に燃える。とにかくジェロニモの気迫が物凄い。一発一発を大声を出して打ち、決める。「ベルト巻くぞ!」という執念は4人の中で一番強く持っていたと思う。
だが、惜しいことに必殺のジェロバスターを完全な形で決められなかった。ベストの時はきちんと相手を真っ逆さまに落とす必殺技なのだが、一発で仕留められないときは、大概相手の身体が流れているため、完全なダメージを与えきれない。この日もそうで、あれだと何発決めてもピンフォールは難しかったと思う。
もしも、あれが完全な形で入っていたらどうなっていたかはわからなかったが、逆にジェロバスターが不完全だったことでチャンピオンサイドは勝機を手繰り寄せられた。シングルマッチだったら気迫で上回った場合、勝ちにつながることがあるかもしれないが、タッグマッチではそれだけだとかなり厳しい。
ナスティサイドとしてはジェロバスターにすべてをかけていたかもしれないが、逆にMIKIHISAが決めてしまってもよかったかもしれない。タッグの場合、チャレンジャーは勝ちパターンをいくつかもっておかないと、チャンピオンはなかなか倒せない。試合内容がとてもよかっただけに非常にもったいなかった。
今回はジェロニモの気迫が出すぎたせいで負けた…というのもなんとも皮肉な話だが、課題としてはっきり見えたこともあったので、ぜひともタッグトーナメントなりでもう一回チャンスをつかみなおして再びベルトに挑戦してほしい。
▼GWAインターコンチネンタル選手権(30分1本勝負)
※酒処じゅげむPresents
④×【挑戦者】HIROYA vs ○豪右衛門【王者】
(15分39秒)
デビュー一年未満にしてヘビー級の選手がシングルベルト挑戦というのは、そうそうあるものではない。しかし今のHIROYAを見ていたらとても「時期尚早」という人間はまずいないだろう。それくらい躍進目覚ましかったのが今年のHIROYAである。
なんといってもHIROYAの武器はその長身を生かしたダイナミックな攻撃でチョップ一発、ボディスラム一発が必殺技になりえる。いくら頑強さが売りの豪右衛門でも、そうそう受けてばかりいると自分が不利になる。
序盤で見せたHIROYAの猛攻は様子見していた豪右衛門をたじろがせるには十分だった。とはいえ受けに回るとやや弱く見えるのは新人選手の性。攻勢に転じた豪右衛門のボストンクラブが決まると、HIROYAは苦悶の表情を浮かべる。
正直、HIROYAはよく頑張ったと思う。今までの試合の中ではベストマッチだったといってもいいだろう。だが、やはりデビューしたばかりの新人には引き出しというものがない。ここがたぶん試合後に豪右衛門が言っていた「勢いだけではどうにもならん」部分だったのだろう。
ただ、巨漢の豪右衛門と真っ向から渡り合って、ぶったおすほどのスキルをもっているHIROYAはチャレンジャーとしては申し分なかったと思う。よしんば勝ったとして、KENTAとのタイトルマッチも観たかったが、そうやすやすと先輩の壁がこえられるほど甘くないのも確かなこと。最後にのど輪にもっていけるほどの余力をチャンピオンはもっていたけど、あれが逆だったらHIROYAの手数は尽きていたに違いない。
そういう意味では豪右衛門が新人の踏み台になることなく、堂々としたチャンピオンでいてくれてほっとしたという試合だった。
試合後、大会実現に際して尽力してくれた八児の皆さんに謝意を述べ、珍しく選手全員をノーサイドでリングにあげた豪右衛門。自分のキャラクターよりもメインイベンターとして、がむしゃらプロレスの選手代表としての責任を全うした姿は正直格好良かった。
いつの間にか粗削りなだけだった巨漢選手がここまでたくましいチャンピオンになろうとは思いもしなかったが、これが成長というものだろう。HIROYAにはこの高みを目指してまだまだ頑張ってほしい。
豪右衛門も触れていたけど、大会開催に関しては実行委員のひとたちや八児小学校の皆さんが何か月も前から尽力してこの日を迎えたことは知っていた。だからこそ万難を排してでも観に行きたかったのだ。幸い、観戦時には大事にも至らず、家に勝っても特別大きな変化はなかった。痛み止めの薬がよほど効いたのか、朝救急車で運ばれたとは思えないくらい父もピンピンしていたし、終わりよければすべてよし。やはりプロレスは私にとって困難な現実に立ち向かうための大いなる栄養剤だった。 本当にありがとうございました。