アリ.ザ.グレーテスト(1977年・アメリカ:上映時間:101分)
2009年9月5日鑑賞。
1960年夏、18歳のクレイ(フィリップ・チップ・マカリスター)は、ローマ・オリンピックのボクシング部門で金メダルを獲得した。彼の故郷、ケンタッキーのルイヴィルでは、ホリス(ベン・ジョンソン)ら百万長者たちが集まり、クレイが世界チャンピオンになるまで後援しようと決定していた。そして有名なトレーナー、アンジェロ(アーネスト・ボーグナイン)が雇われる。やがてクレイは22歳になり、チャンピオンとなった。「俺は世界一強いんだ!」。数カ月後、クレイはマルコムX(ジェームズ・アール・ジョーンズ)に触発され、キリスト教を捨ててイスラム教に改宗し、モハメッド・アリ(モハメッド・アリ)と改名する。(あらすじは映画comより)
回教徒の星以上の存在
モハメド・アリという存在は回教徒の星以上の存在であり、黒人や白人のアイドルであった。
そしてベトナム戦争でアリは兵役を拒否し、ボクシング・コミッショナーは彼のタイトルを剥奪する。
1971年、最高裁はこの兵役が不法なものであると判決、アリは長い追放より解放された。1974年10月、アリはチャンピオン、ジョージ・フォアマンと対戦し、KO勝ちするまでを、本作では描いている。
アリをもっと知ろう
これ、実は「四月怪談」を発掘したときに、一緒に出てきたんだけど、アリ特集って当時やってて、ほかに4作放送されていた。見たかったなあ...なぜ録らなかったか...悔やまれる。
で、今回の鑑賞目的は「アリという人をもっと知ろう」ということ。最近ではちょこちょこ見かけるようになった「猪木対アリ」戦。どうしても猪木サイドからしか検証されていないことが多いもので、アリってどういう人なんだ?って事を知りたくなっていたところに、この映画を見付けた次第。
凄い人生を歩んでいる
いや、いろいろ知らないことがいっぱいあった。カシアス.クレイからモハメド.アリになるまでの軌跡。マルコムXとの親密なつきあい、回教徒への改宗。今では考えられないくらいの、黒人差別。ベトナム戦争への懲役拒否。
けっして彼は順風満帆ではなかったのだ。本当に凄い人生を歩んでいる。すばらしい人だった。なにより徴兵拒否の真意を「殺人はいけない」「戦争の宣伝には利用されない」「黒人が黄色人種を殺す必要はない」などなど語っているからだ。
「対猪木」戦
そこで「対猪木」戦である。一度、辛酸をなめてからのアリは、少なくともクレイ時代ほど大口はたたかなくなっていた(この映画をみる限りでは)。だが、猪木戦では、リップサービスだったんだろう。「クレイ時代」を彷彿とさせる、しゃべりとパフォーマンスを繰り返していた。
これはたぶん、アリ自身も現役の晩年に闘う意義を、何か求めていたのかも知れないし、あるいは、単純に「アジアの挑戦者」を求めていたのかも知れない。
闘うしかない
ところが、それが黄色人種の、それもプロレスラーが挑戦してきて、「これはいっちょかましたろか」的な考えで乗り込んできて、たぶんモチベーションはかなり低かったと思う。実際「エキジビションマッチ」だと、アリ自身も思っていたらしいし。
ところが猪木があくまで本気とわかった瞬間、さしものアリにも「未知の格闘技」への恐怖が生まれたのかも知れない。無茶なルールを突きつけたり、法外なギャラを請求したり....
しかし、猪木サイドはすべて要求を飲んでしまった。こうなるともう闘うしかない。
友情が芽生え
そして、そこに友情が芽生え、アリは自らのテーマ曲を猪木に送った。
本作でも流れている様々なバージョンの「アリ.ボンバイエ」である。そして、すべての人が離れていってしまった後にも、体がパーキンソン病で動かなくなっても、猪木のためだけには駆けつけていた。猪木の引退式にも参加した。
それを考えると、晩年はあまりに悲惨だったとはいえ、アリの一生は決して悔いがなかったのではと思えるのである。