プロレス的音楽徒然草 あしたのジョー2のテーマ 〜明日への叫び〜
劇場版あしたのジョー2
今回はUWFやUWFインターナショナルで活躍し、今もGLEATなどで現役として試合している、中野巽耀選手の入場テーマ曲「あしたのジョー2のテーマ 〜明日への叫び〜」をご紹介します。
以前、TV版「あしたのジョー2」の前期オープニングだった「傷だらけの栄光」はご紹介したんですが、今回は「劇場版・あしたのジョー2」のテーマ曲になります。
「2」の制作経緯
劇場版「あしたのジョー2」が作られた経緯ですが、もともと最初のテレビシリーズ「あしたのジョー」は、原作連載に追いついてしまい、かの有名な「真っ白に燃え尽きる」シーンはアニメでは描かれずじまいでした。
原作者である梶原一騎さんのいわゆるスポーツ根性路線は1970年代に、一旦収束するのですが、1973年に『愛と誠』の連載を発表し、梶原版「ロミオとジュリエット」を意識した純愛山河を手がけ、ドラマ、映画化され、大ヒットとなります。1975年には、講談社漫画賞を受賞しました。
愛と誠の大ヒット
「愛と誠」の大ヒットは、それまではスポーツものの原作を手がけて、いわゆる「スポ根作家」のイメージが強かった梶原一騎さんが再び表舞台にあらわれるきっかけとなりました。
これがあやうく過去の人になりかけていた梶原一騎さんを再生させた要因で間違いないでしょう。
名作の続編制作へ
そこで梶原一騎さんは自身の再ブームを追い風に、かつての名作「巨人の星」と「あしたのジョー」の続編制作に乗り出します。
ただし、原作として続編が作られた「巨人の星」とは対照的に、続編が作りにくい「あしたのジョー」は、アニメ制作のみに携わることになります。
タイガーマスクも
なお、あしたのジョーのあとに梶原さんは「タイガーマスク」の続編「タイガーマスク2世」も制作し、新日本プロレスとコラボして、現実のタイガーマスク(初代)を世に送り出します。
少年サンデーに連載された「プロレススーパースター列伝」では、リアルのタイガーマスクを梶原作品の登場人物としても、リアルタイムで描き出し、爆発的なタイガーブーム、新日本ブームを巻き起こしました。
再編集版の続き
さて、テレビシリーズ「あしたのジョー2」が作られる前に、1970年のテレビアニメを力石戦まで再編集し、力石や葉子など一部のキャストを変更している「劇場版あしたのジョー」が、1980年3月に公開されています。
テレビ版「あしたのジョー2」は、この再編集版からの続きになっており、1980年10月13日〜1981年8月31日まで放送されました。
燃え尽きるラストを先に
このテレビシリーズに先駆けて、1981年7月4日に公開されたのが「劇場版あしたのジョー2」でした。
内容は、前半はテレビシリーズの再編集で、終盤は放映中だったテレビシリーズに先行して制作・公開されました。
要するにテレビより先に「燃え尽きるラスト」が見られるというのが宣伝文句でした。
TV版では楽曲変更
のちに劇場版の新作カットは、テレビシリーズに流用されています。
しかし、楽曲等は劇場版とは変更されており、リアルタイムで視聴していた当時、私は全く別な印象を抱いたものでした。
ジョー山中さん本人から
話を中野選手に戻しましょう。
「あしたのジョー2のテーマ 〜明日への叫び〜」を、中野選手が使い始めた当時はCD音源がなく、映画を録画したビデオテープからダビングしたものを使用していました。
そこで、週刊プロレス誌上で音源提供を呼びかけたところ、ジョー山中さん本人からテープがプレゼントされたという経緯があります。
さよなら博多スターレーンで
後年、徳間ジャパンの「アニメージュライブラリー」シリーズから、テレビシリーズ共々CD音源化され、現在では入手しやすくなっています。
私個人が「あしたのジョー2のテーマ 〜明日への叫び〜」で、一番印象に残っているのは劇場版をみた時ではなく、2019年に開催されたDDT「さよなら博多スターレーン」と銘打たれた大会の時でした。
博多男・中野
中野選手は、1988年4月新生UWFの旗揚げに参加します。
新生UWFでは無骨なキャラクターと正面から立ち向かうスタイルで会場人気を集め、特に博多スターレーン大会では、内藤恒仁戦で見せた「しゃちほこ固め」は当時のファンに強烈な印象を残し、客席から「俺は中野が好きだぁー」「俺もだぁー」の声がするほどの支持を得て「博多男」と呼ばれました。
中野対内藤の再戦
実は約10年後、北九州で行われたキングダム・エルガイツとFSR(ジョージ高野さんの団体)の合同興行において、中野対内藤の再戦が組まれ、この時もシャチホコ固めで中野選手が勝っています。
DDTではさすがに対戦相手は変わっていました(渡瀬瑞樹選手=現・ガンバレ☆プロレス所属)が、フィニッシュはやはり「シャチホコ固め」でした。
感動したメドレー
私が感動したのは、中野選手の勝利後流された「あしたのジョー2のテーマ 〜明日への叫び〜」から曲が切り替わり、メドレー的に「UWFプロレス・メインテーマ」に曲が切り替わったタイミングでした。
そして、スターレーンを揺るがす大・ナカノコール!
記憶に刻まれた名曲
今思うと惜しい気持ちもありますが、博多スターレーンの閉館があと数年遅れていたら、間違いなくこの名シーンを生体験できなかったでしょう。
こうした状況を踏まえた上で、「あしたのジョー2のテーマ 〜明日への叫び〜」は、私の中では記憶に刻まれた名曲にもなっているわけです。