[プロレスブログ] プロレス的発想の転換のすすめ(1)プロレスが教える心の整え方

[プロレスブログ] プロレス的発想の転換のすすめ

闘いに宿る心理

私がこれからお伝えしたいのは、まず「自分の心理状態を知ってみよう」というお話です。人間が関わるものや作り出したものには、必ず心理的メッセージが隠されていると私は思っています。もちろんプロレスという闘いにも、それは存在します。そのことに気付けたのは、私が2011年にカウンセリングを学び始めてからでした。

自分のことほど、案外自分では知らないものです。私が過去に書いたものを見返して、はじめて気がついたことがありました。以前から書いていた内容を自分で読み直してみると、かなりの部分で心理面に着目していたことがわかったのです。具体的には、大好きなプロレスなら「今、この技は何を考えて出したのだろう」と考えたり、映画なら「これは監督が何を伝えたくて作った場面なのかな」と探ったりしていました。

技に込めた継承

特にプロレスに関しては、繰り出された技に意図的なメッセージが隠されている場合があります。一例をご紹介しましょう。2016年8月、新日本プロレス真夏の祭典「G1 CLIMAX」決勝、ケニー・オメガ選手対後藤洋央紀選手の一戦です。後藤選手から勝利を奪ったケニー選手は、自身の必殺技へ繋ぐ前に、ブラディ・サンデー、そしてスタイルズクラッシュを後藤選手に決めました。

このブラディ・サンデーは、ケニー選手が当時リーダーとして君臨していたユニット「バレットクラブ」の初代リーダー、プリンス・デヴィット選手(現WWEのフィン・ベイラー選手)のフィニッシュホールドです。そしてスタイルズクラッシュは、同じくWWEへ渡った二代目リーダー、AJスタイルズ選手の必殺技でもあります。ケニー選手はこれらを繰り出し、現在のリーダーとしての必殺技「片翼の天使」へと繋いで、外国人初となるG1制覇という偉業を成し遂げたのです。

覚悟が勝敗を分かつ

この闘いから読み取れるのは、デヴィット選手やAJ選手の思いを背負ったケニー選手の覚悟と責任感です。2人の技に敬意を払いつつも、「今の自分が最強である」と認めさせる意味合いでも非常に効果的でした。さらに、アメリカのWWE行きを選択した前リーダー2人に対して、「自分は日本でメジャーになる」というメッセージも含まれていたと想像できます。こうした芸当を激闘の中でさらっと表現できてしまうケニー選手に対し、後藤選手には勝ち目がなかったのかもしれません。

2016年のG1決勝におけるケニー・オメガ選手の行動は、単なる「技のコピー」ではなく、高度な心理的カタルシスの演出でした。ケニー選手がデヴィット選手やAJスタイルズ選手の技を使った背景には、「過去の否定」ではなく「過去の吸収」という心理メッセージがあります。

圧倒的な自己提示

通常、新リーダーは前任者の色を消そうとしますが、ケニー選手はあえて「バレットクラブの歴史」をリング上で再現しました。これはファンに対して「これまでの物語を終わらせない」という安心感を与えると同時に、「そのすべてを飲み込んだ私が、今ここにいる」という圧倒的な自尊心(セルフエスティーム)の提示でもありました。

後藤選手が「伝統ある新日本の看板を)守らねばならない」という強迫観念に近い心理状態であったのに対し、ケニー選手は「(新日本を、世界を)変えたい」という純粋な欲求に突き動かされていました。

義務感と欲求の差

心理学において、行動(Do)の源泉が義務(Must)にある場合、パフォーマンスは硬直します。一方で、ケニー選手のように欲求(Want)に根ざした行動は、創造性を高めます。あの場で見せた「歴代リーダーの技から自身の必殺技への流れ」は、義務感では決して生まれない、創造的な「物語の完結」でした。

ケニー選手のメッセージは、対戦相手の後藤選手だけでなく、観客の無意識にも語りかけました。「自分たちの愛した過去」を肯定された観客は、心理的な壁を取り払い、ケニー選手の勝利を「必然の物語」として受け入れてしまったのです。これが、後藤選手がどれほど粘っても拭えなかった「勝ち目のなさ」の正体です。

自分の感情を知る

ケニー選手が歴代リーダーの技を咀嚼して自分のものにしたように、まずは自分の中にある感情を整理することがスタートです。

「ねばならない」リストの作成: 「毎日自炊せねばならない」「メールは即返信せねばならない」など、頭の中にある義務感をすべて紙に書き出します。

出所を確認する: その義務感は「誰の言葉か」を考えます。親、上司、あるいは世間の目でしょうか。自分以外の誰かの声だと気づくだけで、心理的な距離を置けるようになります。

言葉を変換する術

心理学には「アファメーション」(自分の望む状態や理想の姿を、あたかもすでに実現しているかのように表現し、繰り返し唱えることで潜在意識に働きかける手法に近い手法)がありますが、言葉を変えることで脳の捉え方を変えることができます。

変換の練習: 「掃除せねばならない」→「部屋をスッキリさせて、コーヒーを飲みたい」

「仕事を終わらせねばならない」→「早く自由な時間を手に入れたい」

目的の再定義: 義務の先にある「自分が得られるメリット」に焦点を当てることで、脳は「やらされている」状態から「自ら選んでいる」状態へと切り替わります。

遊びが余裕を生む

「~せねばならない」が強い人は、効率や正解を求めすぎる傾向があります。2016年のケニー選手のように、最短距離で勝つこと(効率)だけでなく、あえて他者の技を繰り出す(表現・遊び)余裕を持つことが大切です。

週に一度、あるいは一日のうち15分だけでも「効率を無視して、ただやりたいことだけをやる時間」を作ってください。「何を食べたいか」「今、どこに行きたいか」という小さな欲求を拾い上げる練習をすることで、眠っていた本来の「Want」が目覚め始めます。

主語を切り替える

後藤対ケニーの闘いにおける心理的なアプローチの違いを、日常に当てはめてみましょう。「今の地位を守らねば」「失敗してはならない」という守備的な思考(後藤選手的アプローチ)から、「ここで自分はどう表現したいか?」「何を伝えたいか?」(ケニー選手的アプローチ)に主語を切り替えます。

「覚悟」を「楽しさ」で包む: ケニー選手は重い責任を背負っていましたが、それを「物語」として楽しんでいました。苦しい状況こそ「これは自分の人生という物語の伏線だ」と捉え直すと、義務感はワクワクする使命感へと変わります。

自己観察の第一歩

このように、ひとつの技から読み取れるメッセージは無数にあります。私は社会人になってから約20年間、接客業に従事してきました。かつての仕事柄、私は人間を観察し、自分なりに相手の心理状態を想像することも多々ありました。当時は楽しいことよりきついことの方が多く、そんな中で楽しみを見出すには、その方法しか思いつかなかったのです。

その後、私は病気になり、寝たきりの状態から這い上がり、リハビリをしながら自分と向き合って生きていました。しかし、人間観察も「義務」だと思ってやると続きません。接客業時代がまさにそうでした。仕事でも趣味でも、「~したい」という気持ちがなければ人生は面白くありません。

己を知り人生を彩る

私たちはつい「~せねばならない」という義務を優先しがちです。仕事でも趣味でも「こうあるべきだ」という信念が強すぎると、力が入りすぎて楽しめず、良い成果も出にくくなります。

とはいえ、無意識に力が入っている状態から脱するのは簡単ではありません。そこで、まずは自分を観察し、「己を知る」ことから始めます。物事に対して自分がどう反応するかを知ることが、すべてのスタートになります。

ケニー選手と後藤選手の話に戻りますが、ケニー選手は「~せねばならない」という義務感で歴代リーダーの技を出したのではないでしょう。メッセージとして「~したかった」からこそ、あの畳みかけができたのだと私は解釈しています。単に「勝ちたい」だけではない、それを超えた何かを観客に突き刺すこと。その欲求を誰よりも理解し、咀嚼したうえで繰り出したのだとしたら……。

プロレスという闘いは、多面的な見方ができるからこそ、いつまでも興味が尽きないのです。「人間が作り出すものには心理的メッセージが隠されている」という視点は、表現者の深層心理を読み解く鍵となります。

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