プロレススーパースター本烈伝 純度100%! 有田哲平のプロレス哲学
解説
自らの生い立ち、芸人という仕事、普段の生活。どこをどう切り取っても、この男の人生の根源にはプロレスが横たわっている。40年以上に渡って追い続けてきたプロレスとその世界観。そして、そこから導き出される哲学的な視点。有田哲平ならではの思索をお届けする。(解説はAmazonより)
プロレス観を描いた哲学
個人的に、「純度100%! 有田哲平のプロレス哲学」の哲学とは、学問でいう「哲学=philosophy」ではなく、有田哲平という人のプロレス観を描いた「哲」学と捉えている。
したがって、「純度100%! 有田哲平のプロレス哲学」の内容は、非常に主観的ではある。
読み物としても
しかし、決して断定はせず、しかも要所要所を俯瞰でみている冷静な視点があるため、読み物としても非常に面白くできている。
ただのプロレスファンならば、仮に本を出したところでまず読む人がいない。ニーズがないからだ。
好感度も高い
その点、有田哲平という人には、売れっ子芸人であるという前提があり、既に求められている立場にある。
もちろん本人の努力もあるのだが、芸風もアンチが少なく、好感度も高い。
受け入れられる土壌
プロレス好きであるというポイントも、リアルであるため、そちら方面からの信者も多い。
したがって、極私的プロレス語りであっても、広く受け入れられる土壌があるので、市井のプロレスファンとはそこが大きく違う点である。
絶妙なバランスの上で
だが、昨今芸能人の不祥事は下手すれば、今まで積み重ねてきた信頼をマイナスにし、下手すれば一発退場になりかねない。
そうしたリスクと闘いつつ、好感度を維持しながら、絶妙なバランスの上で、自分の語りたい事を語るというのは、突き詰めれば一つの芸と呼んで差し支えない、と私は考える。
「妬み」「嫉み」が渦巻く
そもそもプロレス界というのは、魍魎跋扈する「妬み」「嫉み」が渦巻く世界である。
ましてや有名人ならば、選手・関係者とも接点を持ちやすいし、そのネームバリュー頼みで、なんならそうした魍魎たちが寄ってきても不思議ではない。
自身はプロレスファン
有田哲平という人の特殊性は、有名人でありながら、あくまで自身はプロレスファンとして、プロレスとは一線を引いている点である。
確かにハッスルに登場したり、プロレス解説にでてきたりとか、出演者としてプロレスと関わる事はゼロではない。
プロレスへの恩返し
しかし、これほどの知名度を誇りながら、有田哲平はあくまでプロレスファンであろうとし続けている。
そういう思いのベースにあるのが、帯にも書かれている「プロレスへの恩返し」という気持ちではないか?
代表でもない
特筆すべきは、有田哲平はプロレスファンという立場でありながら、プロレスファンの代表という立ち位置をとってもいない点である。
私は、近年ほとんどテレビを見ていないので、くりぃむしちゅーがどういう形でテレビに出ているのかは全く知らない。
絶妙なパスを出す
その上で、YouTubeでみる有田哲平の立ち位置は、あくまで面白そうなところに、ふっと現れて、凄く絶妙なパスを出して、また後ろに引く…そんなイメージを勝手に抱いている。
そうした有田哲平の「立ち位置」を想像しながら、彼のプロレス観を楽しむのも一興かもしれない。
ピュアなファンスピリット
YouTubeだけでは語りきれないプロレスへの想いと、自身の立ち回り方や処世術、あるいは芸人観を通して語られる「プロレス」。
そしてベースにあるキーワードは「恩返し」というピュアなファンスピリット。
それがあますところなく描かれているのが、「純度100%! 有田哲平のプロレス哲学」ではないか、と私は思っている。