『GAMSHARA MANIA’2019』(令和元年12月1日(日) 門司赤煉瓦プレイス)
イントロダクション
今からちょうど10年前。2009年11月23日。はじめてがむしゃらプロレスが小倉北体育館に進出した記念すべき日に5人の選手がデビューしている。
林祥弘、野本一輝、レイ・タクマ、ニ夜、そして七海健大(現・KENTA)。5人中、10年後の大会でリングに上がっているのが、KENTA一人というのも時間の流れを感じさせられる。
今回のがむしゃらマニアは、全7試合。2009年の大会が12試合だったから、随分とコンパクトにはなったが、イベント詰め込むだけやっていた時代と比較すると、イベントの進行などが格段の進歩を遂げている。
オープニング
個人的には2009年11月23日から、2019年12月1日まで10年連続で、がむしゃらプロレスの有料大会を無欠席で観戦していることになる。
がむしゃらプロレスと出会ったことで、私が変わったことはたくさんあったけど、一番の変化はメモ程度でしかなかった拙観戦記のボリュームが飛躍的に増幅したことかもしれない。
これは古い観戦記と比べると一目瞭然。しかも10年前はただ長いだけだった観戦記も少しずつまとまってきた感じもする。10年という時間の経過はあっという間だったけど、やっぱり重いなあと思わざるを得ない。
さて、前説は珍しくナスティのMIKIHISAと尾原毅。伸ばしたり、巻いたりなかなかせわしなかったが、次にドン・タッカーが九州ダイナマイト級ベルトをお披露目して、短めに終了。
▽九州ダイナマイト級王者決定6人タッグマッチ(疲れん程度1本勝負)
①ブラック☆スティック&モミチャンチン&○ダイナマイト九州 vs ×リキ・ライタ&パンチくん&セクシーロージィ (9分48秒:サムソンクラッチ)
奇しくも私が初めてがむしゃらプロレスを観戦した時に、マッチメイクされていたのが、九州ダイナマイト級選手権試合だった。グレート・フランケンを倒して王者になってのが、引退したTA-KIであった。
それからざっと10年。私が記憶する限りダイナマイト級の防衛戦は行われておらず、プロを含めたいろんな選手が巻いたという事実だけ残して、ダイナマイト級のベルトは行方不明になってしまった。
それが10年の時を経て復活するんだから、本当にプロレスは何が起こるかわからない。
とはいえ、ベルトが見つかったわけでもなんでもないので、結局2代目ちゃんぴよん♡ベルトだったわけだが、このメンツになると、やっぱりロージーが何もかも全部持っていってしまう。
それは最初からわかっていた事なんで、急遽出場になったブラック☆スティックはまだしも、特にリキ・ライタがテキーラなしで、どれだけ爪痕を残せるかに注目していた。
だが、甘酒と赤マムシではテキーラほどの陣痛力はなかったようで、少ない見せ場でアピールできるほどではなかったかな。前半はブラック☆スティックの黒棒にもてあそばれ、後半は九州の妙技、サムソンクラッチの前に涙をのんだ。
しかし、段ボールとはいえ、ダイナマイト級がこれからどう発展していくかは、やっぱりリキ・ライタにかかっている部分もあると思う。願わくば10年後またしれっと蘇るようなベルトになったら、それはそれで面白いんだけど(笑)
▽GWA無差別タッグ選手権試合
②【挑戦者】×シドニー・昌汰・スティーブンス&SMITH vs HIROYA&○トゥルエノ・ゲレーロ【王者】(12分09秒:レランパゴ)
大阪に拠点を移してからは、各地のローカル団体で存在感を出しまくっているSMITHだが、穴生で現王者にカツを入れると予告して、連れてきたパートナーが、10.6広島でアメリカンチームを組んだシドニー。
同じアメリカ人のはずなのに、シドニーは通常通りのコスチュームに対し、SMITHはアメリカ国旗を見に纏い、アメリカ色強めな出で立ち。
しかし、言語の壁がないはずなのに、試合前のSMITHの発音にシドニーがダメだしするなど、早くもチームとしては、不穏な空気が漂い出した。
対してゲレーロ&HIROYAは活を入れられたせいか、SMITHを前にしても全く動じない。序盤の乱闘っぽくはじまったやり取りでも、今更だがHIROYAの強心臓というのは、あらためてすごいなあと思った。
要するにSMITHが揺さぶってくる数々の策が、ことHIROYAのメンタルに関しては全く効果がないのである。これは正直SMITHもバカ負けしたのではないか?
多分SMITHの指示だろうが、シドニーがゲレーロをコーナーにくくりつけて、HIROYAをローンバトルにしたあたりで、通常ならSMITH組有利は動かなかったはずなのだ。「今までならば」だが。
結局SMITHの策略は徒労に終わり、HIROYAもゲレーロもほぼ自力でピンチを切り抜けてしまった。SMITHの常識を打ち破った時点でチャンピオンチームに死角はなくなってしまったのだ。
考えてみたら2009年の小倉北大会では、SMITHが次の時代の扉を開く側だった。しかし10年たって今度はHIROYAが、SMITHに代わって新しい時代の代表に代替わりしたといってもいいかもしれない。
HIROYAほどではないにしても、ゲレーロもSMITH世代を苦手にはしていない。あれだけ負けず嫌いのSMITHが試合後、ゲレーロに誘われるままにノーサードで、ダンスを踊ったあたりに、確実に新しい時代がきているんだなあと思わざるを得なかった。
そのHIRIYAに触発されたシドニーも、自分から積極的に若き王者に挑んでいった。やはり年の近いライバルというのは、伸び盛りの選手を急成長させていくものなのかもしれない。
▽スペシャル6人タッグマッチpart 1(30分1本勝負)
③×BIG-T&KOZZY&マツエデラックス vs ○MIKIHISA&尾原 毅&久保希望(12分36秒:PK)
慣れない前説で、おどおどしていたMIKIHISA&尾原だが、試合はたぶん初遭遇になる山陰統一&OPGタッグの二冠王者であるマツエデラックス&KOZZY。特に蹴りに関してはがむしゃらでも頭一つ抜けたキッカーでもあるMIKIHISAと尾原にしてみたら、KOZZYとの蹴りあいは望むところだろう。
果たして序盤から尾原とKOZZYの蹴撃戦で会場がどよめく。最近第一線からは一歩ひいた感がある尾原だが、まだ蹴りの鋭さは衰えていない。KOZZYとここまで蹴りあえる選手は西日本でもそうはいない。ぜひシングルでもみてみたい顔合わせだった。
一方、MIKIHISAはなぜか体重が三倍近く違うマツエデラックスとの絡みが多く、とんだ貧乏くじを引く羽目になった。ここまで体格差があると、相手を蹴って寝かせて決めて・・・という流れにもちこめない。しかもマツエデラックスは意外と足腰が頑丈な選手なんで、何やってもきかないわ、逆に吹っ飛ばされるわで、散々な目にあっていた。
プロとも対戦経験が豊富なデラックスは久保をもいとわないが、さすが久保希望だけあって、巨漢対策はお手の物だった。結局久保のサポートもあって、なんとかBIG-Tを孤立させてナスティが勝利をもぎとった。
▽GWAインターコンチネンタル選手権試合
④【挑戦者】×嵐 弾次郎 vs ○KENTA【王者】(11分49秒:ソル・ナシエンテ)
前述したとおり、2009年11月23日にデビューしたKENTAはこの日デビュー10周年。そこでタイトルマッチをやっているというのも時の流れを感じるところでもある。GWAヘビーは一回も防衛できなかったが、インターコンチは最多防衛を重ね、今や敵なしの状態。
しかしGAM1で準優勝した嵐弾次郎は、現状で考えうる最強の挑戦者でもある。なんせ敵地で上原智也を破ってOPGシングル王者になった実力者でもある。おまけにフィニッシュホールドも似ていて、お互い技を受けあうことでも知られている。
ただ、真っ向勝負を好む弾次郎に対して、KENTAはちょいちょい変化球を挟んでくる。それがここぞというときに威力を発揮する一本背負いだったり、豪右衛門からベルトをとった試合で印象深い各種関節技である。
一見すると真っ向勝負のようにみせて、相手がのってくると自分のペースに引きずり込む。これがKENTAのスタイルでもある。
更に、がむしゃら内はおろか他団体にも被害者が続出している、KENTAの寝かせてからのチョップの打ち下ろしで、たっぷり弾次郎のヒットポイントを削りまくった。
最後はソル・ナシエンテで難敵からギブアップ勝ち。終わってみたらKENTAの完勝という結果に終わってしまった。
似たタイプというのは、ともすればやりにくさもあるはずだが、KENTAには関係なかったようだ。これで勢いに乗ったKENTAは、再び鉄生を挑発。ついにLCR分裂か?
▽スペシャル6人タッグマッチpart 2(30分1本勝負)
⑤×レオパルドン横山&乱魔&土屋クレイジー vs 山内拓也&上原智也&○鉄生(15分09秒:急降下鋼鉄ロケットランチャー)
こちらもがむしゃらマニアにふさわしい豪華な顔ぶれ。ジョロキアと乱魔ががっつり絡むのは、多分生では初めてみるし、なんといっても10.8広島で鮮烈な印象を残したレオパルドン横山は、がむしゃらマット初登場。
ここに久々参戦になる土屋クレイジーがら絡むから更に新鮮になってくる。特に対ジョロキアとなれば、総花的なカードに刺激的なスパイスが加わる。
そこで土屋の前に立ったのが、OPGジュニアチャンピオンにして、既に団体内では敵なしになっている山内拓也だった。穴生では、一歩ひいてサポートに徹していたが、この日は一転、強烈な自己主張を繰り広げて、会場を大いにわかせた。
負けじと横山もヘビー級の鉄生に向かってガンガン飛ばしていくのも、この試合の盛り上げに一役買っていた。こうなるとヘビーもジュニアも関係なく、いかにして自分が目立つかという競争になっていった。
試合は終盤で山内をスリーパーにとらえた横山が、山内の金的をくらって悶絶。すかざず上原がでてきて横山をマットにたたきつけると、鉄生がコーナー最上段からダイブして決着がついた。実に見ごたえのある試合だった。
▽GWA Jrヘビー級選手権試合
⑥【挑戦者】○ドラゴンウォーリアー vs ×YASU【王者】(14分30秒:ラリアット)
「花がない、人気がない、ベルトがない」と冒頭でぼやいていたMIKIHISAだったが、そんなナスティ・アウトサイダーズを黙々と率いてきたドラゴン・ウォーリアー。すでに北九州が第二のホームといってもいいくらい定着しているが、ベルト挑戦はこれで二度目。
その挑戦のきっかけとなったTOP OF THE SUPER GAMSHARA Jr’2018では、一回戦で現王者のYASUを破り、そのまま勢いで優勝した。そして当時ジュニア王者だったゲレーロに挑んだものの惜敗している。
当然トーナメントとタイトルマッチでは全く状況が違うのだが、一回シングルで勝っているという事実は、ドラゴンにとっては有利ではある。MANIAという舞台は満を持しての挑戦だったわけだ。
序盤はYASUがいつも通り空中戦主体で攻め、アクセントにセコンドの土屋やBIG-Tを絡めた形で、主導権を握っていく。しかし、前回の対戦もそうだったのだが、ドラゴンはYASUの攻撃を受けきろうとしているように見えた。
つまり一見するとYASU有利な試合展開もそうではなかったということになる。果たして中盤で決めボストンクラブや、終盤の打撃戦でドラゴンは優位に立ちはじめる。YASUに誤算があったとしたら、この打撃戦につきあってしまったことではないかと思う。
結局、YASUは一発逆転にでようとしたのだが、そこへ強烈なドラゴンのラリアットをもらってしまい、YASUは空中で一回転してしまう。大概の場合はこれでYASUがキックアウトできる場面なのだが、ダメージを負ったのはYASUのほうで、肩を上げられず3カウントをきいてしまった。
試合後、マイクを持ったドラゴンは「YASUさん、あなたがいたから自分がありました。」と感謝の言葉を述べて、ナスティに勧誘するも、YASUはこれを拒否。苦労人・ドラゴンが2年越しの執念を実らせて初戴冠となった。
▽GWAヘビー級選手権試合
⑦【挑戦者】×サムソン澤田 vs ○陽樹【王者】(19分03秒:膝蹴りからのパワースラム)
GWAのタイトルマッチでは唯一前哨戦がたくさん組まれたカード。ここでサムソンは徹底的に陽樹の右ひじを破壊に出ていた。それだけ陽樹のここ一番の破壊力が警戒されていたという事だろう。
この試合も序盤は打ち合いに応じておいて、そこから寝かせての腕攻めに移行する澤田。ここまでは陽樹も想定通りだったのだろう。あまり長い時間をおかずに、場外で澤田の痛めている左ひざをイスで破壊する手をうってでた。
これで動きが止まった澤田は、体格差をカバーできる寝技も満足にできなくなってしまう。こうなってくると澤田の手札が一枚なくなってしまう。本当は陽樹がやったことを先にサムソンが仕掛けていれば展開も変わっていただろう。
やはりスタンディングになってくると体格差で勝る陽樹が有利。この辺はキャリアの差というものが如実に出たと思う。陽樹らの世代は散々SMITHに煮え湯を飲まされ続けてきた。嫌がらせという点ではサムソンのやり方は真っ正直すぎたと思う。
最後は強烈な膝蹴りからパワースラムで叩きつけて王者防衛。とここへ、インターコンチ王者のKENTAが乱入。陽樹をぼこぼこにするが、あろうことか同じユニットの鉄生がKENTAを急襲。怒ったKENTAは鉄生と陽樹を吹っ飛ばすが、ここでサムソンがKENTAに襲いかかり、KENTAはリング外にたたき出されてしまう。
そして鉄生が「お前のことは嫌いだけど、目指す方向は同じだ」となんと共闘を促した。陽樹も迷った末にこれに呼応。サムソンを交えた最強トリオがここに結成された。
後記
ひとり取り残されたKENTAは毒を吐きながら退場していったが、これでLCRの亀裂は決定的になってしまった。果たして新年から新ユニットが登場するのか?それとも、LCRが二派に分裂する形になるのか?予断を許さない状況になってきた。
王座移動に関してはタッグとヘビーが防衛で動きらしい動きはなかったが、8月のFREEDAMSで、ようやく方向性の一致を見た陽樹&鉄生にサムソンが加わった新勢力が、がむしゃらをかき回すのは必至だろう。プロレスは点ではなく線でみていくものだが、それを如実に表した大会だったと思う。さて、来年はどんな線が描かれていくだろうか?