東京女子プロレス・TJPW LIVE TOUR IN SPRING ’23(2023年6月26日・日・西鉄ホール:観衆437人ー超満員ー)
イントロダクション
前回は実に4年ぶりの開催になった東京女子福岡大会。今回は1年ぶりで、初めてところも同じ西鉄ホール大会が開催される事になった。
前回までが全て違う会場というのもなかなかすごい話ではあるが、それぞれ記憶に残る大会になっている。
前日がGLEATの西鉄ホール大会で、私が記憶している限りでは同ホールの2日連続開催ははじめてのはずである。
したがって、GLEATの観戦記に書いたように人生初の博多一泊を決行した。
宿→開場前
宿には午前11時までいていいとのこと。普通のホテルより融通がきくのも民泊のいいところである。
昨夜はインスタのラジプロライブでプロレス話をしつつ、ゆっくり眠れたのもありがたかった。自宅ほどくつろげなかったが、それでも6時間眠れたら御の字。
朝起きて、服薬してから昨日のGLEAT観戦記を寝転びながら書いて、時間がきたらいよいよ出発。
今回泊まりにした理由はもう一つある。それは初訪問になるヴァンヴェール珈琲にいくこと。
日帰りでは藤崎まで出かけるのが困難なため、試合前に時間があるタイミングでないとなかなか行く機会もない。
藤崎→西鉄ホール
ヴァンヴェール珈琲では濃いプロレス話に花が咲き、気づけばあっという間に時間がきてしまった。
時間ギリギリで地下鉄降りて若干内部で迷った末に、どうにか会場入り。しかし、まさかの入場規制がかかり、しばらく待機する羽目に。
結局、送料がもったいなくて会場で購入したテーマ曲CDと、パンフを購入。
そろそろ年齢的に断捨離も考えないといけないんだが、それは多分私にとってはIWGPより遠い気がする。
オープニング
今回から久々の声出し解禁で、会場はえらい盛り上がり。難波リングアナが出てきただけで、大・難波コールが巻き起こる!
これには難波さんも超ノリノリ。これで会場の空気は既にできあがっていた。
オープニングマッチ:15分一本勝負
○鈴芽(5分44秒リング・ア・ベル→片エビ固め)●鈴木志乃
昨年デビューしてない新人が多数でているのも、今大会の特徴。
長い間3人体制だったアップアップガールズ(プロレス)も、鈴木志乃がデビューしてさらに下の娘が控えている。
もう既に近い将来先輩になることが確定しており、ここまで下からの突き上げが激しい団体もそうはあるまい。
そして、いつのまにか先輩枠が板についた鈴芽も今や風格が感じられる選手に成長。
団体の壁として新人にどう立ち向かうだろうか?
東京女子の地方大会は一部を除くと、ロックアップから入り、グラウンドの攻防をきちんとやる。
そもそも旗揚げ時はメインの選手ですら緩かったのだが、いつのまにか序盤のプロレスをきちんと見せて、それから大技に繋いでいく。
先輩がこの流れをきちんと踏襲しているため、後輩も自然とそうしたムーブが身についていく。
新人と上の選手で違いがあるのは、新人相手にこれが出たら終わりという必殺技と、それに持っていける必殺パターンを持っている事。
鈴芽だってもちろん最初からできていたわけではなく、先輩や同期に揉まれながら少しずつ進化してきた。
その道を今度は鈴木志乃も歩いていくはずだ。
試合は鈴芽のリング・ア・ベルがバッチリ決まって先輩の貫禄をみせた。
いつか鈴木志乃が鈴芽と対峙する時は今日より確実に成長してくるはずだ。
第二試合:15分一本勝負
○宮本もか(5分29秒羅生門)●凍雅
山下美優がデビュー戦の相手という破格の新人、凍雅。対する宮本もかは昨年までは新人のくくりだったが、あっという間に急成長。
可能な限りレッスルユニバースで試合を追ってはいるのだが、その急成長っぷりには驚かされている。
身体能力の可能性でいうと、凍雅は新人の中では抜きん出ている。クールにみえるが内面は熱そうなのもいい選手になる条件を備えている。
しかし、宮本もかも初勝利までの道のりは長く、スキルとして身につけていた空手もなかなか活かせない時代があった。
そうした課題を一つ一つ乗り越えて現在の彼女がいる。
この試合も手四つから始まりグラウンドの攻防からスタート。短い時間でも必ず基本的なムーブからはいるのが好感度高い。
そしてやはり先輩と新人の差は必殺技と必殺パターンを持っているか、否かで差が出たと思う。
1年前は新人枠だった宮本もかが、こうして若手に伝える側になっているのは、非常に感慨深い。
フィニッシャーの羅生門も新人時代から大切に使い続けてきた技。空手だから蹴りや突きだけでなく、関節技にこだわったのも彼女らしい選択だと思う。
こういうところにファンは思い入れを重ねていくのだ。
第三試合:3WAYマッチ:20分一本勝負
ハイパー・ミサヲ 対 HIMAWARI 対 遠藤有栖
(○ミサヲ・6分55秒ジャックナイフ式エビ固め●HIMAWARI)
東京女子の地方大会でお馴染みの3WAY。
今回は昨年同様、面倒な先輩の相手をさせられる遠藤と、新人離れした度胸が末恐ろしいHIMAWARIが加わる。
もちろんミサヲがこの試合形式では一番有利なのだが、遠藤有栖も成長著しく、昨年と同じというわけにはいかないだろう。
出てきて早々に、怪しい先輩がマイクを持ち、後輩2人に3WAYの勝ち方をレクチャーし始めた。
ミサヲ曰く「私と君たちのどちらかが組んで1人を倒そう。どちらが組みたいかは君たちに任せる」と謎の上から目線。
しかし、遠藤とHIMAWARIは、ミサヲを排除して2人で試合を進め始めた。場外に出すとある意味でややこしい人なんだが、試合はある程度まともになる。
だが、転んでもタダではおきないのがニューヒーロー。いつのまにか試合に混ざって、今度は漁夫の利を狙いにきた。
これだから、この人は油断ならない。
なまじこんな性格なのにIQも高いから、なんとかにハサミ、飯伏幸太に花火みたいなもんである。
隙あらば試合に介入し、2人まとめて料理するあたり、普段使いする小道具も使わず、実力でねじ伏せにきたから余計に始末が悪い。
昨年はうまい具合にいいくるめられて酷い目にあった遠藤は相当警戒していたはずだが、残念ながらHIMAWARIには、その経験がない。
2人の間をスルスルと泳いでいたミサヲは、HIMAWARIの一瞬生まれた隙を見逃さずに、固めて3カウント。2年連続でしてやられた遠藤は、そうとう悔しそうにしていた。
第四試合:20分一本勝負
○乃蒼ヒカリ&角田菜穂(9分54秒ランニングネックブリーカードロップ→体固め)荒井優希&●風城ハル
ふりーWi-Fiに挑むのは、既に先輩枠にいる荒井優希とデビューしたての風城ハル。
荒井にしてみたら、年齢もキャリアも完全に下の人間を引っ張るという意味では非常に試練でもあるが、自身のキャリアアップには避けて通れない相手でもある。
赤井沙希引退に伴いパートナーが空席になっている荒井優希だが、新人を導きながら、難敵ふりーWi-Fiと対峙するには、ちょっと荷が重たかった様子。
確かに、慣れない中なんとかしようとはしていたんだけど、やはりふりーWi-Fiは、普段から組んでいるチームだし、連携もスムーズ。
先輩でありながら、課題を突きつけられた格好にはなったが、荒井にはまだ伸び代があるからこそこうしたカードも組まれたのだろう。
一方のふりーWi-Fiはいつも以上にハードな攻撃で荒井と風城を翻弄。特に乃蒼ヒカリはデスマッチ体験を経て明らかにオーラが以前とは桁違いになってきており、角田もそれに引っ張られている感じがする。
時にヒールモードで後輩に厳しい攻めを叩きこむふりーWi-Fiには、強すぎるが故にブーイングが飛んでいた。
これは本人たちもしてやったりだっただろう。
第五試合:20分一本勝負
○瑞希(10分47秒ダイビング・フットスタンプ→片エビ固め)●桐生真弥
こちらは、現プリンセスチャンピオンに東洋盟友の桐生が挑むシングルマッチ。
上福とのタッグというイメージが強い桐生だが、そろそろシングルでも何かしら爪痕を残したいところである。
怪我で欠場中のマジカルシュガーラビッツの盟友、坂崎がセコンドにつく中、桐生も降ってわいた大チャンスを逃すまいと、目を輝かせている。
しかし、可愛い顔して噛み付くは、重いフットスタンプ落とすわ、してくるのが現在のプリプリチャンピオン。
並大抵のことではチャンピオンの牙城は崩せない。そこで桐生は正調土下座ニースタンプから、ロープに瑞希を貼り付けての、上から土下座など、普段やらない手を使って、なんとかくらいついていく。
しかし、瑞希にはフットスタンプだけでなく、華麗な空中弾に鮮やかなブリッジをみせるキューティースペシャルもある。
今回はキューティースペシャルを温存しての勝利だったため、桐生としてはただの負け以上に悔しい敗戦だったかもしれない。
やはり瑞希もお客さんも知らない、桐生真弥にしかできない必殺技を作らないと、この差は簡単には埋まりそうにない。
セミファイナル:20分一本勝負
○愛野ユキ&らく&原宿ぽむ(13分33秒ヴィーナスDDT→片エビ固め)辰巳リカ&渡辺未詩&●鳥喰かや
白昼夢に鳥喰が加わったチームも面白そうだが、愛野組もなかなか癖の強いメンバーが揃っている。
こうしてみると福岡初進出時には考えも及ばなかったメンバーがたくさんいるんだなあ、という実感がある。
怪我で欠場しながらもツアーに帯同している坂崎の穴を全く感じないのだ。
博多初進出の時は本当に人がいなかった東京女子が、今や当たり前に6人タッグが組めている。
それだけでも感慨深いのだが、また6人が6人ともに癖が強い。特にマイペースならくとぽむに、狂気が漂う辰巳リカが対峙するんだから、何かおきないわけがない。
序盤からインター王者辰巳リカを意識しまくりの愛野ユキ。爆れつシスターズを経て、着実にステップアップしているのが素晴らしい。
らくのターンでおやすみエキスプレスからのおやすみなさいフォールを決めたものの、当然これはカット。
そしてなぜか、謎のポーズ「めんたいこー!」でぽむがしつこく煽り出した。
だいたい対角線に怖い人がいる時ほどやりたがる癖みたいなもんだが、これに怒った渡辺未詩に、ジャイアントスイングでぶん回されてしまう。
しかし、このやられっぷりの良さがなぜか面白いから困ったもんである。
白昼夢は辰巳リカのドラゴン張り手などで、結構追い詰めていくが、最後は鳥喰が捕まってしまい、カウント3つをきいてしまった。
メインイベント:20分一本勝負
△山下美優&中島翔子(時間切れ引き分け)伊藤麻希&上福ゆき
昨年は、121000000(ワン・トゥー・ミリオン)として凱旋した山下と伊藤が今回はタッグで激突。伊藤はリアル親友の上福、山下は旗揚げメンバーの中島がパートナー。
これがハズレたらどうなってしまうのか?というくらいの顔合わせである。
もちろん同じチームにいてもバチバチにやり合う間柄なのは間違いないところ。
入場からもう既に出来上がっている西鉄ホールは、2人のご当地レスラーに大コール。西鉄ホールが揺れんばかりの大熱狂は、いままで我慢してきた分を、リング上の選手たちにぶつけんとするくらいすさまじい。
これほどの熱狂が体験できるとは、本当に夢のようである。
これが後楽園ホールなら「後楽園大熱狂」とかいう見出しを週刊プロレスがつけそうなくらい、この日の西鉄ホールはエネルギーに満ち満ちていた。
もちろん地元の山下も伊藤も大張り切り。普段組んでいるとは思えないくらい、山下も蹴りまくり、伊藤も頭突き攻撃が冴え渡っていた。それもえげつない生音が響くんだからとんでもない。
あまりの熱量に中島も上福もつられて、まるでタイトルマッチかのような張り切りよう。
これがさらに相乗効果で試合のボルテージをグングン上げていく。もうこうなると神がかっているとしかいいようがない。
選手もお客さんを煽り、お客さんも選手をのせる、理想的な空間。この場にいられる幸せたるや、ありがたいとしかいいようがない。
本当に心から感謝しかなかった。
結果は山下と伊藤の意地の張り合いから、時間切れ引き分け。これはもやは仲良しこよしの東京女子ではない。本気の信頼がぶつかり合った闘いでしかなかったと思う。
終わってもなお、結末に納得していない山下と伊藤は延長戦を要求したが、中島が取りなす形で、とりあえず和解。
この続きを同じメンバーでやろうと言う約束を交わし、さらに伊藤は東京女子単体での福岡国際センター大会をぶちあげた。
後記
気がつけばホークス戦をウラに回しての長満員札止め。初進出時は空席だらけだった東京女子が、ついに会場を満員にするところまで来たのだと思うと、感慨深い。
伊藤ちゃんがぶち上げた国際センター大会は、おそらくそう遠くない将来現実になるだろう。
この日の西鉄ホールの熱量はきっと国際センターでも大爆発するはずだ。
何より伊藤麻希がかつて所属していたLinQですら、国際センター単独の公演をやっていない。そこをクビになった伊藤が、世界のカリスマになって国際センターのメインをはったら、これはもう伊藤ちゃんのプロレスチャレンジから見てきた自分なんかは泣いてしまうだろう。
それでなくても戦うクビドルが、新時代のカリスマになっただけでも十分なんだが、こんなエモいストーリーが用意されていると思うと、ワクワクしかない。
西鉄ホールをでると外は雨だった。でもこの熱量があるとむしろ気持ちいい。ホークスかえりのお客さんが敗戦で意気消沈していたのとは対照的に、プロレス帰りのファンは総じてテンションが高かった。
こうして博多二連戦は大熱狂のうちに終了した。どっちも甲乙つけがたく、満足度は高かった。みなさん、本当にありがとうございました。