ドラディション・TATSUMI FUJINAMI 50th ANNIVERSARY THE NEVER GIVE UP PHASE-2 IN FUKUOKA
(2022年10月22日・土・アクロス福岡・観衆324人・超満員札止め)
イントロダクション
博多にドラディションがくるのは、ベイダーが亡くなる直前に来て以来。個人的には、藤波さんがWWE Hall of Fame入りした時以来になる。
その間、会場も博多スターレーンから、アクロス福岡に移り、藤波さんの50周年興行にプラス、アントニオ猪木さんの追悼という大会になった。
各地で開催されるゲストも豪華で、博多は前田日明さんが来場。
コロナ禍前にまさかのツーショットを二回も撮らせていただいた身としては、わざわざ記念グッズ購入してツーショットをお願いする理由がないので、撮影会は不参加。
下関→博多
個人的には母がデイサービスに行っている土曜が、一番観戦しやすい。
土曜日は治療のため早くから小倉入りしているため、試合開始まで時間がたっぷりある。
だから、駐車場も空き待ちできたし、新幹線にも無事乗車。
だが、それでも試合開始約1時間以上前には、博多についてしまった。
会場のアクロス福岡は天神の端にあるので、遅い昼飯をとって地下街経由で会場入り。
先週のNOAHは海沿いの国際センターだった。
だから、天神でプロレス観戦するのは、6月の東京女子以来。
ちなみに、今回のアクロス福岡にきたのは、コロナ禍前のOWE以来となるから、約3年ぶり。
一時間前にアクロス前につくと、既に行列ができていた。コロナ禍で一時は行列作るのも制限があったりしたが、少しずつ日常は戻り始めている。
開場前
列に並んで待つことしばし。列から自然に拍手が湧き起こる。目の前を前田日明が通り過ぎていった。
早めにきているといいことあるなあ。そして早くから列ができていたため、開場時間が30分早まった!
開場時間や開始時間が遅れるインディ時間は何度も体験しているが、早まったのははじめてかもしれない。
とはいえ、厳密にはロビーに通されただけで、先にグッズ販売をしてしまおう、という事のようだ。
それでもただ外で待つよりはマシ。今回はコンピュータチケットを、記念チケットに引き換えるサービスもやっていた。
こういうのは、いかにも記念大会らしくてテンションが上がる。
そして、かつて日本プロレスに押しかけ入門を果たした藤波少年の思い出の地、下関市体育館でドラディションが大会を開催するという。
体育館の試合ってゼロ年代の新日本以来じゃないか。
海峡メッセにメイン会場がうつり、下関自体にプロレスがこなくなって久しいのに、まさかドラディションがやってくるなんて!
思えば昨年の今頃は、体育館の隣の病院で、抗がん剤治療をスタートさせたばかり。
あの頃は、毎日体育館の屋根をみては、昔の想い出に浸っていたが、まさか再び下関市体育館でプロレスを見る日が来ようとは!
なんか生きてるといいことあるんだなあ、と思わずにはいられなかった。
オープニング
なんとソーシャルディスタンス仕様ながら、アクロスは満員に!
しかし、開場を早めてくれたのはいいが、試合開始時間になっても、試合が始まらない。
多分、ロビーの撮影会が長引いたからだろう。
第一試合:シングルマッチ15分一本勝負
三州ツバ吉 対 ○桜島なおき
(9分01秒 バックドロップ→片エビ固め)
関東の友人から度々聞かされてきた三州ツバ吉は、多分九州初試合。
富士山頂プロレスなどで、ちらほら名前を聞く選手だが、ようやく肉眼で試合が見られるのは、大変嬉しい。
桜島もかなり久々に試合をみるが、うまくハマれば面白い試合になりそうだ。
果たして試合は、両者共にグラウンドから入り、スタンドから打撃、大技は最後にもっと行くというクラシカルなスタイル。
ツバ吉としては、パワー差を考慮したら、もう少しグラウンドの攻防で、桜島にダメージを与えたいところだったと思う。
しかし、15分一本勝負という時間配分を考慮したら、やはり中盤からスタンドにいくのはやむを得ない。
九州プロレスには佐々木日田丸というUWFスタイルのオーソリティがいるため、ツバ吉の格闘スタイルが、それほど試合で優位に働かなかったのも運が悪かった。
最後はバックドロップ一発で桜島がクラシカル対決を締めて見せたが、非常に見応えのあるオープニングマッチだった。
第二試合:タッグマッチ20分一本勝負
ギアニー・ヴァレッタ&○倉島正行 対 ×一寸蒼天&野崎広大
(15分34秒 羽根折固め)
野崎のあとがなかなか育たなかった九州プロレス待望の新人が、一寸蒼天。
「一寸蒼天」とかいて、「いっすんそら」というらしい。
一方のギアニーは2018年にTAJIRIに見出され、全日本を主戦場にするマルタ共和国のプロレスラー。別名「マルタの力道山」。
ここに、無我三銃士の倉島が入ることで、どういう試合になるか?楽しみである。
試合は意外にもギアニーが無我スタイルのレスリングで勝負に出てスタートした。
地方大会なら圧倒的なパワーと体格差で、一寸を蹴散らしても良かったのだが、レジェンド・ドラゴンを意識してか?意外と器用なところをみせてきた。
無我三銃士のなかでは唯一、昔の色で戦っている倉島もこれに続く。まるで昔アクロスでみた無我の大会を思い出すような、オーソドックスなやりとりに、しばし見入ってしまった。
しかし、九州プロレス現チャンピオンの野崎がでてくると、やはり肉弾戦ということになる。
ここでギアを入れ替えたギアニーは、怪物性を発揮してわかりやすいプロレスを展開。
身長差はあるものの、パワーでは決して引けを取らない野崎は、ギアニーも倉島も吹き飛ばしていく。
そういえば、九州プロレス観なくなって随分経つけど、野崎は本当に立派になった。野崎や一寸らが、主役として回してくれるならば、また九州プロレスも観てみたい。
しかし、ギアニーは器用なだけでなく、実に周りがよくみえている選手だった。
一寸との連携に入ろうとした野崎を蹴散らし、場外に出すと、倉島が粘る一寸を仕留めて、シブいタッグマッチを終わらせた。
試合終了後、なおもつっかかる一寸に握手を求めた倉島。倉島にも手ごたえがあったのだろう。
第一試合、第二試合といかにもドラディションらしい、スピリットが感じられる試合だった。
第三試合:シングルマッチ15分一本勝負
△LEONA 対 △佐々木日田丸
(15分時間切れドロー)
Uの遺伝子をもつ日田丸と、ビリーライレージムに通った経験があるLEONA。
正直格闘スタイルのオーソリティである日田丸は結構強敵なだけに、LEONAも油断はできないだろう。
そもそもUスタイルだからと言って、普通のプロレスができないわけではなく、日田丸も所作に則った試合ができる選手。
実際、この試合でも序盤ははやるLEONAをいなしつつ、クラシカルなレスリングで、お客さんの目を引いたのは日田丸だったと思う。
そして、スタンドになると今度は鋭い蹴りと、「どうした、二代目?」という口撃により、グイグイとLEONAに圧をかけていく。
ここで、LEONAが怒りをむき出しにして、日田丸につっかかっていけば、面白い展開になったのだが、肝心なところでLEONAの「坊ちゃん感」が邪魔をする。
試合で見ている限り、LEONAは自ら藤波辰爾のコピーになろうとしているように見えた。
ただし、アントニオ猪木を通過してきた父と違い、LEONAは燃える闘魂の、スピリットの部分までは継承できていない。
だから、盛んに日田丸が火をつけようとしているのに、感情を面に出してこないのではないだろうか?
結局、打っても響かないLEONAに業を煮やした日田丸が関節技でタップアウトを迫る。
これを四の字に切り返すLEONAだったが、ヒールを決められ、またしてもピンチ。しかし、時間切れのゴングに救われた。
NHKのマッチョドラゴン披露にも一役買っていたというLEONA。父親に対するプロデュース能力は高いような気がする。
しかし、レスラーとして。自身のプロデュースとなると、なかなか俯瞰で見られていないように感じる。
果たしてプロレスラーLEONAは、どこへ向かおうとしているのだろうか?
セミファイナルタッグマッチ:45分一本勝負
○越中詩郎&長井満也 対 ×竹村豪氏&MAZADA
(15分10秒 ダイビングヒップアタック→片エビ固め)
今大会は無我三銃士が久々に結集。MAZADAはすっかり東京愚連隊のカラーがついてしまったが、もともとは無我のレスラーだった。
対する越中はドラゴンボンバーズ繋がりでもあるし、長井はドラディションの所属として、無我勢との対戦となる。
ドラゴンゆかりの6人ならではのマッチメイクではないだろうか?
しかし、無我から気づけば遠く離れたMAZADAと竹村は完全に現在進行形のバージョンで登場。
その上、序盤からMAZADAは、長井にステーキ屋ネタで弄ばれる。
だが、そういう「弄り」を上手く昇華していくのが、正田ではなくMAZADAのテクニック。
「(ステーキ屋は)休みですよ」と言いつつ、竹村と悪の連携で、越中&長井を翻弄。
あげく、竹村は「藤波さんみててください」といって、ドラゴンスリーパーを越中に決めるシーンまでみせた。
この中で相手チームの良さを引き出す役割は長井ということになるだろう。
もちろんやられるだけでなく、この日ゲストで来場していた前田日明ばりのニールキックや、キャプチュードを織り交ぜることも忘れていなかった。
それにしてもUWFからスタートした長井が、まさかこのように試合を作ることのできるプロレスラーに変貌を遂げることになろうとは、思いもしなかった。
勝機はMAZADAと竹村の同士討ちを誘った越中に対し、竹村が孤立。長井がブレンバスターで援護すると、最後は越中がコーナートップからのダイビング・ヒップ・アタックでとどめをさした。
これだけのスター選手がでながら、引くところはきっちり引いてセミファイナルの役割を果たしていた試合だった。
メインイベント:六人タッグマッチ60分一本勝負
藤波辰爾デビュー50周年記念試合 PART4
○藤波辰爾&AKIRA &金本浩ニ 対 藤原喜明 &×高岩竜一 &吉江豊
(10分50秒 ドラゴンスリーパー)
今大会のメインは新旧付き人チーム。AKIRAと金本はそれぞれドラゴンの付き人経験がある。
対する藤原組長は言うに及ばず。高岩も吉江も共に新日本から出てきた選手たち。
ファーストコンタクトは藤波と藤原。
この時期だからこそあえて新日本の原点である「闘い」が垣間見えた絡み。老いたりとはいえ、二人とも猪木さんから直接受けた薫陶を、本能レベルで体現する、まさに名人芸!
この中に入ると、金本クラスでも「若造」になってしまう。その尖がった金本が、組長にがっつり絡んでいくのは、思わずタイムスリップしたかのような不思議な気分になった。
そして高岩と金本が絡むと、今度は90年代の新日ジュニアの熱き闘いが蘇る。ここに大谷がいないのがもどかしいが、そんな現実を忘れさせてくれる瞬間でもあった。
AKIRAのムササビプレス、金本の顔面ウォッシュ、高岩のデスバレー、組長の頭突き・・・
名人芸のオンパレードを見るにつけ、つくづくプロレスは思い出の上に成り立っている特殊なスポーツであり、闘いであり、エンターテインメントなんだなあと思わずにはいられなかった。
そして、終盤AKIRAの延髄切りを受けた藤波が、高岩をコブラ葬。AKIRAと金本が相手チームをリング外にたたき出すと、ロープに振ってからのスリーパー→ドラゴンスリーパーで、ドラゴンの貫録勝利。
エンディング
試合後、敵陣と握手を交わす中、一人その輪に加わらなかった組長の背中が、非常に渋かった。
そして、前田日明が新日版キャプチュードにのって入場。猪木さんへの謝辞と藤波さんへの期待を込めてマイク。
前田日明登場→全選手記念撮影→猪木さんへテンカウント→猪木さんの肉声で「ダー!」→エンドロールV→ドラゴン握手会という流れで大会は締められた。
ひとりひとりに丁寧に握手するドラゴンに、みんなニコニコしている。なんて幸せそうな空間だろう。
後記
そもそも、人前ではあまり格好を崩さなかった格闘王が、藤波さんと握手した途端にこの笑顔をみせるのだから、ドラゴンマジック恐るべし!
本当にドラゴンは皆を幸せにしてくれる。本当にこれぞハッピーエンドだった!
12月は観戦予定がなかったけど、下関大会という目標もできた!年内はハッピーな形で締めることができそうだ。