がむしゃらプロレスイベント試合・創造館 小文字まつり(2018年5月20日土曜日)
イントロダクション
今年に入ってから、金・土に実家に戻るスケジュールにしているので、朝一で実家出て、荷物を自宅に積み下ろし。昨日より10度近く気温が低いにも関わらず、湿度のせいか、汗だくになり、ついでに着替えて小文字へ。
よく考えたら過去の小文字はクソ暑いか、大雨だったので、ジメジメしていても、条件的には過ごしやすいケースは初めてかもしれない。実際最後まで汗一つかかなかったし。本当に過ごしやすかった。
さて小文字祭りは今年で10回目。がむしゃらプロレスはその中で六年連続で参戦となった。毎年変わりやすい気候の中で、小さいながら地元のお祭りとして定着しているのも素晴らしい。
▽第1試合 タッグマッチ(30分1本勝負)
ダイナマイト九州&×力 雷汰vsTOSSHI&〇鉄生
4月に行われた試練の三番勝負、対久保希望戦において、一定の評価はもらった力雷汰だが、依然がけっぷちにいることには違いない。なぜかというと、まだ自分のことで精いっぱいでお客さんをどう楽しませるかという点においては、全然できていない。既に大型新人HIROYAに話題をさらわれている時点で、相当立場的に危ういというものがあると思うのだが、これをパワーにかえる必要もあるし、同時にこういう場で勉強しないといけない。
今の力に足りないものは大きく言うと2つある
①自分のことしかみえていない
②表現力の不足
まず入場からして、お客いじりという点ではほかの三人がそれぞれ工夫をこらしていたんだけど、この試合でも一人だけおとなしく入ってきた力。今回のイベントでもよしもとの芸人さんが「名前だけでも憶えてかえってください」というフレーズを繰り返していたけど、あれでは名前も覚えてはもらえないだろう。
②はマスクマンである以上、表情が見えないというのは言い訳にはならない。がむしゃらのマスクマンは師匠・阿蘇山を筆頭に皆、表現力豊かな覆面レスラーが多い。その中で、特徴が見えにくいマスクマンというのはすでに相当やばい。さらにいうなら、この日一番視線を独占していた障がい者プロレスFORCEの雛鳥仮面ピヨコマスクに比べても、あきらかに力は没個性すぎる。
それでなくても九州が出てくるとなんだかんだいって盛り上がるのだが、力が出てくるとお客さんの反応が悪くなる。赤煉瓦のように好意的にがむしゃらプロレスをみてくれる空間とは違って、こういうイベント試合では、レスラーが主導して自己主張していかないと自分が埋没してしまうだけなのだ。一見さんに対して、いかにして自分の存在を植え付けるか?それは対戦相手ではなく、お客さんとの勝負になってくる。そのお客との勝負をやっているのが、イベントステージもやっていたよしもとの芸人さんたちなのだ。
新人が少ないと「長い目」でみてもいいし、実際長い目で見ていてよかったと思う選手もいるので、力についても少しの進歩でも褒めたいところなんだが、いかんせん力の頑張りはメインのHIROYAにかき消されてしまった。
せっかく頑張っているのはわかるし、気持ちだけでも伝わるようになったのはいいことなんだけど、HIROYAのあとにも大型新人デビューが予定されている状況の中で、そうそう安穏とはしていられない。
カード的にはLCRと対決する上に、パートナーが九州という異色すぎる顔合わせだったので、やりようによっては爪痕も残せたと思う。だからこそこのカードの中で、試合後にだれも力のことを覚えていないというのではやはり困るのだ。こういう場では印象に残っていると試合後に記念撮影とかサインとかを求められることがあると思う。それがこの試合後、力に対してどれだけあっただろうか?
残念ながら所用でそこまで確かめられずに会場を後にしたのだけど・・・・
▽第2試合 障害者プロレスFORCE 提供試合(30分1本勝負)
×ナガノ・V・アキラ&公務院 孝三
VS 〇座頭市 徹&雛鳥仮面ピヨコマスク
FORCEは一度本大会を観に行きたいのだが、なかなか日程が合わず、観に行けずにいる。本当はドッグレッグスをみてみたいのだが、日本で二番目に古い障害者プロレス団体が福岡にある以上、いつか観に行かないといけなだろう。
個人的にはナガノの試合は何度もみているのだが、ほかの三人の試合ははじめて。しかし私含めて、とりこになったのが雛鳥仮面ピヨコマスク。いきなりナガノに「福岡銘菓の〇よこ」を渡し、配れという。対戦相手に言われるがままにひよ〇を会場に配るナガノに対して、まさかの追加をもってくるピヨコマスク。
「今から試合しないといけないんだよ!」といいつつナガノは会場に「ひ〇こ」全部配って試合開始。しかしこのピヨコマスク。単なる自由すぎるマスクマンかと思ったらそうではない。
グラウンドになるとナガノや幸三を圧倒するテクニックを披露。スタンドではドロップキックまで披露して観客のハートをわしづかみ!
実をいうとほかの三人も相当個性がたっているのだが、完全にピヨコに食われていた。唯一のマスクマンというのは、やり方次第では強みにもなるし、ハンディにもなる。でもピヨコマスクは完全に強みに変えていた。レスラーとしての表現力にプラスして、確かな実力をもっているピヨコマスク。たぶんSMITHあたりが見たら心の底で嫉妬したかもしれないくらい美味しいキャラクターだった。
FORCEがドッグレッグスみたいに「健常者対障害者」みたいなカードを組むことがあるのかどうかは定かではないが、もしあるならぜひそういう方向でもみてみたい。実際WWEなんかはああ見えて結構、そういうこともさらっとやってしまう。日本ではなかな難しいかもしれないけど、彼らがやっているのは、小人プロレスもそうなんだけど、「かわいそうな人たちがやっているプロレス」なんかじゃない。ひとりひとりの表現者として立派なプロレスをしている選手たちなのだ。
しかしある意味FORCEの強さの象徴でもあるナガノが座頭市にギブアップをとられたのは意外だった。確かに。セオリーとしてパワーではかなわないピヨコマスクと座頭市がグラウンドに活路を見出したのは、理にかなっている。
実は4人とも自分の得意なフィールドに敵を誘いこんで勝つという非常にオーソドックスなプロレスを心がけていた。それでいてお約束の氣功攻撃まであって、いわゆるお笑い路線(小人プロレスの中には必ずあった定番ネタなのだ)まできっちり網羅していたのはうれしかった。
この日のタッグを見てFORCEは私の中で「みておかねばならない団体」になった。今年中にはぜひとも観に行こうと画策している。いい試合だった!
▽第3試合 スペシャル6人タッグマッチ(30分1本勝負)
③×HIROYA&トゥルエノ・ゲレーロ&久保希望vsYASU&〇豪右衛門&阿蘇山
デビュー二戦目にして師匠・阿蘇山と対峙した新人選手って、ここ数年では私の記憶にはいない。しかもHIROYAにとってそれが試練に見えないというのも、既に想像を絶している事なのだ。並の新人なら、チョップ一発で戦意喪失してもおかしくないのに、思いきり阿蘇山の技を受け、(現時点での)思い切りで、返していくHIROYAはやはり只者ではない。体格だけでなく、阿蘇山の攻撃にも見劣りしないというのは実際それだけでも大したものなのである。
さすがのHIROYAでもデビュー戦の時のように、笑っていられる余裕はなかったみたいだが、それでも楽しそうに試合をしているのが伝わってきたし、実際、豪右衛門やYASUを前にしても全く怖気づいていない。あまりにも従来の新人からは想像しがたい規格外さには、しばしあっけにとられてしまった。
これはドン・タッカーが「今年のGAM1に出したい」と言っているのもうなずける話である。実際、これでHIROYAという選手の顔と名前は憶えられただろう。実をいうと試合前のよしもと芸人さんの時間で、芸人さんと絡む場面もあったのだが、その時の印象と試合の印象とのギャップでもHIROYAは得をしていたと思う。
覚えられる人というのは、実は何気にチャンスにも恵まれる。そう考えると上には届かず、下からは突き上げをくらって(すでに追い抜かれつつある)力の立場的に同情しないでもないのだけど、それでもやはり、こういう規格外の相手に真っ向勝負しても、自分の印象は残せない。
既にHIROYAはドリームチューバ―の即戦力としてカウントされている現状を考えると、力が泣こうがわめこうがこのままなら引き離されるのは時間の問題といっていいだろう。
普通ならデビュー二戦目の新人にフィニッシュを任せるという事は、試合を捨てたも同じことを意味する。ましてや相手はインタコンチチャンピオンの豪右衛門なのだ。しかし、この試合ドリームチューバ―が試合を捨てたという印象は私にはまったくなかった。
むしろHIROYAが何かやらかしてくれるのではという期待感すらあった。残念ながらgWo+阿蘇山の波状攻撃でそこまではいかなかったけど、そう遠くない将来に、HIROYAが勝ち名乗りを受ける絵面は容易に想像できる。それだけでも十分すごいことなのだ。
HIROYAもそうだったけど、この日は阿蘇山先生もかなりアグレッシブだった。正直親子ほどの差がある相手にも全く揺るがない存在感と迫力とパワー。こんな阿蘇山をみたのは久々だった。きっと本心から楽しかったんだろうな、というのは見ていて伝わってきた。
後記
今回は大物参戦とかいうものはなかったけど、バラエティにも富んでいたし、またこれはこれで面白かったと思う。個人的にはピヨコマスクにMVPをあげたいのだけど、まあ、そうでないならHIROYAだろうなあ。これはうかうかしていると上の先輩もいつとられてもおかしくないな・・・・今後が本当に楽しみで仕方ない。