[プロレス入場テーマ曲] プロレス的音楽徒然草SPEED TRAP(マイティ井上・全日時代のテーマ)

[プロレス入場テーマ曲]プロレス的音楽徒然草

プロレス的音楽徒然草SPEED TRAP(マイティ井上・全日時代のテーマ)

 1967年デビュー

今回は、日本のプロレス界で特に1970年代から1980年代にかけて活躍した名レスラー、マイティ井上さんの全日本時代のテーマ曲「SPEED TRAP」のご紹介です。

井上さんは高校を2年で中退した上で国際プロレスに入門しています。プロレスラーとしては1967年にデビューしました。

 卓越したテクニック

井上さんは、国際プロレスや全日本プロレスを舞台に、卓越したテクニックと献身的な姿勢で多くの後進を指導しています。

ちなみに、国際時代はアニマル浜口さんも入場テーマ曲にした「フリーライドサーファー」を使用していました。

 本人はあまり・・・

「SPEED TRAP」は非常に印象的で、キャラクターを際立たせる楽曲でしたが、井上選手自身がこの曲をあまり好んでいなかったという話は伝えられています。

井上選手は、入場テーマに対してこだわりがあったようで、自分のイメージやスタイルにマッチする曲を望んでいたとされます。

 日本人ではじめて

マイティ井上さんは、欧州トーナメント(西ドイツ・ハノーバー又はハノーファー)で、ちあきなおみさんの「四つのお願い」を入場テーマ曲に使用した事によって、日本人としては、初めて入場テーマ曲を使用したレスラーとなりました。

同トーナメントに参加していたレスラーが入場テーマ曲を使用していたので、井上さんがたまたま持参していたこの曲を使用したのでした。

 初の入場テーマ曲使用

この話を井上さんから聞いた東京12チャンネル(現:テレビ東京)『国際プロレスアワー』のディレクターが思いつき、1974年9月15日の後楽園ホール大会でスーパースター・ビリー・グラハムの入場時に「ジーザス・クライスト・スーパースター」(101ストリングスによる、インストゥルメンタル・カバー・バージョン)を流したのが、日本における選手入場時にテーマが流された最初のケースになります。

これは、番組構成上で時間が余る部分があったので入れたのが使用理由だったとも言われています。

 満足のいかない

さて、井上さんの話に戻しますと、本人としては満足のいかない楽曲だったということらしいです。

その結果、曲に対してあまり愛着が持てなかったようですね。

 元子夫人の仕業

プロレスラーにとって入場テーマは非常に重要な要素であり、自身のキャラクターや試合の雰囲気に大きな影響を与えるため、井上選手のように自分に合った音楽を求めるのは自然なことです。

井上さんは、トークショーで「この選曲は元子夫人の仕業」と語っていました。これは正直事実なのか、井上さんのリップサービスなのかは定かではありません。

と同時に「今聴くと悪くないですね」と肯定的な意見を仰っていたそうです。

 日本独自企画のサントラ

では、この「Speed Trap」という曲はどういう経緯で、もともとは何のために誰が作り上げたのか、掘り下げていきましょう。

「Speed Trap」は、もともとF1ドキュメンタリー映画『ポール・ポジション2』の日本独自企画サントラの中の二曲目に収録されています。

 鷺巣詩郎さん作曲

作曲は、後に新世紀エヴァンゲリオンなどの音楽で知られる鷺巣詩郎さんで、このアルバムは鷺巣詩郎 ウィズ・サムシン・スペシャル名義で作られています。

このアルバムには、八神純子さんの旦那さんで、イギリスの音楽プロデューサー、ジョン・スタンレーさんが参加していることから、後に二人が結成するBLENDの原点ともいえる作品になっています。

 フュージョン色強め

また、鷺巣さんが初期に関わっていたフュージョンバンド、T-SQUAREの安藤まさひろさんや伊東たけしさんも参加しており、フュージョン色が強めな作品になっています。

しかし、実は鷺巣さんが作られてこのアルバムに収録された楽曲は本編では使われていません。

 本編の音楽は・・・

本編の音楽は、グイド・デ・アンジェリス(Guido De Angelis)は、イタリアの作曲家であり、主に映画やテレビの音楽を手がけたことで知られています。

特に1970年代から1980年代にかけて、イタリアの映画音楽シーンで活躍したミュージシャンです。

 アクションやスリラーで

デ・アンジェリスは、弟のマリオ・デ・アンジェリス(Mario De Angelis)と共に「デ・アンジェリス兄弟」としても知られており、しばしば共同で作品を制作していました。

彼らの音楽は、ジャンルを問わず多様なスタイルで、特にアクション映画やスリラー映画において力強いサウンドが特徴的です。

 ダイナミックなトラック

また、エレキギターやシンセサイザーを駆使した楽曲が多く、当時の流行を反映したダイナミックなトラックを作成していました。

映画「ポールポジション2」のサウンドトラックには、彼の特徴的なエネルギッシュでリズミカルな楽曲が盛り込まれており、レースの緊張感やスピード感を引き立てています。

 本編で使われていないのに

デ・アンジェリス兄弟は、映画音楽だけでなく、テレビシリーズやドキュメンタリー、さらには多くの広告音楽なども手がけており、その豊かな経験と創造性により、イタリアの音楽シーンにおいて重要な存在となっています。

では、なぜ本編で使われていない作品がサウンドトラックとして発売されていたのでしょうか?

 映画音楽への関心

1970年代末から1980年代にかけて日本で発表された海外映画のサウンドトラックが、オリジナル音源ではなく日本独自版として発売された理由はいくつかあります。

まず、日本は映画や音楽に対する独特の需要と嗜好を持っており、特に映画音楽への関心が高まりました。

 別の楽曲やアレンジ

そのため、映画の公開に合わせてサウンドトラックが発売されることが求められ、国内市場向けに調整された版が製作されることがありました。

こうして作られた日本独自版では、オリジナルのサウンドトラックに新たなアレンジが加えられたり、別の楽曲が追加されたりすることがありました。

 放送に適した形で

これにより、日本のリスナーにより親しみやすい音楽体験を提供することができました。

更に日本では映画サウンドトラックがテレビやラジオでよく流されていたため、番組に合わせて音楽が選ばれたり、リミックスされたりすることがあったため、放送に適した形でサウンドトラックを提供する必要が生じたのでした。

 著作権やライセンス

そして最も重要と思われる要因は、当時多くの海外映画の音楽は著作権の問題やライセンス契約によって複雑な状況にありました。

日本のレコード会社や制作会社は、特定の権利を取得して独自にリリースすることが多く、オリジナル版の音楽の使用に制約があったため、日本独自の編集版を制作するという流れになっていたのです。

 映画を見ていない人にも

更に日本の音楽制作において、サウンドトラックは映画上映時に特に盛り上がりを見せる一方で、実際に映画を観ていない人々にも楽しんでもらえるような形の作品作りが進められました。

結果的に日本独自の視点を加えた音楽が提供されることとなったのです。

 F1ドキュメンタリー

以上のような要因が組み合わさり、1970年代末から1980年代にかけて日本独自版のサウンドトラックが多くリリースされたわけです。

「ポールポジション」の第一作目は、1978年公開され、大ヒットを記録しました。

その続編である「ポールポジション2」は、新しい視点で製作されたF1ドキュメンタリー作品となっています。

 当時のハプニング

映画「ポールポジション2」では、あらゆるモーター・スポーツを克明に紹介していきます。

そして1979年、カナダGPの途中で、突然引退してその場を去って行った今世紀最大のスーパースター、ニキ・ラウダの今だに理由が明らかにされていない当時のハプニングに迫っています。

 栄光とロマンを求め

更には78年、イタリアGPでのロニー・ピーターソンの凄絶な事故死や、レーサーというよりは映画スターとして知られるポール・ニューマンの、79年ル・マン24時間レースでの2位獲得の模様など、カメラは、78~79年のF1GPの激烈なシーンを捉えています。

レースとは何か?栄光を求め、ロマンを追い、そして常に死の恐怖と戦います。

 派手ではないが

何故こうまで男を夢中にさせるのか? 作品中に登場する、走ることに一生を捧げるグランプリのヒーローたちは、ある意味でプロレスラーとも重なる部分かあるのかもしれません。

「SPEED TRAP」は決して疾走感のある曲ではありませんが、上手さ・強さ・テクニック・スピード、全てを兼ね備えたマイティ井上さんにはピッタリの曲だったと私は思っています。

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