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[イベント備忘録] 原田とシン・ゴジラと④(終)

2017/04/11

このイベント備忘録の最後は「経営者・庵野秀明」を語ってみたいと思う。私はこれでも一応地方の経営大学の経営学科で曲がりなりにも4年間経営の勉強をしてきたこともあるし、一応社会人として様々な経営者を見てきた点からいうと、庵野秀明はとても優秀な経営者であると断言したい。

詳しくは「庵野秀明監督が初めて語る経営者としての10年」(週刊ダイヤモンド)のインタビュー記事をお読みいただきたいのだが、庵野秀明が経営者としてもすぐれた資質の持ち主であることがうかがえる記事だと私は思う。

驚くべきことに庵野秀明が率いる「スタジオカラー」は無借金経営で作品を送り続けている。庵野自身は「エヴァというタイトルのおかげ」というが、これは全くその通りだろう。ガイナックス時代の庵野監督の作品に「トップをねらえ!」という作品があるが、経営者・庵野秀明は「トップをねらわない」のだそうだ。これは大変興味深い。トップをとれなくても負けないようにする。常に二番手にいる位置で何年か繰り返すことで自然と一番になれるという庵野の経営哲学はなかなか「したたか」だなと私は思う。

そのうえで、余裕のあるうちにファンたスタッフに還元するようにしているため、ファンからの信頼も高いし、安定した会社なんで優秀なスタッフが入っているという仕組みなのだ。

面白いことにここまで経営のわかっている庵野秀明を、前所属会社のガイナックスは単なるクリエイターとしか見ていなかったようなのである。噂では「庵野は経営者には向かない」とまで思っていたらしい。しかし実際、放蕩経営?のはてに歴史あるガイナックスからは多くのスタッフが離れ、初期立ち上げメンバーも残っていない。エヴァの版権がカラーに譲渡されたのもガイナックス側の事情であるらしい。そう考えるとガイナックスの事情をよく知るスタジオカラーの中枢社員たちが、失敗した轍を踏まないように考えているのはある種納得がいくことでもあるのだ。

エヴァというタイトルがスタジオカラーを潤沢にさせ、シン・ゴジラ(東宝のやとわれ監督ではあったが)のヒットでより盤石なものになった。それがわかっているからこそ、いくら病んでも、いくら製作が遅れても、庵野秀明がエヴァの制作から最終的に逃げないでいるのは、経営者として仕事に責任を持って取り組んでいるということだと私は思う。製作だけでなく、宣伝や版権管理まで行うことで、ファンサービスまで自由にでき、ファンとの関係まできちんとコントロールしている。それを庵野は「責任」という形で表現している。

結局、作品がうまくいかなかった場合、責任をとるのが監督であり、会社がうまくいかなければ責任を追うのは社長である。そういう意味で立場的に監督と社長をとても似ていると庵野は表現している。クリエイターである自分と経営者としての自分を俯瞰でみられる冷静さが、経営者・庵野秀明の傑出した部分ではないかと私は思う。自らが病むところまで追い込んでしまうのは行き過ぎだとしても、こういう考え方はなかなかできるものではない。

個人的には、今でも会社がうまくいかないことを現場や社員のせいにしても士気は上がらないと思っているのだが、なぜか私が出会った経営者は全て自分で責任を取るタイプの人間がいなかった。皆、現場を適当にいじった結果、余計に物事を悪化させているケースが多かった。そうした場合、真っ先に病むのは経営者ではなく、現場の人間であり、私もそのひとりだった。そう考えると、一概に健全とは言い難いけれど、庵野秀明の真摯な姿勢は、もっと評価されてもいいのだはないだろうか?









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