[アニソン] アニメ的音楽徒然草 ブルー・レイン
2017/02/22
今回は1983年から84年にかけて放送された機甲創世記モスピーダのエンディング「ブルー・レイン」をご紹介します。この曲は80年代アニメソングの中でも屈指の名曲であると私は思っています。OPの「失われた夢を求めて」同様、作詞:売野 雅勇/作曲:タケカワ ユキヒデ/編曲:久石 譲という超豪華トリオに、グループサウンズ「シャープ・ホークス」の元メンバー小山真佐夫(現・アンディ小山)さんことアンディさんのヴォーカルが大人の雰囲気を漂わせています。
ブルー・レインに関しては、アンディさんと松本美音(現・ミネハハ)さんという女性ヴォーカルとのデュエットになっています。のちに松本美音さんのソロバージョンのブルー・レインも登場するのですが、これは劇中で元軍人のイエローを松本さんが演じたためでもあります。このイエローは、敵であるインビットや街の人々の軍人狩りから身を守るため、女装して素性を隠し、女性の声を発する訓練を積んだ後、歌手としてデビューし、コンサートを開いて生計を立てていたという設定があるキャラで、男性声は機動戦士ガンダムのブライトさんでおなじみの故・鈴置洋考さんが担当されています。
最終回で、イエローは素性を明かして「失われた夢を求めて」を歌うのですが、この歌がアンディさんの歌声なんで、事実上三人分の声を使い分けるというなんともいえないキャラになっています。このイエローの設定は一歩間違うとギャグになりかねないものですが、キャラクターデザインを担当した天野嘉孝さんの手によって、実に魅力的な青年に描かれたため、当時は特に女性ファンの人気が高く、男性であるにもかかわらず、アニメ雑誌「アニメディア」の女性キャラクター人気投票で上位に食い込んだことがあるという変わった経歴もあるキャラです。
このモスピーダ放送時はまだビデオをもっておらず、リアルタイムで放送をみておりました。当時20歳で大学に通うため広島に住んでいたのですが、住民票を下関に残したままにしていました。ところが第15話の放送日が1月15日・・・つまり当時の成人の日とバッティングしたのです。84年時は日曜に祭日が重なっても月曜が休みではなかったので、成人式にでるためには日帰りを選択せねばなりませんでした。
しかも下関で受信可能なテレビ西日本は全国放送から12日遅れの放送で、見逃したとしても学校がありますから。下関に残って放送を見るわけにもいきません。こうした理由からあっさり成人式を蹴って、当日はモスピーダを見てました。これに関しては今も一ミリだって悔いていません。交通費使って日帰りで下関に帰るのと、もしかしたら二度とみられないかもしれないモスピーダを天秤にかけたらそりゃ成人式なんかよりアニメの方が百倍、も千倍も大事です。
さて、この楽曲を手掛けたタケカワユキヒデさんは漫画好きとして当時から有名で、奥さんの実家が所有している別荘に漫画専用の書庫を構え、7500冊以上をストックし、週に約7冊の漫画雑誌を読破するほどで、その収集歴はなんと30年以上!少年漫画・少女漫画を問わず造詣が深いことから、趣味の範疇を超えて漫画評論家としての側面も持っています。当時、第一線で活動するクリエーターが積極的にアニメに関わることはまだ珍しかった時代にタケカワさんのような才能あふれる方がこのような名曲を残してくれたことを、今でも私は感謝しています。
ちなみにモスピーダの音楽を担当した久石譲さんは、当然あのジブリ音楽で有名な久石さんなんですが、当時は主にアレンジャー(チャゲ&飛鳥など)としてのお仕事やアニメのBGMを担当されていることが多くありました。当時の久石さんの音は生音と、電子音をうまく織り交ぜたちょっとくせのある曲が多く、一度聞くと久石さんだなとわかるくらい特徴的でした。こうしたアニソンの仕事がたまたまナウシカのアニメ化で宮崎駿さんとタッグを組むことになっていったのですから、世の中どう転ぶかわからないものですね。