プロレス的音楽徒然草 The Red Spectacles
紅い眼鏡の主題曲
今回は新日本プロレスに来襲したソビエトレッドブル軍団のテーマ曲である「The Red Spectacles」のご紹介です。この曲はもともと押井守監督の初実写監督映画作品である「紅い眼鏡」の主題曲でした。後に押井さんがケルベロス・サーガと呼ばれる作品群を作り始めるのですが、その第1作に当たる作品です。
もともと「紅い眼鏡」は、声優の千葉繁さんのプロモーション・ビデオを作るという話で16mmフィルムで撮影する500万円規模の作品として1986年1月に企画されました。しかし、徐々に話が大きくなり、35mmフィルム撮影の映画製作にまで膨らんでしまいました。
押井さんとの名タッグ
千葉さんは押井監督のアニメ「うる星やつら」の人気キャラクター「メガネ」を演じており、「紅い眼鏡」に登場するプロテクトギアも、元を正せば「うる星やつら」に登場するメガネのパワードスーツが起源です。
音楽を担当した川井憲次さんは、うる星やつらでも音響監督を担当した斯波重治氏が押井監督に引き合わせました。以降、宮崎駿監督と久石譲さんのように、押井さんとの名タッグとして、押井ワールドに欠かせない楽曲を数多く提供していきます。
レッドブル軍団のテーマ
「The Red Spectacles」は、1989年から新日本プロレスに参戦したサルマン・ハシミコフを始めとするソビエトレッドブル軍団のテーマ曲として、プロレスファンにも広く知られていますが、1998年から総合格闘技イベントPRIDEに参戦したウクライナの格闘家イゴール・ボブチャンチンの入場曲にも採用され、更に知名度を高めました。
「紅い眼鏡」は、元がプロモーション作品ということで、映画としてはあるまじき?低予算で作られたため、現場は苛烈を極めたそうです。人材は学生スタッフを使い、廃材や不用品を徹底的に活用したことでも知られ、アニメ誌に不要になった眼鏡を一般から見急募するなど、アニメマスコミやアニメファンも全面協力しました。
北国のイメージ
さて、私はプロレス会場で、ソビエトレッドブル軍団を何回も生で見てますし、紅い眼鏡もビデオで何回も見てますが、近年の押井作品と比較してもかなり難解な映画だと思っています。
この「紅い眼鏡」が完成した時、宮崎駿監督と高畑勲監督にも見てもらい感想を求めたそうですが、お二人とも絶句していらしたらしいですね。無理もありません。
散々書いてきたように「紅い眼鏡」は低予算作品であり、海外ロケなども行われていません。むしろロシアやソビエトとは縁遠い位置にある作品です。しかしながら今「The Red Spectacles」を聞くと、やはり真っ先に浮かぶのは北国のイメージです。
親和性の高さ
まるでレッドブル軍団のために書き起こされた曲であるかのようにさえ感じられます。私がプロレスファンでもあるからかもしれませんが、「紅い眼鏡」を何回も見ている私でさえそう感じるくらい「The Red Spectacles」に、ソビエトやロシアとの親和性があったというのは驚くべきことです。
ソビエトレッドブル軍団が来日した時分は、川井憲次さんの他の楽曲もまたプロレス入場テーマとして使われていました。そうした流れの中で「The Red Spectacles」が選ばれた縁というのは奇跡といってもよいのではないか、と私は思うのです。
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