プロレススーパースター本列伝 キラーカーン自伝
アンドレの脚を折った男
今回からプロレス読書感想文もかいてみようと思います。第一回目は、蒙古の怪人の異名を持ち、アンドレの脚を折った男として全米にその名が轟かせた「キラーカーン自伝」をとりあげます。本の表記はカーンですが、正しくは「キラー・カン」なんだそうですので、それに則ってこの後の表記は「カン」さんで通します。
当事者視点
いや、何が面白いってプロレスラーが出した本は当事者視点からみた真実が書かれていることが多く、この「キラーカーン自伝」もその例にもれないのですが、年数が経過した分、やや俯瞰でかたられているのが興味深いのです。
やはりファン的に知りたいのは、日プロから新日本、ジャパンに至るまでの人間関係。この部分は俯瞰でみていたとはいいえ、当事者であるわけだから、感情が入らないはずがないわけです。で、やはり興味深いのは、その「感情」の部分。
辛辣な描写
当然カンさんが好意的に思う人には優しく、そうでない人には辛辣な描写になるわけです、このあたりは既存のプロレス本と同じです。
ですから、辛辣な描写に関しては、かなり面白いので、本をよんでいただくとして、よんでいて私が個人的に気になった点をあげてみたいと思います。
気になったポイント
①日プロ時代にカンさんが巻きこまれたグレート小鹿さんと、初代上田馬之助さんとのいざこざとは?
②意外と評価が高いハルク・ホーガン
③新日に入っていなかったら・・・・
①に関しては、本に書かれている内容から察するにプライベートな問題で、なおかつカンさんが当事者であるにも関わらず言及を避けていることから、小鹿さんにも上田さんにも配慮されたのではないか?と考えられます。ましてや一方の当事者である上田さんが鬼籍に入られた現在、小鹿さんサイドから一方的に語るのも不公平ですし、それをよしとしなかったのでしょう、と私は推察しております。
一流のプロレスラーとは?
②についてはカンさん自身、プロレスラー、ホーガンの評価を「普通」と評価しているものの、世間一般で言われている「でくの坊」とは違うと明言。
もっとも「一流のプロレスラーとは客を入れられること」というカンさんの理論はある種正解でもあります。日本の場合、えてしてプロレスラーの価値は「強さ」を基準に考えられがちですが、海外ではカンさんの考え方が普通でしょう。
馬場さんには好意的
とはいうものの、猪木さんはレスラーとしては尊敬するものの、アントンハイセル等の事業に関してはいろいろ複雑な思いがあるようで、一方で同郷の先輩・ジャイアント馬場さんのに関しては比較的好意的な描写が目立ちます。ここで③の部分に話は移ります。
ちなみに全日出身者の書いた本(主にカブキさん^^)を読むと、これが真逆になっているのですから興味深いところです。
距離が近すぎると
要は猪木さんにしろ馬場さんにしろ、常識の範囲では測れないスーパースターだったわけですから、距離が近すぎるといいところばかり見えるとは限らないわけですよね。
だからカンさんが全日のレスラーとして自伝を書いていたら、おそらく馬場さんがここまで好意的な先輩として描かれることはなかったでしょうね。
両方がみえるから
むしろ、良い面、悪い面の両方が見えるからこそ、あれほどのスター選手になったともいえるでしょうし、その魅力にひかれて多くの観客が試合を見に来たともいえるので、馬場・猪木がカンさんのいう「一流のプロレスラー」であったことは疑いの余地はないと思います。
それにしてもジャパン分裂時の長州との確執はいまだに解消されていないんですねえ。
長州との確執
まあ、長州は懲りずにWJでも同じようなことをやらかして、それまで仲が良かった弟子や先輩もみな離れていきましたから、ある意味仕方ないともいえます。
ただ、鉄の結束を誇った(昭和)維新軍は、もう二度とみられないんだと思うとやはり寂しいなあと私は思いますね。