MY WAY RANMAデビュー22周年記念興行 A Mi Manera
(2022年5月8日・日・ピヴォーレ福岡)
はじめに
この観戦記書いてる時点では、公式の試合結果がUPされておらず、現場で見聞きしたタイムとフィニッシュを記載しました。間違いはあるかとは思います。
後ほど正式な発表があればさしかえます。
イントロダクション
MY WAYが旗揚げしたのが、2021年5月。その時分私は悪性リンパ腫の痛みが出始めたら頃で、結局そこから治療を経て体力を7割くらいまで回復させるのに1年かかってしまった。
その間、MY WAYは団体としても急成長し、東京進出も果たし、今や九州を代表するプロ団体になった。
パッケージとしてのMY WAYはみたことはないものの、他団体参戦時の所属選手たちの試合はいくつか拝見してきた。
もちろん素晴らしい試合もあったし、課題に感じた部分も見受けられた。
だから、今回も知り合いだから、という忖度は捨てて、新日本などと同様にMY WAYも観戦していこうと思う。
会場のピヴォーレ福岡はもともと3月にDDTが進出する予定だったが、コロナ禍で大会が中止になり、MY WAYが先陣を切る形になった会場。
初めていく場所だが、前もって他に行く予定を組まないでいたので、14時に実家を出て、15時前に北九州入り。
そこから新幹線→在来線と乗り継いでJR箱崎駅から徒歩10分。結構な距離を歩いた住宅街の一角にピヴォーレ福岡はあった。
オープニング
列に並んで待つ事しばし。検温と消毒すませて12分遅れで会場入り。
中に入ると、倉庫を改造した室内コートの中に、リングが組み立てられており、観客はみちのくスタイルで、地べた座り。
コロナ禍でしばらく味わえていなかった、ほぼ密状態ではあるが、なんか懐かしい。
全選手入場式のあとに、RANMAトークショーという不思議な構成。よくよく考えたら第一試合のためだったわけである。
RANMAが両親に「スペイン語留学する」と言ってメキシコに渡り、ルチャばっかりしていた話や、今回のメインにいたるまでの流れを説明してくれたので、初見の人間には助かった。
ファーストバトル・ドリームバトル20分一本勝負
×スカルバスター対○ジャック・ザ・タイガー
(10分51秒 横入り式エビ固め)
MY WAY東京大会でヴェールを脱いだジャック・ザ・タイガー。
対するスカルバスターは、多分間違いなければプロミネンスの旗揚げ戦に登場した怪奇派選手。
世が世ならI.W.A.JAPANにいても不思議はない感じで、やたらと会場内を徘徊している。
RANMAのトークショーで初代タイガーの話になり、会場にも自分と同年代くらいの方々が手をあげていたが、ジャック・ザ・タイガーのコピーぶりはなかなかなもので、やはり天才は天才を模倣できるのだな、と内心舌を巻いた。
ただ、それだけできる選手だから敢えていうのだけど、初代タイガーのコピーをするなら、やはり格闘技の緊張感は欲しいところである。
具体的にはタイガーステップをやるわりに多彩な蹴り技が少なかったし、どうしてもベースにルチャがあるせいか、ルチャ成分が多めになってしまう。
佐山さんが4代目を育てるにあたり、まず格闘技を覚えさせたのは有名な話。つまり、つま先から指先までピーンと張り詰めた緊張感をまとわないと、タイガーの魂まではコピーしたとはいえまい。
その類稀な資質があれば、今からでも十分緊張感のあるスタイルは身につけられるだろう。
逆に言えば、ジャック・ザ・タイガーは未完成な魅力があるともいえるわけで、伸び代が多い分今後に期待できるのは間違いないと思う。
セカンドバトル20分一本勝負
×HIRAMASA対○エル・ブレイブ
(9分16秒フライングボディアタック→片エビ固め)
当初Xを交えた3WAYという事で組まれたカードが、結局Xの欠場により、HIRAMASA対ブレイブのシングルマッチに変更されたらしい。
HIRAMASAはもともと福岡の草プロレスFNWにいた選手で、実は随分前に藤崎の柔道場で観戦している。試合を見るのはそれ以来。
他方、ブレイブの中の人も素人時代から試合をみているが、ぶっちゃけブレイブになるまでは「うーん…」という感じの選手だった。
そういう「うーん…」という期間が長すぎたため、未だについついブレイブの試合は懐疑的に見てしまう自分がいる。
先輩に混じるとボロがでにくいブレイブが、プロの先輩としてHIRAMASAを引っ張る試合ができるのかどうか?
ところがこれが予想に反して、ブレイブはよくやっていた。
序盤のグラウンドで圧倒しつつ、うまい具合にHIRAMASAの見せ場も作り、最後は自分のフィニッシュで決めるというある種お手本のような試合運びをみせてくれた。
やっぱり人間スピードの差こそあれど、皆成長するもんなんだなあ。妙に感心してしまった。
この試合で課題になるのは、HIRAMASAが序盤のグラウンドワークで、ブレイブの攻めをただ耐えているだけだったように見えたこと。
アマチュアならそれでもいいけど、プロを名乗るなら、相手が攻め手を緩めるのを待つだけでなく、自らもう少し切り返しの技術をみせて、窮地を脱してほしかった。
いつかHIRAMASAもブレイブの立ち位置にきて試合をする日が来るだろう。その時には今日のブレイブくらいの試合運びはできるようになっていてほしい。
サードバトル20分一本勝負
○TOSSHI &悪童 陴威窠斗(ビースト)対×エル・ファルコ &ドラゴン・ユウキ
(14分14秒 十字架固め)
入場式から気になっていたのだが、久々にみたTOSSHIの肉体は、がむしゃら時代よりかなり分厚くなっていた。
やはり一目で違いがわかるのは大事。単に環境を変えただけで、人はそう大きくは変われない。あれならばプロの肉体として申し分ないだろう。
試合は、主にTOSSHIとファルコ 、ビーストとユウキという絡みで進んでいった。
身体をデカくしたらどうしてもスピードは落ちるものだが、TOSSHIのスピードは今のところ昔と変わっていなかった。
一方、ヘビー級のユウキに対して当たり負けしなくなっていたビーストにも、確かな成長を感じた。
ただチームとしてみた場合、リーダーがはっきりしているユウキ組に対して、ビースト組は対等な人間同士が組んでいるようにみえた。
どちらがいいかはケースバイケースだが、この試合の場合、司令塔として機能していたのは、ユウキ組だった。
ファルコ という選手は、自分の立ち位置を瞬時に把握して、その場に応じた仕事ができる。
MY WAYの表の要がジャックやユーセーなら、裏の要はファルコだと私は思っている。
試合は、ユウキがビーストを寸断し、TOSSHIを孤立させた後、ファルコがとどめを刺そうとしたところをTOSSHIがくるっと丸めこんで逆転勝利!
最後は惜しかったが、ある意味、この試合が大会の要になっていたような試合だったように思う。
セミファイナル30分一本勝負
○ヴァンヴェール・ジャック対ユーセー☆エストレージャ
(15分9秒トラロック→体固め)
休憩あけのセミに組まれたのは、もはや九州の名勝負数え歌と言っていいジャック対ユーセーのシングルマッチ!
幸運なことに、私はこの名勝負数え歌を、レアルで一回、華☆激で一回、そして今回MY WAYで一回の計3回観戦できている。
本当に幸運なことだと思う。
ジャック対ユーセーには、タイガー縛りもないし、相手が相手だけに、思いっきりルチャができるのは、かなり当人同士としても嬉しかったのだろう。
その喜びが全身から弾け出さんばかりの試合になっていた。
これは確かに試合後ジャックが言ったように「気持ちと気持ちがぶつかり合った、世界中誰にも真似できない」試合になっていたと私も思う。
とにかく場外戦にしろ、空中戦にしろ、信頼し合った二人の全力ファイトは見ていて清々しい気持ちになれる。
ともすればドロドロしがちなプロレスのライバル抗争において、ここまで晴れやかな気分で観戦できるカードは、世界中探してもジャック対ユーセー以外に見当たらないだろう。
ただ、これだけ天賦の才に溢れた二人だからこそ、期待を込めて言っておきたい。
もし可能ならば「好き」以外の感情をぶつけてみてほしい。
例えば「悔しい」とか「負けたくない」とかいう感情でもいい。あまりに二人の試合が清々しすぎて、逆に見る側は「濁り」をもとめてしまうのだ。
プロレスファンは直に戦ったりしない分、欲望は膨らむ一方だが、これは性みたいなものである。どうかご容赦願いたい。その上で…
いくらプロレスが「結果だけではない」とはいえ、形の上ではユーセーはシングル戦では、明らかにジャックに対して分が悪い。
私が見ている範囲でのジャック対ユーセーは、ジャックの全勝であり、全てがフィニッシャーのトラロックでユーセーが沈められて終わっている。
それだけジャックのトラロックがすごいのは、十分理解できるのだが、ライバルの闘いは、実力が拮抗してこそ面白い。
実際実力は拮抗しているのだが、強いて言えばユーセーにはジャックのトラロックのような代名詞的必殺技が今のところない。スタイルズクラッシュは出すのだが、決め技にはなっていないのだ。
別に危険技や飛び技でなくてもいい。「これは!」という技をユーセーには是非習得してもらいたいのだ。
ユーセーがトラロックに勝るとも劣らないフィニッシャーを身につけて、ジャックにシングルで勝利した時、二人の闘いは新たなるフェーズに突入するだろう。
その日がくるのを楽しみにして待ちたいと思う。
メインイベント時間無制限一本勝負
○RANMA&政宗&ビリーケン・キッド対ヴァンヴェール・ネグロ&×聖氣&ディック東郷(22分23秒カバージョ)
MY WAYの、プロレスの未来を見せてくれたセミファイナルに続いては、RANMAの22年がギュッと濃縮された6人タッグ。
本番メキシコのルチャリブレは6人タッグが花形なんで、メキシコでルチャドールになったRANMAにとってはこれ以上ないカード。
組んでる選手も豪華なら対戦相手にディック東郷がいるシチュエーションもありえないくらい豪華!
その豪華なルード軍は東郷が合図するまでもなく、いきなりリンピオ軍に襲いかかる。
そのまま6人が6人とも場外戦になだれ込む。この大会はやたら場外戦が多く、立ち上がっては逃げ惑うのだが、そのたびに、親切なお客さんに私の荷物を拾っていただいた。
先週のシンニチイズムといい、今週のMY WAYといい、人の情けに助けられる事が続き、感謝以外ない。本当にありがたい話である。
ありがたいといえば、先週福岡ドームの三塁側スタンドから豆粒のように見えていたディック東郷が、自分の目の前という至近距離で場外戦を繰り広げていたのは、何とも不思議な気分だった。
これもありがたかったことの一つである。
選手としての東郷は、佇まいこそ同じだが、スポイラーズチョーカーもなく、反則三昧の要所要所にテクニックを織り交ぜてくる。
この憎たらしいまでの職人ぶりこそ、ディック東郷の本来の姿の一つであり、HOUSE OF TORTUREでみせる介入要員としての姿は、ほんの一部でしかないのだ。
このように、どうしても目で追いかけてしまうのが、RANMAとディック東郷になりがちになってしまった。
とはいえ、ネグロも聖氣も「埋没してなるものか!」という気概は感じられた。それは一番の収穫だったと言っていい。
やはりMY WAYはホームであり、自らがボスである以上、組んでいるとはいえ東郷もまたライバルである。
ネグロや聖氣が、そこに負けまいとしていたのは、プロレスラーとしては当然のことである。
リンピオ軍も指を咥えて黙ってはいない。主役もやれば、名脇役にもなれる政宗とビリーは、うまくRANMAをたてながら、少しずつ自分たちのペースを取り戻していた。
こういう高次元のレベルになると、やはりルード軍は東郷以外にチャンスメーカーがいない。そこはやはりキャリアのなせるワザだし、これからネグロや聖氣が目指すべき道でもある。
最後にカバージョで聖氣からRANMAがギブアップを奪い、乱戦に終止符を打った。
試合後マイクを握ったRANMAは感謝の意を述べたあと、ネグロを呼び寄せた。「今日の大会、表のテーマは俺の22周年だけど、裏テーマはネグロの10周年なんだよ」というと、ビリーと政宗が、MY WAY全員がメッセージを書いたメキシコ国旗を広げてみせた。
「こんなのズルいですよ」といいながら、ネグロはRANMAと抱き合い、座礼した後「絶対たおしてやるかな!」と最後は中指を突き立てた。
これもまたネグロ流ということになるのだろう。
最後はスポンサーをリングにあげての記念撮影。ここでもルード軍は我流を貫き、リングには上がらなかった。
後記
大会終了後、不慣れな帰り道を考慮して、早めに出たら、同じ病気を経験しているFさんと遭遇し、そのまま駅に向かった。
しかし、話が盛り上がりすぎて最寄駅の箱崎を通り過ぎて、一つ先の吉塚駅についてしまった!
まあ、でも帰りは無事新幹線にも乗れたし、22時過ぎには実家に戻ることができた。
色々思い返してみると、楽しい大会だった。生きているといい事があるもんだな。つくづくそれが実感できた一日になった。
みなさん、本当にありがとうございました!