Judgement2018~DDT旗揚げ21周年記念大会~(2018年3月25日東京・両国国技館)
【観衆】5796人(超満員)
新日本プロレスのドーム大会などは基本アンダーカードなしの中継になっているが、AbemaTVのDDT中継はなんとアンダーカードも含めた全試合を完全生放送。しかも無料!
自宅にテレビがなくてもPCやスマホで楽しめるとあっては、これを見逃す手はないだろう。確かに会場に行くメリットはたくさんあるのだけど、両国クラスになるとぶっちゃけモニターで画像を見ていることの方が多いのだから、テレビ中継でもいいだろう。両国大会があるたびに上京できるわけではない地方民にとっては、本当にいい時代になったものだ。
昔なら会場に行かない観戦を生と同様のカウントはしたくなかったのだが、こうしたネット配信やPPVといった文化が根付いてきたら、もはやその区分けも意味をなさないだろう。全試合が見られるという意味でなら、この大会は観戦記を描くに値すると判断した。
個人的な見どころは武藤敬司同様、しばらく見ることができないグレート・ムタの降臨と、地方ではめったにみられない顔ぶれの試合が見られる点。個人的には5月の博多大会が行けそうにないので、その分楽しもうと思ったというのもある。例年の両国大会にしてはやや見どころが弱いかなとは思いつつも、DDTらしさが味わえたら、それでいいかなと思っていた。
▼第一アンダーマッチ 15分一本勝負
松永智充&星誕期&○マッド・ポーリー&チェリー&伊橋剛太 vs 渡瀬瑞基&レッカ&下村大樹&島谷常寛●&中野貴人
(7分26秒 片エビ固め※ポーリーバスター)
アンダーカードでいきなり10人タッグが組めるというのも今のDDTの充実ぶりを示している。今をときめくダムネーションの主力でもあるマッド・ポーリーをおしげもなくこの位置で使えるというのは正直驚くというほかない。
実況でもいっていたけど、新世代対旧世代の10人タッグという点では非常に興味深かった。長州に引退勧告を受けて今がある意味「旬」な伊橋を狙った新世代だが、やはり百戦錬磨のベテラン軍が、やすやすローンバトルを許すはずもない。特にチェリーの動きは、抜群によくてこの中で存在感をいかんなく発揮していた。
一方DNA軍が渡瀬が一歩リードしている感じ。一時期上で使われていた経験からか自信みたいなものを試合から感じる。しかし、やはり全メンバーをリードするには経験値が足らなすぎる。樋口は特別だったかもしれないが、樋口の抜けた穴を埋められるくらいの傑出した才能がでてこないと、DNAも烏合の衆となってしまう。結局、若さが経験値を凌駕できなかったという点では、新世代は重い宿題を課せられたといってもいいかもしれない。
▼第二アンダーマッチ 15分一本勝負
○近野剣心&定アキラ vs 岩崎孝樹&冨永真一郎●
8分10秒 片エビ固め※レッグラリアット
もとIGFの定とダブプロの近野の珍タッグにDNAの蹴撃手・岩崎とガンバレ☆プロレスで頭角を現した富永という注目の一戦。定はいつの間にか怪奇派キャラクターに転向していたが、まあ、なんでもやってみようという姿勢は評価したい。近野は相当やりにくそうにしていたけど、岩崎との蹴りあいは同じ蹴撃手同士、楽しそうにしていた。
もともと近野はドラゲー出身ということもあるけど、両国という大舞台に臆することなく、普段通りの試合をしていたのは、流石だと思った。富永も身軽な体躯をいかしたスピーディーな攻撃で会場を沸かせていたけど、やや一発一発が軽いかなと思った。これだとただの軽業師にしかみえない。ガンプロでの彼をみていないので、なんとも評価しがたいが、ガンプロでの富永をもっと見てみたいと思った。
試合は連携もほとんどない近野と定の勢いとテクニックで若手軍が撃破されてしまったが、連携がとれているのかどうなのかよくわからないこのコンビ、またどこかで見てみた気がしている。
▼第三アンダーマッチ 東京女子プロレス提供試合 15分一本勝負
〇坂崎ユカ&中島翔子(みらクりあんず) vs 辰巳リカ&●黒音まほ(どらごんぼんば~ず)8分45秒 体固め※魔法少女スプラッシュ
旗揚げ時にだけ福岡大会が開催され、最初の頃はDDTスターレーン大会にも出ていた東京女子も、最近は全く観る機会がなく、AbemaTVの中継もタイミングが合わずにいた。久々に観るみらクりあんずは、正直私の想像以上に進化していた。チームとしての完成度でいうなら、東京女子を代表する2人といってもいいだろう。
一方のどらごんぼんばーずは、まだ与えられたキャラクターを必死でこなしている感じ。辰巳リカのヒップアタックも、越中詩郎直伝というわりには、打点も低いし思い切りが足らない。まほのゾンビキャラはなかなか良い味を出しているし、女子プロでは脈々と受け継がれてきた怪奇派の後継者として期待したい。
みらクりあんずがタッグチームとして群を抜いているのはいいのだが、正直ネオ美威獅鬼軍と敵対するだけでは、今ひとつ物足らない。東京女子のタッグ戦線の浮沈は、どらごんぼんばーずにかかっているといってもいいと私は思う。
▼オープニングマッチ ガントレットタッグマッチ 各30分一本勝負
①才木玲佳&●レディビアード vs アントーニオ本多○&イーサン・ペイジ
3分26秒 オーバー・ザ・トップロープ
※才木のボディーアタック誤爆
東京女子プロで活躍する筋肉アイドル・才木玲佳。実は家にテレビがない私のような人間には、プロレスもできる素人程度の印象しかなかったのだが、あにはからんや、試合を観ていくうちに、一通りスムーズなムーブを披露。なかなか出来る選手だな、という印象を受けた。
もともとプロレスをやっていたビアちゃんとの連携もスムーズで、これは単に相手がプロレスを熟知したアントンだからというわけではないようだ。
しかし、頭脳派のアントンはガントレットマッチの闘い方も熟知している。一通り受けはしたが、チャンスとみるや、才木とビアちゃんを同士討ち。3分ちょっとで初戦突破!
②●吉村直巳&奥田啓介 vs アントーニオ本多&イーサン・ペイジ○
5分1秒 オーバー・ザ・トップロープ
※ビッグブーツから
しかしながら、次の相手は波にのる奥田と吉村。その上吉村&奥田は、アントン狙いで集中攻撃。だが、イーサン・ペイジを隠し球にしていたアントン組は、そのイーサンのビッグブーツで吉村を蹴倒して、二勝目。しかし、ここでスタミナをロスしたまま、3戦目はきつい。
③彰人&○勝俣瞬馬 vs アントーニオ本多●&イーサン・ペイジ
1分0秒 片エビ固め
※勝俣式断頭台(仮)
さすがに三試合目にALL OUTが出てくると、アントン組も分が悪い。俄然勝つ気で入場してきた彰人と勝俣は序盤から飛ばしまくって、わずか一分でアントンを葬ってしまった。
④彰人&●勝俣瞬馬 vs 大鷲透&平田一喜○
2分4秒 奇跡を呼ぶ一発逆転首固め
だが、ダメージが全くないといっていいALL OUTに対するは、意外な難敵T2ひー。そもそも大鷲が、平田の味方をしていないというタッグですらないチームなんだから始末に負えない。入場に命をかけている大鷲は自分の入場を平田に邪魔されたおかげで終始おかんむり。
その平田は普段のヘタレぶりが嘘のような八面六臂の大活躍で試合でも大鷲の出番を奪う。入場時にALL OUTに奇襲されダンスができなかった鬱憤を晴らすかのような平田の勢いは終始衰えずついに勝俣をフォール。
⑤●LiLiCo&大石真翔 vs 大鷲透&平田一喜○
3分20秒 奇跡を呼ぶ一発逆転首固め
しかし、最後に出てきたのは、ある意味曲者中の曲者、まこりんと何するかわからないLiLiCo。お揃いのフェイスマスクでチームらしさをアピール。解説席にいた渡部が終始コメントしづらそうなのが笑えた。
ところがALL OUTを破って勢いに乗った平田は、あっという間にLiLiCoをフォール。解説席の渡部が「こんなカッコいい平田さんをはじめてみました」というくらいの大活躍でまさかのT2ひーが、ガントレットマッチの勝者に!
「カウント2だろ!」と自軍が勝ったのに納得がいかない大鷲はレフェリーに詰め寄るも、後の祭り。ノリノリで踊る平田を苦々しい顔で見る羽目になってしまった。
▼第二試合 ワールド・クレイジーレスラーNo.1決定戦 in DDT 30分一本勝負
○コルト“Boom Boom”カバナ vs ジョーイ・ライアン●
10分11秒 ビリー・ゴーツ・カース
現在のDDTにおける最狂外国人決定戦。ワールドクレイジーレスラーって略すとWCWになるんだが、これはわざとか?(笑)
まあ、ジョーイのタイツインキャンディと世界最強の股間がこの試合もフル回転。冷静に考えるとバカバカしいのだが、ここまで手が込んだら逆に清々しい。
世界最強の股間をコルトにさわらせて投げ飛ばすはずが、自らが触って投げ飛ばされるジョーイ。その股間から出てきたキャンディ攻撃を、松井レフェリー含めた全員が受けてしまい、一時三本同時に口に入れられた松井さんはあわや失神寸前!
最後だけ普通のプロレスみたいになっていたけど、これはWWEでも新日本でもできない試合だろう。よくもまあこんなことを思いつくものである。何か全ての概念を超越したとんでもない試合だったとしかいいようがない。
▼第三試合 東京女子プロレス提供スペシャル6人タッグマッチ 30分一本勝負
○沙希様&世志琥様&アズサ・クリスティ vs 山下実優&伊藤麻希&瑞希●
11分55秒 体固め
※アカデミー賞
伊藤麻希リスペクト軍団というわけのわからないユニットに、東京女子の強さの象徴である山下が加わって、ネオ美威獅鬼軍と対戦。そのネオ美威獅鬼軍には、沙希様の幼馴染という世志琥様が加入。極度の恥ずかしがり屋で、常にお気に入りのぬいぐるみ「シャルロッテ」を手放さないが、一度スイッチが入ると手のつけられない暴れっぷりをみせる。
ある意味厄介すぎる相手だが、特筆すべきは沙希様が実に堂々とした試合運びで、試合そのものをコントロールしていたこと。赤井沙希も成長しているが、沙紀様は昨年夏に見た時よりもはるかに進化していた。一方で山下と伊藤をつなぐ役割として瑞希がいい仕事をしていたのも、見逃せない。キャリアを積んでいけば、いずれ酒呑童子の高梨的な立ち位置にいける逸材だと思う。
山下はある意味このままでもいいかなと思う。沙紀様との蹴撃戦は大いに見ごたえがあったし、以前博多で見た時よりも一回り大きく見えた。
▼第四試合 アイアンマンヘビーメタル級選手権試合 60分一本勝負
<王者>○スーパー・ササダンゴ・マシン vs 黒潮“イケメン”二郎●<挑戦者>
9分12秒 横入り式エビ固め
※第1298代王者が防衛に成功。
煽りパワポが生で見られない地方民としては、この試合が最も楽しみだったわけだが、いきなり「尺が20分しかとれない」とか言い出して、イケメン対策に罠(動物用の)を仕掛けるというプレゼンを展開。あろうことか、イケメンの親父さんを人質にとるとか言い出した。しかしノリノリで入場してくるイケメンは、そもそも罠自体に気が付いていない。
まともにぶつかると勝ち目はないとみたササダンゴマシンはプレゼンの作戦を前倒しするが、効き目がなく絶対絶命!
と思いきや突然の音楽と共に、まさかのスローモーション。そしてスクリーンにはイケメンのお父さんにとてもよく似た神様がうつり、イケメンに「お前が落としたのは、金の罠か銀の罠か」と問いかけてきた。
馬鹿正直な?イケメンは「普通の罠です」と返す。しかし、その罠はササダンゴマシンの手の中に!あれだけ警戒していた罠にはまったイケメン、最後はササダンゴマシンに丸め込まれて、イケメンまさかの敗北。
てか、アイアンマンだからてっきりササダンゴマシンが陥落するのかと思ったらまさかの防衛って!
▼第五試合 KO-D6人タッグ選手権試合 60分一本勝負
<王者組>KUDO&●坂口征夫&高梨将弘 vs 梅田公太○&上野勇希&竹田光珠<挑戦者組>
12分28秒 エビ固め※梅田ドライバー(仮)。酒呑童子が3度目の防衛に失敗、梅田組が第33代王者組となる。
前の試合とはガラリと雰囲気が違うタイトルマッチ。新日本でもそうだが、シングルに比べて多人数のタイトルはとかく軽視されやすい。しかし、DDTのベルトにはどの王座にもドラマがある。
2017年12月の博多スターレーン大会は、会場で生観戦したので記憶に残っているのだが、メインで当時のチャンピオンだったALL OUTから酒呑童子がベルトを奪取した際に、記念撮影におさまる梅田が浮かない顔をしていたことがなぜかすごく印象に残っていたのだ。
そしてその後、酒呑童子に反旗を翻した梅田は、煽りVの中で博多大会の際に「俺はこのままでいいのか?」と自問したことを独白している。
だが、酒呑童子の言葉はおしなべて厳しい。シングルタイトルならまだしも、 6人タッグに挑戦するには、あと二人集めないといけない。「お前ひとりで何ができるんだ?」という酒呑童子のコメントには妙な説得力がある。
梅田が連れてきた上野と竹田はともに組んでよし、戦ってよしの間柄。しかし、ここに梅田が加わるといくらDNAつながりだとしても、即席感は否めない。ましてや、666所属の竹田と梅田というのも、普段DNAを観る機会がない地方民には今ひとつピンとこない。
試合内容は前の試合がなかったかのような、ひたすらに厳しくて激しい試合になった。特に梅田には辛辣だった坂口は全く容赦しない。高梨がかき回してKUDOと坂口へ効果的に繋いで行く酒呑童子の鉄壁な連携は、即席トリオにはあまりに過酷すぎた。
しかし、キャリアでも実力でも到底かなわないチャレンジャートリオにとって、チャンピオンにまさるものは若さと勢いだけである。それが効果的に生きた。梅田を執拗に狙いすぎた酒呑童子は、上野と竹田が眼中になかったのかもしれない。
酒呑童子の厳しい攻撃を耐え抜いた梅田がスイッチすると、竹田と上野は、それまでの鬱憤を晴らすからのような波状攻撃。再び梅田にスイッチすると、なんと坂口を孤立させ、ターゲットに絞り込む。しかし、これは酒呑童子お得意の勝ちパターン。
だが、梅田は隠し技を持っていた。梅田が坂口の猛攻を耐え抜き、3人で坂口に集中砲火。最後は梅田が梅田ドライバー(仮)で、一番辛辣で一番梅田を心配していた坂口から直接ピンフォール勝ち。見事恩返しを果たしたのだった。
しかし、6人タッグ王者になったのはいずれ劣らぬ名リームばかり。新日本とかと違って寄せ集めのチームが防衛できるほど、DDTのマットは甘くない。ベルトはとってからが本当の勝負。梅田の反乱の真価が問われるのはこれからなのだ。
▼第六試合 ウェポンランブル5WAYタッグ敗者肛門爆破マッチ 30分一本勝負
●中澤マイケル&中邑珍輔 vs 宮本裕向&高尾蒼馬 vs 木高イサミ&阿部史典 vs マイク・ベイリー&MAO○ vs 高木三四郎&一般人・澤宗紀
17分43秒 エビ固め※キャノンボール450°
試合前からMAOと大社長の間で遺恨が勃発。大社長がMAOの運転する車に轢かれるというWWEなみの大惨事があった。その遺恨もあって序盤の期待は高かったが、やはり路上禁止という急なお達しのせいか、今までのウェポンランブルに比べるとやや盛り上がりに欠いた感は否めない。つまらなかったわけではないのだが、意外性に乏しかったというか。
まあ、でも珍輔のテーマをわざわざ本物と同じバイオリン演奏にしたり、大谷を黒子に出してきたりという工夫もしていたし、最後はマイケルんの逃走→変態大社長2人もろともの肛門爆破というオチはそれなりに楽しめたと思う。
でもやっぱこの試合は路上という形式で見たかったな。スケジュール的に厳しいけど飯伏がこの中にいたら、はじけっぷりももう少し違っていたと思う。しいて言うならこの中にムタを混ぜて、レジェンドの無駄使いをやってもよかったと思う。まあ「毒霧の呪い」とかやっちゃったから混ぜられないのは仕方ないけど。
▼第七試合 ドラマティック・ドリームマッチ 30分一本勝負
○グレート・ムタ&佐々木大輔&遠藤哲哉 vs 男色ディーノ&石井慧介●&大家健
20分9秒 体固め※ムーンサルト・プレス
このカードが決まってから、ディーノが来る日も来る日も毒霧を浴び続ける「毒霧の呪い」がかなり面白かったこともあって戦前はかなり盛り上がったカード。ボブ・サップの時もそうだったけど、こういう使いかたをさせるとDDTは他の団体とは比べ物にならないくらいの能力を発揮する。
試合でも常にムタが中心にいる試合運びになっていて、どの絡みも見ごたえがあった。j序盤では大家がなすすべなくムタに完封されたり、ディーノの男色殺法が通用しなかったりと、ムタの前になすすべなしという印象を作って、中盤でダムネーションとの激しい攻防がって、終盤、ディーノの地獄門がさく裂するも、ムタはこれにも引っかからない。
しかしとうとうムタがコーナーにふられて、ディーノの餌食にならんとしたところで、まさかの尻から毒霧を放つという想像を超えた展開に、会場も私も唖然!こう来たか!という驚きと感動があったといってもいい。しかしムタは冷静にディーノを毒霧葬。
でも試合はここでは終わらなかった。
ひそかにムタファンを公言する石井が、ドラゴンスクリュー→足四の字からの閃光魔術をくらい、とどめはまさかのムーンサルト!おそらくムタの最後になるであろう月面水爆をくらった石井はさぞかし心の中で感動に浸っていたに違いない。
序盤では接点すらなかったのにちゃんとおいしいところで出番が来たのも、石井らしいというか(笑)
でも、男色先生は終始ムタワールドに染められた試合を不満に思ったらしく珍しくマイクで「まだまだ終わりじゃないわよ。勝ち逃げは許さないから」と抗争の続行を宣言。珍しく言葉の中に本気モードがみえた男色ディーノのメッセージに再びムタが答える日が来るのかどうか?
▼セミファイナル ウチコミ!presents KO-Dタッグ選手権試合 60分一本勝負
<王者組>●HARASHIMA&丸藤正道 vs 関本大介&樋口和貞○<挑戦者組>
17分49秒 エビ固め※轟天。ハラシマルフジが6度目の防衛に失敗、関口組が第63代王者組となる。
だいたいDDTのタイトルは「そろそろ潮時かな?」と思い出すと、移動することが多いように私は思っている。特に外様の選手が王座につくと、だいたい「DDT寄り」のシチュエーションで防衛戦が組まれ、ベルト姿が板についた段階でお役ごめんとなる。
チャンピオンサイドに対して少なからず因縁がある関本と、DNA卒業後タイトルに届きそうで届かない樋口。このチャレンジャーチームには、元来の自力にプラスして、チャンピオンに勝ちたいというモチベーションは十分あるわけだ。
で、まあ結果的には4人が4人ともに骨身を削りあう死闘を展開し、結果挑戦者チームが新チャンピオンになったわけだが、正直ムタの余韻をかき消すまでには至らなかったというのが正直なところ。
これは毛色の違う闘いや、すごい試合をすればいいとか言う問題ではなく、単にプロレスラーとしての存在感の問題だから、こればかりは致し方ない部分的がある。
改めてグレート・ムタをみていると、単に海外経験があるだけでなく、そこでトップスターに上り詰めるということがいかにものすごい偉業かがわかる。しかもスキット全盛の現代ではなく、身体能力と高い表現力だけで、言葉の壁を越えてきたという実績の前では、言っちゃ悪いが、今の現役バリバリの選手の大半は勝ち目がないだろう。
ただ、この中で樋口だけは年齢も若く、可能性としては無限のものが感じられる。時代が違う以上、ムタ越えは無理だとしても、恵まれた体に向上心とプロレスラブがあるならば、大スターになりうる素材である。樋口がタッグ止まりで成長を終えたら、DDTの未来もその先はないだろう。全てはこれから、なのだ。
▼メインイベント KO-D無差別級選手権試合 60分一本勝負
<王者>○竹下幸之介 vs 石川修司●<挑戦者=D王 GRAND PRIX 2018優勝者>
23分31秒 ジャーマン・スープレックス・ホールド
※第61代王者が11度目の防衛に成功。
樋口もそうなのだが、竹下も「フューチャースター」という2つ名の通り、これからの選手である。その未来の王者が防衛10回を果たしている現状に、今のKO-D無差別級戦線の「歪み」が感じられる。同じように「未来の女帝」と呼ばれているWWEのASUKAは3月25日時点では無冠なのだ。竹下が挑戦者で王者の石川が迎え撃つのであれば、まだよかったのだが、身体能力と若さで防衛街道を突っ走る竹下の姿は、皮肉にも新日本で防衛回数を重ねるオカダカズチカとだぶって見えるのだ。
まあ、そうあいっても大学を卒業したばかりである22歳の若者が王者である以上、全員が先輩であることは確かだし、だれが挑戦してきてもねじれという問題とは対峙しないといけないのも事実だと思う。
だけど、やはり悲しいかな、この2人をもってしてもムタの余韻はかき消せなかった。しかも、前の試合と同様激闘を繰り広げたため、差別化も果たせなかった。全6時間に及ぶ興業の締めで、見続けている視聴者も正直疲れてきたタイミングでの熱戦というのは、闘っている2人には大変申し訳ないのだが、しんどかったというのが正直なところ。これが別な日だったら楽しめたんだろうなあと思いつつも、こればかりは仕方ない。
試合後、今年10月の両国大会とともに来年二月の両国二連戦のうち、一日目がなんと「ハッスル」として行われることが発表になった。2030年までやらないはずだったのに・・・というのはともかくとして、ササダンゴがあれだけ出ずっぱりになっていた以上、時間の問題だったのだが、これはどうなるのか楽しみである。
ここでハッピーエンドかと思いきや、なんと両国大会を欠場して海外に行っていた入江がリングイン。緑の髪を黒に戻した入江は竹下を呼び止めると、王座への挑戦を迫った。しかしこれに対して彰人がまったをかけた。「勝手に海外に行って、勝手に帰ってきてチャンピオンに挑戦とかありえない」と断じ、これに応じた竹下が、彰人対入江戦を決定した(のちに正式に次期挑戦者決定戦ということで行われることになった)
正直、これでもまだ出られていない選手がいるんだからつくづくDDTも大きくなったものだと思う。でもアンダーカード三試合+九試合(うちガントレットマッチ一試合)というのは大会的に長すぎたとしかいいようがない。14時からみていて、休憩があったとはいえ、やはりもう一時間短ければいい大会として印象に残っただろう。
とはいえ、ハッピーエンドにするよりは入江の登場で、殺伐とした感じで終わったのはよかったかなと思う。個人的には竹下が防衛回数を重ねても先が見えないというのもあって、風景がかわってくれないかなという希望もあるのだが、この辺は難しいところだろうなあ。
さすがにこの年齢で6時間興業は相当しんどかったらしく、終わってすぐ寝てしまった。そして思い出しながらこれを書き終えるのにまるまる4日を費やした。やっぱプロレスは長ければいいというものでもないんだなあ。