西日本社会人プロレスサミット『SOCIETY KINGDOM』~広島港大決戦~
(2019年10月6日(日)会場/広島マリーナホップ イベント会場)
イントロダクション
前日までの暑さが嘘のような「通常の秋」バージョンの天気に身体がついていかず、朝から身体がキツくて、ギリギリまで寝てから出発。幸い切符やチケットの忘れ物はなかったが、小銭入れとnimocaを忘れてしまっていた。
はじめていくマリーナホップは多分私が住んでいた時代の広島にはなかった商業施設。大学時代は山間部の下宿に住んでいたので、行ったことがない広島港方面にはほほ土地勘がない。
調べたところマリーナホップまでいく直通バスが広島駅から出ているが、所用時間がなんと47分!まさかそんなに遠いとは!私が住んでいた下宿も結構市街地から時間がかかる場所にあったが、方向は真反対だけどマリーナホップも同じくらい遠かったとは!
会場になるイベントホールは遊園地の中にあって、中に入るとだいたいフルでいれて300超は入りそう。不安視されていた集客も最終的ににはほぼ満員になった。オープニングで発起人のひとりALLマイティ井上が「本当は自分も試合したかった!」と本音で悔しがりつつ、開会した。
▼シングルマッチ(15分1本勝負)
①HIROYA(がむしゃらプロレス) vs ×原口知弥(鳥取だらずプロレス)
レフェリー: K.K
(7分37秒 ファルコンアロー)
九月のGAM1でHIROYAは嵐弾次郎と、原口は鉄生と戦い、両者とも一回戦敗退。ポテンシャルの高い2人にしてみれば、悔しい結果になってしまったが、このカードならGAM1でも見たかったカード。
若い2人が15分という時間制限の中でどれだけ出し切るか!非常に興味深い。
試合はやはり大型選手らしい気合いの入った攻防に。がむしゃら応援団にやや押され気味ではあった原口も、持ち前のパワーと一斗缶(未遂)を織り混ぜて、HIROYAからペースを奪おうとするが、アウェイで大声援を受けてノッてしまったHIROYAは、正直手がつけられない。
正直、原口が後手に回った感は否めないが、序盤でなりふり構わず勝ちに行っていたらもう少し内容が変わっていたかもしれない。そこはちょっと惜しかったなと思う。
最後はHIROYAこだわりのファルコンアローで原口轟沈。9月に続いて対がむしゃらシングル二連敗となってしまった。
▼タッグマッチ(20分1本勝負)
②×レオパルドン横山(フリー) & 駿之介(OPG) vs トゥルエノ・ゲレーロ(がむしゃらプロレス) & ○ミステリコ・ヤマト(松江だんだんプロレス)
レフェリー:K.K
((12分29秒 ダイビングボディプレス)
データがないフリー選手のレオパルドン横山はまだしも、駿之介はOPGを代表するジュニアの雄。対するゲレーロとしては油断がならないが、パートナーが松江のテクニシャン、ミステリコ・ヤマトであるだけに、初タッグとはいえゲレーロは伸び伸びと試合が出来そうな気がする。
ところがふたをあけたらタッグチームらしかったのは、横山&駿之介の方だった。前半は特にゲレーロとヤマトを完全分断。若さと勢いにのる2人は手がつけられない感じさえした。
もしもジュニアタッグ王座が存在するならぜひともチャンピオンになってほしいくらい。
しかし、若さと勢いだけで振り切れないのが、ミステリコ・ヤマトの底知れぬ力。これにがむしゃら勢が散々苦しめられてきたのを、この目でみてきている以上、どこかでくるな、と思っていたら終盤で、横山と駿之介が分断され、駿之介をゲレーロが抑えている間に、ヤマトのダイビングボディプレスが炸裂。若い2人には、経験の違いを見せつける結果になってしまった。
▼6メンタッグマッチ(30分1本勝負)
③凡人パルプ(愛媛プロレス) & ×DAISEN鳥取だらずプロレス) & 伊勢宮ジロー(松江だんだんプロレス) vs ○ポールブレイザー(なら万葉プロレス) & シドニー・昌汰・スティーブンス(岩国プロレス) & SMITH(がむしゃらプロレス)
レフェリー:良田ルビー
(9分27秒 足4の字固め)
混沌とはこの試合を指すのだろう。全員が全員存在自体が「飛び道具」みたいなもんだし、全員が全員を出し抜いて目立ってやろうとしている筈だから、最初からカオスになること間違いなし。
そもそもシドニーを除く2人はあんなに日本語ペラペラなのに、アメリカ人だと言い張っているし。そのアメリカンズは、ボーンインザUSAという明らかな出生詐欺なテーマ曲で入ってきて、掴みもバッチリ!
やはり案の定トップバッターのポールブレイザーがとっつかまり、多国籍組?にいじり倒される。当然SMITHとシドニーは蚊帳の外になるわけだが、ただ黙っているわけないのが、SMITHのSMITHたる所以。楽できて美味しそうなとこだけは嬉しそうに戦っていたようにみえた。
それでいて巨漢のDAISENがでてくるとしれっとシドニーにタッチしちゃうし、ある意味一番いつも通りなのがSMITHだった。
しかし、ポールスミスはうわさに違わぬ面白さだったので、是非とも九州のファンもその目でみてもらいたい。本当に面白いから(笑)
最後は散々やられていたポールがDAISENの脚をきれいに畳んで、二度目のチャレンジで足4の字固めを成功させギブアアップ勝ち。
▼タッグマッチ(30分1本勝負)
④×JOKER(フリー) & 陽樹(がむしゃらプロレス) vs 乱魔(OPG) & ○嵐 弾次郎(丹の国プロレス)
レフェリー:翼
((12分07秒 旋回式ダイビングボディプレス)
入場時から不穏な空気を醸し出していたジョーカーと陽樹。フリーランスと言ってもレオパルドン横山みたいに、若くてしっかりした練習の跡が窺える選手もいれば、明らかに練習不足な上に、ブランクがあいた選手もいる。
私がJOKERの試合を見たのは忘れもしない2009年11月。初がむしゃらプロレスのメインで、GWAヘビー級王座をかけてSMITHと激突した。あの時のJOKERは才能にも恵まれた素晴らしいレスラーだった。そのJOKERに勝ってSMITHは長期政権を築いていくことになっていったのである。
そう。かつてはSMITHの超えなければならない壁がJOKERという選手だったのだ。
しかし、あれから10年。いくら元が名刀でも砥がなければ錆びた鉄屑にもなりかねない。残念ながらこの日のJOKERは「在りし日の名刀」でしかなかった。
序盤こそボロがでないようにしていたが、中盤での打撃は明らかに手打ち。ダブルニーこそ決められたものの、返されると打つ手なし。西日本社会人のトップクラスである嵐&乱魔の攻撃の前に終盤はスタミナ切れ。これでは勝てるはずもない。おまけに陽樹のラリアットがJOKERに誤爆してしまう。
最後は乱魔が陽樹を分断している間に、弾次郎お得意のコーナーからの旋回式ダイビングボディプレスでJOKERから白星。10年研鑽を積んで今もなお走り続けているSMITHとはあまりに対照的な結末に、見ていて本当に悲しくなってしまった。
▼セミファイナル~タッグマッチ(45分1本勝負)
⑤○鉄生(がむしゃらプロレス) & 上原智也(OPG) vs マツエデラックス & ×KOZZY(松江だんだんプロレス)
レフェリー:古賀慎太郎
(8分21秒 急降下ロケットランチャー)
山陰統一タッグチャンピオンにして、2月にOPGタッグも手中に収めているだんだんプロレスタッグは、ここまでタイトル戦無敗。GWAタッグを強奪した上原&スコヴィルですら返り討ちにあうくらい、KOZZYとマツエ・デラックスのコンビは手がつけられない。
そんな難攻不落なチームに挑むのは、これまた2月にOPGシングルベルトを巡って争った上原智也と鉄生。
不思議な縁でかつての仇敵と組む羽目になったものの、上原とは人間的に相性がいいせいか?それとも元々はタッグのスペシャリストだった上原のリードがよいせいか?不思議と違和感がない。これが同じ団体の陽樹と組むと、鉄生はびっくりするくらいギクシャクするんだから、わからないものである。
上原&鉄生に幸いしたのは、デラックスもKOZZYも真っ向勝負を挑んできたことで、鉄生の左脚は敢えて攻撃してはこなかった。逆に後がない鉄生や、タッグベルトは取りかえせなかった上原は背水の陣でもあるから、これはしめたものでもある。
上原も鉄生も時折ダーティーな攻撃も織り混ぜつつ、正攻法でKOZZY狙いにきたのは大正解だった。とにかく面倒なのはマツエデラックスという認識で一致していたと思われる2人は、ついにKOZZYを孤立させ、鉄生の鋼鉄ロケットランチャーでKOZZYから3カウント。
試合後マイクをとった鉄生は、デラックス&KOZZYのもつタッグベルトに挑戦表明。これをチャンピオンチームが受けたため、11月末のがむしゃらプロレスで、タイトルマッチが実現することに!
12月のマニアではなく、その前に王座奪取となればこれは面白くなるが、チャンピオンもそうそう簡単に勝たせてはくれまい。タイトルがかかった試合では無敗の二冠王に、越境タッグが土をつけられるかどうか?楽しみになってきた!
▼メインイベント~シングルマッチ(60分1本勝負)
⑥○グリーク(OPG) vs ×ラウザ(鳥取だらずプロレス)
レフェリー:フルスイング岩田
((16分47秒 リストクラッチ式グリークドライバー)
諸般の事情で鳥取だらずプロレスを離れるラウザにとっては、これがだらず所属のラストマッチ。社会人としての最後の試合に登場するのは、OPGのみならず、西日本随一の規格外レスラー・グリーク。
その切っ先鋭い打撃は休憩中に挨拶に立った、元・ダブプロレスの魁ですら、意識を吹っ飛ばされたくらいに強烈なもの。
しかし序盤はじっくりしたオーソドックスな攻防からスタート。なんとなく感触を確かめるようにじっくりしたレスリングでグリークとラウザが流れに没頭していく様が見ていてとても楽しかった。
体格でみると互角にみえる両者だが、スタンディングの打撃戦になると、若さで勝るグリークに分があるようにみえた。マスクマンだから年齢不詳に思われることが多いであろう両者だが、長い時間になると、やはり真っ向勝負はラウザの身体に負担を刻んでゆく。
よく見ていると終盤にスタミナが切れかかっていたのは、ラウザの方だった。最後だから、ということで少し張り切りすぎたのかもしれないが、ベテランらしからぬスタミナ切れは、15分過ぎには致命傷になってしまった。
とはいえ、体格でいうと全く見劣りしない2人が並び立つ姿はやはり壮観というほかない。メインらしい重厚な試合はこの2人にしかできないものだったのではないか、と私は思っている。
後記
勝ちを収めたグリークは珍しくマイクをもち、ラウザへの感謝を述べると、土下座して一礼。マイクを受け継いだラウザが最後に「社会人プロレス、サイコー!」で締めて大会は無事終了した。
相対的にどの試合もおおむね良かったし、いい形で盛り上がった社会人オールスター。この流れが大きくなっていけば、プロ団体では絶対不可能な全国規模のオールスター戦も夢ではないだろう。
とりあえず乱発しない程度には第二回、第三回と続けてもらい、ゆくゆくはスーパーJカップみたいに、統一覇者を決めても面白いかもしれない。
こういうハレの舞台があれぼ、選手のモチベーションにも一役買う事だろう。是非この流れがよい方向に続いていくよう、一ファンとして精一杯応援したいと思う。皆さん、お疲れさまでした!