新日本プロレス・濵かつ Presents レスリングどんたく 2018(2018年5月4日 福岡国際センター・2日目)</h2
イントロダクション
レスリングどんたく2日目。体調は昨日より更に上向き。でも念には念を入れて、服薬は欠かさずに、午前中は安静にしつつ、前日の観戦記を書き上げる。ベースは行き帰りの公共機関での移動中に書いてしまうので、そこで入り切れなかった分を足して完成させるのだ。
体力のある時なら複数の用事が済ませられるようにしていく事もあるけど、そうでない時は、極力イベントのみに絞って他は見向きもしない。年齢も年齢なんで、スタミナの無駄使いは避けることで、プロレスそのものをたのしめるようにしないと、本末転倒になるからだ。
というわけで、博多どんたくの時期に博多に行くのに、未だにどんたくをちゃんと観たことが一度もないのだ。まあ、人には多様な価値観があるので、私は私のベストな選択をしているに過ぎないのだ。
オープニング
さて、昨日のカード編成を見る限り、一日目は2日目の完全な予告編扱いだった。とはいえ、全てが4日の前哨戦かというと、そうでもないので、これは悩ましいところ。特にセミとメインに関してはライブでこそ良さが伝わる試合だったから、生で見に行かなかったら後悔したに違いない。
カードが悪いから見に行かない、というのは、原資が限られている私でもやりかねない選択。実際、昨年十二月の国際センターを見に行かなかったばかりに、クリス・ジェリコを、生で見損ねるという悔やんでも悔やみきれない事態を招いてしまった。
それだけに可能ならばカードの良し悪しよりも、なるだけライブで体感することを優先させたい。仮にカードが予想の範疇を出なくても、それを含めて楽しめるようにしたい。それが楽しいプロレス観戦の第一歩だからだ。
博多駅から今度は国際センター行きのバスにのる。サンパレス行きはシャトルバスで直行。国際センター行きは各停。西鉄にとってはコンサートは金の生る木で、プロレスでは金の雨が降らない、と判断されたのだろう。世間的にはプロレスの立ち位置もそんなもんなんだな。新日本もこういう現実を知って謙虚になってもらいたいものだが。
さて、国際センターの列に並んでいたら、なんかタレントさんみたいな女性がカメラクルーつれて出てきた。よくみたらSKEの松井珠理奈だった。びっくりしたけどそれ以上の感想は…特にありません。意外と列に並んでいたお客さんの反応もドライだったし(笑)
まあ、でも彼女はガチでプロレス好きみたいだから、決して嫌いではないんだけど。
そして中に入ると、別なカメラクルーと一緒に、九州のアイドルLinQがいた。これも感想は…特にありません。しかし、アイドル率高いなあ。昨日は誰も来てなかったのに(笑)
第一試合
〇田口隆佑&4代目タイガーマスク&獣神サンダー・ライガー
対
上村優也&×成田蓮&海野翔太
(6分37秒 オーマイガーファンクルホールド)
ベテランがヤングライオンに胸を貸す試合。まあ、4虎はともかく田口やライガーが後輩を叩き潰しても何の得にもならないことは十分承知。
しかし、一日目にもヤングライオンの壁として登場したライガーは、年齢的に信じられないグッドコンディションで、じつの息子より年下のヤングライオンとも互角以上にわたりあっていた。
同い年の私なんかは見た目変わらないライガーを見ていると、自分まで若くなったような錯覚に陥りがちだけど、ライガーがどれだけの努力を積んで、この舞台に登場しているのか、と思うと気が遠くなる。
昔ならなくなったドン荒川さんが、若手の壁であり、そこに向かっていったのがヤングライオン時代のライガーだった。時を経てそのライガーが若手の壁になる。こうして時代は移ろいでいくのだ。
試合はヤングライオンに奇襲されたライガーが大人気なく怒りの獣神モードで、容赦なく叩き潰しにきていた。若手が怯まず向かってきたのも良かったけど、ライガーが変に大人の対応しないのも良かった!生意気なクソガキは叩き潰す!これぞライガーの真骨頂だと思う。歳はとっても物分かりのいい大人になんかならなくっていいのだ。
でもいつか、上村や成田や海野が若手の壁になる時代まで元気にプロレスを観に行けるように、こちらも精進しないとね。それとライガーを見習って自分もまだまだ頑張らないと。同じことはできないけど、彼が頑張っているうちは、自分も老け込まないように!
第二試合
×岡倫之&永田裕二 対 〇チェーズ・オーエンズ&高橋裕二郎
(6分11秒 パッケージホールド→体固め)
ヤングライオンという枠からは頭一つ出ている岡といわば師弟の関係といっていい永田が組んで、昨日同様に若手の壁役をやっているバレットクラブのふたりと闘うカード。岡的にはどの試合にも意味があるはずだが、特に裕二郎的にはどんな意味があるのやら、今ひとつみえてこない。
正直、かつてのタッグパートナーだった内藤とは随分と差がついてしまったのだが、このまま埋もれさせるには惜しい人材なだけに、もう一花、ふた花咲かせてほしいのだが、なんとか浮上のきっかけはないものか?
幸い、裕二郎もオーエンズも、誰が相手でも腐らず試合をしているようにみえるのは、さすがプロ。だが、それだけではやはり物足りない。
ただ、裕二郎とオーエンズも前日の田口同様、敬礼で永田を挑発。岡をあえて無視してきた。実際「顔じゃない」と言いたかったんだろうけど、岡ももっとそこは怒るべきだろう。
まだそういう意味では、まだ永田の方が元気にみえた。やはりヤングライオンならば、先輩何するものぞ!という気概が試合から感じられないと面白くない。
だからこそ、岡には中西の物まねはしなくていいんで、もっと生意気なヤングライオンとして先輩にどんどんたてついていってほしい。岡はもともとできる素材なんだけど、気持ちでは海野のほうがはるか上をいっている。アマチュアの実績が即、プロで通用しないところがプロレスの難しいところだけどねえ。
第三試合
〇SHO&YOH&ロッキー・ロメロ対×TAKAみちのく&タイチ&飯塚高史
(6分00秒 3K→片エビ固め)
二日目のRoppongi 3Kは鈴木軍との対戦。正直これも先にはつながりそうにない、いかにもな前座カードなんだが、まあ鈴木軍の方が役者揃いだから、相手におもねれば、それほど外しはしないだろう。
一日目のRoppongi 3Kの試合はいい、悪いを判断する前に終わってしまうというある意味、最悪な終わり方だっただけに、同じような体重の選手たちと絡んである程度、これがRoppongi 3Kだ!というものを見せてもらわねば、さすがにゴリ押しと言われても仕方あるまい。
ただ、鈴木軍に昨日ピンフォールを取られた飯塚がいるだけに、荒れる試合になることも予想できるので、果たして私のおもわくが悪い方に実現しないでもらいたいと願うのみなんだが。
入場してくるなり、飯塚がSHO &YOHに突っかかって試合開始。Roppongi 3Kはしばらく飯塚の噛みつき攻撃になすすべなくやられていた。これで笑ったのは、後ろのお客さんが「均等にかみついているよね。飯塚って真面目だな」という感想を述べていたこと。まあ、あながち間違いではないんだが(笑)
今回は秒殺とはならず、お互いの見せ場を作り合うことで、なんとか試合になっていた。まあ、Roppongi 3Kが良かったというより、鈴木軍の仕事がうまかったということでいいと思う。しかしもとWWEのスーパースターのTAKAをあんな雑にフォールしてしまうというのも正直どうなのかなあ?あんだけおぜん立てされても、あれしかできないのが、今のSHO&YOHの限界なのかもしれない。
第四試合
トーア・ヘナーレ&×真壁刀義対矢野通&〇石井智宏
(7分12秒 垂直落下式ブレンバスター→片エビ固め)
存在意義が霞んだ正規軍とこれまた表向きヒールユニットCHAOSの対戦。これも強いて言えば真壁と石井のやりとりくらいしか見どころがない。まあ、箸休めかな?
とはいえ、多分石井と真壁はハズレなしだろうし、ヘナーレも一日目は頑張っていた。せめて先につながるようなカードになればいいけど、無理だろうなあ。
個人的には石井とヘナーレの絡みは良かった。石井がNEVER王者だったら、間違いなくシングルでやらせてみたいと思う。今のわけのわからんベルトだと展望がみえないけど。
しかし、前日といいこの日といい真壁の出番は数える程度。わりかしボロがでない程度には動き回っていたが、あまりコンディション的にはよくないのだろう。実際石井の垂直落下はかえせなかったし。よほどダメージはあったとは思うんだけど。にしても暴走キングコングらしさは、この日もなかったように私には見えた。
棚橋の去就ばかりに注目が集まっているけど、真壁もぼちぼちタイトル戦線からフェードアウトしかかっている。時の流れは実に残酷なものである。
第五試合
マイケル・エルガン&×デビット・フィンレー&ジュース・ロビンソン
対
〇YOSHI-HASHI&ジェイ・ホワイト&後藤洋央紀
(11分4秒 カルマ→片エビ固め)
二日目のカードなんだが、正直正規軍対CHAOSを二試合続けてやる意味ってあるんだろうか?しかも正規軍は外国人だけだし、ベルトへの因縁ストーリーも見えづらい。このあたりが新日本のマッチメイクに魅力が感じられない大きな要因でもある。
しかもUS王者とNEVER王者が並び立つ図なのに、ワクワク感が0というのは、正直大問題だと思うんだが、新日本的には後藤とジェイのタッグでゼニがとれると思っているのだろうか?
その後藤だが、完璧にCHAOSのお笑い要員になりつつある。仮にもNEVER王者なんだから、田口監督の路線にいかなくても良さそうなもんだが、なんか後藤って何やってもサマにならないなあ。
と思っていたら、よもやのハプニングが。てっきりYOSHI-HASHIがやられるものと思っていたら、まさかのカルマがフィンレーにさく裂して、YOSHI-HASHIがウィナーになってしまった。
いやあ、試合後にYOSHI-HASHIのテーマを聞く日が再び来ようとは!プロレスは何があるかわからない。
あまりに久々過ぎて、YOSHI-HASHIのテーマ曲がどんなんだったか思い出せなくて「誰の曲だったっけ?」と一瞬思ってしまった。
そして試合後、後藤がタイチから襲撃され、そのまま後藤を痛めつけ、バックステージへ連行してしまった。さらにジュースとジェイの間にも因縁が生まれ・・・・意外にいろんなことを仕掛けてきたなという印象だった。でもこれはまだ序の口だったのだ。
第六試合
高橋ヒロム&BUSHI&“キング・オブ・ダークネス”EVIL&SANADA&〇内藤哲也
対
エル・デスペラード&×金丸義信&デイビーボーイスミスジュニア&ランス・アーチャー&鈴木みのる
(8分31秒 ディスティーノ→片エビ固め)
で、二日続けてロスインゴ対鈴木軍。くどいようだが、一応熊本にて大将同志の決着戦が終わったあとも、まだこの抗争引っ張り続ける意図が見えてこない。
確かに鈴木みのると内藤哲也の組み合わせはハズレがない。だからといってダラダラ抗争続けるメリットがみえないのだ。しかも昨日ヤングバックスがEVILとSANADAがもつIWGPタッグに挑戦するという新しい流れが生まれているのに、この試合というのはどうにも意味がわからない。
予定していたカードを柔軟に変えて、ヤングバックス率いるバレットとの抗争をスタートするならわかるんだが、このあたりマッチメイカーの頭が硬直しているせいか、決まったカードありきで進んでいくのも解せないのだ。
まず変化があったのは鈴木軍が「風になれ」、ではなく、「鈴木軍のテーマ」で入場してきたこと。でも個人的には盛り上がりにかけるので、やっぱ「風になれ」のほうがいい。試合展開はあまり一日目と変わらないのだが、ハプニングは試合後に待っていた。
第六試合・試合後
意気揚々と花道を引き揚げていく内藤を、客席から飛び出してきたマスクマンが急襲。最初は「え、お客とトラブル?」とか「前日、登場予告されていたボーン・ソルジャーか?」と思っていたら、そのまま内藤を引きずってリングに戻した。
そして自身のマスクに手をかけると中から現れたのは、なんと”Y2J”クリス・ジェリコ。ついこの間のWWEサウジアラビア大会でのグレートロイヤルランブルに登場していたジェリコがまさかの福岡二度目の襲来!ってかこの時期バンドのツアーでいなかったんじゃないのか・・・・
驚く間もなく内藤をゴングで滅多打ちにし、大流血においこんだジェリコは、セコンドに取り押さえられながら、笑みを浮かべて退場。その存在感と、あっという間に会場の空気を一変させるオーラのすさまじさ。気が付いたら大声で私は「Y2J」コールをしていた。風邪で調子悪いのに、この時はさすがに自分の気持ちを抑えられなかった。
取り残された内藤は怒り心頭で、セコンドのヤングライオンを蹴散らすと、血もぬぐわずに控室に戻っていった。
それにしてもジェリコは人を怒らせるポイントを熟知している。さすが世界で嫌われ者を体験し、多くのオーディエンスから数えきれないブーイングを引き出してきただけのことはある。内藤の課題は今のままだと「憎まれ口をたたく人気者」で終わってしまいかねないところなんで、ジェリコとの戦いは内藤がさらに上に行けるかどうかの試金石になるだろう。
そしていつか内藤が心から憎まれ役になった時こそ、この体験が実になったともいえる、と私は思っている。そういうことでいうと、内藤がさらなるキャリアアップを目指すなら、ジェリコ戦で何を得て、自分のものにできるかが問われてくると思う。さて、内藤は世界のY2Jから出された宿題にこたえることができるだろうか?
第七試合
タンガロア&タマ・トンガ&〇バッドラック・ファレ&飯伏孝太&ケニー・オメガ
対
ニック・ジャクソン&マット・ジャクソン&×マーティー・スカル&ハングマン・ペイジ&Cody
(8分47秒 ボディプレス→片エビ固め)
前日3日に一応決着戦的カードも組まれていない以上、バレットクラブの内紛劇もまだまだ引っ張る気満々なんだろう。試合巧者が多いし、かつては地方の小会場でも見られたゴールデン☆ラヴァーズが、国際センターでないと見られないプレミアチームになったことは、喜ばしいとは思うのだけど、いかんせんこれはタレントの無駄使いである。
いっそケニー派とCody派ではっきり分裂するんならまだしも、まだどっちつかずの抗争をだらだら続けることに何の意味があるのだろうか?・・・と思ったら一応の決着がついてしまった。
勝ったケニーは場外までCodyを追って蹴散らかした後、リングに戻ってバレットのメンバーとハイタッチ。
これにヤングバックスやスカルにも加わるように要求すると、アッサリ元さやに納まってしまった。ところが、リング下でこれを見ていた飯伏はこの輪には入らず、不満げな顔でリングを後にした。バレットの内紛には終止符がうたれたが、今度は再結成されたゴールデン☆ラヴァーズが解散の危機に?
まあ、でもCodyもこのままでは終わらないだろうし、まだ波乱含みの様相を残していると私はみた。
第8試合 60分1本勝負
IWGPジュニアヘビー級選手権試合
〇ウィル・オスプレイ(王者)対 ×KUSHIDA(挑戦者)
(23分46秒 ストームブレイカー→片エビ固め)
どんたくで組まれるジュニアのタイトル戦ってここ最近KUSHIDA絡みしかみてないような気がしてならない。かといってオスプレイ政権が長期化することで、彼のスタイルが新日ジュニアのスタンダードになっていくのは、私的には耐えがたい。
そういう意味ではKUSHIDAが一日目でみせた、オスプレイの空中戦封じのカウンター狙いのサブミッション攻撃は比較的有効だろう。最もカウンターでいうなら、やはり一日目でみせていたオスプレイのキックも有効には違いない。噛み合えばよい試合になりそうだが、私の心が動くくらいの爪痕は残してほしい。きれいなだけのプロレスなら、軽業となんら変わらないからだ。
これからプロレスをやっていく以上彼らのプロレスもまた進化していかなくてはならない。無駄な動きを少なくして、一つ一つの技のインパクトを大きくしていくこと。そういう意味でなら、KUSHIDAもオスプレイもまだまだ発展途上にある。
試合はまあ、オスプレイがKUSHIDAの変則攻撃をよく耐えて、自身の流れにもっていけたのが大きかっただろう。
さて、波乱があったのは試合後。オスプレイがベルトを抱え上げ、大観衆が拍手を送る中、突然場内が暗転した。場内ビジョンには前日も流れていた「BONE SOLDIER WILL REYURN」の映像が映し出された。
すると入場テーマにのって、タマ・トンガが姿を現した。そしていつの間にか忍び寄っていたドクロの仮面をつけた新しいBONE SOLDIERが登場。オスプレイがうしろを振り返った途端、BONE SOLDIERがキックで奇襲!さらにそのまま顔面をヒザに打ち付けた。
そしてタマがBONE SOLDIERのマスクを取ると、その正体はNOAHからフリーになった石森太二。石森は不敵な笑みを浮かべながらピストルポーズしたが、正直Y2Jのインパクトに比べると出オチ感が半端なかった。まあNOAHやめていくところと言ったら新日本しかないだろう。でも闘龍門つながりでオカダと共闘するのかと思っていたので、バレットクラブ入りは意外だった。
第9試合 60分1本勝負
IWGPヘビー級選手権試合
〇オカダカズチカ(王者)対 ×棚橋弘至(挑戦者)
(34分36秒 レインメーカー→片エビ固め)
5年前なら間違いなくゴールデンカードだし、実際数年前でも東京ドームでもメイン級の扱いだったことは事実。だけど旬が過ぎてしまうとこうも魅力にかけるカードになるなんて…。
改めて時の流れの残酷さに胸が痛くなるが、これもプロレス。いやプロレスに限った話ではないんだけど。
ただ、体調が回復しなくても、怪我続きでも新日本低迷期の功労者的な意味からか、棚橋には変わらずチャンスが巡ってくる。特別扱いというなら、オカダも大概だが、棚橋だって人のことはいえない。
それでも棚橋がIWGPヘビーに絡むのは2年4ヶ月ぶりと聞く。実質ラストチャレンジとなるのか?それとも短期でも、最後の棚橋政権を誕生させるか?
正直、オカダ対棚橋というカードで、どちらかが勝っても展望が明るくならない事が起こりうるなんて、数年前は予想だにしていなかった。これも長い間プロレスをみているからこその宿命かもしれない。
このカードが大トリなのは過去の実績からしても当然なんだが、一日目を完全な前フリに使うのがミエミエというのはさすがに感心しない。会場で流れていたPVではオカダ、棚橋両方の防衛ロードが流れていて、確かにテンションは上がったけれども、反面釈然としなかったのも事実だからだ。
さて試合は・・・・これはもうすごいの一言に尽きた。旬は過ぎたとはいえ、このカードが東京ドームのメイン級の試合だったことは紛れもない事実だった。それだけ棚橋もオカダも死力を尽くして闘いあった。ここ最近は精彩を欠いていた棚橋の動きもほぼ全盛期に近い動きで、けがで離脱したあともうかがえないくらいの壮絶な死闘になった。
だが、心持ち棚橋がオカダより弱く見えるシーンが何度もあって、それだけオカダがとてつもなく強くなったんだなあという感慨と、棚橋がIWGP戦線から遠のいてしまった2年4か月という空白の重さを私は思い知らされたのだ。
かつてオカダに対して「IWGPは遠いぞ」という名言を吐いた棚橋自身にまさかこの言葉がブーメランになって帰ってくる日がこようとは・・・・本当に時の流れは容赦しない。たとえ、それが新日低迷期をささえた功労者だったとしても、例外ではない。
オカダは口では「棚橋」と呼び捨てにしていたけど、試合の端々から「棚橋さん」への敬意が感じられたし、それこたえようと必死で食い下がる棚橋には感動を覚えずにはいられなかった。でも決定的だったのは、オカダのドロップキックを非常なまでに徹底的なドラゴンスクリューで完封した時の棚橋のような「憎々しい強さ」は、いつのまにかオカダの方が身に着けていた。
実際、強すぎる王者はこの試合で何度もブーイングをあびていた。実をいうとここまであからさまに棚橋がベビーフェイス化してしまうとは思いもよらなかったが、本当のところ判官びいきというのは、弱い立場に置かれている者に対しては、あえて冷静に事実を受け入れすに、同情を寄せてしまうことなんで、実質、棚橋コールが多かったという事は、会場のお客も無意識に棚橋よりオカダを上にみている何よりの証明になってしまったのだ。これはまあなんとも皮肉な話だった。
この強すぎるが故のブーイングというのをまだ内藤は体験していない。だからこそ、内藤が名実ともにトップになりたいなら、いち早く人気者の位置から脱して、オカダを蹂躙し圧倒的な強さで観客から真に嫌われる必要があるのだ。でないと内藤も結局観客の「判官びいきの慰みもの」で終わってしまうだろう。
さて、激闘を制したオカダは棚橋をたたえつつ、次期挑戦者に大阪で60分引き分けで決着がついていないケニーを指名。リングに上がったケニーは時間無制限三本勝負を提案。いや、やるのはいいけど、これって終わるのか?終電なくなる予感しかしないのだが・・・・
後記
まあ、ドミニオンの前振りに使われた不快感はあったけど、それでもメインの激闘がすべてを帳消しにしてくれたように思う。例年になくどんたくが盛り上がったのは、間違いなく棚橋とオカダのおかげ。これはもう動かしがたい事実。さてドミニオンはどうなっていくのだろうか?
そしてまた来年もどんたくは国際センター2DAYSになるという。できたら、4日の前振りに3日を使うのはやめてほしいなあ。それさえなければ満足度は高かったんで。またこれで来年もいかざるを得なくなってしまった。ともかくオカダと棚橋、そして個人的にはクリス・ジェリコを生で再びみられた幸運をかみしめて、しばらく過ごしていこうと思う。