[プロレス観戦記] 新日本プロレス「レスリングどんたく2015」

せかぷろ

新日本プロレス「レスリングどんたく2015」

(2015年5月3日(日)17:00 福岡・福岡国際センター:観衆5,180人:超満員)

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イントロダクション

レスリングどんたくといえば、古くはホーガン対ムタ、猪木対ムタ、天龍と猪木の初遭遇など、東京でも実現してないカードが組まれる西日本最大のビッグマッチだった。新しくは昨年のオカダ対AJがそう。ところがその座を今年は7月の大阪城ホールに奪われ、あっさりと二流の地方大会に成り下がってしまった。スターレーンが確かに二流~五流のカードで超満員になっていることを考えると、国際センターでもできるだろう、という慢心が新日サイドにあったとしか思えない。確かに隣で浜崎あゆみのコンサートがあって、国際センターの界隈は例年になくすごい人だったが、当日券売り場に並ぶ人が例年になく少ない。グッズ売り場は相変わらず長蛇の列だったが、中に入ってみると意外と込んでない。

オープニング

そして会場に入って異変に気付くことに。いつも私が座っている南側三階上段真ん中周辺は「関係者以外立ち入り禁止」とされて、ロープで閉鎖されていた。それと、私が座った西側の端にはごっそり空席が・・・・(ちなみに最後まで空席のままだった)。じゃ南側で関係者のだれかが見ていたかといえば、それらしい影は一人しか見受けられなかった。他にも二階三階にはちらほら空席が目立つ。そもそもチケット自体回せる枚数がないという話だったのに、これはどういうことだろう?ひとつ考えられるのは当日券が伸びなかったということだろう。中邑は優秀なメインイベンターだし、後藤も博多では人気がある。しかしどんたくのメインはICではないんだよなあ・・・。

ちなみに後々発表された観客動員数 は5,180人(超満員)。ちなみに去年は7,190人だった。カードの引きが弱いのと、スターレーンとG1開催が発表になった時点でどんたくが敬遠されたのだとみて間違いないだろう。この事は新日のフロントは重く受け止めねばなるまい。

テンカウント

大会開始前、4月28日に68歳で亡くなられた阿修羅・原さんの追悼セレモニーが行われた。これはオールドファンからするとたまらないものがあった。WARとの対抗戦で新日本にも大いに貢献したし、その前は○シン軍団で…いや、なんでもない。個人的には少しでいいから原さんの雄姿をモニターで流してほしかった。全日時代の映像やSWS時代は難しくても、G1に出たときの映像とか、いろいろあったと思う。そうしたら対抗戦時代を知らないファンにも少しは原さんの偉大さも伝わったことだろう。しかしセレモニーで、全日本プロレス時代からの後輩であるレッドシューズ海野レフェリーが原さんの遺影を持っていたあたりでぐっとくるものがあった。テンカウントというのはいつやっても何か切ない気持ちにさせられる。博多でいうと華☆激で福田雅一の追悼もやったよなあ。こうして選手、観客、関係者が黙とうを捧げる中、追悼の10カウントゴングが打ち鳴らされたあと、会場にSWS~WARで主に使用されていた原さんのテーマ曲「DREAMS」が!国際時代~全日で使われていた「阿修羅」は原さんご本人があまり好きでなかったそうなんで、この曲を流してくれたのはもう感涙ものだった。

ただ、さっきも書いたけど原さんの偉大さがどれだけ今のファンに伝わったかは大いに疑問だった。特にWARでの引退後は表舞台から姿を消していたし、今集っている観客には「なんで新日の海野さんが遺影をもっているのか」ということすら理解してなかっただろう。そこらへんを説明するためにも試合映像を流してほしかったのだが…

個人的にはここが本大会のMAXポイントになってしまったのが残念でならない。

第1試合:20分一本勝負

マスカラ・ドラダ&タイガーマスク&獣神サンダー・ライガー&永田 裕志(○)
vs.KUSHIDA&田口 隆祐&キャプテン・ニュージャパン(×)&中西 学
(18分29秒:エクスプロイダー・オブ・ジャスティス)

この組み合わせみて思ったのは「いつもだとこれって第0試合だよね」ということだった。いや確かにいい選手はそろっているし、こんな豪華な第一試合もないのだが、今まで散々第0試合扱いしておいて今回は第一試合ということになると、この大会での第一試合の位置づけってなんなんだろうと思ってしまった。このメンツなんで内容に関しては、よっぽどのことがないと外しようもないんだけど、まあ地方でも組まれてそうなカードをあっさりこういうところで出しちゃうあたり、今回のマッチメークはどっか変だった。

ひと通り見せ場が終わって最後は永田がキャプテンをフォールという目新しさも何もない展開で終了。これ以上書けることがない・・・・

第2試合:20分一本勝負

内藤 哲也&田中 翔(×)vs.飯伏 幸太&小松 洋平(○)
(11分55秒:逆片エビ固め)

だいたい4月の両国でメインを張った飯伏が第二試合。しかもヤングライオン同士のシングルマッチにするならまだしも、ここに内藤との因縁を絡める必然性が全く感じられない。だからだろうか?序盤は飯伏対田中、小松対内藤の絡みが多かったが、やはり上が厚い新日にあって常時カードが組まれている選手と、出られたり出られなかったりしてるヤングライオンとの差はでかかった。いっそWWEやDDTを見習って若手主体の大会を開くとか(かつての夢☆勝ちみたいな)やり方はあると思うのだが、これだとなかなか若い選手が夢を持ちにくいと思う。大日とかDDTはすでに次世代のエースを育てようとしているのに、業界大手の新日がこういうのではなあ。

今は特にヤングライオン杯みたいなのもないし、後楽園が常時フルハウスになっていることを考えると、若手主体の興業導入は急務だと思うのだが…それがあったうえでこうしたビッグマッチに顔を出すのはいいと思うのだ。しかしこれではただ出してあげましたよ、で終わりではないか?中盤から終盤にかけての田中と小松の意地の張り合いをみていると本当にもったいないことをしてるなあとしか思えなかった。

第3試合:20分一本勝負

本間 朋晃(○)&小島 聡&天山 広吉vs.バッドラック・ファレ&タマ・トンガ&コーディ・ホール(×)(8分57秒こけし→片エビ固め)

しかし今のこけし人気は本当に凄まじい。あれだけ決まらなかったこけしが今面白いように決まる。試合前の撮影会でも本間の前には長蛇の列!

だが個人的にはどうしても大日や全日をブッチしている(まあ新日本も一回やめているけど)本間にはどうも好印象を抱けない。こけし自体リスキーには見えるけど、それだけに頼る試合展開はむしろ大日時代の本間よりプロレスが退化している。これの露払いさせられているテンコジもなんだかなあ、という感じ。

正直こけしブームに関してはとっとと終わってほしいくらいだ。なんとなくしらけた感じで眺めていた試合だった。

第4試合:IWGP Jr.タッグ王座戦3WAYマッチ:60分一本勝負

ロッキー・ロメロ&バレッタ(×)(ロッポンギ・ヴァイス)
vs.
マット・ジャクソン&ニック・ジャクソン(○)(ヤングバックス:挑戦者)
vs.
カイル・オライリー&ボビー・フィッシュ(レッドラゴン:挑戦者)
フィニッシュ:モア・バング・フォー・ユア・バック
※ヤングバックスが新Jr.タッグ王者に!

ジュニアタッグはどうしちゃったのかなあ。ベルトの権威を考えたらゲーム性の強い3WAYや4WAYでタイトルマッチやる必然性がない。WWEなら全然アリなんだけど、それを新日本が追随することはしなくてよくないか?

確かに今はWWEに続く世界二位の大手であり、WWEにあがれない外国人選手を全て使い切るにはこういう試合形式以外はないんだろう。しかし個別にみたらクオリティの高いチームばかりなのに、どうしてもバタバタした印象しか残らない。その上誰が王者なのかさえ判別できない。面白いだけでは記憶には残らないのだ。

第5試合:IWGP Jr.ヘビー級王座戦:60分一本勝負

アレックス・シェリー(×)(挑戦者) vs. ケニー・オメガ(○)
(16分7秒片翼の天使→片エビ固め)

ケニーといえば同門のAJをもびっくりさせた飯伏とのシングルが未だに記憶から離れない。あのクオリティを考えると、田口であろうが、次期挑戦者になるであろうKUSHIDAにしても、今回のシェリーにしても、狂気さが欠片も感じられない。ヒール転向してから嬉々として役割を演じているケニーとしては物足りなさもあるのではないだろうか?

やり切れた感に関しては当人にしかわからないけど、見ている側からすると、シェリーがケニーに勝つ絵は最後まで想像できなかった。確かに大変クオリティは高い試合ではあったのだが、後々まで記憶に残るタイプの試合ではなかった。

正直な話、中邑対飯伏のように新日本でもケニーの◯チガイファイトを活かせる選手はいると思う。だがそれがジュニアヘビーになると微妙なんだよなあ。田口が唯一違う意味で振り切りはじめているので、可能性がないわけではないが、今のところ取りこぼし以外でケニーに負ける要素はないだろう。スーパージュニアの勝者と闘うため、ジュニアの祭典を欠場すると発表したケニーに、果たしてDDT時代のようなライバル出現はあるのだろうか?

第6試合:スペシャル6人タッグマッチ:30分一本勝負

マット・ターバン&マイケル・ベネット&マリア・ケネリス(○)
vs.カール・アンダーソン&ドク・ギャローズ&アンバー・ギャローズ(×)
(18分9秒スモール・パッケージ・ホールド)

そもそもマリアはマネジメントが主で試合は従と考えているんだと聞いている。実際大学に通い専門的に学んでいることからも、レスラーとしての現役生活にはあまり未練がなさそうである。しかし新日本は何をトチ狂ったか?アンダーソンとのスキットをだらだら続けている。言っておくがこっち方面に針を振りたいなら、DDTやWWEを超える綿密な打ち合わせとストーリー展開を練らなければただの茶番劇でしかない。かつてたけしプロレス軍団に激しい嫌悪をむき出しにし、国際軍団をガチで嫌い、ワカマツに本気でカエレコールを送った新日本のファンがこうした試合を楽しんでいるサマは、隔世の感がありすぎなんだけど、だからと言って低クオリティな茶番をみせていいということではないはずだ。

アンダーソンもG1の決勝に残ったあたりがピークだったんだろうか?兎にも角にも今の大根役者ぶりは正直どうなんだろうかと思う。試合はこれまたディーヴァ同士で決着となった。

が、試合終了後、アンダーソンがいきなり態度を豹変し、ギャローズとの合体技マジックキラーでマリアをKOしてしまった。これはいったい何を意味するのか?それまで茶番に付き合っていた観客も置き去りにされた試合だった。

第7試合:スペシャル6人タッグマッチ:30分一本勝負

真壁 刀義&棚橋 弘至(○)&柴田 勝頼vs.石井 智宏&矢野 通(×)&桜庭 和志
(15分52秒:髪を掴んでの横入り式エビ固め)

真壁刀義&棚橋弘至&柴田勝頼vs石井智宏&矢野通&桜庭和志は、真壁と石井、棚橋と矢野、柴田と桜庭がそれぞれ激しくやり合うというまるで、地方の大会のメインのような顔見世6人タッグだった。要するに大阪大会までの前ふりに使った感がありあり。シングルはG1でみられるんだからという理由でもあるまいが、本大会のシングルはメインとジュニアだけ。これはあまりといえばあまりではないだろうか?

確かにこのメンツだとそうそうはずすこともないのだが、因縁を抱えたもの同士より、これまであまり接点がなかった棚橋と桜庭という絡みは確かに新鮮ではあった。もちろん見方とはいえ、棚橋と柴田は終始ピリピリしていたし、いい意味での緊張感が伝わってくる試合でもあった。

ただ、現在抗争中の絡みになるとどうもトーンダウンしてしまう。要はこの抗争で最低大阪城ホールまでもたせたいんだろうけど、そうそう思惑通りに行くものなのかは何とも言えない。しかしどれも正直引っ張り過ぎている感じがする。

そんな中、棚橋が矢野の常とう手段である髪の毛を掴んでの丸め込み技で3カウントを奪取。これまでさんざんいいようにやられてきた借りを、ようやく矢野に一矢報いたが、これも棚橋が付き合う必然性もないし、なんかとってつけた感が大きかった。何度でもまた見てみたいなという組み合わせは、真壁と石井くらいしかなかったりするし。どうもこの試合も釈然としなかった。

第8試合:スペシャルタッグマッチ:30分一本勝負

オカダ・カズチカ&YOSHI-HASHI(×)vs.AJスタイルズ(○)&高橋 裕二郎
(13分20秒スタイルズクラッシュ→エビ固め)

セミファイナルのオカダ・カズチカ&YOSHI-HASHIvsAJスタイルズ&高橋裕二郎は、7月5日(日)大阪城ホール大会『DOMINION 7.5 in OSAKA-JO HALL』で行われるIWGPヘビー級選手権試合の前哨戦。

こっちは本当に前哨戦。オカダが言うように「とられた場所で取り返したい」ということなら博多がうってつけだったのだけどなあ。大阪城まで待たせる必然性もない。同じカードを組んだっていいと思うのだ。それこそ今の新日なら5月と7月にAJ対オカダをやっても大丈夫だろう。今まで連続して振っていた金の雨はもちろん降らないし、カード自体が年末のタッグリーグみたいだし、なんともはやといった感じだった。

AJがスタイルズクラッシュでYOSHI-HASHIに勝利したものの、試合後にオカダと番外戦を展開。AJのスタイルズクラッシュ、オカダのレインメーカーは共に不発となって、大阪の予告編は終了。最初から最後まで地方のメインイベントのテイストから抜け切れない試合だった。

第9試合:IWGPインターコンチネンタル選手権

後藤 洋央紀(○)(挑戦者) vs. 中邑 真輔(×)
(20分53秒雪崩式の牛殺し→昇天・改→片エビ固め)※後藤が新IC王者に!

インターコンチがどうこうというより、今の中邑ならば多少落ち着き始めたとはいえ、飯伏との激戦で再び浮上してきたことを考えると、メインにふさわしい王者ではあるのだ。しかし相手は3年前オカダに挑んで惨敗し、ニュージャパンカップの株を著しく下げた後藤。人柄は伝え聞くにとてもいいらしいのだが、それとプロレスのうまさは実をいうとあまり関係がない。

だからどれほど後藤が意気込もうと、気持ちは盛り上がらなかった。そもそも勝っても次のビジョンが全く見えないし、じゃあ、後藤がどっかの大会場でICの防衛戦をやってどれほどの集客が見込めるだろうか?と、後藤が戴冠したらデメリットしかでてこない。確かにがんばったやつがあきらめずに栄冠を勝ち取るというのは物語性には飛んでいるのだが、後藤の場合戴冠がゴールになっているので、せっかく柴田とのタッグを軌道に乗せようとしたらあっさり王座から転落してしまうし、中邑のようにこいつにならメインを預けられるという信頼もない。

で、肝心の試合内容なんだが、とにかく先手先手を中邑が打って後藤は後手に回る。おまけに「今、畳み掛けろよ」というところで場外にも追って行かない。自分が休んでいる間には中邑も休んでいるのだ。その場外に出てもクレバーな中邑は後藤以上にペースをかき乱してくる。中盤までの後藤にはいいところがひとつもなかった。

最後こそ牛殺し&牛殺しの連続攻撃などで猛攻に出て、中邑のジャンピングボマイェとスライディングボマイェを食らっても屈せず、雪崩式牛殺しの荒技を敢行し、 最後は昇天・改で中邑を倒した。が、勝っても次期挑戦者は現れず。正直ノープラン過ぎてどうしようもない。

試合後「ありがとうございました。諦めなければ結果はついてくる!この喜びをみんなと分かち合いたい!万歳三唱!IWGP IC王座奪還を祝してばんざーい!ばんざーい!ばんざーい!」と後藤が万歳三唱でしめたけど、正直みんな「イヤアアオ!」をやりたかったんではないだろうか?個人的に万歳といわれてもなあという感じがしたし、複雑な気持ちで帰路に就いた。

後記

G1はともかくこんなカードが続くようなら来年のどんたく観戦は見合わせだなあ。片道3時間かけてでかける意味がない。正直阿修羅原のテンカウントに参加できたのが本大会で、個人的には最大のハイライトになってしまった…帰り道バスが混雑するので、毎回博多駅まで歩くのだけど、昨年AJがオカダから勝利した時のように、さきほどの試合を高揚しながら話している人ほとんどいなかった。今年のどんたくは過去最低だったとしか言いようがない。誠に残念でならない。

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松江だんだんプロレス主催試合「BATTLE DIMENSION 5」Inスサノオカフェ (2016年3月6日(日)会場/スサノオカフェ特設リング) イントロダクション 松江だんだんプロレスは総合格闘技団体「YAMATO」を母体として派生した






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