プロレス居酒屋がむしゃら20周年&矢野貴義特別追悼大会 ドン・タッカーForever~(2020.11.29 日・門司赤煉瓦プレイス)
イントロダクション
私自身2020年は、12年前の闘病生活以来となる生観戦の少ない年になった。10月にもドラゲーの下関大会や、スターダムの福岡大会とかがあり、リスタートできないわけではなかった。
しかし、3月末のがむしゃらプロレスで途切れた生観戦を復活させるならば、やはりそこはがむしゃらプロレスからだろう、という思いが強くなったのは、7月に予定されていた屋外大会が中止になったからだろう。
加えて、8月のドン・タッカーの訃報もその思いをより強くした。やっぱり再スタートするならがむしゃらプロレスしかない。
その間は、配信で浴びるようにプロレスを見ていた。酷いときは丸一日部屋から出ないでひたすら試合ばかり見ていた。
昔は生配信も観戦記を書いていたけど、最近は年齢的なこともあり、生観戦だけにしていた。そういえば観戦記も3月以来になるわけだが、書き出してみると割と難なく書けてしまう。習慣とはおそろしい(笑)
第1部 ドン・タッカー追悼セレモニー
第一部は2020年8月に逝去されたドン・タッカーを偲ぶセレモニー&トークショー。まだ試合をしていた頃のドン・タッカー対ダイナマイト九州という貴重な映像が流れた。
トークショーでは、言える範囲内で在りし日のドンを偲んで思い出話に花がさいた。登壇した佐々木貴・プロレスリングFREEDAMS代表、松江だんだんプロレスのALLマイティ井上さん、SMITH新代表も、それぞれドンから受け継いだものを、未来に生かしていこうという姿勢がみえた内容だった。
第2部 がむしゃらマニア2020
▼第1試合
ブラック☆スティック & ○ブラック☆スティック・メガ vs ×リキ・ライタ & BIG-T
(14分44秒)
久々登場のブラック☆スティック(黒棒)だが、パートナーのメガって誰だ?メガの実力いかんでは、リキ&BIG-Tのコンビも苦戦しそうだが、お笑い枠になるのか、それとも違う方向にいくのか?興味はつきない。
いきなり出てきた黒棒はなんと2人ではなく、4人に増殖していた!あきらかに残り2人はやっつけ感が強いのだが、がむしゃらプロレスでは、Barong (バロン)軍以来の増殖ユニットになってしまった。
まあ、黒棒自身久々の登場でブランクがあるから、仕方ないのだが、それを補ってあまりあるのが、ブラック☆スティック・メガだった!
その王者感たるや、リキやBIG-Tを赤子の手を捻るくらい。厳然たる実力差はいかんともしがたい。しかし、全身タイツにすると、微妙に腹が出ているのが、なんともユーモラス。それでいてロープ渡りも・・・なんとかこなせる運動神経!やはりただものではない!
メガやら、他の黒棒を介入させてやりたい放題の黒棒は、リング下からハサミを取り出して、リキ・ライタこだわりの「ちょんまげ」を微妙な長さに断髪!
これで戦意喪失した?リキはメガに押し切られる形で、9ヶ月ぶりの試合も黒星発進。今度はいつ見られるのかわからない黒棒軍団だが、またいつかとんでもないサプライズを用意してくるに違いない!期待して待ちたいと思う。
▼第2試合
×ダイナマイト九州 & パンチくん vs シドニー・昌太・スティーブンス & ○SMITH
(12分05秒)
新代表に就任したSMITHは、一本ひいた形で登場。シドニーにしてみれば、ゴーイングマイウェイな九州&パンチくんの「洗礼」を浴びる試合になりそう。
そもそもSMITHが一歩引いた試合なんかするわけないから、シドニーがどこまでこの世界観に溶け込めるかがキモになりそう。
ダイナマイト九州と絡むと何故かまず舌戦からスタートする事が多いSMITHだが、この日もそうだった。一部のドン・タッカー追悼セレモニーで、往年の九州の姿が映し出されていたのだが、早速SMITHは「体型が違うじゃないか!」とツッコミを入れてきた。
これに対して九州は「年齢とともに体型は変わるんだよ!」と応戦。
さらには、ゲレーロが、北九州のWebサイト「北九州ノコト」でインタビュー受けた際に「いかに衣装にお金をかけずに目立てるかということを考えて“水着”で試合に出る人もいます」と語っていた件まで持ち出して、だんだんお互いの昔を暴露し合うはめに。
この流れに乗れるか心配だったシドニーも、九州サイドが用意してきたぴこぴこハンマーで、九州&パンチくんを2人まとめて料理。
こういうご時世なんで、守護神の一升瓶がもてないパンチくんは、9ヶ月というブランクを感じさせないファイトで、我が道をゆくが、九州の地獄門に誤爆して戦線離脱。すかさずシドニーとの連携につないだSMITHが、エクスプロイダーで九州を仕留めて無難な勝利をおさめた。
▼第3試合
七海健大 & ×YASU vs MIKIHISA & ○尾原 毅
(13分14秒)
お仕事の都合上、フル参戦が叶わないYASUはgWo解散後は、無所属のまま。とはいえ、その立場を利用すると、いろんなユニットのメンバーとも組める利点がある。
七海健大とは、かつて同じユニットにいたこともあり、勝手はわかっているわけだし、対角線上にいるナスティもよく知る仲となれば、因縁云々以上に高い内容が期待できそう。
試合が始まってから意外だったのは、ジュニアヘビー級のYASUが、ヘビー級の尾原に真っ向勝負を挑んだ事だった。時にグラウンド技術で、時に蹴り合いで、尾原の鋭い蹴りをジャンプしてかわすなど、新鮮な攻防が見られたのが、大収穫だった。
一方七海健大とMIKIHISAの絡みもなかなか新鮮。健大とのチョップ合戦は見応え十分だし、逆に健大の馬乗りチョップで、倍返しされたMIKIHISAは、蹴りで活路を見出す。
しかし、尾原がYASUに捕まった際、YASUが、ジャンボ原とMIKIHISAに「もとgWo!」とヘルプを要請。原とMIKIHISAがそれに応えてしまったために、ナスティ間に一時期険悪なムードが流れてしまう。それでも一瞬の隙をついて、YASUに鋭いハイキックを決めた尾原が、健大&YASUから勝利。
ブランクは感じさせない両チームだったが、タッグ王者経験者である健大&YASUは、久々すぎたせいか、わずかに救出のタイミングが遅れたかもしれない。タッグというのは、少しの歯車の狂いが、勝敗につながるというのを、まざまざと見せつけられた試合だった。
▼第4試合
初代GWA6人タッグ王座決定戦
【Re:ZARD】サムソン澤田 & ○鉄生 & 陽樹 vs 【DREAM TUBER】嵐 弾次郎 & ×HIROYA & トゥルエノ・ゲレーロ
(19分59秒)
もともとは、4月のワンデイトーナメントで決まるはずだった6人タッグ王座。一旦7月に再度、決定戦を行うはずが雨天中止という流れを受けて、三度目の正直になる本試合。
通常ならがむしゃらのベルトがそれぞれ防衛戦を行うタイミングなんだが、コロナ禍に揺れた2020年では仕方ない事態。GAM1もできなかったし、それぞれの防衛戦より、王座決定戦という選択肢を選んだのは正解ではないか、と思う。
さて、チーム力でいうと、2月に1試合やっているRe:ZARDと、弾次郎とのトリオははじめてになるドリームチューバーとでは、ややドリームチューバーの方が分が悪い。
しかし、ゲレーロ&HIROYAは現・GWAタッグ王者であり、弾次郎は現・OPGヘビー級チャンピオン。実力的には申し分ない。
たしかに序盤から拮抗した試合になったのだが、中盤に鉄生が捕まり出した。特にHIROYAが繰り出す首4の字は強烈で、近年原点回帰志向が見られるプロレス界の流れが、がむしゃらプロレスにもきているように感じた。
いつのまにかHIROYAの攻めは、一点集中型に変化しており、フィニッシャーのファルコンアローにより説得力を持たせるためには、これ以上ないものになっていた。
ゲレーロとの連携も申し分なく、これならいけるかと思われた。
だが、この苦境を脱した鉄生はRe:ZARDに勝機を呼び込んだ。この試合は6人タッグであり、もともと王座決定戦はワンデイトーナメントで行われる予定だった。
いくら同ユニットとはいえ、丹の国プロレスの弾次郎と、6人タッグの戦略を練るのは非常に難しい。片や各人が忙しいとはいえ、自主的に合流したRe:ZARDには、戦略も意思疎通も問題なかった。
最後は、Re:ZARDの好連携から、捕まり続けた鬱憤ばらしに、鉄生がHIROYAからピンフォールを奪い、見事に初代王者に輝いた。
リング下のドリームチューバーに「いつでも、だれとでも戦いますよ」と勝ち誇るサムソン澤田のマイクに「ちょっと待った!」と噛み付いてきた1人の男。本部席で見ていた佐々木貴だった。
佐々木貴は、「お前ら、俺が一人で北九州までのこのこやってくると思ったか?」というと、まずは、現プロレスリングFREEDAMSのシングルチャンピオン、杉浦透が登場!これだけでもびっくりなんだが、更にもう一人呼び込んだ人間のテーマ曲が鳴った瞬間、会場の門司赤煉瓦プレイスが揺れた!
第三の男は、世界のデスマッチカリスマにして、FREEDAMSが誇るデスマッチモンキー、葛西純!葛西と佐々木は、北九州では、10年前のFREEDAMS北九州大会のメイン以来のタッグになるはずで、ここにチャンピオン杉浦を加えたトリオ結成は記憶にない。
かくして佐々木貴指名による、新生がむしゃらプロレス代表トリオ対FREEDAMS最強トリオのボーナストラックがスタートした。
▼緊急特別試合
【FREEDOMS】佐々木 貴 & 葛西 純 & ○杉浦 透 vs 【がむしゃらプロレス代表/副代表】×SMITH & トゥルエノ・ゲレーロ & 鉄生
(18分50秒)
FREEDAMS軍が狙いを定めたのは、ゲレーロでも鉄生でもなく、SMITHだった。これも意外ではあったのだが、敢えて代表から狙うというのが、FREEDAMSらしい。
そして、いざという時には一致団結するFREEDAMSの連携は一分の隙もない。SMITHとゲレーロは、同じドリームチューバーだが、あまり普段から組んでもいない。ましてや、さっきまで敵対していたRe:ZARDの鉄生とでは連携も期待できない。
しかし、がむしゃら勢には、天国のドン・タッカーに新生がむしゃらプロレスを届ける必要があった。それは3人とも意識していただろう。
負けず嫌いの割にはのらりくらりとした試合をするSMITHが、真っ向勝負に「応じざるを得ない」くらいFREEDAMS軍の「圧」は圧倒的だった。
SMITHは私がみてきた12年、いや自身がデビューしてからの18年ではじめて、ボロ雑巾のように、ぐしゃぐしゃにされた。「プロレスにプロもアマも関係ねえ!」が口癖の佐々木貴からの手痛いプレゼントだったのだろう。
「痛いの嫌いな」(試合後のゲレーロ談)SMITHが最後は杉浦の豪腕に沈黙したが、多分声が出せていたら、会場中が大SMITHコールに包まれていただろう。FREEDAMSのシークレットメンバーは出オチでは終わらず、しっかり結果を残した。これこそがプロフェッショナルレスリングを生業にしているプロの底力なんだな。
このサプライズは殿(佐々木貴)が自ら企画して、がむしゃら勢にしかけたらしい。それくらい北九州と本気で向き合ってくれているFREEDAMSには、感謝しかなかった。
試合後SMITHが疲れた顔をしながらも「吹っ切れました!」と清々しい顔になっていたのが印象的だった。
最後はノーサイドでRe:ZARD以外のメンバーが、全員リングにあがり記念撮影。そして声出しNGながら、「3.2.1.がむしゃらーッ!」で大会を締めた。
後記
動画でも話したけど、やっぱプロレスは生が最高!そして、サプライズとはかくあるべき!という内容の大会だった。こうして書いていてもまだ書き足りないくらいな気がするくらい、11.29の大会は内容が濃い素晴らしい興行だった。
ドン・タッカーの思いは確実に次に受け継がれ、そして花開いていく。プロレスはやっぱり素晴らしい。ありがとう、がむしゃらプロレス!ありがとう、プロレスリングFREEDAMS!ありがとう、ドン・タッカー!