ゼロワン『とんこつ大花火~プロレス・西の聖地(メッカ)!博多スターレーン大炎上~』ノーロープ有刺鉄線電流爆破デスマッチ 時間無制限1本勝負
(2014年3月21日(金・祝)博多スターレーン 試合開始18時00分(17時15分開場))
イントロダクション
この日は8年ぶりのゼロワンと大日の合同興業。九州地区初の室内電流爆破が売りの大会だった。きいた話では大日もそこそこ入っていたらしい。
やはりというかインディーらしいというかたぶん設営やその他の準備で開場が遅れていた。
オープニング
ぎりぎり第一試合がはじまるところだったんで余裕持ちすぎちゃったなとは思ったんだけど、入ってみたら立ち見の多いこと。
そして立ち見3000円客の方が前の方にいるという現実。昔のFMWもそんな感じだったよな。
この手の団体はとにかく立ってみるに限るのだ。
座っていると立ち見客邪魔だし^^(まあその邪魔な立ち見を今回してたわけだけど・・・)
団体も邪魔だと思ったのか?オッキーが「3000円の方は座られてもかまいませんが、指定の方が後でこられたらすみやかに席をお譲りください」というアナウンスをしていた。
それってわざわざ指定券買った人には失礼なんじゃ・・・????(まあほとんど招待客だろうとは思ったけど。)
もっとも後楽園のようなバルコニ―のないスターレーンでは立っても前景は見られないんだけどこれは仕方ない。そういえば夏にここでOZアカデミーが大会を開くらしい。尾崎魔弓がブースにいた。さすがS屋T一の無駄な財力^^でもデスマッチ興業で尾崎がわざわざ足運んで一人で営業かけても、この大会の客層がOZも観戦するとはどうしても思えないんだけどなあ。
実際本物がいるのにほとんどスルーされていたし。やっぱ今の女子プロの認知度ってそんなもんなんだろうな。ということでオッキーの無駄に張り切ったアナウンスで試合が始まった。
第一試合:シングルマッチ 30分1本勝負
○ジェイソン・リー(8’49” 死亡遊戯)×藤田峰雄
本場香港からきたわりにはDDTの現チャンプKUDOの劣化版にしか見えないジェイソン・リー。なんでだろう。KUDOは明らかな日本人なんだけど、ヌンチャクさばきが全然絵になってない。NWF所属というのもなんかなあという感じ。この辺の外国人選手がもつ、うさん臭さは初期以来のゼロワンの大きな売りだったはずなんだが、破壊王の逝去以来団体の方向性としては足枷になっている気がしてならない。
藤田はそれを生かし切れるだけの力ももってる選手なんだけど、正直この位置で使うには惜しいよなと思う。全体的にゼロワンというより初期FMWで、なんとなく第一試合当たりで組まれてたジュニアの試合っぽかった。狙ってやったわけではないとは思うんだけど、もし電流爆破がなくて、普通のゼロワン興業だったらつかみとしては失敗だったような気がする。ただこの日のお客はゼロワンというより今はなきFMWの幻影をもとめて集っていたように思えたので、そういう意味でならニーズにはこたえられていたといっていいだろう。
第二試合:とんこつGメン yasu鵜池 プロレスデビュー戦邪道軍vs九州軍 30分1本勝負
矢口壱狼&保坂秀樹&×藤井健一&yasu鵜池
(15’41” ダイビングヘッドバット→体固め)阿蘇山&○田中純二&ジ・アッチー&久保希望
やっぱFMWというか大仁田のにおいがする興業にはこういう40過ぎてデビューした藤井のような存在は必要不可欠。かつての中牧がそうであったように、箸にも棒にもかかりりそうにない人材をデビューさせて夢をかなえてきたし、それ自体が一つの売りとして成功してきたわけだが(といえば聞こえはいいんだけど・・・おっさん新人レスラー増産という負の遺産も生んだ気がしないでもない)、そんな藤井に続いてyasu鵜池というおっさんまで今回デビューするという。実際がむしゃらの大谷ナイトで会ってはいたんだけど、大谷と2ショットで写真とったりしてたからてっきり裏方さんだとばっかり思っていた。
確かにガタイはよかったけどねえ。試合が始まってみるとキックはまあまあ。でもグラウンドになるともうダメダメ感が半端ないというか。蹴りにしても往年の遺産でなんとかやってる感じだったし、そもそもあの体つきは人様にお金とって見せられるレベルではない。
なぜ藤井健一&yasu鵜池がイマイチにみえたのか?一つには同じコーナーにいる矢口や保坂、対角線上にいる阿蘇山のコンディションがよすぎるからだ。おそらくだが藤井より10は上の選手が体をはったド迫力ファイトをしてるのに、それより年下でしかもおっさんを売りにしてるなんて・・・・そもそも九州はただですら動けるベテラン勢が多くておそらく鵜池がプロとして今後活躍していく枠はないだろうという予想もできてしまう。
だいたい2人の年齢を足したら「約100歳」対決の方が見ごたえがあっては彼らに出る幕はない。久保も容赦なくプロの洗礼を浴びせていくし、アッチ―も久々のスターレーンで張り切っているし、完全におっさんのデビュー戦という意味合いはかすんでしまっていた。個人的にはやっぱ久々にみた矢口や保坂のコンディションのよさが阿蘇山という巨漢とぶつかることで大いに発揮されことの方がうれしかったし。まあたぶん今年が終わるころには忘れてる試合かもしれない。
第三試合:弾丸ヤンキースvsデーモン軍 30分1本勝負
田中将斗&おまたゆうちゃく&×日高郁人(12’11” ルシファーズハンマー→方エビ固め)KAMIKAZE&○デーモン植田&菅原拓也
この試合にも試合以外でいいたいことがいくつもある。弾丸ヤンキースはメンツをみてもとても魅力があるチームなんだけど、入場テーマがなぜ「Hearts on fire」なんだ?だれが選曲したかはしらないが、センスなさすぎ。現役だけでもイホデルパンテーラ、若鷹ジェット信介が使ってるし、かつてはK1の角田、今度復活する長与千種、神取忍も使っていた手垢にまみれた曲なのだ。他人の曲を使うならそれなりに意味をもたせようよ。逆にデーモン軍はべただけど「蝋人形の館」とイメージ通り。
この差は大きかったように思う。おまけに小幡が改名されたのも意味不明だし(デーモンとの抗争はあったけど、前持った説明はなかった)、その改名された名前をオッキーがいう前にヤンキースが奇襲してしまったんで、台ナシ。というかそれいわせないために奇襲しかけていたんじゃ意味ないよね?
FMWでは若手扱いだった田中ももう40の声を聞くがこのコンディションは立派の一言。ただホームなのにゼロワンの田中にはどっかアウェイ感があるのはなぜだろう?KAMIKAZEもSPWFにいたころはまさかこんなに息の長い選手になるとは思ってもみなかった。ムーンサルトは相変わらず健在だったし。日高もだいぶ老けたけど動きは衰えナシ。ただそんなに悪いこともしてないデーモン軍がわりとあっさりヤンキースを分断して勝ったのはいささか物足りなさも残ってしまった。
第四試合:タッグマッチ 30分1本勝負
佐藤耕平&×横山佳和(14’12” ライジングDDT)○橋本大地&橋本和樹
破壊王がなくなって今年の夏で9年。もう大地にはそろそろ新しいテーマで入場してほしいんだが、今回はなぜか初結成の橋本タッグということもあって当然のように爆勝宣言。そして大橋本コール。いや、うれしいんだけどなんかこの人の褌で相撲取ってる感が残念な感じがしてならないのはなぜだろう?大地も、もちろん大日の橋本も一本立ちしたレスラーとして認めているがゆえになんか歯がゆかった。そしていい加減汚れ役を横山とか耕平に押し付けるのもやめようよ。なんかこっちにも展望らしきものがないというか、これ以上みてても何も感じないというか。
ただそんな中でも耕平は見違えたというか、不器用ながらその路線でここまで上がってきたのは大したもんだと思った。一歩間違えてメジャーから声がかかっていたらたぶんつぶれていたかもしれないが、彼の場合はその能力を発揮できる場所はやはりゼロワン以外にないと思う。でも以前やったような長島自演乙との抗争みたいな無意味はストーリーラインにのるのは、たとえ会社の命であっても今後はやめて欲しいと思う。耕平には耕平のプロレス道があるわけだし、その延長戦上にあるものであれば見たい。大地との闘いはこれからも続いていくであろうし、高い壁になってほしいという期待もある。
そして大地も親父の陰を押し付けられて?それでも自分なりにプロレスを模索してここまでよくきたと思う。だからファイトスタイルもそろそろ独自色を強めて行ってもいいんじゃないだろうか?借り物から最初はスタートしていいとは思うけれどやはりいろんな経験をしていく中で親父とはすでに違う道を歩んでいるんだから、橋本大地は橋本大地の人生を生きていって欲しいのだ。
余談だけど電流爆破の設営を一若手として手伝っている大地の姿には非常に好感が持てた。いつかこの中に入ることがあるかもしれないが、その時はぜひ大地らしい電流爆破もみせてほしい。
第五試合:世界ヘビー級選手権試合 60分1本勝負
○ジェームス・ライディーン(王者)(15’11” パワーボム→方エビ固め)×崔 領二(挑戦者)
私はこのライディーンを非常に高く買っているのである.恵まれた体躯、序盤の丁寧なレスリングムーブ、そして規格外のパワー、まだ粗削りだが素質は感じる若さ。リングをおりればとても丁寧に接してくれるナイスガイ。久々にみた日本人が束になっても勝てそうにない外国人選手の希望の星といってもいい。ただ、なんでもできるがゆえにこれというものがない。外国人でいえば故・ミスターパーフェクト・カート・へニング、日本人でいえばスーパーストロングマシン。
ミスターパーフェクトって、「なんでもできちゃうけどこれといった突き抜けた個性がない」という揶揄が含まれている悪口なんだけど、これをキャラにして成功したへニングはともかく、一般的にレスラーとしてこれは必ずしもほめ言葉ではない。おまけにテーマ曲がなぜかWCW時代にのスティングのものを流用。特別スティング好きとかそういうことでもないみたいだし、マッチョな体型もスティングとは違うタイプである。
ただですらなんでもできちゃうというマイナス面があるのにこれ以上没個性の方向にもっていってどうする気だ?こういう方向性だとかつてお声がかかったWWEで頭角を現すのは難しいだろう。これだけの才覚がありながらゼロワンでくすぶっているのはもったいない気がするんだが、WWEで飼い殺しになるよりはましかもしれない。
ただ、ライディーンは実に王者らしい試合運びで、思った以上に内容は白熱していった。まあ相手が崔だし、多くを期待してはいなかったんだけど、意外と好勝負になった。大地同様ライディーンも22歳と若い選手なんで、中途半端にスティングやグラジエータ―(そういえば大仁田がいたのにグラジっぽさはだしてなかったな)リスペクトはもうそろそろやめてライディーンという唯一無二のレスラーになる努力をしていってほしい。
よくて外からのオファーが今の全日どまりじゃ、その才能が泣くよ。本当でも人の褌で相撲とらなくても十分やっていける能力をもっているのにそれができてない選手が多過ぎ。今回はそこにFMWテイストが施されていたせいかあまり目立たなかったけどゼロワン単独で次回の博多はないかもしれないなあ。
メインイベント:『とんこつ替え玉5倍』ノーロープ有刺鉄線電流爆破&爆破電気椅子デスマッチ 時間無制限1本勝負
○大仁田厚&大谷晋二郎(14’21” 4人同時爆破から 体固め)高山善廣&×藤原喜明
この試合の設営に約30分の休憩をはさんだ。やはりロープが外されジョーズのテーマが鳴ると「あの頃」が自然とよみがえってくる。めったにない生リング設営をカメラに収めようと多くのファンがリングを囲んだ。その分売店はがらがらだったけど^^;昔はFMWがこの手のパイオニアだったんで有刺鉄線等の仕掛けには一時間とかはあたり前にかかっていた。しかし今回は特に大日本というデスマッチのオーソリティーがずらっとそろった団体がサポートしてるので作業が早い早い!!
本当に30分以内で完成させてしまった。この辺はさすがにプロの技!まあ今回は電流爆破ありきで組まれた大会ではあったんだけど、大日とのコラボはできたらゼロワンにとっては有益なんで続けていってほしいなあと思う。そうそうメインは特にそうだったけどこの日のオッキーの進行はどことなく荒井さんテイスト全開のマイクだった。やっぱそういう意味でFMWがおりてきていたのかもしれない。
さてこの試合については書きたいことがいろいろある。Uの西の聖地スターレーンではじめて行う室内電流爆破。そしてスターレーンでデビューした高山が時を経てUとは真逆のリングにあがる興味。この中では最高齢でしかもガンという病と闘って復帰した藤原組長。熱さでは大仁田にもひけはとらない大谷。三人とも個性が強いし三人とも初電流爆破体験である。大仁田にとってはホームなんだけど、やはり3人の個性の中に埋没するわけにはいかない。ある意味大勝負なのだ。ただ、いかんせんコンディションを考えるとまともに動けるのは大谷だけ。そうなるとレジェンド的な顔見世試合でもいいかなと思って最初は全く期待してなかった。
が、それはいい意味で裏切られた。入場順は大谷、大仁田、高山、組長の順。赤コーナーが先に出るのは異例だけど、やはりそこは先輩に花をもたせたんだろう。UコンビはTシャツを脱ぐと普段通り上半身裸で黒のショートタイツ!これには会場中がどよめいた。大谷ですらTシャツ着て登場したからだ。この辺はやはり組長と高山の一本勝ちである。そうはさせるかと赤コーナー側は場外戦に活路を求めるが、外に出ればテロリスト、中に入れば頭突きと関節技の鬼に、と変幻自在に顔を使い分ける組長は、初の有刺鉄線電流爆破リングを全く苦にしていない。もちろんあわやというシーンも作りながら、いつものパフォーマンスをやっていくのだから恐れ入る。
こうなると俄然旗色が悪いのは大谷と大仁田。大仁田は全日を引退させられた原因である膝が加齢のためにさらに悪化していて、往年のサンダーファイヤーすらまともにうてない。ストリートでは組長もそうだし、高山も逆にイキイキしてしまう、となるとマイク以外の活路はやはり敵を電流爆破の洗礼に落とし込む以外にはない。だが最初に犠牲になったのは大谷だった。私も室内の電流爆破ははじめてだったが、やはり煙がこもるのと火花が消防法にひっかからない程度のレベルにはなっていた。が無駄に音が響きやすいスターレーンではその破裂音がすざまじいものに!上はボーリング場なんだけど・・・・大丈夫か?(噂ではこの時間には早めにボーリング場の営業を終わらせていたとも聞いたが・・・)
これでふっきれたのか大谷は顔面ウオッシュ+特攻自爆という荒業を決行!いやあ、やってくれないかなとは思っていたけどまさか本当にやってくれるなんて^^自分から走って行って自爆というのはなかなかないアイディア。これでTシャツ着てきたマイナスポイントは一気に帳消しに。
しかしここらへんで黙っている組長ではない。火薬が普段通りつかえない分、アイテムで工夫した大仁田は電流爆破椅子をかざしてパイプ椅子に座った組長に一振り。もろ爆破の洗礼をうけた組長は上半身黒焦げ。だがここからが組長のゾンビぶりが久々発揮。やられてもやられても立ち上がる組長の姿には戦慄をこえた感動があった。さらに組長の脇固めがさく裂しここでもUタッグは大活躍。だがこれをこらえきった大仁田は毒霧攻撃で組長の視界を奪い、丸め込んで薄氷の勝利!Uとの因縁に自ら終止符をうった。試合後は余韻をかき消す大仁田劇場。
しかし短いセンテンスで大して深いこともいってないのに人の心を掴んで離さないというのは大仁田の一大芸だよな。ほかの三人が闘いで生きざまをみせても、口で全部取り返せるレスラーはやはり大仁田しかいまい。ここまでわかっていても私自身が心を動かされたんだし、あの90年代を駆け抜けたFMWが一瞬ではあるがよみがえった。それも幻ではなく現実として。これはやっぱうれしかった。試合前「今更電流爆破?」とすら思っていたのだけど、終わってみたらまさかの大感動。いや、大谷以外はもう立派なレジェンドなんだけど、知名度もお金も名誉も手に入れた彼らがここまで体をはってくれたことにまず感動した。動けないと揶揄したがホームでありながら不利な条件化で試合した大仁田、そしてはじめてなのに仕事師ぶりを発揮した組長、それを献身的にサポートした高山と大谷。全員がすごいと思った。
まさか電流爆破でここまで生きざまのプロレスをみせられては、どうしようもない。現役選手の中にはレジェンドを「いいとしこいてあんな年になるまでリングに上がって昔の名前で試合はしたくない」と公言するものもいるけど、そうじゃないんだよな。生きざまを見せるということはきれいな技だけ出していればいいという昨今のプロレスシーンでは表現しきれない部分で、そこはやはり素直に学んでほしい所だと思う。
後記
最後こそ大仁田にとられたけど、実際この日のMVPはUコンビだった。この日、大仁田はUとの遺恨を形の上では清算したけど、彼が掲げる胸いっぱいのプロレスはUコンビがかっさらっていってしまった。だからこその感動があったんではないだろうか?それはたぶん今でないとできなかっただろうことでもある。UWFもFMWももうこの世に無い今だからこそ。