DDT 山口・海峡メッセ下関「島谷常寛選手凱旋興行!ドラマティック・ドリーム・てっさ2017」
(2017年9月16日(土)■会場山口・海峡メッセ下関)
いそうでいない下関出身のプロレスラー。あまりに初代タイガーマスクが偉大過ぎるためでもあるのだが、その他の選手で全国区になった人間はほとんど記憶していない。それだけにこの日が来ることはある種感慨深いものがった。とはいえ、今日の主役でもある島谷選手が一度DDTをやめたと聞いたときは「これで当分DDTが下関に来ることはないな」と思っていたので、復帰したときはうれしかった。
大型の台風18号の接近に伴い、急遽仕事が前倒しになったため、海峡メッセ入りもぎりぎりに。まあ自然災害ばかりには逆らえない。
時間を数分オーバーしていて、すでに試合が始まらんとしていた。係りの人につないでもらって会長かたチケットを受け取って観戦スタート!
▼オープニングマッチ 30分一本勝負
○遠藤哲哉 vs 伊橋剛太●
7分30秒 逆エビ固め
何気に好カード。今が旬とも言える遠藤と、体型からは想像し難い身軽さと、身体能力を誇る伊橋。これからDDTの申し子になりうる遠藤と、ある意味現在までのDDTを体現してきた伊橋。遠藤が第一線でやっていくためには、単に動ける選手というだけでは長続きしないのだ。そこを見定めていきたい。
試合はやはりこちらの予想通りに伊橋の硬軟自在な攻防に遠藤が手を焼く場面が多々見られた。特に遠藤が得意とする空中弾は伊橋も得意としている分野でもある。しかも伊橋には遠藤にない「お笑いスキル」もある。いかにも精悍な体つきをしている遠藤と比較して、一見だらしなさそうな体つきでありながら、身軽でしかも力強い技を出せる伊橋は、そのギャップで十分存在感がある。こうなってくると勝ち負け云々というより、いかにして試合を支配していたか、いかにしてお客さんの印象に残ったかの勝負になる。
だからこの試合、遠藤が勝ったのだが、印象に残ってはいない。そのくらい遠藤の勝ちは記憶に残っていないのである。
竹下と大きく差をあけられた遠藤はまだまだ一皮も二皮もむける必要がある。単なる運動神経のよい、がたいのいいハンサムボーイというだけでは、生き馬の目を抜くDDTでは生き残っていけないのだ。
▼第二試合 30分一本勝負
KUDO&○坂口征夫&高梨将弘 vs 高木三四郎&大鷲透&平田一喜●
9分21秒 エビ固め
※PK
酒呑童子対大社長チームというのは、ある種DDTを印象付けるにはもってこいのカード。強くてずるくて上手い役者がそろっているだけあって、安心してみていられる。
酒呑童子は三人まとめての入場だが、大社長チームは高木・大鷲が先に入場。マイクを持った大社長が「今、東京で一番人気がある入場」と称して平田を呼び込むと、流れるはジョン・ロビンソンの「TOKYO GO!」。で、当然のように平田が今からでも踊り出さんと意気揚々とリングインすると、リング内外から選手やもとGMまで参加して、平田をボコるというおなじみのシーンを繰り広げる。
高尾蒼馬もそうだが、大社長は「これぞ」と見込んだ選手は自分の手元に置いて英才教育を施すことが多い。一本立ちした高尾は今やDDTのメインイベンターの一人である。そこへいくと平田は結構器用な分、時間がかかりそうだけど、でもダンスキャラの先に見える何かがありそうな選手でもある。
現在進行形のメインイベンターでもある酒呑童子をまとめて抱え上げるなど、相変わらず大社長のコンディションは抜群によい。あれだけ多忙な中トレーニングを欠かさないという点では無言で配下選手への見本にもなっているところが素晴らしい。
試合はいつも通り平田が中盤で踊って形勢逆転・・・・となるはずが、闘うビアガーデンの酒呑童子DAYで、マグナムダンスをマスターしたと思われる坂口は、それを逆手にとって、「GO!GO!GO!GO!GO!GO!GO!」の歌詞に合わせて平田に腹パンをお見舞いするという新しい手段で反撃。結局平田は一回もまともおに踊れないまま、坂口のPKでカウント3つ。
定番をちょっとずつ変えていく工夫もDDTの奥の深いところである。
▼第三試合 30分一本勝負
○入江茂弘&岩崎孝樹 vs マイク・ベイリー&MAO●
9分33秒 片エビ固め
※ビーストボンバー
DDTのすごいところは20代の好選手が続々台頭していることで、入江がすでにベテラン枠に入っているところでもある。しかも試合のほとんどをベイリーやMAO、岩崎が支配しているところで、普通の試合でも十分魅せられるものを提示できるのが団体の大きな強みでもある。
遠藤がぼやぼやしていると、この枠のDNAメンバーはあっという間に追い抜いてしまうだろう。下手したら数年後は竹下の地位だって危なくなっているかもしれない。そこを考えていくと末恐ろしいものがあるのだ。
この試合でも3人が実にいきのいいファイトを展開。中でも岩崎とMAO、ベイリーのしばき合い、意地の張り合いは、若い世代ならではと言っていいだろう。
この中に混じって入江も遮二無二に絡んでいったのが興味深い。キャリアとしては既に中堅ながら、キャリアの浅い世代を相手に、対等な闘いを挑んでいた事には、非常に好感が持てた。
というより入江くらいの危機意識がないと、生き馬の目を抜くDDTでは生き残れないということだろう。若手枠はとうに過ぎた時点で、自ら海外武者修行を試みるなど、ベテランの地位にあぐらをかかない姿勢は、DNA勢にとって入江は良き見本になっているという見方もできる。
いずれにしても4人とも貪欲に成長の歩みを止めていないという点では、この試合を価値あるものにしていたのではないか?と私は思っているのだ。
▼第四試合 30分一本勝負
男色ディーノ&○石井慧介 vs 大石真翔●&勝俣瞬馬
12分49秒 タイガー・スープレックス・ホールド
※下関はゲイタウンとなる。
DDT観戦しだして約9年。狙われないとつまらないけど、狙われたら狙われたで困る男色先生のキス攻撃。ついにその洗礼を受ける羽目になってしまった。まあ、いい記念にはなったけど、下関で狙われるとはなあ(笑)
そもそも闘うより組むことの方が多かったまこりんと男色先生だが、NωA結成後は距離を置いたため、ありそうでない顔合わせになった。
試合前に男色先生がマイクをとり、「あたしたちが勝ったら下関はゲイタウンに。あなたたちが勝ったら、下関のご当地アイドルとして全国を回って下関のために働きなさい!」とわけのわからない条件を突きつけた。
これに対してなぜかNωAはノリノリで、男色先生の出した条件を受諾。かくしてなぜか下関にあまりメリットがなさそうな闘いがスタートした。
ここに全日本プロレス大好きな石井が混じっているのが面白いところ。当然、男色先生と組むからには、石井もホ◯扱いされるわけだが、さすがDDTでキャリアを積んだだけに、そこらへんは手慣れたもの。
しかし、やはり試合巧者の男色先生とまこりんにかかると、元・世界ジュニアチャンピオンも刺身のツマにされてしまう。
結局コーナーに自ら釘付けになった男色先生の生尻に突っ込んでいくいつものパターンに陥ったわけだが、ここで最近はTバック止まりしか出さなかった男色先生の生尻を最後までめくってしまう。かくして誰か男色先生のケツに顔さし挟むか?という争いの果てに、まこりんが見事犠牲になって、「関門トンネル開通」(男色先生・談)と相成った。
これが響いてとどめは石井の必殺技であるタイガースープレックスで完全3カウント!
かくして、予定通り下関はゲ◯タウンと化し、勝ち誇った男色先生は、「ふぐ、うに、あんこう、くじら、そして◯イがこれから下関の名物になるのよ」と勝手に名物化宣言して中締めとなった。
▼セミファイナル 30分一本勝負
佐々木大輔&○マッド・ポーリー vs アントーニオ本多●&樋口和貞
12分16秒 体固め
※ポーリーバスター
8月のモンスターアーミー再結成時になぜかアーミー入りしていた?樋口と、その親玉?アントンのタッグ。樋口を味方につけている割にアントンは盛んにポーリーを警戒する。
例によって「ごんぎつね」の話を持ち出して、ダムネーションをけむに巻こうとするアントンだが、「下関名産のふぐかと思ったらふぐりだった」という下ネタ120%のオチは、かえって相手の怒りに火をつけてしまった。
とはいえ、元々試合巧者の佐々木とアントンが絡めば名シーンになることは疑いないし、樋口とポーリーのぶつかり合いもわかりやすいど迫力で会場を魅了する。ギャグあり、シリアスありの混成スタイルでみせるDDTらしさが詰まったタッグマッチはやはり見応えがある。
だが、あれだけ嫌がっていたポーリーと絡むとアントンも失速。加えて佐々木の援護射撃で樋口と分断されたアントンは、ポーリーバスターにて撃沈。
やはり今のDDTの中でも勢いのあるユニットだけあって、なかなか簡単に攻略できる相手ではない。セミに相応しい試合に仕上がっていたと私は思う。
▼メインイベント 島谷常寛地元凱旋!下関名物ぶちスペシャル6人タッグマッチ 30分一本勝負
○竹下幸之介&彰人&ディエゴ vs HARASHIMA&高尾蒼馬&島谷常寛●
14分56秒 片エビ固め
※ダイビング・ボディープレス
このメンツに混じっても頭一つ小さい島谷。それほどメインイベンターとしての実績も積んでいないため、多分困難な闘いになるだろうな、とは思ってみていた。
7月の小倉大会でも卓越した技能と運動神経を披露した島谷だが、さすがにこの海千山千のメンツの中ではどうしても一枚劣るのは仕方ない。それでもHARASHIMAや高尾がおぜん立てしてくれる流れに何とか乗っていこうと必死になって喰らいついていこうとする島谷。
しかし、現チャンピオンの竹下はある種非情なまでに力の差を見せつけていく。厳しい攻撃に何度も窮地に立たされるものの、スマイルスカッシュの先輩二人が必死になって攻勢に転じようとする。
実は、試合後竹下が明かしたように、単に凱旋という意味以外にこの厳しい攻撃にはそれなりの意味が込められていた、そしてその無言のエールを島谷もしっかり受け取っていたのではないかと思う。
最後こそ力尽きてマットに沈んだ島谷。そこに竹下がマイクで「島谷は一度DDTを逃げ出しました。でもさいたまスーパーアリーナ大会で「もう一度やらせてください」と戻ってきたときはうれしかった。はじめてできた同い年の競争相手だったから」と島谷への思いを激白。
10代からキャリアをスタートさせ、現在も現役の日体大生である竹下には、まわりを見渡すと全員年上の先輩ばかり。同期や後輩も年上が多く、はじめてできた等身大のライバル候補生に胸が躍ったことは容易に想像がつく。
「最後はお前が締めろ」と竹下からマイクを受け取った島谷はしっかりした声で「また次回下関に帰ってきたときはもっと大きくなって帰ってきます」と立てない自分を鼓舞するようにマイク。最後は6人そろってノーサードで大会は終了した。
初の下関大会は実にDDTらしく出し惜しみない内容で、大いに楽しませてもらった。島谷だけでなく若い力の台頭を小倉の時よりはっきりと感じられた大会でもあった。「またあるかどうかはわからない」といっていたけど、ぜひそんなことを言わず、もう一回は来てほしい。地方大会が先細りしていく中、こうして山口県にきてくれること自体が貴重なことなんで、大社長、よろしくお願いします!
そしてぜひ次回は島谷選手にも勝って凱旋してもらいたい!頑張れ!島谷!