[プロレス観戦記]『GAMSHARA FANTASTICA MANIA’2018』〜北九州にメヒコの風を〜

『GAMSHARA FANTASTICA MANIA’2018』〜北九州にメヒコの風を〜7月15日(日) 門司赤煉瓦プレイス

連休2日目のプロレス三昧はがむしゃらプロレス!昨日の華☆激に続いてメキシコ繋がり(今の華☆激にメキシコテイストは殆どないけど…笑)となる本大会は、選手だけでなく、観客もマスク着用ないしはペイントでの入場となる。こいう楽しみ方もまたプロレス。

しかし、私にはメヒコ製のマスクは小さすぎて入らない。何度も試したが頭には入らず、いただいたマスクも人にあげてしまうくらい。だからマスクはコレクションしていないのだ。欲しいけどこれ以上モノは増やしたくないし。

しかもこの日は気温35度。屋外でマスク被るとか自殺行為に等しい。入場開始と同時に入り口にいたゲレーロがマスク着用者にシリアルナンバー入りサイン入りポスターをプレゼントしてくれるのだが、正直入り口ではマスク被りたくなかった。ということでサインもらったら速攻でマスクを脱ぐ。

私が用意してきたマスカラスのお土産用マスクは基本頭がでかい人間でも入るのだが、メガネがかけられないので、ヒモを思い切り緩めてマスクの下にメガネをかけることに。しかし、メガネがマスクで圧迫されて頭が締め付けられるという想定外の事態に!これは正直ヤバかった。

さて、前説とアニソンのあとに登場したゲレーロプロデューサーは、上下背広のパリッとした格好で登場。そのままドン・タッカーコミッショナーを呼び込むのだが、なぜかいつもの「威風堂々」ではなく、メキシコ国歌が流れ、メキシコ国旗のポンチョに、ゲレーロの私物のソンブレロを被ったドン・タッカーがテンションだだ下がりで登場。

それを見たゲレーロは「ドンといえば歌でしょう」と無茶振り。ドンが固辞すると、矛先はSHIGEKICHIリングアナに向かう。しかもイントロだけ歌わせてぶった切り。

そのあと執拗にリクエストするゲレーロに折れたドンがマイクを持つとなぜかゲレーロが用意してきた松山千春の「」を歌わせることに。しぶしぶながら歌い出したら、ようやくノリが戻ってきたドンの歌をまたしてもぶった切るゲレーロ。もはやなんでもありである。

その後「盛り上がってますかー?」のコールアンドレスポンスをドンがやってようやく大会はスタートした。

▼オープン二ングマッチ
①全選手バトルロイヤル
○勝者 TOSSHI
(14分31秒)

第1試合にバトルロイヤルというのは大胆なマッチメイクだが、これはこれで面白い。日本ではボーナストラック的な位置づけにあるバトルロイヤルが、次に出てくる「2試合目」にどう影響を及ぼすか、見ていくのも興味深い。

一応全選手と言いつつ出番の近い力とドランカーXは外されており「ゲスト選手」が別途時間差式で入場するという。

とりあえず混乱を避けるために、急遽この試合だけ実況がつくことに。しかしリング上はカオスなまま。しかも鉄生と陽樹がマスク姿のままやりあうので、余計に混乱する。

土屋クレージーはペイントで大向美智子さんはマスク。そしていつもペイントしているKENTAはスカル・マーフィばりのくちばしマスク。でも黒だと不気味なんだけど、黄色いとなんかこわさは半減。まあ、慣れていないので仕方ないか。

ゲスト選手は、試合がなかったダイナマイト九州が仕事着で参戦。あと、くいしんぼう仮面と謎のマスクマン。1人テーマ曲が鳴っても出てこなかったけど(笑)

結局、最後はYASU、TOSSHI、HIROYAが残るが、幻のメテオロケット連携でHIROYAが退場。最後は往年のジュニア名勝負、YASU対TOSSHIの対決を制したTOSSHIが優勝。

意味合いとしてはなぜやったのかわらないまま終わってしまった。

▼ビバメヒコデスマッチ
②力 雷汰 vs ○ドランカーX
(7分17秒)

これこそ試練の勝負だし、しかもデスマッチ。というかドランカーXの試合は普段からデスマッチみたいなもんだし、あの一升瓶攻撃は先輩選手も散々辛酸を舐めてきたシロモノ。

マットプロレスの対KENTA戦でみせた、凶器を忍ばせてでも勝ちたいという力の執念もスカされる可能性だってあるわけで、更にたちが悪い。

ちなみにこの試合のルールは、レフェリーが劣勢とみなした場合、劣勢と判定された選手がテキーラを飲まなければならない。普通にいけばドランカーXが有利すぎるのだが、試合はなぜか力ばかりが不利になり、ずっと飲まされる羽目に。

ところがこの試合で大化けしたのは、力 雷汰の方だった。普段は遠慮がちで自己主張もあまりしない力が、ゲレーロプロデューサーがノリノリで飲ませるテキーラの力を借りて、まさかの覚醒。

あまりにはっちゃける力の姿には見ているこちらも唖然呆然。正直これがいつもできていたら、力 雷汰はもっと観客に認知される選手になるだろう。

ドランカーXが思い切りぶつかってきたのもあるかとは思うが、それにしても力の覚醒ぶりは想像の斜め上を行きすぎた。

しかし、さすがに度数が高いテキーラを浴びるほど飲んだら、後半エンストするのは仕方なく、最後はドランカーXになすすべなく破れてしまった。

でも力 雷汰の現状でのベストバウトはこの試合だと言っていいだろう。奇妙なルールが試合に生きたという意味でも、この試合は、全大会中でも異彩を放っていた。

▼ジェロニモ復帰戦!!CCLデスマッチ
③〇KENTA & 鉄生 vs ×ジェロニモ & ドラゴンウォーリアー
(16分15秒)

全選手マスク着用か、ペイントが義務付けられている本大会のコンセプトからいうと、KENTAはもともとペイントしてるし、一時期鉄生もジェロニモもペイントしていた時期がある。ドラゴンはもともとマスクマンなんで、問題はないのだが、一般的にイメージされる空中戦主体のルチャからは一番遠い位置にいるメンツ。

だが、正統派再転向前は散々凶器攻撃を得意にしていたジェロニモが、本領を発揮したら面白いデスマッチでは、どうなるかわからない。LCRはアイテム使う反則はあまりしないので、アイテム使った時にどうなるか非常に興味深い、と最初は思っていた。

LCCマッチに使われるLCCとは、チェアー、チェーン、そしてレモン!ラダーじゃないんだ、という意味でも意表を突かれたが、もっと意表を突かれたのが、試合後半まで、全員がアイテムを忘れて試合をしていたことだった。

さすがにプロレスに関しては生真面目な鉄生が思い出したかのように、イスとチェーンを用意していたが、チェーンは結局場外でしか使われなかったし、レモンはとうとう見つからずじまい。

やはり事前に凶器はリング上にセットしておくのがベストだろう。FREEDAMSもそうしてるし、テーブル・ラダー・チェアーでも設営にはそれほど時間はかからない。

さて、試合の見どころはジュニアながら鉄生と真っ向勝負を挑んだドラゴンや、復帰で意気込むジェロニモら、ナスティ軍のキレのよさが目立った。

しかし、やはり第一線でずっとやってきたLCRはトップでやってきた意地もある。特にジェロニモの必殺技ジェロバスターを3発くらいながら、全てキックアウトしたKENTAの打たれ強さには舌を巻いた。

決してジェロニモが行き急いで必殺技を出したわけではなく、タイミングともにフィニッシュを狙える場面だったので、普段クローズアップされにくいKENTAの受けの強さが際立つ結果になった。

とはいえやはりせっかくデスマッチと謳われている以上、効果的に使われていたらもっと面白い試合になったと思う。このメンバーなら十分可能だと私は思う。

▼メキシコ式ノータッチルール6人タッグマッチ
④×TOSSHI & ZAKA & 上原智也 vs ○陽樹 & YASU & 豪右衛門
(16分00秒)

ノータッチルールというので一番わかりやすいと思われるのは、やはりドラゲーのタッグマッチということになるだろう。スタイル的に一番対応できるのはYASUとTOSSHIだろうけど、ジョロキアと組んだTOSSHIがどんな化学変化を起こすのか?

もちろんメキシコでもヘビー級の選手はいるので、ヘビー級もノータッチルールでやるのだが、基本スピード感が要求されるため、ジュニアヘビー級、もしくはライトヘビー級に向いている試合形式なのだ。

そういう意味でいうと闘いの主軸がヘビー対ヘビー、あるいはジュニア対ヘビーになってしまったことで、ノータッチルール特有のスピード感はなくなってしまった。面白いんだけど、前の試合同様、普通の試合になってしまった。

まあ、内容は悪くなかったし、慣れない縛りの中で全員よくやっていたと思う。特にOPG勢はがむしゃらマットを楽しむかのように、イキイキと試合をしていたし、お客さんもルールにあまり縛られずに楽しんでいたから、結果オーライということでヨシとしたい。

▼スペシャルタッグマッチ
⑤○久保 希望 & くいしんぼう仮面 vs ×尾原 毅 & SMITH(トランプ大統領)
(9分42秒)

ベテラン2人にとって何気に試練なカード。そもそもドリームチューバーでSMITHと尾原が組むこと自体がレアなのに、相手がプロ2人。

しかもくいしんぼうが本来得意としているフィールドはSMITHが一番こだわりのあるポイントで、たとえ相手が熟練度したプロのベテラン相手でも、引き下がらないのがSMITHだろう。

逆にくいしんぼうは、スタイルが真逆の尾原に対して、お笑いで撹乱するのか、はたまた普段隠しているテクニシャンぶりを発揮して尾原をきりきり舞いさせるか?

試合は予想の斜め上すぎるSMITHのアメリカファーストが炸裂!マスクはマスクでもゴム製のトランプ大統領のフェイスマスクに、スーツという出で立ちで登場したのだ。さすがにこれには唖然呆然。長年プロレスを観ていても、SMITHのやることだけは未だに予想が当たったためしがない。それだけにSMITHが仕掛けるサプライズは楽しみではあるのだ。

割を食うかと思われていた尾原も、くいしんぼうのサポートで光った。けられた足をアピールして笑いをとるくいしんぼうに、全員が倣う形に。当然KKレフェリーも巻き込まれるわけだが、毎回難易度の高いレフェリングばかり任されているのはある種気の毒ではあった。最もK Kレフェリーにはこのあと、更なる受難が待っていたわけだが(笑)

予想の斜め上という意味では、目立たなかったが、久保も数々のマスクマンとも素顔ともまた違う選手になっていたのも不思議だった。普通の試合なのに普通じゃないことだらけで、まさにこの4人にしかできない試合だったと私は思う。お見事でした。

▼キャプテンフォール6人タッグマッチ
⑥HIROYA & ○美原 輔 & サムソン澤田 vs ×BIG-T & 乱魔 & 土屋クレイジー
(15分25秒)

チームという点では明らかにドリームチューバーが普段からコミュニケーションができている分、連携でも有利だろうが、gWo連合軍とて、先にライジングHAYATO を破り、2代目四国統一チャンピオンになった土屋クレイジーにしても、2月にOPGのシングルチャンピオンになった乱魔にしても、実力的には申し分ない。

問題は休火山から死火山にならんとしているBIG-Tである。そのBIG-TはHIROYAがキャプテンになるや、自らキャプテンに立候補。いつにない積極性に不安もあったが、ともかく試合はスタート。

しかし、BIG-TとHIROYAのぶつかり合いは長身ならではのど迫力を生み出していた。加えてマスクを被ったことで、どことなく頼りなさげな表情が消えてしまい、不気味さすら漂わせている。これは新しい収穫だった。

試合は美原と澤田が効果的に敵陣営を分断。もっとも遠ざけたいであろう乱魔をまず排除。さらに澤田は同じ総合のベースがある土屋と激しくやりあう。BIG-TはやはりHIROYAを意識しているのか?普段だと中盤でスタミナ切れするところなのだが、なんとか後輩に食らいついていった。不思議なもので表情は全くみえないのに、感情が試合からみえてくるのだ。これもマスクの威力というやつだろう。

土屋もいつもの土屋というより、どことなく幻想的な雰囲気を醸し出していたし、たまには別キャラというのも悪くはないのかもしれない。

試合は美原が粘るBIG-Tをスタナーで仕留めて、まずタッグの前哨戦は勝利という形になった。だが、しばらく遺恨は残りそう。勢いとコンビネーションでは美原も澤田も力をつけてきているので、王者にしてもあなどれない相手ではあろう。

▼GWAジュニアヘビー級選手権試合(60分3本勝負)
⑦〈挑戦者〉MIKIHISA vs トゥルエノ・ゲレーロ〈王者〉

がむしゃら史上初の三本勝負。近年では6月の新日本でケニー対オカダのIWGP戦が時間無制限3本勝負で行われたことでも記憶に新しいところ。もともとNWAやAWAが全盛期の時は、三本勝負という試合形式は普通にあった。

ではなぜ三本勝負がすたれたのかというと、選手の負担増やプロレス自体の変化もあるのだが、1本目をとって、2本目でイーブンになったあとの3本目が反則、もしくはリングアウトで終わることが圧倒的に多かたことがあげられよう。

ごくまれに時間切れ引き分けで王者が防衛ということもあるにはあったが、基本選手が疲れるわりには、お客側にとって不完全燃焼になることが多々あったからだ、と私は考えている。まあ、これは日本での話なんでメキシコでは現在でも普通に行われている。

まあ、私も映像で3本勝負を数えきれないくらいみているけど、三本勝負というのは、たぶん90年代にAAAがマニアツアーできたとき、最終戦の博多でみたくらい。しかも三本勝負のキャプテンフォール8人タッグだったので、シングルの三本勝負を生観戦するのはこの試合が初めてになる。

1本目 〇MIKIHISA(6分29秒)×トゥルエノ・ゲレーロ

さて、入場時オレンジを基調にしたマスクをかぶって登場したMIKIHISA。普段はマスクをかぶって試合をしているわけでもないし、三本勝負という試合形式もあきらかに挑戦者が不利な条件がそろっているのだが、それでも、序盤から全力ファイトで攻め込んでいく。

いわゆる極楽固めの形にもっていったMIKIHISAはそのまま、馬乗りになって顔や首を決めるのではなく、ゲレーロを反らせて腰を痛める作戦にでた。これは奏功して無理に我慢しないでギブアップしたゲレーロの判断もよかったと思う。だいたい三本勝負の一本目はこういうことになりやすい。

2本目 〇トゥルエノ・ゲレーロ(2分46秒)×MIKIHISA

で、1本目を捨てた選択をしたゲレーロに対して、MIKIHISAはセコンドの豪右衛門が試合に介入。俄然挑戦者有利かと思いきや、これでチャンピオンの怒りに火を注いだ結果になった。意外にも短期決戦で二本目はイーブンに持ち越した。

3本目 〇トゥルエノ・ゲレーロ(7分06秒)×MIKIHISA

あまりに執拗な乱入を繰り返すgWoに対して、激怒したKKレフェリーは全員退場を命じた。「セコンドについているだけだろ!」と食い下がるgWoに対して、和田恭平ばりの毅然とした態度で強制退場を命じられ、しぶしぶ下がっていくgWoに、ゲレーロが怒りのトぺ弾で全員を吹っ飛ばした。

ここで勢いがついたのか、三本目は終始ゲレーロペースになってしまったのだが、誤算だったのはMIKIHISAが慣れないマスクを二本目までかぶり続けたことだった。乱入のどさくさに紛れて脱いでしまえばよかったのに、妙に生真面目なところがあるMIKIHISAは三本勝負の直前までマスク姿でファイトしていたのだが、三本目は明らかにスタミナぎれしていた。

当日の暑さも手伝って、本人が思った以上にスタミナの底が付くのも早い感じがしたし、いろいろ誤算だらけだったのは仕方ないにしても、MIKIHISAはハンディを背負って頑張ったと思う。

〈挑戦者〉×MIKIHISA (1-2)〇トゥルエノ・ゲレーロ〈王者〉(王者が4度目の防衛に成功)

試合後、ゲレーロに二年前王座を奪われたYASUがリングインして、2年前のリベンジを宣言。相方の土屋クレイジーがシングルのベルトをもったことに触発されたか、二冠を狙ってきた。これに呼応して次期挑戦者はYASUに決定。

まあ、細部にはさすがになれないことも多々あったろうし、はじめて尽くしにしてはよくやったと思う。ハンディとは言ったけど、プロデューサー兼任でメインイベントもタイトル戦もこなしたゲレーロはやはり只者ではない。

できたらまたこういう企画をやってほしいと思っている。マスク観戦は初の体験で正直かなり疲れたけど、でも面白かったし、次回があるならぜひまたみてみたい。お疲れさまでした。

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