プロレス的音楽徒然草 WILD MOW-MOW (ワイルド・モーモー)
著名な日本人ルチャドール
今回は、小さな巨人・グラン浜田さんが新日本プロレスに上がっていた時のテーマ曲「WILD MOW-MOW(ワイルド・モーモー)」のご紹介です。
グラン浜田さんは、その軽量な体を生かしてメキシコのルチャリブレを活動の中心としている選手です。
最も著名な日本人ルチャドールの1人とされ、日本およびメキシコにおいて顕著な活躍を残しています。
ミスターポーゴさんと一緒に、日本プロレスおよび新日本プロレスへ入団志願に向かう際に付き添いで同行し、柔道での実績を買われて新日に入団します。
柔道のオリンピック候補選手
浜田さんはもともと柔道のミュンヘンオリンピック候補選手であり、その気の強さも相まって、昭和新日本プロレスの中でも有数の猛者でした。
治安の悪いメキシコで成功した理由に、プロレスセンスの良さとシュートの強さが比例していたからだと言われています。
新日本→UWF→全日本→ジャパン女子→ユニバーサル→みちのく→新日本→全日本など、日本国内でもさまざまな団体で活躍しました。
「T-WAVE」の二曲目
さて、「WILD MOW-MOW(ワイルド・モーモー)」の作曲ならびに演奏は、プロレスファンにもおなじみのギタリスト・高中正義さんです。
天龍選手が長く愛用した入場テーマ曲「THUNDERSTORM」の作者としてプロレス界では広く知られています。
この「THUNDERSTORM」の入ったアルバム「虹伝説 THE RAINBOW GOBLINS」(1981年3月発売)の一作前に発表されたアルバムが「T-WAVE」(1980年6月)で、「WILD MOW-MOW」はこちらの2曲目に収録されています。
「MOW-MOW」って実は
「T-WAVE」は当時のオリコンチャートにてトップ10にランクインし、1980年度年間34位を記録したヒットアルバムです。
「WILD MOW-MOW」の「MOW-MOW」ですが、実は牛の鳴き声の「モーモー」なんだそうです。
曲調からは牛っぽさは感じないんですが、この「T-WAVE」には曲のテーマメロディをもじった「空ド白ソ」という曲も収録されており、おそらく高中さん独特の「遊び」ではないかと思われます。
「THEME FROM FIREPOWER」は
ちなみに「空ド白ソ」は、正確には「ソラドラシラソ」の音階なんだそうです。
みちのくでは浜田さんの入場テーマはハウンドドッグの「BAD BOY BLUES」だったんですが、個人的には、「WILD MOW-MOW」かGATO BARBIERIの「THEME FROM FIREPOWER」が浜田さんのテーマ曲としては印象深いですね。
ただし「THEME FROM FIREPOWER」は新日時代にスタン・ハンセン選手も使用していたので、浜田さんのイメージとは少し違う感じがしますね。
ガトー・バルビエリ(Gato Barbieri)は、アルゼンチン出身のジャズ・テナー・サクソフォーン奏者、作曲家です。フリージャズやラテンジャズの大家として知られているミュージシャンです。
80年代のフュージョンブーム
高中さんの楽曲は80年代当時のフュージョンブームによって、よく街中やテレビ、ラジオでかかっていました。
フュージョン(jazz fusion、fusion)は、1970年代半ばに発生した、ジャズを基調にロックやラテン音楽、電子音楽、時にはクラシック音楽などを融合(フューズ)させた音楽のジャンルのことです。
一般的にはジャズの派生ジャンルとされていますが、ロックテイストなものやラップも取り入れるなどかなり柔軟性の高い楽曲もあるのが特徴でした。
メインじゃなくなるから嫌
高中さんは当初ソロデビュー時は、自分でボーカルを取るつもりでしたが、ご本人いわく「先天的に音痴」とのことから、ギターでメロディを取る現在のスタイルになったそうです。
アルバムにはボーカリストを迎えた曲も存在しますが、基本的には自身のギターがメインとなっています。
これは高中さんが「上手いボーカルを入れればいいんだけど、そうすると自分がメインじゃなくなるから嫌」という理由によるものだそうで、どうも最初からフュージョンをやるというより、結果的にフュージョンになったといった方が正解のようです。
ところどころ不明な点も
プロレスラーの入場テーマ曲が、全選手へ完全定着したのは、90年代からなので、新日本入門時には浜田さんのテーマ曲はありませんでした。
ですから、長いキャリアの割には使われたテーマ曲も少なく、またところどころ不明な点も多いのです。
ただ先程もいいましたように、個人的にはWILD MOW-MOW (ワイルド・モーモー)が一番浜田さんのテーマ曲として相応しいのではないか、と考えています。