強さがありながら
今回の仕事人列伝はかねてからとりあげようと、私自身が勝手に盛り上がっていた吉村道明選手です。個人的にはプロレスで誰それが最強という言い方は好きではないし、興味もないのですが、あえて誰かを選出するならば、迷わず私は吉村選手を推します。
そこまでの強さがありながらスター選手の引き立て役に回ったという点でも大いに評価できるためです。今回は主に吉村選手の強さについて、あえて考察しようと思います。
元祖ゴッチ式
動画はあちこちの記事で転載している対カール・クラウザー(カール・ゴッチ)戦の模様です。
正直対戦相手としては何を仕掛けてくるかわからない外国人選手と闘うというのは嫌だったでしょう。そこで、白羽の矢が立ったのが吉村選手だったわけです。
中盤では元祖ゴッチ式パイルドライバーを決めれれてます。通常のパイルドライバーと違い、落とすというより放っぽらかすよな投げ方は、受け身に難がある選手なら首を痛めるか、下手したら骨折ものでしょう。
受けの強さ
しかし吉村選手はきれいに受け身をとっています(それでもダメージがないはずはないのですが)。
最後は日本初公開のジャーマンスープレックスで吉村選手がやられるわけですが、日本人で初めてこの技をくらいながら試合後立ち上がっている吉村選手の受けの強さに私は驚嘆せずにはいられませんでした。
この時代の試合にしては吉村選手が、首への攻撃を主に受けていることがわかると思いますが、次に紹介する対キラー・コワルスキー戦も注目に値します。
確かな技術
試合映像は三本勝負のダイジェストですが、序盤のグラウンドで片逆エビからアキレス腱をとってデスロックへ移行する吉村選手のグラウンドテクニックが確認できます。
コワルスキーも必死でロープに逃げようとしますが、そこを簡単にエスケープさせない確かな技術が見える名シーンです。
白眉は一本目ラストでコワルスキーがコーナーマット最上段に吉村選手を投げ捨てるのですが、この時代の試合で、あからさまな頭部、頸部への荒っぽい攻撃というのはかなり珍しいことだと私は思います。
受けに信頼がないと
一本目はコワルスキーの勢いに屈した吉村選手ですが、二本目では生きのいいドロップキックを披露し、強豪コワルスキーをたじたじとさせています。
1対1で迎えた3本目はコワルスキーが反則暴走で吉村さんの反則勝ちで終わるわけですが、来日前から「キラー」の異名通り対戦相手を「病院送り」すると噂高い選手の来日一戦目を任されるというのは、よほど受けに信頼がないと試合にならなかったでしょう。
初物との試合
後年、中堅選手が主に任されるようになった初物との試合ですけど、当時は吉村選手が一手に引き受けていました。日本プロレス屈指の技巧派として、カール・ゴッチほかに、キラー・カール・コックスの初来日に際しても第一戦の相手として起用されています。
当然コックスの必殺技であるブレーンバスターを日本で最初に食ったのも吉村さんだったわけです。
力道山より上
なお、生前ゴッチさんは吉村選手を力道山より上だと評価しており、初来日の1961年に13回、2度目の1966年に1回対戦してますが、戦績は吉村さんの1勝3敗9引分1ノーゲームで、ゴッチさんから2フォール勝ちを奪った唯一の日本人レスラーでもあります。
これはあの猪木さんでもなしえてない偉業でもあり、またその対猪木戦において吉村選手は19連勝を飾ってもいます。猪木さんがデビュー間もないころの話だったとはいえ、これは実力がなければでこいないことでもあります。
現役晩年はその猪木さんのパートナーとして引き立て役にも回っている吉村さんというのは、本当の強さをもったプロレスラーだったことは疑いようがないでしょう。
コメント