GLEAT・G PROWRESTLINGVer.55 -JUST BEFORE THE TDCH-
(2023年6月24日・土・西鉄ホール・観衆331人)
イントロダクション
昨年11月以来のGLEAT。最近、スケジュールを押さえにくくなってしまったといわれている西鉄ホールでの開催は例年通り。
GLEATの翌日には東京女子が来るというまさかのホール2連戦となったため、プロレス生観戦歴40年目にして初の博多一泊観戦を決行することに。
以前なら意地でも自宅に帰っていたが、さすがにがんになってまで同じことをしていたら、かかる肉体的負担は日常生活に支障をきたすレベルになる。
そもそも外泊観戦は20代の頃当たり前のようにやっていた。ただ、あの時代は体力ありきの外泊だったので、だいぶ事情も異なる。
さて、今回のGLEAT博多大会は4回目。注目はLIDET UWFの試合がない、純粋なG PROWRESTLINGの大会ということ。
中でも注目なのは、OWEにも参戦していた中国人選手のジュンジェ。抜群の運動神経で驚愕させられたアクロス福岡大会以来の登場にワクワクがとまらない。
東京ドームシティホールまでの前哨戦シリーズにされたのは、しっくりこないが、全戦ほほYouTubeで無料配信しているGLEATには文句を言える立場にない。
さて、博多大会がいち地方大会になるのか、単なる前哨戦で終わってしまうのか?しっかり見届けたい。
下関→天神
最初は、西小倉の格安駐車場に停めるつもりだったが、運良く小倉駅近くの終日500円パーキングに駐車。
二日間で1000円なら歩く距離も考えてベストなチョイス。
今回は一日限定の新幹線割引チケットが使えないため、久々に特急ソニックで博多に向かう。実は小倉以外だと黒崎と折尾(便によっては、停車駅が異なるけど)しか止まらないので、殆ど新幹線と変わらない。
開場
西鉄ホールに着いたら、すでにロビーは解放されており、バルクオーケストラとBLACK GENERATION INTERNATIONALの売店にはたくさんのファンがいた。
やはり選手がいる売店は格別である。まあ、選手との距離が近すぎるという欠点はあるのだけど。
開場すると、YouTubeでは流せないDJヤマムラタケヒロのオープニングアクトがスタートしていた。
なぜか、選曲の中に大鷲さんのテーマ曲が流れたのだが、単なる偶然だろう。
第一試合
G PROWRESTLING【タッグマッチ】20分1本勝負
Yutani&○エル・ベンディート(10分29秒シューティングスタープレス→片エビ固め)伊藤貴則&鬼塚一聖●
注目は、Yutaniと組むメキシコよりの刺客、エル・ベンディードである。B.G.Iのインターナショナル戦士は何気に粒揃いであり、それがGLEATの中で勢力拡大できている一因なのは間違いないだろう。
さて、先だっての大阪大会で無事やんず家入りした鬼塚こと鬼やん。
やんず家Tシャツが似合い過ぎている!正直、#STRONG HEARTSだとあの熱さは浮いていたのだが、やんず家だとむしろハマっているから不思議だ。
しかし、対するB.G.Iは全員集合し、何かあれば一悶着起こす気満々。
だが、試合が始まってみれば観客のハートを鷲掴みにしたのが、エル・ベンディード。
まるで無重力かのような、ふわっとしたシューティングスタープレスに、会場がどよめく。188センチという長身でこれをやってのける身体能力はバケモノとしか言いようがない。
確かに近年は飛べるヘビー級は珍しくないのだが、ルチャドールらしさも十分に備えており、まさにB.G.Iの秘密兵器である。
加えて逆輸入ルチャドール、Yutaniとの連携もバッチリはまり、勢いで押し切ろうとしたやんず家を実力でねじ伏せた。
6.15全日本で骨折したため、欠場を余儀なくされた石田が「ラーメン屋、とっとと帰れ!」と勝ち誇り、ユニット抗争でのB.G.IがGLEATの覇権どりを高らかに宣言した。
第二試合
G PROWRESTLING 【3WAYマッチ】20分1本勝負
○児玉裕輔(7分24秒マッドスプラッシュ→片エビ固め)飯塚優●
石田の骨折により、当初組まれていた3WAYがシングルに変更。やんず家のたまやんこと児玉は、こういう第二試合を任せられる「中堅どころ」の試合ができる数少ないレスラー。
やんず前掛けを見せびらかしつつ、若い飯塚を上手に手玉にとるあたりは、したたかでうまい。
全試合がこってり味だと胃もたれしてしまうけど、第一試合からいきなりフルスロットルの内容だったから、余計に印象に残った。
多分当初の予定通りに3WAYでやっても児玉が飄々と勝ち抜けただろう。
でも、シングルマッチになったことで飯塚の若さと、児玉のうまさがちょうどいいコントラストになっており、これはこれで見応えある試合になっていた。
飯塚にとっては若いうちにこうした試合で経験値を積む事で、後々キャリアで生かされてくるだろう。
第一試合のすごさと、第二試合は裏表でセットになっていた、と私は思っている。こういう試合があると大会は引き締まるのだ。
第三試合
G PROWRESTLING 【タッグマッチ】20分1本勝負
○ウナギ・サヤカ&AKARI(9分31秒、これより我は修羅に入る!)細川ゆかり●&ライディーン鋼
一昨年は入院中で見られなかったが、おそらくGLEAT女子としての細川は博多初登場。大黒柱だった宮城がいなくなり、シングルをやった因縁で対角線には今をときめくウナギ・サヤカがいる。
彼女の試合を見るのも、東京女子の博多スターレーン大会以来。
あの頃はまさか彼女がこんなスタイルの選手になるとは想像もしていなかった。ある意味楽しみな試合でもある。
ちなみに、類似したカードが東京ドームシティホールでも組まれているらしいが、この組み合わせは、敵にいるはずのウナギが、細川に塩を送り続けるという謎の構図がみえる抗争になっている。
この中で、純粋なGLEAT所属は細川ひとりなんだが、なぜか4人並ぶとGLEAT対スターダムに見えてしまうから不思議である。
映像越しだと試合が進むにつれて、だんだん華がなくなっていくような感じがするウナギだけど、この日は謎の上から目線と、妙な大物感が最後までなくならなかった。
博多初登場のAKARIは、スターダムでいうところのテクラタイプにみえた。
こちらもウナギのサポートをしながら、うまい具合に立ち回っていた感じがした。
2人とも我が強いとバランスが悪くなるんだけど、チームとしても機能していたし、こういう試合には必要な人材だな、と思えた。
Pure-J単体ではなかなか福岡凱旋ができないライディーン鋼もパワーではウナギ組を圧倒するものの、今一つダメージを与えきれない。
我闘雲舞だと相撲好きも含めてキャラが立っていた細川も、GLEATの看板を任せるにはもう少し修行が必要だろう。
最後は、ウナギが細川の好きな相撲を使って「どすこい」締め。まだ休憩前でもなんでもないのに、勝手に中締めしてしまった。さすが傾奇者!
第四試合
G PROWRESTLING 【シングルマッチ】20分1本勝負
○渡辺壮馬(6分21秒ドロップキック→片エビ固め)ジュンジェ●
WRESTLE-1でマスクマン、ペガソ・イルミナルとしても活躍していた渡辺壮馬。空中戦を得意とするジュンジェの相手としてはもってこいの選手である。
とはいえ、若い選手同士なのでどっちかがいいところを引き出すというより、「こいつにだけは負けたくない」という意地の張り合いを期待したいところである。
久々登場のジュンジェは、キレもいいし、以前よりプロレスに順応した感じがみえた。
そして、渡辺もペガソ時代を彷彿とさせる動きでこれに対抗。
序盤は非常にいい感じで進んでいき、名勝負を予感させたが、事はそう簡単には進まない。
渡辺がロープ側で放った、打点の高いドロップキックを受けたジュンジェの動きがピタッと止まり、そのまま片エビで3カウント!
多分どちらかのドロップキックが、いいところに当たり過ぎたのだろう。実戦という事ではおそらくコロナ禍では充分な試合もしていなかったはず。
ジュンジェの動き自体は悪くはなかったが、ブランクによる試合勘のズレまでは修正出来なかったのだろう。
だから、プロレスは難しい。こういう事が起こり得てしまうんだから、こちらの期待とは裏腹な結果もまた必然。
カード自体は期待値が高かっただけに、なんとも残念な結末になってしまった。
第五試合
G PROWRESTLING 【タッグマッチ】20分1本勝負
BULK ORCHESTRA vs BLACK GENERATION INTERNATIONAL
○フラミータ&ハートリー・ジャクソン(11分14秒フェニックス・スプラッシュ→片エビ固め)河上隆一&チェック島谷●
60seconds対BULK ORCHESTRAのユニット対抗戦。バルクがヒールだった時代はまだしも、B.G.Iが台頭してきた現在、ややテーマとしては薄い感じがしなくもない。
しかし、ここへきてSNS上にてチェックとリーダーがいざこざを起こしている様子。
ここから一気にバルクが不穏な空気にならないといいのだが・・・
開場前は仲良くサイン会をしていたチェックとリーダー。
しかし、ユニット解散をかけた60secondsとの抗争で負けが込んでいるバルクのリーダーとして、河上は責任を感じている様子。
最初こそ連携も冴え渡っていたバルクだが、今最も勢いにのるB.G.Iは、少しのミスも見逃さない。
しかも、フラミータのスピードとジャクソンのパワーが上手く噛み合っており、これを切り崩すのは、なかなか簡単にはいかないところ。
以前なら自分のペースに持ち込めば勢いでどうにかできていたバルクだが、意外なところで落とし穴が待っていた。
ロープ側に詰めたフラミータにバルクが連続ラリアットを決めていくのだが、タイミングが少し早かったリーダーが、チェックにも腕爆弾を誤爆!
そのまま、反撃に転じたB.G.Iは、フラミータの鮮やかな空中弾でチェックからピンフォール勝ち。
まさか、試合前のマイクがフリになっていようとは思いもよらず、バルクは痛い黒星を喫してしまった。
第六試合
G PROWRESTLING 【6人タッグマッチ】20分1本勝負
G-INFINITY前哨戦
カズ・ハヤシ&○田中稔&池本誠知(10分0秒、ミノルスペシャル)斉藤ジュン&斉藤レイ●&KONO
このカードはGLEAT対全日本プロレスの対抗戦である。
それにプラス、田村&チェックからキャリア初となるタッグ王座を奪取し、第三代G-INFINITY王者になった斉藤ブラザーズと、次期挑戦者に名乗りをあげているカズ&稔の前哨戦というカードにもなっている。
注目は元DEEPウェルター級王者であり、GLEATの関西大会ではよく登場する池本の博多初登場であるが、いかんせん斉藤兄弟+KONOという超巨漢相手にどれだけ自分の持ち味を生かせるか?
しっかり見ていきたいと思う。
コールと同時にVOODOO-MURDERSの3人がカズ組を急襲。いきなり荒れた展開から試合はスタート。
場外戦やラフファイトで、攻勢に回ったブードゥーは、体格差で圧倒しようとするが、カズ組はスピードと連携でこれに対抗。
池本は体格的な不利もありながら、総合格闘家経験もあるKONOとは、自分の土俵で勝負するなど、終始攻めの姿勢でチャンピオンチームに肉薄。
スピードで撹乱し、寝かせてしまえば体格差は関係ない。
このあたりは海千山千のキャリアという武器をカズ組が目一杯使ってきた、といえるだろう。
最後は生で見るのもいつ以来ぶりになるのか?ミノルスペシャルがバッチリ決まり、前哨戦は100歳コンビの快勝。
カズは興奮しすぎて試合後のマイクがグダグダになっていたけど、体格差を埋められる武器をもつベテランコンビが、タイトル奪還なるか?楽しみになってきた。
この試合のあと、10分間の休憩。ここまでいい感じで試合が進んでいたし、箸休めタイムはやはりあると見ている側もありがたい。
《セミファイナル》
G PROWRESTLING 【タッグマッチ】20分1本勝負
#STRONGHEARTS vs BLACK GENERATION INTERNATIONAL
T-Hawk&○エル・リンダマン(14分54秒ジャーマンスープレックスホールド)鈴木鼓太郎●&エンペラドール・アステカ
熾烈を極めるB.G.Iと#STRONG HEARTSのユニット対抗戦。鼓太郎もB.G.I入してからは初の博多だし、パートナーのエンペラドール・アステカは4月に渡辺壮馬とタイトルマッチをやっている実力者でもある。
エル・ベンディートも含めてB.G.Iが連れてくるルチャドールにはハズレがいないので、楽しみな一戦でもある。
昨年の11月ではまだユニット名も明らかになっていなかったB.G.Iが結成一年も満たない中で、それまで一番勢いがあったといってもいいバルクを蹴散らかさんとする勢いには脱帽するほかない。
この日、会場には鈴木鼓太郎応援団がきており、当然B.G.Iに肩入れしたコールをしていた。
しかし、対戦相手が人気の#STRONG HEARTSということもあり、彼ら以外の会場中はT-Hawk&リンダマンコールで後押し。
ここで人気だったのは、九州の有名人じゃない方のアステカ。
割と独特な形状をしたマスクといい、空中戦より打撃主体の試合運びといい、非常に癖になりそうなルチャドールだったのが、印象的。
特にT-Hawkとの打撃合戦は非常に見応えがあり、見ていて非常に盛り上がった。
途中にB.G.Iも総出で乱入し、会場はさらにヒートアップ。
鼓太郎とリンダマンの絡みも面白くて、リンダマンがタイトルホルダーだった時にシングルで見たかったと思わせられる内容になっていた。
フィニッシャーのジャーマンは、わりとありえない体勢からリンダマンがぶっこ抜いてのもので、鼓太郎も想定していなかったのだろう。
あれだけのキャリアがある鼓太郎を一撃で仕留めらるとは、おそるべき必殺技といえよう。
やはり、決め技に説得力があるレスラーは強いな、と改めて痛感させられた試合だった。
《メインイベント》
G PROWRESTLING 【6人タッグマッチ】30分1本勝負
60seconds vs BULK ORCHESTRA
○田村ハヤト&KAZMA SAKMOTO&クワイエット・ストーム(18分36秒ラリアット→片エビ固め)井土徹也&頓所隼●&佐藤恵一
今勢いにのるGLEATにあえて注文をつけるとしたら、試合時間が長いことになる。
2022年11月の大会のメインは時間無制限の3WAYという長く感じる試合だったので、途中から集中力がきれてしまった。
この試合も長時間にはなるだろうが、ユニットの特色を生かしたぶつかり合いになるのは間違いなさそうだし、期待してみてみたいと思う。
来る7月に開催されるTDCホールで、負けた方のユニットが解散となる対抗戦。
特にバルクはリーダーの不調?で、既に黒星を重ねてしまっただけに、メインまで負けるわけにはいかない。
しかし、60secondsにしてもそれは同じで、こちらも崖っぷちにいるのは間違いない。
試合はスピードの60、パワーのバルクと好対照なカラーがぶつかり合う好勝負。
解散がかかっているだけに、両軍とも必死だし、それが見ている側にも伝わる内容だったと思う。
しかし、バルクにスピードがないわけではなく、ちゃんと60の動きにもついていけてたし、加えて体格差にモノをいわせてくる。
こうなると、だんだん60の方が不利になってくる。連携が五分五分なだけに、最後はパワー差が明暗をわけたといえるだろう。
試合後のマイクで勝ち誇る田村は、勝手に解散決定と決めつけた60secondsに最後の挨拶をさせる余裕っぷり。
もちろん井土たちも解散する気はさらさらなくて「大好きな博多に60secondsとしてまた戻ってきます」と勝利宣言。
個人的には、最後の締めにクワイエット・ストームの姿がなかった事は気になった。
これは何かの前振りか?それとも杞憂なのか?
後記
今回、これまで続けてきた博多大会の満員記録が途切れたのだが、これは旗揚げ以来初となる声出し応援可能にして、全席フルスペース仕様にしたためと思われる。
会場の雰囲気は過去一盛り上がっていたし、次の11.18博多大会の発表には会場から歓声が上がっていた。
それくらいGLEATは博多に定着したとみて間違いない。
懸念していたUWFルールの試合も、今回はなくて正解だったかもしれない。
G PROWRESTLINGのクオリティ自体は非常に高いものがあり、しかも今回はそれぞれ試合のカラーも異なり、バラエティに富んでいた。
今回はスケジュールの関係で事前の流れがわからないまま観にきたけど、それでも問題なかった。
CIMAがいないのは残念だったが、欠場の石田は骨折をおしてセコンドについていたし、満足度は高かったと思う。
ただ、チケット代も結構かかるため、グッズにかけられるお金がないのもまた事実。
実際、年齢的にも断捨離を考えないといけないので、新しいグッズはなかなか買えないのが悲しいところ。
とはいえ、次回大会も決まったし、次もまた楽しみにして観に行きたいと思う。
連戦は勘弁してほしいけど。