GAMSHARA SPRING DASH
(2023年4月16日(日)門司赤煉瓦プレイス)
イントロダクション
一月以来のがむしゃらプロレス。3月のマットプロレスを観戦している分、久しぶりという感じはしない。
しかし、一月と大きく違うのは母が実家にいないことである。この差はでかい。
正直母が肩を脱臼した時点で、自宅介護は限界になっていたし、デイサービス利用だと帰りの時間を気にしながらになるから、おちおちプロレスも楽しめない。
そこから解放されたはいいが、いきなり緊張状態が弛緩したせいで、しばらく身体がいう事をきかなくなり、なかなか思う通りの生活が送れずにいた。
さて、2023年で20周年になるがむしゃらプロレスだが、いくつか課題がないわけではない。
観てるだけの側は無責任に贅沢なので、ついつい欲張りになってしまうが、これはサガみたいなものである。
一時期は雨後の筍みたいに新人選手がデビューしていたがむしゃらプロレスも、KENZOとHAGGARのデビュー以降は、新人が出てきていない。
KENZO&HAGGARが上にいくためには、下からの突き上げがあると一番いいし、ファン側からみても受け入れやすい。
しかし、新人がでてこないとKENZO&HAGGARが一番下にいる事実は変わらないので、ほぼ強引にランクアップしなければならない。
さて、それが吉と出るかどうか?
下関→門司赤煉瓦プレイス
母がいた時はギリギリまで家を出られなかったが、久々に開場2時間前に出発。
がむしゃらプロレスの場合、知り合いが早めに駆けつける率が高い。
コロナ禍真っ只中だと、事前待機にも規制が入っていたけど、徐々に緩和されて現在に至っている。ありがたい話である。
予報では午後から雨になるという。到着してみたら門司は強風。おまけに寒い!4月とは思えない陽気である。
それでも開場まで談笑していたら、あっという間に時間がきてしまった。
オープニング
今回はコロナ対策は消毒のみ。開場時間も30分前だったので、気付けばオープニングアクトの時間に。
オープニングはSMITH代表とゲレーロ副代表のコンビが登場。次回大会の告知やイベント試合の決定など、少しずつ日常が戻り始めている感じがした。
マニア仕様だとここからユニットごとの小競り合いなんかがあるのだが、通常冬にやる通常大会はそれもなく、割とサクサク進行していった。
第一試合▼Bring HAGGAR Level UP!(15分1本勝負)
×HAGGAR vs ○上原智也
(5分23秒:変形ブレンバスター)
KENZOの場合は豪右衛門が引き上げる形で、タッグタイトル挑戦となったが、HAGGARの場合は、実力者・上原とのシングルが組まれた。
この大会は、要するにKENZO&HAGGARが若手枠を卒業することがテーマであり、クリアできれば晴れて看板選手の仲間入りとなる。
果たして上原の「査定」はどういう答えを出すだろうか?
上原がリングインしたと同時に 、HAGGERが背後から襲いかかって試合はスタート。
先制したと言うと聞こえはいいが、 いきなり襲いかかった新人がそのまま勝てたパターンというのはまず見たことがない。
案の定、場外戦で優位に立った上原はそこから押し気味に試合を進めていく。
上原も伊達にOPGで長くトップを取ってきたわけではないというところを見せつけていく。
パワーでも テクニックでもまだトップと争うところまでは行けてないHAGGERの実力が、ここであらわになってしまったように思う。
試合を長くしようと思えばできたかもしれない。
しかし あえて5分という短い時間で決着をつけたという点では、上原が若い芽をつぶしておこうという目的で終わらせたという風にも解釈できる。
試合後の上原には手応えを感じているように見えたが、同時にHAGGERがまだ トップ戦線で戦えるところまでは来ていないという点も明らかになってしまった。
やはり彼らの下に続く新人育成は急務だろう。がむしゃらの景色を変えるには、KENZOやHAGGERがトップに立つ前に、彼らを脅かす後輩の存在がほしいところである。
第二試合▼日米頂上決戦(?)(疲れん程度1本勝負)
×ダイナマイト九州 & ×パンチくん vs ○ポール・ブレイザー & ○SMITH
(18分13秒STF)
コロナ禍前に広島で開催された西日本社会人サミットでお披露目されていたポール&SMITHのアメリカンタッグ。
対するはがむしゃらの疲れん程度を長年支えてきた九州&パンチくん。四人が四人とも自由人だし、忖度しそうにないため、全く内容が予想できない。
先に出てきた九州&パンチくんは、リニューアルした九州のテーマ曲に合わせて、合いの手を強要するといういつものムーブで会場を盛り上げる。
片やアメリカンコンビのポール&SMITHは、 USエキスプレスのテーマ曲でもある「リアルアメリカン」で入場。
がむしゃらには初登場となるポールだが、星条旗カラーベースで、鏡文字で「門司」と書かれたフェイスペイントに、トリコロールカラーのコスチューム。
更に金髪に染めた長髪、さらにはいちいち「フォウ」と叫ぶ往年のスティング(orフレアー)ばりのパフォーマンスと全てがアメリカづくしのキャラクター。
ところがSMITHが紙に書いたアメリカとは関係ない?猪木や鶴田、藤波コールを煽ると、会場もそれぞれのレスラーの名前を叫んで後押し。
すると、ポールは延髄斬りに、ツルタ・オー!に、ドラゴンリングインまで披露。
しかも内藤コールには、リング下に用意したロス・インゴのキャップをかぶって後ろ姿をみせるなどなかなか芸が細かい。
ただ、日本代表?にも意地がある。WBCになぞらえたヒッティング(空振り)やバットで頭頂部を擦り付けるなど、ポールの毛根に容赦ない攻撃を仕掛けていく。
毛根に関しては味方のはずのSMITHも容赦なく、あろうことかポールはアウェイに。
しかし、ポールが武藤引退発表→引退試合追加のモノマネから、なぜかSMITHが蝶野役になり、SMITHコールならぬ大「蝶野」コールが湧き上がる。
これに乗せられた蝶野SMITHは、ガッデムと言いながら慣れないケンカキックから、最後はポールの足四の字との共演STFで、九州からギブアップ勝ち。
日本代表はいわゆる「接待」モードだったけど、結果的にポールの持ち味が存分に発揮された試合になった。
第三試合▼西日本社会人プロレス・ジャンブル(30分1本勝負)
×リキ・ライタ & アストロZ & 尾原毅 vs グレートカグラ & ○ミステリコ・ヤマト & 鉄生(15分42秒フライングボディプレス)
リキ・ライタ、キャリア最大の試練到来!どこを見渡しても強豪しかいない。
味方は確かに頼りになるが、敵の3人も強力すぎる。下手したら自分が集中砲火を浴びて、味方に繋げないまま試合が終わりかねない。
誰がどう見ても、リキ・ライタにしか目がいかないこのカード。予想通りにボコボコにされる結末になるのか?
それとも予想外の内容になってしまうのだろうか?
開始早々、リキ・ライタは自分から鉄生を指名し、先発を買って出る。
お酒なしでも鉄生と真っ向勝負をしようという心意気は素晴らしい。
しかし現実は、一方的にローン バトルになっていくいつものパターン。
リキはなかなか窮地を脱することができない。
それでもいつもだったら諦めて、泣きの1回を入れるところを、早々に キックアウトしていくあたり、 リキの成長が伺えた。
とはいえ、体重差も体格差もいかんともしがたいものがあるので、殺生がカグラや大和に代わってもリキの劣勢は続いていく。
それでも自力でピンチを出したリキはアストロZや尾原につないでいく。
決してやられっぱなしではなかったのが、今回の大きなポイントであり、試合が盛り上がった要因だったと思う。
そうは言ってもリキに出番が回ってくると、やっぱりローンバトルになるので、実力の差はいかんともしがたかった。
一方で 松江だんだんプロレスと組んだ鉄生の連携は非常にスムーズ。
普段から組んでいないにもかかわらず、チームとして機能していたのは見事だったと思う。
だんだんプロレスでは、チームジョーカーを率いるカグラはもとより、かつてGWAのタッグ王者にもなっているヤマトもタッグの名手である。
それぞれが個性の塊であるにもかかわらず、きちんと連携が取れていたところが 素晴らしいと思った。
最後は ヤマトのフライングボディプレスが、リキに突き刺さり無念のスリーカウントを聞いた。
ただ、この試合は実質リキ・ライタの ベストバウトではないか、と私は思っている。
ここで休憩。セミとメインは純血のがむしゃらプロレスが登場する二試合。他団体頼みではない実力が問われることになる。
セミファイナル▼NastyOutsiders vs DreamTuber(30分1本勝負)
×MIKIHISA & 久保希望 vs HIROYA & ○トゥルエノ・ゲレーロ
(14分55秒KAMINARI)
元GWAタッグ王者対現GWA6人タッグ王者の対決。
ただし、現状DREAM TUBERは、常勤メンバーがSMITH入れて3人になるので、今回みたいにカードが分かれてしまうと、6人タッグとしての前哨戦的意味合いは
そもそもGWA6人タッグの場合、中にシングル王者がいると、タイトルマッチ自体が組まれない。
この試合から次につながる何かが生まれるかどうか、注目してみていこうと思う。
合体テーマで勢いよく飛び出してきた、もとタッグ王者組は序盤からMIKIHISAにターゲットを絞る。
数年前ならMIKIHISAは常套手段として狙われていてもおかしくない。
しかし今の彼は仮にもGWAジュニアヘビー級チャンピオンでもある。
ジュニアチャンピオンとして、受けて立つ側にある。
しかし 勢いに任せたDREAM TUBERはターゲットをMIKIHISA1本に絞って徹底的に攻撃を仕掛けていく。
もちろんそれをただ見ているだけではなく、久保も要所要所でフォローに入っていく。
こうして試合は 一進一退の攻防になっていった。
しかし、 終盤になってもなおMIKIHISAをターゲットにし続ける元タッグ 王者チームは、体格差に物を言わせて、さらに厳しい攻撃を仕掛けていく。
ここまでMIKIHISAが守勢に回る展開は、戴冠後初めて見たかもしれない。
さすがにここまで徹底的にやられると、いかにジュニアチャンピオンとはいえ、ダメージが蓄積されていく。
タッグのオーソリティ でもある久保を持ってしても、簡単にフォローさせないくらい、この日のゲレーロとHIROYAの勢いは止めようがなかった。
彼らの狙いは最初から6人タッグではなく、ジュニアヘビー級のベルトだった。
試合後MIKIHISAから直接ピンフォールを取った ゲレーロは、マイクを取って ジュニアヘビー級挑戦をアピール。
自身が防衛最多記録を持っていることも、しっかりとアピールした上で「ジュニアヘビー級の輝きを取り戻す」と堂々と宣言した。
ここまでされておいて黙っているMIKIHISAではないだろう。一時期は団体内でも挑戦者がたくさんいたがむしゃらジュニアも、気付けば新顔のいない状況で、ヘビー級以上に挑戦者難は深刻でもある。
果たして、ゲレーロが公約通りMIKIHISAよりベルトを輝かせるか?それとも現王者の意地で、MIKIHISAがベルトを守り通せるか?
メインイベント▼GWA無差別級タッグ選手権(60分1本勝負)
【挑戦者】豪右衛門 & ×KENZO vs 【王者】○サムソン澤田 & 陽樹
(23分31秒のど輪落とし:※サムソン澤田 & 陽樹組が防衛に成功!)
着実に実戦数を重ねてき対KENZOは、HAGGARに先駆けてタイトル挑戦のチャンスを掴んだ。
しかし、これは豪右衛門の呼びかけで実現したもので、言い方は悪いが棚ぼたではある。
でも、棚ぼただろうとチャンスを引き寄せたのは紛れもなくKENZO本人。あとはメインならびにタイトルマッチにふさわしい試合ができるかどうか?
がむしゃらプロレスの底上げを考えたら、HAGGARだけでなく、 KENZOのレベルアップも不可避なのだ。
序盤は手四つから始まり、しっかりとした レスリングの展開を見せていった が、戦場が場外に移ったあたりから、急に乱戦モードになっていく。
Re:ZARDのフィールドで、あえて豪右衛門とKENZOは勝負に出てきた。
しかし場外は得意中の得意であるRe:ZARDは、ここで猛攻に転じてくる。
気づけば、サムソンと陽樹が乱戦を制してペースを握っていく。
おそらく挑戦者組も「ラフファイトでも、チャンピオンより上に行ける」という気持ちはあったのだろう。
ただ、自分から相手のフィールドに入って入って行ってしまったのは、まずかったかもしれない。
豪右衛門とKENZOは、自分たちの体格を生かしてパワー一辺倒で押し切る選択もあっただろう。
そうは言っても挑戦者組は非常に迫力のあるパワー勝負を見せてくれた。
試合内容はメインイベントにふさわしい 激しい試合になった。
ただこのタイトル戦のキーパーソンは、KENZOではなくサムソンだった。
テクニックの面ばかり注目されがちだけれど、実はかなりの パワーファイターでもある澤田。
小柄ではあるが決して非力ではない。
確かに挑戦者組は、一発逆転が可能なサムソンのテクニックに関して、非常に警戒していたと思う。
しかしパワーファイトには自分たちも自信があるので、ついつい相手の土俵に乗っかってしまったように感じられた。
一見すると 自分たちの土俵で戦っているように見えて、実はそうではなかったのだろう。
パワーファイターというイメージがないサムソンは、上手い具合にそれを隠して、テクニックでチャレンジャーチームを終始翻弄。
最後は喉輪落としでねばるKENZOを仕留めて、王者組初防衛に成功。
豪右衛門としてみれば、タッグ王座返り咲きは復帰後の使命だったと思う。
ただ 以前は自分が引っ張られていたり、相互関係で上に上がれたが、今回は後輩を引っ張らなければいけないという立場に変わっての挑戦。
非常に難しかったと思う。敗れてなお課題が残ったのは今後のためにはなったかもしれない。
試合後KENZOは陽樹への憧れで、がむしゃらプロレスに入ったことを告白。
しかし、「憧れているだけでは超えられない」ので、豪右衛門に対して、「もっと強くなりたい」と、NASTY OUTSIDERS入りを懇願し、メンバーもそれを快諾した。
これによってKENZOのナスティ入りは決定。チームとしても新たに仕切り直すことになった。
最後は尾原の音頭で「3・2・1・ナスティー」で大会を締めた。
後記
試合途中から、雹が降ったり帰宅後雷雨になるなど、天候はかなりの荒れ模様で、最近にない天気だったが、がむしゃらの新風景に関してはまだ課題が見えた大会だった。
内容に関しては文句のないクオリティの高い大会だったし、満足度も高かった。
ただ、KENZOとHAGGERの成長は急務だけど、それ以上に後続の人材がいないという点では、今の状態は道半ばかなと思う。
私がはじめてがむしゃらプロレスを観に行った2009年みたいに、一気に新人が5人もデビューするというのはレアケースだけど、一時期は他団体の選手に頼らずとも大会が開けるほど人数がいた時代を知っているだけに、今の陣容はどこか寂しい。
何よりあれだけ苦労してやっと天下をとった陽樹と鉄生にしてみたら、早く自分たちを脅かす素材が育ってほしいところでもあるだろう。
コロナ渦もあって、人材が集まりにくかったという点を差し引いて考えないといけないのはわかっている。
でもこれからは、プロレスを体験してもらって、興味をもってもらえた新しい世代が、KENZOやHAGGERと一緒に「次のがむしゃらプロレス」を作っていってほしい。
今は辛抱の時期だろうけど、見たことのない新しい風景が見られることを大いに期待している。