新日本プロレス・レスリングどんたく2014
(2014年5月3日: 土・福岡国際センター・7190人(超満員)
写真1
写真2
イントロダクション
オカダがタイトルとるまではなかなかスケジュールがあわなくていけなかったどんたくも数えて三回目。前年はカオスな行列にビビッてたじろいだが、今回はさすがに歩道にまで並ぶことはなかった。入り口も三か所にし、グッズ売り場をロビーから屋外テントに移され、行列は国際センターを囲むように並ばされていた。混雑をさけるための配慮をちゃんと学んで生かしているのはさすがメジャー団体。しかし、どんたく時期は前から込むのはわかっていたけど、三時間前に家出て着いたのが開場30分前。マジで国際センターまで三時間かかってしまった。GWこわい・・・
オープニング
今回ははじめて北席を解放。360度二階~三階が解放されたのっていつ以来だろう?北側の左右に入場ゲートがあって赤コーナーには王者オカダの顔が、青コーナーには挑戦者AJスタイルズ(以下AJ)の顔があしらわれたツイン入場ゲートが配備。北側のファンのために南側に臨時でスクリーンも設置。実は鏡映りにはなるんだけど、南側の人間にとっても、細かい攻防がチェックしやすく、観戦の一助にはなっていた(鈴木みのるの試合やグレイシーの試合など)。結果は7190人フルハウスということだったけど、昔の発表だったら絶対一万2千とかくらいは盛っていたと思う。
第0試合:20分1本勝負
×小松 洋平&KUSHIDA&タイガーマスク&天山 広吉 対 マスカラ・ドラダ&BUSHI&
○エル・デスペラード&キャプテン・ニュージャパン
([09分16秒]ギターラ・デ・アンヘル→体固め)
『レスリングどんたく2014』の第0試合として行なわれる8人タッグマッチは定番化してきたけど、余ったメンバーでもこんだけのカードが組めるのは豪華すぎ。でも頼むからここにCMLLのスペルエストレージャを混ぜるのはやめてほしい。昔からルチャを軽視する新日の悪い伝統が見え隠れするようで不愉快だからだ。
そのドラダがセカンドロープを次々と飛び移り、KUSHIDAにミサイルキック。そして、BUSHIがトペスイシーダで吹き飛ばす。すると、タイガーがコーナー最上段へのぼり、BUSHIにフライングボディアタックを見舞う。その直後、ドラダがトルニージョでタイガーとKUSHIDAを分断するなど中盤で活躍。そして、唯一のヤングライオン枠の小松がジャーマンスープレックスホールドでデスペラードを押さえ込むなど大健闘。小松の急成長ぶりには驚かされる。小松は、なおも前方回転エビ固め、スクールボーイを矢継ぎ早に繰り出して、そこからさらに首固めを狙うが、デスペラードがブレーンバスターに切り返し、最後は、ギターラ・デ・アンヘルで決着となったが、デスペラードがもうヤングライオンに首狙われてるのがおかしかった。ってかそれじゃ海外修行してた意味ないじゃん。なんか急速に賞味期限が落ちてしまったのがちょっと気になった。
第1試合:60分1本勝負:IWGPジュニアタッグ選手権試合
(挑戦者組)アレックス・コズロフ&×ロッキー・ロメロ 対 (第37代王者組)
ニック・ジャクソン&○マット・ジャクソン
([15分09秒]モア・バング・4・ユア・バック→片エビ固め)
ニックとコズロフが先発し、コズロフ握手をすると見せかけて奇襲を仕掛ける展開からスタートしたが、ジュニアタッグっていつもビッグマッチの第一試合要員になってるけど、これでいいの?って思う。それこそ地方のメインとかセミでやってもいいのにって思うからだ。タイトルがどうも軽いんだなあ。ここは新日の反省点にあげておきたい。ベルトは選手が、目の色をかえてとりにいくぐらい魅力的でないとやる意味がない。今のジュニアタッグは内容に権威がおいついてないな。
この顔合わせも正直見飽きた。高いレベルの攻防なのは認めるけど、じゃ誰が王者になったら魅力的なのかって考えたら誰も思いつかない。このタイトル欲しがってるKUSHIDAは第0試合にでてるし、このタイトルに対する新日の熱意の差がこんなところにも出てると思う。試合はマットとニックがダブルトラースキックで迎撃すると、最後は、モア・バング・4・ユア・バックが火を吹き、ロメロが轟沈し、王者組は手堅く防衛という結果に。
第2試合:30分1本勝負・スペシャルタッグマッチ
飯塚 高史&○矢野 通 対 シェルトン・X・ベンジャミン&×鈴木 みのる
[09分02秒]反則
まずは鈴木とベンジャミンが入場し、TAKAみちのくとタイチもセコンドとして登場。あとから現われた矢野組を急襲し、大乱闘で試合の幕が開くことに。せっかく試合開始前、山崎に腕ひしぎくらってまで飯塚対策していた野上ジャスティスは拍子抜けしただろう。まあいつもいつもリングにあがられても不愉快なんだけど・・・
そこから鈴木組が矢野を捕まえ、リング上でたっぷりと痛めつける。さらに、鈴木が矢野を場外に放り捨てると、またもやTAKAとタイチが介入。怒った飯塚がフェンスを振り上げるものの、鈴木が迎撃するなど前半は完全に鈴木軍がペースを握っていた。
その後も劣勢が続いた矢野だったが、ベンジャミンの串刺し攻撃をかわしてコーナーの金具へ激突させ、ようやく脱出に成功。矢野は鈴木を今度こそコーナーの金具へぶつけ、手錠を取り出す。そして、片側をセカンドロープにかけ、もう片方に鈴木の手をはめようとする。ところが、タイチが場外からイス攻撃を見舞い、鈴木が左右の張り手連打で矢野に逆襲。怒ったみのるはレフェリーにも暴行。結果鈴木が佐藤レフェリーを場外に投げ捨ててしまう。これで鈴木は反則負けとなった。
だが、鈴木はかまわず矢野に襲い掛かり、なおもエルボー連打、膝蹴り、スリーパーホールド攻め続ける。が、いつの間に鈴木が手錠へ繋がれ、矢野がまんまと脱出に成功。呆然とする鈴木を尻目にしてやったりの矢野は、花道でYTRアピールを敢行。さらに、入場ゲートの前でYTRアピールとデニーロポーズを披露した。矢野イリュージョンをさく裂させ、鈴木を出し抜いたCHAOSにしてみればしてやったりといったところだろう。矢野も悪くはないんだけど、この抗争あまり意味がない気がする。みのるもやり場のない不満をぶちまけていただけのような気がしたし。救出された鈴木は、田中をイスでメッタ打ちにして退場。まあヤングライオンには気の毒だったけど、かつてはみのるもそういう道を経てこうなったんで、これはある種の宿命かな?
第3試合:60分1本勝負・NWA世界ヘビー級選手権
(王者)○小島 聡 対 (挑戦者)× ウェス・ブリスコ
([09分25秒]ラリアット→片エビ固め)
元NWA世界王者ジャック・ブリスコの甥であるウェス・ブリスコが初登場。九州でブリスコといえばやはりNCAA全米学生選手権で1964年2位、1965年優勝をはじめ、レスリング時代の戦績89戦87勝2敗という実績をもつ叔父のジャックの栄光を抜きには語れない。1974年12月2日鹿児島県立体育館で馬場に敗れてNWA王座転落したこともあって何かと九州とは因縁深い(データはウィキからコピペしました^^)。
試合開始前、あの「サンライズ」が鳴ると場内大歓声!古いファンならこの場所での、ベイダーとの死闘を思い出しただろう。その特別立会人スタン・ハンセンはとても穏やかな感じでリングイン。そして引退したとはいえ、ロングホーンを一発決めると場内が大歓声に包まれた。
ところが、次にNWAのブルース・サープ社長が現われると、たちまち場内は大ブーイング。やっぱインチキNWAとかいうギミックは新日よりゼロワンとかのほうが向いている気がする。それでもお構いなしのサープ社長は、「コンニチハ! ニホンジン! ワタシハ、ブルース・サープデス! ナショナル・レスリング・アライアンス、シャチョー! ワカリマスカ!」と怪しげな日本語でがなりたてる。そして、自らブリスコを呼び込んだ。ここでまた「ギャラクシーエクスプレス」が流れたら本当に顰蹙だったんだけど、ブリスコはオリジナルテーマで入場。ジャックと比べるといかにも今風なあんちゃんだったんで、どんなもんかなあと思ってこのときは見ていた。
序盤から場外戦が勃発し、社長もこれに加担。ハンセンはあくまで中立。そこからリングへ戻ったブリスコは、小島の左膝に集中攻撃を開始。これで小島の動きが鈍ると、串刺しラリアットで追い討ちをかける。このあたり小憎らしいまでの小ずるいインサイドワークも含めてだけど、はじめてNWAの悪党王者らしい素材がきたなという感じがした。ブレーンバスターを着地し、膝裏にラリアットをお見舞いしてからの足4の字固めで追い討ちをかけるあたりは、古典的な攻めでなるほどと思わせるものがあった。NWAギミックが無い方がこの選手は魅力的にみえるよな。でもバレットクラブ向きじゃないし・・・で、小島がロープエスケープすると、ブリスコが小島の膝のサポーターをずらしてパンチを連打し、再び足4の字固めでギブアップを迫る。うーん、こういうちょっとしたいやらしさが垣間見えるあたりがいい感じなんだけどねえ。苦しい展開の続いた小島は、ブレーンバスターで逆転に成功。そして、右肘のサポーターを投げ捨てると、ウエスタンラリアットで完勝を収めたが、時間が長くとれればウェスの悪党インサイドワークがもっと楽しめたかもしれない、そういう意味ではNWAというギミックがいろいろ邪魔をしてしまっていた。そんな試合だった。やっぱ一回途切れた名門の系譜は無理矢理復活させるものではないだろう。21世紀にはまた新しい権威を作って歴史をつなげていけばいいんではないだろうか?
第4試合:30分1本勝負・スペシャルタッグマッチ
×中西 学&永田 裕志 対 柴田 勝頼&○後藤 洋央紀
([10分50秒]サソリ固め)
タッグ王座を狙う同級生コンビの前に、なぜか第三世代が立ちふさがるという対決。個人的な興味は永田と柴田がバチバチやりあってくれないかなというものだったが、早くもしょっぱなからそういう展開に。柴田がクリーンブレイクせずに張り手をみまい、怒った永田が柴田を場外に落とし、鉄柵攻撃からランニングフロントハイキックを見舞うという「やられたらやりかえす」大人げない試合になってきた。柴田も鉄柵攻撃で逆襲し、背後からランニングフロントハイキック。さらに、永田の頭部を鉄柱へ叩きつけた。リングへ戻ると、両者激しい張り手合戦、エルボー合戦を展開。柴田が強引に自軍コーナーへ押し込んで、またもや激しい張り手合戦が繰り広げられ、永田がここでブチっとキレたのか柴田を睨みつけた。
第二ラウンドは柴田が、キック連射から張り手を見舞うと、またもや激しいエルボー合戦そして、柴田がエルボーを連打すると、永田がニーリフト連射で対抗。だが、後藤がステップキック連射でやり返してここに参戦。さらに両者はフロントハイキック合戦を開始するが、柴田が追走式キチンシンクで永田の動きを止め、エルボー連打、串刺し低空ドロップキック、フロントネックチャンスリー、クロスフェースと畳み掛ける。しかし、中西がカットに入り、永田がエクスプロイダーで逆転。蹴りと関節だけではない武器を持っている永田はこういう時は本当強い。柴田が課題にするなら「投げ」だなと思った。
中西が野人攻撃で後藤を追い込んでラリアット&永田の延髄斬りというサンドイッチ攻撃からトレイン攻撃を狙ったところで、柴田が乱入して永田にカウンターフロントハイキック。その柴田を中西が一本足ハンマーで蹴散らし、後藤のローリングラリアットをブロックする。中西も病み上がりとはいえ不調を感じさせない動きはさすが。さらに中西は、後藤の追走式ラリアットを受け止めるが、後藤が昇天・改を敢行。これが崩れると、すぐさまサソリ固めに移行。これが意外すぎてかなりニアロープだったのに中西の体をぐっと反らすと中西貯まらずギブアップ!以前なら昇天・改の次の一手をもたない後藤がまさかの一手をもってきたあたりにタッグを狙う本気度がうかがえた試合だった。
第5試合60分1本勝負・IWGP Jr.ヘビー級選手権試合
(第67代王者)○飯伏幸太 対 (挑戦者)×田口 隆祐
([14分03秒]フェニックススプラッシュ→片エビ固め)
※第67代王者・飯伏が3度目の防衛に成功
田口を見てて気になったのは、アステカと防衛戦をやった時のような輝きがみられないこと。盟友デヴィットを失い、自らのコンディションも落とし、ベルトに手が届かない。何より自信みなぎっていた王者時代のオーラが完全になくなっている。この満身創痍感は引退直前のレスラーのようだ。ライガーの元気さが際立つだけに「常時所属」という意地だけで飯伏からベルト奪還を試みるのはちょっと材料が足りてない感じがした。とはいえ、二団体所属の飯伏もここへきてかつてない連戦経験で疲れもたまり、動きが落ちている。
試合後「ひとつにしぼる時期が来たのか」と暗に新日一本にしぼるかのような発言もしていたらしいけど、
ポイントは二つ。まず田口。どどんを今回も決めきれずにいた。そして田口の動きは飯伏にはまたしても読まれていた。フェイントから飯伏の背後にドロップキックを浴びせ、どどんの体勢に入る。これを飯伏が抵抗すると、田口はタイガースープレックスへ移行。ところが、飯伏がバク宙で着地し、カウンターフロントハイキックで逆襲というシーンもあったが、途にかく飯伏はコンディションが悪いなりに田口対策が頭に完全に入っていた。
中盤から後半は技の読みあいになったけど、やはり復帰間もない田口はデヴィットの幻影に力を借りようとしてる姿勢がみえみえ。これでは勝てるものも勝てない。本人はデヴィットの分までと意気込んでいたのかもしれないが、かえって逆効果だった気がする。ここが二つ目のポイント。
最後はフェニックススプラッシュがさく裂し、飯伏がJr.タイトルを防衛したが、この二人にしては順当すぎて評価を下げざるを得なかった。なんか田口、内藤臭がしはじめたんだよなあ。大丈夫なんだろうか?
第6試合:60分1本勝負・NEVER無差別級選手権試合
(第3代王者)○石井 智宏 対 (挑戦者)×本間 朋晃
([14分07秒]垂直落下式ブレーンバスター→片エビ固め)
※第3代王者・石井が3度目の防衛に成功
ゴングと同時に両者がダッシュし、ショルダータックルが相打ちになる。そこから激しいチョップ合戦が繰り広げられる。チョップラリーは正直辟易としていたが、大日のDNAをもつ本間と天龍イズムを具現化している石井の無骨さは充分表現されているのでこれはアリだ!としておこう。
前半は石井も押していたが、中盤本間もおし始めた。このタイトルがどうしても欲しいという執念が全身からみなぎっていた。こんな本間をみたのはいつ以来だろう。本間は、石井の突進を切り返し、DDTで叩きつける。そして、串刺しジャンピングエルボー、フェースクラッシャー、こけし、逆片エビ固めと得意技を連発して大攻勢。大本間コールに後押しされてこけしも連発。しかし序盤で出し過ぎたのがあだになった気がする。本間はコーナー最上段から場外の石井に大こけしをお見舞い。そして、リングへ戻ると、コーナー最上段からこけしをさく裂させる。さらにこけし落としを狙うが、石井が回避。その後、本間のラリアットを石井、石井の延髄斬りを本間がブロック。だが、カウンターラリアットで石井が競り勝つ。石井が4発目のラリアット合戦で本間を倒す。しかし、フォールを跳ね返した本間が、ラストライドからのフォールもクリア。ここで本間はコーナー最上段から再びこけしを発射。これはかわされて自爆。やはりここぞというところのこけしを食わないのも石井が最後まで状況をよくみていたことの証明だと思う。ラリアットをブロックし、スクールボーイで丸め込む本間。執念は伝わるが、あと一歩は詰められない。石井がヘッドバットで追撃を絶ち、ラリアットをかわしてジャーマンスープレックスホイップ。これでまたもやエルボー合戦になり、石井が左右の連打で押し込む。すると本間は左右の張り手を乱れ打ち、ヘッドバットにヘッドバットで対抗。だが本間の頑張りもここまで。
石井が延髄斬りで本間を黙らせ、側面からスライディングラリアットをお見舞い。そして、今度こそ垂直落下式ブレーンバスターで勝負を決めた。正直熱戦だったことは否定しない。感動もした。だが、石井と本間との闘いならここまでやっても想定内という感じがしたのはちょっと気の毒な気もした。ただし内容でいうなら本日のベストバウトにしてもいいとは思う。
試合後、IWGP Jr.ヘビー級王者・飯伏が登場。石井に挑戦表明したが、去年のG1での因縁清算に動いたようだ。このカードにはまた興味があるな。
第7試合時間無制限・スペシャルイリミネーションマッチ
獣神サンダー・ライガー・内藤 哲也・真壁 刀義・○棚橋 弘至 対 タマ・トンガ・バッドラック・ファレ・×ドク・ギャローズ・“ザ・マシンガン”カール・アンダーソン
([15分36秒]ハイフライフロー→片エビ固め)
※2人残りで棚橋組の勝利
【退場順】
(1)○内藤(9分48秒 飛びつき前方回転エビ固め)ファレ×
(2)×内藤(10分24秒 オーバー・ザ・トップロープ)トンガ○
(3)○ライガー(11分47秒 空中胴締め落とし→体固め)トンガ×
(4)×ライガー(12分04秒 ガンスタン→片エビ固め)アンダーソン○
(5)○真壁(14分13秒 オーバー・ザ・トップロープ)アンダーソン×
正規軍側はひとりひとり入場。ということはアレンジ違うけど、同会場でサンライズと移民の歌が一日で流れたことになる。平成のこの世にまさかの超獣コンビがテーマ曲でそろい踏み!これはうれしかったなあ。試合は先発もして絶好調のライガーからスイッチした棚橋をBULLET CLUBが捕獲に成功し、長時間に渡って集中攻撃を展開。すると、場内が大「棚橋」コールに包まれ、棚橋がアンダーソンのスピニングガンスタンを回避。そして、ドラゴンスクリューでようやく逆転に成功。だが、棚橋が受けているというよりなんかこの闘いにテーマが見いだせないでいるような感じがした。ベルトへの渇望もない。テーマもみつけにくい。今までの棚橋にはそれでも試合をまとめる力があった。だが脱出後長く場外で休んでいる姿をみたら、やはりただごとではない感じがした。
ライガーは序盤から再び登場して二人抜きの大活躍。ところが、直後にアンダーソンがガンスタンで叩きつけ、トンガのカタキを取られてしまった。しかしこの中の最年長選手が一番動きよかったというのはどうなんだろう?もちろんライガーの努力の賜物ではあるんだけど。
これで2対2となり、変わった真壁も一旦動きをとめられるとピンチに陥ったアンダーソンとギャローズが合体ガンスタンを敢行。フォールは棚橋がカットしたものの、アンダーソンがすぐさまスピニングガンスタンに繋ぐ。だが、ファンの大コールを浴びた真壁が、アンダーソンにラリアットを浴びせ、オーバー・ザ・トップロープで失格させた。ここでやっと棚橋が復帰。低空ドロップキックをお見舞い。そして、場外に落とされそうになっても逆上がりで復活。十分休んだだけあってさすがにモチベーションがさがってもぼろを見せないのは逸材の所以でもある。後半はタッグを組む真壁との連携が光った。真壁のショートレンジラリアット、棚橋のスリングブレイド、真壁のキングコングニードロップが連続で決まり、最後は棚橋がハイフライフローでギャローズにとどめ。2人残りで棚橋組の勝利となった。
試合後、棚橋と真壁がアンダーソンと睨み合いになる。そして真壁が、IWGPタッグタイトルマッチをアンダーソンに要求した。そこに後藤と柴田が現われ、後藤が「ちょっと待ったー! このベルトは、俺たちの狙ってたベルトだ。次も、俺と柴田がチャレンジだ!」とマイクアピール。さらに柴田が、「ベルト・・・それよりも、棚橋。オマエと勝負だ」と棚橋を挑発。4人が至近距離で睨み合った。が棚橋は「俺と真壁選手がIWGPのタッグに挑戦する! 言っとくけどな、柴田。眼中にねぇよ(ニヤリ)」とマイク。そして、入場ゲート前で1度だけエアギターをかき鳴らした。笑顔ではあったがどことなくいらついた感があった今日の棚橋ではあった。そこが少し気にはなるんだけどなあ。少なくともこの日の棚橋だと対AJ戦は見たいとは思えなかった。
第8試合:30分1本勝負・プロレスvs柔術 異種格闘技戦
×桜庭 和志・中邑 真輔 対 ○ホーレス・グレイシー・ダニエル・グレイシー
[08分30秒]胴着による首絞め
株価暴落を可視化するとこうなるのかもしれない。グレイシーの試合はかつて格闘技のビッグイベントのドル箱カード。しかしながらこの試合でトイレ休憩、たばこ休憩に出るお客の多いこと。会場の反応も中邑の入場時がピークだった。中には「なんでPRIDEやK-1がすたれたか理由がわかったよ」というファンもいたくらい。
まあ私的には道着来た時点でレスラーの負けだよなと思っていたのではあるが、グレイシーがあまりにも小物感全開だったのががっくりきた。たぎっていたのは中邑だけで本人的にはグレイシーとの敗戦がある過去をプロレスで晴らしたい気持ちはあるんだろうな。でもプロレスラーとしてみた場合のグレイシータッグにはもはや魅力のかけらも感じない。せめて入場時にグレイシートレインでもやってくれたらまだしもふつうに入場してきちゃうし。私にはインターコンチをかける価値すらこの試合では見いだせなかった。
それにしても柴田がいきいきしているのとは対照的に桜庭に元気のないことこの上ない。なんか別なテーマみつけて上に上がることをしないとどんどんウラシマ太郎状態になっていきそうで、それもまた切ないよなあ。
第9試合:60分1本勝負・IWGPヘビー級選手権試合
(第59代王者)×オカダ・カズチカ 対 ○ AJスタイルズ
([24分31秒]スタイルズクラッシュ→エビ固め)
※AJスタイルズが第60代王者となる。
なんとなくだが、あおりVでいつものオカダを維持しようとしているオカダがちらっと垣間見えたのが気にはなった。とはいえ、そこは天下のレインメーカー。この時点ではそれは杞憂かなと思っていた。序盤、クリーンブレイクしたオカダがレインメーカーポーズ。さらに、ヘッドロックで強烈に絞り上げる。そして、ショルダースルーでAJを豪快に投げ飛ばし、AJをコーナー最上段に乗せてドその場飛びロップキックの発射体勢に入る。ところが、トーキックで阻止したAJがブレーンバスターでオカダを投げ、コーナーに激突させる。このAJのタイミングの狂わせ方が絶妙。通常返すだけ、よけるだけのところを必ず一手反撃してオカダの次の次の手まで封じているのだ。ちょっとしたことだけど、これがダメージの蓄積をうみ、オカダの試合リズムを徐々に破壊していったんではないかなと思う。
AJは、バックブリーカーで追撃し、カウンタードロップキックでオカダを場外に落とす。これがまたキレイ!オカダのドロップキックを見慣れている観客もこれにはどよめいた。そして、レッドシューズ海野レフェリーの視界をさえぎると、アンダーソンたちがオカダを襲撃というおなじみのパターンまで繰り出してきた。ただこの介入はオカダも外道も想定内だったようだ。しかしここには別の伏線が隠れていた。
AJはボディスラム、ジャンピングニードロップ、ブレーンバスター、串刺しジャンピングラリアットと猛攻。そして、オカダを場外へ投げ捨てると、またもやアンダーソンたちが暴行をくわえる。しかし怒ったオカダがトペコンヒーロでバレットクラブを押し潰した。
しかしダメージのないAJは逆襲へ転じ、オカダの膝へ集中攻撃を開始。レッグロック、カマ固め、リバースインディアンデスロック、ニークラッシャーなどでいたぶり続ける。この辺の一点集中に対する布石としてセコンドの介入を入れるあたりもAJのしたたかさが伝わる展開だった。いったんはオカダも低空ドロップキックなどで反撃するが、AJは自らエプロンで飛び出してオカダを翻ろうし、スワンダイブエルボー。さらに、ブレーンバスターの体勢からスイングネックブリーカーを決める。が、オカダもドロップキックでAJを場外に落として、鉄柵攻撃、串刺しフロントハイキック、鉄柵を利用したDDTで反撃。この一進一退の展開になってくるとオカダ優位かなとも思った。
だがレインメーカーを回避したAJが変型レッグロックで逆襲。カウンタードロップキックで巻き返し、再びレインメーカーを繰り出す。しかし、またもAJが回避し、オーバーヘッドキックを見舞い、さらにスタイルズバスターからスタイルズクラッシュを狙うが、オカダがリバースネックブリーカーに切り返す。オカダもツームストンパイルドライバーを仕掛けるが、AJが脱出してフェノメノンDDTから、コーナー最上段でのトルニージョを繰り出して、背面ドロップキック、ツームストンパイルドライバーに繋げる。
一旦はひきあげていたBULLET CLUBがここで再び乱入し、アンダーソンが海野レフェリーを押さえつける。それでもオカダはマットとニックを蹴散らすが、なんと顔をフードで隠したメンバーの一人がラリアットでオカダを吹き飛ばす。そして顔をさらすとなんとその正体は高橋裕二郎!!!裕二郎は東京ピンプスでオカダを叩きつけると、AJがブラディサンデーで追い討ち。そして最後は、スタイルズクラッシュをさく裂させ、至宝を強奪した。
精神的ダメージというより、完全にオカダのリズムが狂わされていたとしかいいようがない。序盤のその場飛びを封じたとき、ただかわすだけでなく一撃お見舞いして次に移行するAJの方が一枚上手ではあった。逆にオカダはリズムを崩され、逆襲も後手後手。想定内だった介入もいったんセコンドをひきあげさせ、裕二郎を混ぜて再び介入した時点で精神的にも詰められてしまったのではないか?すでに駆け引きを初登場時からはじめていて、クモの糸にからませるようにじわじわとオカダ包囲網を完成させていたAJの方が何もかも一枚上手だった。
「おい!CHAOSのくそ野郎ども!お前らとは今日限りだ!オレはな今日からバレットクラブの一員だ!」と言い放つ裕二郎。確かに外国人ユニットという先入観があったバレットに裕二郎を加えるという展開は私にも想定外だった。
いや、でも裕二郎の介入はおまけでしかなかった。正直試合のほとんどは、首対足腰の一点集中攻撃をお互いがやりあった、非常にクラシカルな内容のレスリングだったし、それゆえ、AJのトルニージョやドロップキックは余計に映えた。そして終盤までお互いの必殺技を隠し持っていく流れもまた古きよきプロレスのタイトルマッチの様相を醸し出していた。でもオカダはまだ若いせいか、普段やらないことまでやってしまい、AJの巧妙なリズム崩しに気づけないまま、自分でも試合のリズムを狂わせてしまった。ここは大きなターニングポイントになった気がする。そこまで計算内だとしたらAJはしたたかすぎる。そしてこのAJの戴冠には新日の戦略も隠れていた。今までだと試合後、次の挑戦者があらわれて次大会につなぐところを、誰もでてこなかったのがたぶんその証拠だろう。AJをチャンプのままにしてアメリカ公演を行い、WWEと勝負する気なのだ。日本人チャンプだと英語に難があるが、AJなら知名度、語学ともに問題ない。その上でオカダにもう一回試練をあたえ、いずれAJから王座奪還をさせることでレインメーカーを進化させることができたら、さらに盤石にもなろう。オカダに今までなかったのは世界との対戦だった。今回それを体感できたのは若いオカダにとっては貴重な財産になったと思う。
かつてAJがフレアーなどとのレジェンドとの対戦を肥やしにしてきたように、オカダもまた今回の敗戦を糧にしてくれるに違いない。
後記
今まで二年間オカダの防衛をみてハッピーエンドになっていた福岡のファンにとってAJは「知らない人」だったんだろう。終わって瞬間はかなり微妙な空気になっていた。WWEならまだしもTNAまでチェックしている層はたぶん少なかったんだろう。それは無理からぬことだとは思う。でも帰りに売店のぞくと、今までそんなには売れてなかったバレットクラブのTシャツが飛ぶようにうれていた。これは極めて正直な反応だったと思う。しいて言うならそこでAJのグッズをおいていてくれたら、私なんか喜んで買ったんだけど、バレットじゃなあと思って今回もパンフ以外は買わなかった。
でも本当こんなに余韻に浸れるビッグマッチはいついらいだろう?完成度でいうならまさに歴史に残る今年のどんたく大会だった。さて噂通り来年はドームになるのか?発表はなかったけど、ありえない話ではなくなってきたな。