プロレスリング華☆激 『GT-R PROJECT大会 ~never give up~』(2017年7月22日土曜 さざんぴあ博多)
イントロダクション
今大会のテーマである世代闘争は実を言うと昨年のGT-R大会が起点になっている。アステカの呼びかけで、ナウリーダーズが、新泉らニューリーダーズを迎えうつはずだった。しかし、まさかのアクシデントでアステカが長期欠場を強いられるはめに!
でも、アステカがいない今だからこそ、プロレスリング華☆激の屋台骨は新泉やKINGが支えていかなければならない。
そもそもメジャー系団体がこぞって若返りを果たす中で、九州のプロレスシーンだけが未だにベテランが幅をきかせているのは、どうかんがえても問題だろう。
オープニング
いずれはジャックやユーセーらが新しい時代を築いていくだろうけど、それまでの捨て石で終わっては何のために新泉らがプロレスラーとして活動しているのかがわからなくなる。
新泉のキャッチフレーズであるGET TOMORROW。しかし、もはや待った無しの状況なのだ。
今こそ彼らが九州のプロレスシーンの顔にならねばならない。そういう意味では「明日」まで待てる猶予はもう残されていないのだ。
第1試合「レアルルチャ提供」20分一本勝負
〇磁雷矢&ヴァンヴェール・ジャック 対 ×エル・ファルコ&ユーセー☆エストレージャ(11分12秒 トルネードジライヤクラッチ)
第1試合から要注目の提供試合。ルードとリンピオがテレコになってはいるが、レアルの優等生であるユーセーとジャックに加え、言わずもがなの磁雷矢校長というお歴々の3人の中に、一人混ぜられたエル・ファルコがこの試合のキモである。
ネグロに続くレアルの新鋭ルードとして急成長株として注目を集めているファルコが果たして実力を発揮できるのか?それとも3人に食われてしまうのか?
いざ4人がリングにあがるとやはり伸び盛りの小学生たちのデカさに目がいく。ファルコだけでなく、磁雷矢校長とならんで遜色ないばかりか、ユーセーは、あろうことか磁雷矢校長を挑発する始末。
とにかく試合クオリティだけでなく、佇まいまで完全にベテラン選手になっているジャックとユーセーにはひたすらさ舌を巻くほかない。
とはいえ、大人代表のファルコも随所にルードらしさを出して、ユーセーとの連携も重ねて、ジャックや磁雷矢になかなか主導権を渡さない。
しかし、やはりキャリアでもテクニックでも1日の長がある校長はピンチになっても大崩れはしない。
ただ、ファルコと磁雷矢の絡みは、かつて、レアル提供試合の定番だった磁雷矢対ネグロを彷彿とさせた。あの時代のネグロは、挑んでも挑んでも校長の高い壁に弾き返されていた。
しかし、腐らずに歩み続けてきたネグロは今やレアルを代表する選手に成長した。こうした提供試合に、先輩諸氏を差し置いてファルコが名を連ねている意味を考えると、エル・ファルコがレアルを代表するルチャドールになる可能性は極めて高いと私は考えている。
第2試合「博多VS広島」30分1本勝負
林田伸一&小川聡志&×ヴァンヴェール・ネグロ対〇グンソ&レイパロマ&近野剣心
(8分52秒 体固め)
最近では珍しいダブ勢参戦。普段はベビーとヒールに分かれているネグロと、小川、林田が九州代表としてタッグを組む。これはなかなかお目にかかれない。
レイ・パロマはいつも通りだろうが、伸び盛りの剣心とくせものグンソが試合をどう彩るか?注目したい。
試合前、マイクを持ったグンソが「はるばる四時間かけて広島から博多まできてみたら、いるのが、ジジイ(林田)と、ジジイ(小川)と、知らない奴(ネグロ)しかいねーじゃねえか!」と挑発するや、いきなり奇襲。
先手を奪われた九州軍は、そのまま後手後手にまわる。加えてダブプロレス方式で試合中に音楽がかかりっぱなしになるスタイルなため、場所がアウェイなのに、ダブの面々は生き生きしている。
九州選抜とはいいながら事実上寄せ集めの3人は個々では見せ場を作るものの、連携はやはりダブが一枚も二枚も上手。
小川の山笠も、林田の関節技もダメージ負いそうになると、ダブは総出でカットに入る。
その後も、劣勢になりそうになると広島軍はすぐさまカットに入り、九州軍を場外にたたきだす。これでは、なかなか勝ちを拾えまい。
特に曲者グンソと近野の動きが素晴らしい。事実上この2人にしてやられた感は否めない。グンソも近野も九州にはなかなかいないタイプなんで、九州軍にしてみたらやりにくさに拍車がかかった感じだったかもしれない。
結局、一番狙われやすいネグロがつかまり、カウント3。試合後に再びグンソがマイクをもち「ジジイと、ジジイと、知らない奴、覚えたぞ!」と憎々しげにアピール。
これを受けて吠えた九州選抜軍だが、すでに後の祭りだった。
第3試合DOA天空マッチ前哨戦 30分1本勝負
スカルリーパ-A-ji&×久保希望対二代目上田馬之助&〇アズールドラゴン
(11分03秒 フランケンシュタイナー)
FTO恒例の天空マッチでぶつかり合う馬之助とA-ji。それぞれアズールと久保がパートナーとして組むが、見所は元・ブラックジャスティスにして、近年ヒール志向に回帰している久保希望である。
悪役としてはブラックジャスティスとはまた違うキャラクターをもつ3人の中で、久保のヒールとしての血が覚醒するか?それともダークサイドFTOの波にのまれて消えるか?
序盤はダークサイドを抜けたA-jiが馬之助とアズールにつかまる展開。ダークサイドを抜けたとはいえ、A-jiのファイトスタイルは全く変わっていないため、事実上ヒール対ヒールの闘いになっていた。
中盤久保の加勢もあって復活したA-jiは馬之助を流血に追い込むダーティーファイトを展開。久保もナスティスタイル全開で、馬之助やアズールを足蹴にして、憎々しげにアピールするなど、いかにも悪役同士の抗争になっていた。
ただ、久保に唯一難点があったとしたら、身体を絞った分、ヘビー級の重い攻撃が、見ている私の想像以上に効いていたように思えたことだった。ましてや普段からチームとして活動しているアズールと馬之助とでは、どうしてもA-ji、久保組に武が悪い。
久保はそれに加えて身体を絞ったために、反動として受けに回った時のダメージが重くのしかかる。相手が今回のようなヘビー級だと一発一発がかなりキツイはずである。
以前ならうけても余裕すら感じられた久保が明らかにキツそうな表情をみせていた。プロレスラーのコンディション作りというのはつくづく難しい。
結果的には久保希望がとられたが、身体作りという面では課題を残したかもしれない。
休憩明けにリングに上がったアステカとKINGが保持している博多タッグのベルト返上を宣言。
第4試合「世代闘争3大シングルマッチ」三大シングルマッチ第1戦 60分1本勝負
〇幸村ケンシロウ対×エル・ブレイブ(12分39秒 チキンウイングアームロック)
年齢的には決して若いとはいえないエル・ブレイブだが、なんせ50をこえた幸村が元気すぎるからこそ、世代闘争が成り立つのである。しかも、なかなか簡単には倒せないから始末に負えない。
しかし、九州で名を上げていくには幸村や林田は、倒さなければならない相手には違いない。ある意味エル・ブレイブの真価が問われるシングルマッチでもある。
ところがエル・ブレイブの試合運びはいつも通り、やりたいことをやりたいようにやっているだけ。ぶっちゃけ幸村もベテランの割には試合をリードするような器用さもないため、世代闘争というより、何かお互いがやりたいようにプロレスしている印象。
それでもキャリアやコンディションでは1日の長がある幸村がチキンウイングアームロックでブレイブからギブアップ勝ち。
第5試合「世代闘争三大シングルマッチ」第2戦 60分1本勝負
〇KAZE対×KING(12分42秒 ウラカン・ラナ)
年齢的には大差ないはずの二人だが、キャリアとしてはかなりの開きがある。実は九州では既に大ベテランの域にいるのがKAZEである。
しかしながら、華☆激退団後のKAZEは腑抜けてしまい、団体所属時より退化してしまっている。悲しいかな、下手すれば身体のデカさやパワーで勝るKINGに食われかねない。
ここは一つ、九州のプロレスシーンを築いてきた先駆者としての意地をKAZEの一挙手一投足からみてみたい。そして、またまだKAZEはやればできる、というところを見せて欲しいのだ。
KAZEは普段からグダグダな試合をしていることは皆知ってはいるが、それでも幸村同様、伊達にキャリアを重ねているわけではない。
KINGも体格で勝る上にKAZEを少々舐めている節がうかがえた。私が見ているに、場外にエスケープするKAZEを深追いしたり、リング上でもパワーで圧倒する分、何処か試合の組み立てが雑に感じられた。
本人的には畳み掛けるつもりで、キン肉バスターにいったのだろうが、リング中央で決めるならまだしも、コーナーに相手を乗せてからだと、ワンクッション間が空いてしまう。そこをKAZEが見逃すはずがない。綺麗にカウンターをとられて丸め込まれたKINGの完敗。これで新世代は二連敗で、勝ち越しはなくなってしまった。
第6試合世代闘争三大シングルマッチ第3戦【博多ライトヘビー級選手権試合】 60分1本勝負
×<王者>コスモ☆ソルジャー 対 〇<挑戦者>新泉浩司(19分18秒 ランニングエルボー→片エビ固め:コスモが4度目の防衛に失敗。新泉が第20代王者となる。)
世代闘争のトリにして、大会プロデューサーの新泉には、コスモに勝って一気に世代交代を狙いたいところ。
だが、大一番でボカをやらかすコスモではあるが、弱くて負けているわけではない。若い頃となんら変わらない練習量は、あの獣神サンダー・ライガーをして驚愕させたこともある。身体は小さいが、その攻撃は非常に厳しく、キツイものが多い。世代闘争の中で最も厳しいところに敢えて身を置くあたりが、いかにも新泉らしいといえるマッチメイクである。
果たして試合は序盤からコスモお得意の足関節攻撃が容赦なく新泉に襲いかかる。コスモの足関節の代表格はアンクルホールドだが、今回は変形足4の字固めや、STFなどのバリエーションを追加して、痛めている新泉の足殺しを徹底していく。
こういう相手のイヤがることを、辛抱強く仕掛けてスタミナと精神力を奪っていくのが本来の古典的なプロレススタイルであり、コスモはその第一人者である。
しかし、かつてはコスモも、若手時代に師匠の仲野信市(引退)に、厳しくダメ出しをされ続けていた。それがあっての今だから見ているこちらとしては非常に感慨深い。
世代闘争全体にいえることだが、セコンドの林田が盛んに「センター、センター」と声をかけていたが、最近の選手は雪崩式や串刺し式などコーナーを使うフィニッシャーを多用しがちである。
しかし、本来プロレスの決め技は、コーナーではなくリング中央で決めるのがセオリーである。選手的には相手をロープに逃さない目的があるけど、同時に四方のお客さんに見えやすくする意味では、至極基本ではあるのだが、意外と理解していない選手が多いのが現状。
そこへいくとセンターに意識があったのは新泉だけで、その結果もある意味当然とも言える。
なおも続くコスモの足殺しに、ポイントポイントで放つフットスタンプに苦しみ抜いた新泉。
だが、ねばり強いコスモの攻撃を振り切るように打撃に活路を見出した新泉は、渾身のエルボーを放ち、見事コスモからベルト奪取!
後記
実に見応えあるタイトルマッチだった。とはいえ、せっかく数年ぶりに福岡に里帰りした博多ライトのベルトの価値をあげるも下げるも新泉次第だし、世代闘争は負け越しているので、課題はまだまだあるわけである。
私的には対久保希望戦がタイトルマッチで実現してほしいなあ!この2人でメインをしめられたなら、本当の世代交代になるだろう。
頑張れ!新チャンピオン!