[プロレス用語辞典] (ア行) 裏技
プロレスの起源
プロレスは、その起源として古代ローマのパンクラチオンから古代レスリングを経て現在に至っているため、それらから連綿と引き継がれてきた技術が多数存在します。
もちろんその中には裏技もあるわけです。
裏技の意味合い
ゲーム等の裏技はある意味「必殺技」と同義な部分もありますが、プロレスの場合はやや物騒な意味合いをもっていると、私は思っています。
プロレス技は時代が変遷する過程で生き残ったキャッチレスリング技術をベースとして、伝承の過程で日本の大相撲、柔道、空手、タイのムエタイ、ロシアのサンボ、日本を起源としブラジルに渡って普及した柔術などの異種格闘技から投げ技、打撃、関節技などが流用されて現在に至っています。
相手を死傷させかねない
今日まで現存するプロレス技は技量の高い掛け手の場合、相手に与えるダメージの度合いを掛け手側がある程度自在に制御出来るようになっているものが多くあります。
それはプロレス技を素人など技術が未熟な者が安易に仕掛けた場合、相手を死傷させかねない危険性がどの技にも存在しているという事です。
真似してはいけない
ですから、安易にまねしてはいけないとプロが警笛を鳴らすのはそのためです。
最も基本的な投げ技であるボディスラムですら、スタン・ハンセン選手がブルーノ・サンマルチノ選手を長期離脱にしてしまった例のように、落とす角度によっては相手に致命傷を与えかねない危険性が存在します。
事故試合の誘発も
ハンセン選手はこの一件で有名にはなりましたが、アメリカでは対戦相手から敬遠され、活路を日本マットに求めざるを得なくなったのです。
また、自分が未熟だと、相手が逆上して事故試合を誘発する等といった別の危険な結果を招く場合もあります。
心掛けとして
アントニオ猪木さんがかつてローラン・ボック選手に対する「受け身の取りにくい技を平然と使う」や坂口征二さんが前田日明さんに対して言った「プロレス道にもとる行為」という発言が、特にこうした危険性の側面を物語っています。
この為、成長途上のプロレスラーは投げ技の仕方や打撃技の当て方を日頃から様々に修練する、複雑で難易度の高いプロレス技を、見栄えだけで持ち技として安直に選択する事は避ける、といった心掛けも必要となるのです。
ゴッチさんの裏技
裏技はそうした「事故」の危険性を持つものですが、これを平然とやっていたのがカール・ゴッチさんでした。
有名なのは、肛門に指を突っ込んでのひねりあげや、あと金袋ひねり上げとか、目玉に指入れとかがあります。
実力世界一?
ゴッチさんの一番弟子の木戸修さんがゴッチ直伝の裏技を使い、新人時代の長州さんを道場でひっくり返したエピソードも有名です。
スパーリングでゴッチさんに裏技を仕掛けられて、「ああいうことやって実力世界一なんて」と軽蔑していた人もいます。
裏技を使う選手は
個人的にはゴッチさんを神様だとは思ったことはありません。
やはりプロのマナーとして、裏技を使う選手を尊敬の対象にはできなかったのです。
報復行為も・・・
ゴッチさんは結局アメリカでは干される形になりました。
彼もまた日本に活路を求めざるを得なかったのです。
裏技は、下手をすると対戦相手の報復行為もありますから、素人や普通の選手はやらぬが吉ではないかと思われます。