真説タイガーマスク(2004年日本:上映時間94分)
あらすじ
タイガーマスクの素顔を暴いたら賞金1000万円!賞金目当てにタイガーに近づいた記者の片桐だったが…タイガーのプロレスに対する熱い思いに共感し、正体をばらすのを断念。その代わり…彼を熱烈に支持するようになる。
ある日、覆面世界一決定戦の対ライオンマン戦で…リングに上がったタイガーだったが、いつもの調子と違う不自然な動きが目立っていた。観戦していた片桐も“何かがおかしい”と悟った時…突如タイガーはリングから逃げ出し、試合放棄で負けてしまった。
さらに、プロレス界からも追放される羽目になり…タイガーマスクは行方をくらましてしまう。片桐は…事件性を感じ、調査に乗り出すのだが…。
(あらすじはこちらから)
実写版デビルマンの
いろいろ物議を醸しだした「実写版デビルマン」を撮った那須博之監督の遺作。
原作が真樹日佐男先生なんで、基本テイストは梶原DNAのものだと思っていいと思う。
しかも、主演が哀川翔。劇場公開作なのに、そこかしこに漂うVシネマ臭が、マニア心をくすぐる逸品。
ただ、個人的には「実写版デビルマン」ほど「振り切れてはいない」と感じた。
哀川翔主演
これはあくまで「哀川翔.主演」映画である。
これはあくまで「フィクションのプロレス」を描いたものである。この二点を押さえていないと、現実のプロレスと混同して楽しめないとだけは言っておきたい。
ようするにタイガーを演じる船木誠勝目線でプロレスを語る映画ではないということ。
王道の男の物語
哀川翔目線で描かれた、ヒーローに憧れ、自らも不正に立ち向かう一人の男の物語の王道(決してべたではない)をいく映画として見れば、まあアリである。
何といっても、真樹先生、初代タイガー、船木誠勝の三人が哀川翔と並んでも相対峙しても全くひけをとらないど迫力ぶりなのが凄い。そもそもが棒読み台詞なのに、この三人の妙な迫力・・・
真樹先生が格好いい!
特に真樹先生、格好良すぎ!主演でもないのに物凄く良いところもっていっているし。ありゃずるいよなあ....
そんな真樹テイスト全開の世界観だからこそ、余計なことを言うのは絶対野暮なのだけれど、やっぱりどうしても言いたい。言ってしまいたい。
覆面世界一決定戦をやる会場がバトルスフィアっていうのはちょっとなあ....
無駄に存在感在りすぎ
なんかインディー臭漂いすぎてるし、狭い会場使って撮っている割に観客の熱気が伝わらない。
なのに観客席には哀川翔、真樹日佐夫という二大巨頭が陣取り、リングサイドには佐山さんが睨みを利かせているという、無駄に存在感在りすぎのリング外光景。アンバランス過ぎるっ。
入場テーマが佐山さんの歌というのもなんだか妙な光景だったし。
プロレスシーンの完成度の高さ
しかし、それを差し引いてあまりあるのが、プロレスシーンの完成度の高さ。
これは映画なんだから、間違いなく台本のあるプロレスなんである。
なのにそれを一切感じさせないスムーズな流れと、無理のない試合展開。不自然に感じさせないカット割り。
どれも完璧。台本と演出がありながら、一切不自然さを感じさせない(だからこそ無理矢理不自然さを強調する場面が生きていたと思う)。
とんでもない労力
船木が語ったように、実際にプロレスやるより大変で、監督の注文に合わせて何時間も動きっぱなしになるというとんでもない労力の結集の成果がここにある。
これは見事としかいいようがない。特に最後の試合など、漫画のタイガーマスクの実写版、ここにありとすら思える迫力があった。
格好いい試合を描く
ガチ勝負に潜む不正試合の陰謀を暴くストーリーはどうでもよくて、かっこいい試合を描くことでここまでの絵になったのか?やはりプロレスは素晴らしいと思った。
しかし、プロレスをガチと断じてしまう設定にしてしまうのは、やはり今の時代無理がありすぎる。たとえフィクションだと割り切って見ようとしても。
世界観との食い合わせ
野暮と知りつつ、それでもそう思ってしまうのは「台本の有無なんかくそくらえ、これだけ試合が凄ければそんなのどうだっていい」といえるだけの完成度の高い試合映像が皮肉にも作中に現出してしまった事実に尽きる。
もしかしたら、ヤオガチ二元論の呪縛から解き放たれた、新しいフィクションプロレスの表現を示す事が出来たやもしれないのに。いかんせん、王道を往く世界観との食い合わせが悪すぎた。
タイガーマスクの映画?
結局、これはタイガーマスクの映画である必要はなかったのかなあ....
そうなると、主人公が憧れるヒーロー像がぼやけてしまうし。いや、やりようはあったとおもうのだ。
そう思えるだけに惜しい!そんな映画でした。私にとっては。