プロレス的音楽徒然草 ヤンキー・ステーション
もともとは映画のサントラ
今回は言わずもがなの名曲の登場です。東洋の神秘としてアメリカを席巻し、全日本プロレスではカブキブームをまきおこした、ザ・グレート・カブキ選手のテーマ曲「ヤンキー・ステーション」をご紹介します。
「ヤンキーステーション」はオリジナルではなく、既存の楽曲です。もともとは、「世界の空軍 AIRFORCE’82 ドッグファイト」(1982年)のサントラ盤に収められています。
キース・モリソンの「正体」
作曲したのは、キース・モリソンという方ですが、この名前にピンと来た方はカンフー映画好きだと私は思います。プロレスファンなら「スパルタンXのテーマ」をつくった人といえば「ああ!」となるのではないでしょうか?
実はこのキース・モリソンの正体は数々の映画、ドラマ、アニメなどの劇伴を手がけてこられた音楽家の木森敏之さんのペンネームです。
実は私は長いことキース・モリソンは外国人だと思い込んでいたのですが、最初に「日本人では?」と疑うきっかけになったのが、スパルタンXであり、このヤンキーステーションでした。
「三曲合体」の入場テーマ
というのも、プロレス入場テーマ曲をオリジナル音源で収録した「プロレスQ」シリーズに、スパルタンXやヤンキーステーションが収められた際に「確か、外国の楽曲は版権の関係で、収録は難しいのでは?」と疑問におもって調べてみたら「正体」が判明したという次第なのです。
さて、80年代の全日本プロレス中継では、いわゆる「合体テーマ曲」が花盛りでした。合体テーマ曲は、同格の選手同士がタッグを組んだ場合、片方の選手のテーマ曲だけ流した場合、不公平になるため、一度に両選手のテーマ曲を流すやり方として有効な手段でした。
しかし、合体テーマ曲というのは、何もタッグチームだけのものではありません。今回とりあげた「ヤンキーステーション」もまたそのひとつです。
至高の合体テーマ曲
実は、会場使用音源のヤンキーステーションには、「世界の空軍 AIRFORCE’82 ドッグファイト」から「WHO COMES IN ANGER」の一部が加えられ、イントロ時に流れる皷の音は、「その六、翔り」という楽曲が重ねられています。いわば「三曲合体」の入場テーマなのです。
単純に三曲をつなげるだけでなく、こうした被せ方をした合体テーマというのは、なかなか例がなく、全日本プロレス中継の十八番とも呼ぶべきスタイルとして確立されていったのです。
「ヤンキーステーション」は、「至高の合体テーマ曲」と呼びたい逸品だと私は思っています。楽曲の素晴らしさはもとより、それをカブキ選手のテーマ曲に似合う形に仕上げた手腕こそ高く評価されてしかるべきではないでしょうか。