プロレススーパー仕事人列伝 キース・ハワード①
幻の実力者
今回は第一次UWFに2度だけ来日したキース・ハワード選手を取り上げます。とは言っても私自身ハワード選手の試合を見たことがなかったため、書きたい選手ではありましたが、書けずにいました。
おまけに、いかんせん資料が少なすぎて更に苦労しました。
取り上げたい理由
そこまでしてキース・ハワードを取り上げたい理由とは…
①モントリオール・オリンピックにイギリス代表のレスリング選手として出場した実力派であること
②初来日時にはピート・ロバーツと好勝負を繰り広げたこと
③高田に1勝1敗1分け、山崎に1勝という星を残し、注目されたこと
④UWFにおいて臨時コーチとして選手の指導にも当たったこと
⑤その実績を買われたが、翌年の公式リーグ戦では招待選手ながら、全敗を喫し最下位に終わったこと。
二回の来日で終わった理由
私が特に注目したいのは⑤ですね。
キース・ハワードは、実力もあり、若手時代とはいえ高田、山崎に勝利していながら、リーグ戦では白星配給係に徹したという点が、仕事人レスラーとしての矜持を貫いているな、と私は思うわけです。
では、なぜピート・ロバーツはU以降も来日できて、ハワードはわずか二回の来日で終わったのか?これほどの逸材がなぜ無冠で終わったのか?を私なりに考察してみたいと思います。
ロバーツとの「差」とは?
残念ながら初来日時の対ピート戦は見つからなかったのですが、YouTubeを漁っていたら、別のピート・ロバーツ戦が出てきたため、今回はそれを肴にキース・ハワードというレスラーを紐解いていきたいと思います
イギリスでの試合
画像でみる限り、イギリスでの試合のようです。二つ名としてロバーツに「スーパーデストロイヤー」、ハワードには「ハリケーン」という名前が付けられています。
まあ、日本でのイメージで言うと、どうしてもロバーツに「破壊者=デストロイヤー」のイメージはないんですが、それはともかくこの試合は三本勝負で行われているようです。
淡泊に離してしまう
序盤はハワードが巧みなレスリング技術でロバーツを窮地に追い込んでいきます。5分過ぎあたりに出してくるロバーツのデスロック→足の裏にストンピングというえぐい攻撃もみせますが、いずれも割と淡泊に離してしまうせいか、ロバーツの逆転を許してしまいます。
二本目は片足をとられたハワードがロバーツの頭をまたいで、飛び込み式?のスクールボーイを見せています。
実力は疑いない
近年のレスラーならば絶対「エンズイギリ」(あえてカタカナ表記にしますが)にいくパターンですので、これは今見ると斬新ですね。
業師ロバーツが一本取られたのですから、ハワードの実力は疑いないものがあります。
レスリング勝負で行けば
しかし、三本目でロバーツがヨーロピアン式のエルボースマッシュを喰らわせるとハワードの動きがやや鈍くなってきています。
おそらくレスリング勝負で行けば絶対の自信があったハワードもプロレス特有の打撃技には対処できなかったのでしょう。
そう考えると、レスリングにキックを持ち込んだUWFのリーグ戦でハワードが全敗した理由もなんとなく想像がつきます。
打撃に対しての耐性が
おそらくですが、ハワードは打撃に対しての耐性があまりないタイプの選手だったのでしょう。
そしてバックグラウンドにあるレスリングには絶対の自信をもっていたのでしょう。
生まれた時代が早すぎた
徹底してタックルや丸め込みにこだわる姿勢は、さすが五輪代表選手と唸らざるをえません。
世が世なら「グラップリング」などで頭角を現すべき才能だったのかもしれません。まさに生まれた時代が早すぎたとしか言いようがありません。
UWFの負の遺産
正直言うと、最近私は格闘系キックを導入したのはUWFの負の遺産だとさえ思うようになりました。
理由はこのロバーツ対ハワードのようなタックルからの攻防が極端に少なくなってしまったことにあります。プロレスといえどレスリングなのですから、まずレスリングの技術がしっかりしていないと話になりません。
隠された高い技術
ましてややたらトンボを切ったり、意味のない動きで間を埋めたりするのは論外(決してルチャ批判ではありません。良質なルチャにはちゃんと間があるのです。)とさえいえますね。
こうした試合を単に「地味だ」と敬遠するのではなく、そこに隠された高い技術を堪能するのもまたプロレスの観方としてはあっていいのではないでしょうか?
プロレス向きではなかった
まとめると、
①相手を追い込んでも比較的淡泊に離してしまう。
②打撃技に耐性がない
の2点において、ハワードはプロレス向きの素材ではなかったとも考えられます。
とはいえ素晴らしいレスリングテクニックをもっていたハワードが無我あたりに来日していたら、また違った評価をされたのかもしれません。つくづくもったいないなあと思いますね。