プロレス的発想の転換のすすめ(16) プロレスの表現力
魅せる体の構え
今回は表現の仕方のお話です。
プロレスでは、選手が自分を大きく見せるための工夫を随所に凝らしています。
その代表的なひとつが「構えを大きくすること」です。
格闘技の合理性
通常、格闘技とは「自分へのダメージを最小限に抑え、相手に最大のダメージを与えて勝つ」ものです。
そのためには、防御の一環として相手に狙われる的(標的)を小さくする必要があります。
ボクシングの基本的な構えで、ガードを固めるのはその典型です。
攻防のジレンマ
しかし、守ってばかりでは試合が面白くなりません。
そのため、プロ競技では積極性を促すルールがあったり、レフェリーによるブレイクがあったりと、攻めの試合になるよう進められていきます。
プロのチャンピオンクラス同士になれば、攻撃力はもちろん防御力も超人レベルの実力者が、最強の「盾と矛」を擁してぶつかり合うことになります。
相手に打たせる美
一方でプロレスの場合、「相手に打たせること」も大きな魅力のひとつです。
ボクシングのように的を小さくして攻撃を当たりにくくしてしまうと、ある意味でプロレスという「闘い」は成立しなくなってしまいます。
ガードを固めるのはボクシングの表現としては適切ですが、プロレスには馴染まないのです。
隠された防御技術
とはいえ、いくら肉体を鍛え抜いたプロレスラーでも、的を大きくして受け続けていては、ダメージが際限なく蓄積されてしまいます。
いかに頑丈な体を持っていても人間である以上、防御は不可欠です。
ただし、プロレスにおける防御は非常に分かりにくいのが特徴です。
痛みを引き受ける
見た目に派手なガードを固める格闘技の方が、防御についてはまだ理解しやすいでしょう。
誰しも痛いのは嫌ですし、殴られたくもありません。
守りを固めるのは理に適っています。しかし、プロレスラーはあえてその真逆を行くのです。
リスクと尊敬の念
鍛え抜かれた肉体と精神力を披露する目的もありますが、ギリギリでかわす技術があっても、的を大きく見せれば相手の攻撃は当たりやすくなります。
これもプロレスならではの表現の仕方です。
あえてリスクを引き受ける姿勢があるからこそ、プロレスラーは尊敬の対象となるのです。
高度な精神的闘い
痛い思いをして体にダメージを刻み、相手の良さを引き出した上で勝つ。これには極めて高度なテクニックと強い精神力が要求されます。
他の格闘技にもそれぞれの魅力があり、体を張って「闘い」を見せていますが、表現の仕方が異なるだけなのです。
そこを注意深く観察すると、プロレスへの見方がより深まっていくはずです。
表現が作る感動
「表現の仕方」ひとつで、単なるぶつかり合いは芸術的な「闘い」へと昇華されます。
相手の技を真っ向から受け止めるプロレスの様式美は、効率を求める現代社会において、私たちが忘れかけている「覚悟」を教えてくれているのかもしれません。
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