プロレス的音楽徒然草 MAGIC(ダイナマイト・キッド新日時代のテーマ)
爆弾小僧の至高の旋律
今回ご紹介するのは、かつて新日本プロレスのリングを席巻した“爆弾小僧”ことダイナマイト・キッド選手が、その全盛期に使用していた入場テーマ曲「MAGIC」です。
「マジック」という名の楽曲はプロレス界にいくつか存在します。例えば、マリーンさんが歌う同名異曲は、可憐なルックスで人気を博したキューティー鈴木選手のテーマ曲として有名ですね。
しかし、今回スポットを当てるのは、ジャズ・フュージョン界の巨匠ビリー・コブハムが1977年に発表したアルバム『MAGIC』に収録されている逸品です。
幻の音源がついに復活
このアルバムは名盤として語り継がれながらも、長らく廃盤や品薄状態が続いていました。一時期はAmazonなどのECサイトで、1枚8,000円以上のプレミア価格がつく「お宝化」現象が起きていたほどです。
テーマ曲コレクターの中には、覚悟を決めて高額購入される方もいましたが、私のような一般ファンには高嶺の花でした。しかし、2026年現在は『MAGIC / ALIVEMUTHERFORYA』としてデジタルリマスター版の2枚組CDがリリースされており、クリアな音質で当時の激闘を追体験することが可能になっています。
疾走する衝撃のイントロ
キッド選手が花道を駆け抜ける際に使用されていたのは、実は曲全体のほんの数分に過ぎません。ぶっちゃけ、あの心臓の鼓動を早めるような、疾走感あふれるドラムが炸裂するイントロ部分こそが「MAGIC」の真骨頂です。
当時の会場でこの音色を聴き、アドレナリンを噴出させていた観客の多くは、この曲を純粋なインストゥルメンタル(歌なし)だと思っていたことでしょう。それほどまでに、ドラムの音色はダイナマイト・キッドというレスラーのキャラクターに合致していました。
鮮やかな転調の仕掛け
しかし、この曲には驚きの仕掛けがあります。入場シーンで使われるパートを過ぎると、曲調は一変してボーカルが入り、一気にジャジーで都会的な雰囲気へと変貌するのです。まさにタイトル通り、音の魔術師による「マジック」とも呼ぶべき鮮やかな転調。
10分を超える大作でありながら、聴き手を飽きさせない構成には脱帽です。イントロの疾走感は、初代タイガーマスク選手の最強のライバルとして、カミソリと称された高速ブレーンバスターを繰り出していた若き日のキッド選手の姿と見事にオーバーラップします。
闘いを彩るドラムの音
プロレス入場テーマ曲の歴史において、この「MAGIC」は間違いなく10本の指に入る名曲だと断言できます。ビリー・コブハムが叩き出すリズミカルで力強いドラムは、キッド選手の鋼のような肉体とスピーディーな動きを象徴していました。
これほどまでにレスラーの魂と共鳴する楽曲を選び抜いた当時の担当者には、ファンとして感謝の言葉しかありません。聴いているだけで、四角いジャングルで繰り広げられた、あの妥協なき「闘い」の記憶が鮮明に蘇ってきます。
全日時代のもう一つの名曲
その後、キッド選手は戦いの舞台を全日本プロレスへと移します。そこで選ばれたのが、「CAR WARS」です。この曲もまた、マレンコ兄弟との一連の激闘でジャイアント馬場さんをも唸らせた、キッド選手の凄みを引き立てる佳曲でした。
「MAGIC」がキッド選手個人の鋭さを表しているとするならば、「CAR WARS」はデイビーボーイ・スミス選手とのコンビ「ブリティッシュ・ブルドッグス」としての力強さを象徴しているように感じます。スミス選手が新日本に本格参戦したのは初代タイガー引退後のことですが、その後の全日本やWWFでの活躍を含め、タッグチームとしてのインパクトは絶大でした。
偉大なる父を超えてゆけ
面白いことに、この「CAR WARS」は後にスミス選手の息子であるデイビーボーイ・スミス・ジュニア選手が、プロレスリング・ノア参戦時に使用したこともあります。
父であるスミス・シニア選手には、チック・コリア&リターン・トゥ・フォーエヴァーの「JUNGLE WATERFALL」という独自のテーマ曲がありましたが、息子があえて父のタッグ時代の曲を選んだ点に、レスラーとしてのリスペクトと「父を超えたい」という執念を感じずにはいられません。
未来へ繋がる爆弾の系譜
スミス・ジュニア選手は、すでに体格では父親を凌駕しており、父が成し遂げられなかったIWGPタッグの王座戴冠という実績も作りました。総合格闘技への進出も視野に入れていると言われていますが、ファンとしては、不自然な肉体改造に走ることなく、ダイナマイト・キッド選手や父が愛したプロレスのリングで、その血脈を長く輝かせてほしいと願っています。
かつてのキッド選手が「MAGIC」で見せてくれたような、見る者の度肝を抜く「闘い」を、私たちは今も待ち望んでいるのです。
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