プロレス的音楽徒然草デンジャー・ゾーン(Danger Zone )
「デンジャー・ゾーン」の魅力
今回は、プロレスファンにはお馴染みの名曲「デンジャー・ゾーン(Danger Zone)」をご紹介します。
プロレス界においてこの曲は、オリジナルであるケニー・ロギンス版が全日本プロレス・渕正信選手のテーマ曲として、またカバー版がW☆INGおよび当時在籍していた金村ゆきひろ選手のテーマ曲として広く知られています。
そもそもこの楽曲は、映画『トップガン』のサウンドトラックからシングルカットされ、大ヒットを記録した一曲です。サウンドトラックアルバムとしては1986年に最も売れ、現在も史上最高クラスのセールスを誇る名盤として語り継がれています。したがって、世間一般では「デンジャー・ゾーン」=「トップガン」という認識が強いのは、ある意味で当然と言えるでしょう。
渕正信の輝かしい足跡
渕正信選手は、大学中退後に日本プロレスへの入門を目指して上京しましたが、列車の中で読んだ「九州スポーツ」で日プロの崩壊を知り、一旦故郷へ帰らざるを得なくなります。
1974年4月10日に全日本プロレスへ入門すると、わずか12日後にデビューを飾りました。若手時代はハル薗田選手、大仁田厚選手と共に「若手三羽烏」と呼ばれ、将来を嘱望される存在となります。
1980年に海外武者修行へ出立し、1981年にはNWAフロリダでカール・ゴッチさんの指導を受けます。1983年8月に凱旋帰国を果たすと、1987年に世界ジュニアヘビー級王座を初奪取。以降、同王座を5度獲得し、ジュニアヘビー級のトップレスラーとしての地位を不動のものにしました。
黄金期を彩る入場曲
1986年に発売された「デンジャー・ゾーン」は、渕さんがジュニア戦線でトップレスラーへと登り詰めた時代から使用され、以降定着した入場テーマ曲です。
一方、デスマッチなどで一世を風靡した団体「W☆ING」の入場式でも使用されていますが、こちらはカバーバージョンになります。イントロには当時在籍していた選手の「We are W★ING」という肉声が追加されており、非常に格好よく、印象深いアレンジとなっています。
この「W☆ING版」は長らく廃盤の状態が続いていましたが、2022年6月に発売された『格闘音楽大全プロレスQ リターンズ Jack』にて待望の再収録を果たしました。
ケニー抜擢の裏話
さて、話をケニー・ロギンス版に戻しましょう。
「デンジャー・ゾーン」は、当初TOTOやジェファーソン・スターシップ、ケヴィン・クローニン、ミッキー・トーマスといった実力派ヴォーカリストが歌う予定だったそうです。しかし、いずれも実現には至らず、最終的に白羽の矢が立ったのが、映画『フットルース』のヒットで知られるシンガーソングライター、ケニー・ロギンスさんでした。
ケニー・ロギンスさんは音楽出版社に勤める傍ら、ABCレコード所属の作曲家としても活動。旧友ジム・メッシーナさんのプロデュースでデビュー・アルバムを制作するにあたり、デュオ「ロギンス&メッシーナ」を結成します。
世界を席巻した旋律
1972年にデビューし、1977年からはソロ活動を開始。「フットルース」をはじめ数々のヒット曲を世に送り出し、1986年には映画『トップガン』の主題歌「デンジャー・ゾーン」が全米第2位の大ヒットを記録。映画とともに世界中のチャートを席巻しました。
2022年には、続編『トップガン マーヴェリック』の主題歌としても再び脚光を浴びました。当初は新バージョンの制作も予定されていましたが、主演のトム・クルーズさんが「第一作の曲を聴くことで当時と同じ感覚を呼び起こしたい」と熱望したため、オリジナルのバージョンがそのまま採用されたという逸話があります。
師匠を超える現役生活
渕さんは現在も現役で活動中です。2016年11月27日の全日本プロレス両国国技館大会では、同期の大仁田さんとタッグを組み、奇しくも薗田さんの命日にアジアタッグ選手権に挑戦。見事第100代王者に輝きました。
このとき、渕さんの62歳10か月(当時)での戴冠は、アジアタッグ王者の最年長記録を塗り替える快挙となりました。その後、網膜剥離のため2023年1月2日の試合を最後に長期欠場を余儀なくされましたが、同年9月8日、8か月ぶりにリング復帰を果たしています。
全日本プロレスとの縁
さて、ケニー・ロギンス版「デンジャー・ゾーン」にサックス奏者として参加しているのが、トム・スコットさんです。
彼が1979年に発表したアルバム『ストリート・ビート(Street Beat)』に収録されている表題曲「ストリート・ビート」はアジアタッグ王座のテーマ曲として、また5曲目の「カー・ウォーズ(Car Wars)」はダイナマイト・キッド&デイビーボーイ・スミス(シニア)の「ブリティッシュ・ブルドッグス」のテーマ曲として、それぞれ全日本プロレスを彩ってきました。
また、ケニー・ロギンスさんのヒット曲「フットルース」は、80年代を席巻した若手コンビ「フットルース」(サムソン冬木&川田利明組)のチーム名およびテーマ曲として、これまたファンにはお馴染みの楽曲となっています。
鳴り響く永遠のテーマ
こうした数々のご縁を考えると、「デンジャー・ゾーン」は渕さん個人だけでなく、全日本プロレスにとっても欠かせない重要な楽曲であると言えるでしょう。
渕さんの師匠であるジャイアント馬場さんも生涯現役を貫きました。馬場さんは61歳でこの世を去りましたが、渕さんは70歳を超え、師匠の記録を大幅に更新しています。現在は全盛期ほどの試合数をこなしてはいませんが、全日本一筋に歩んできた渕選手には、これからも末永く活躍してほしいと願っています。
その傍らには、間違いなくこれからも「デンジャー・ゾーン」が鳴り響いていることでしょう。
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