[アニメ感想] 2012年アニメ完走分感想文 輪廻のラグランジェ
2019/07/28
青い海の広がる千葉県・鴨川市。
青い海に、カモメの舞う千葉県・鴨川市。京乃まどかは、鴨川女子高等学校・ジャージ部ただ一人の部員として、人命救助から部活の助っ人まで、今日も朝から大忙し!明るい人柄でみんなから頼りにされるけど、部員が一向に増えないのが悩みのタネだ。
そんなまどかの前に現れた、謎の美少女ラン。ジャージ部に興味を示し、あっさり入部したランは、同志ができたと感激するまどかに問いかけた。「あなた、ロボットに乗れる?」 ランとまどかが向かった先は洋上プラント“ファロス”。そして、その奥には、光り輝く翼を持つ機体“ウォクス・アウラ”があった。さすがに戸惑うまどかだが、ついにウォクスに乗り込む。ランに鴨川の名所を案内したいという、まっすぐな一心で!
その時、衛星軌道上からファロスに接近する物体があった。ウォクスに乗り込み、大空へ飛び立つまどか。ジャージ部魂で戦うまどかはウォクスに秘められた力を引き出し、鴨川を守ることが出来るのか!?(あらすじは公式HPより)
プロダクションI.G原作、2019年の今はなきXEBEC制作による2012年のオリジナルアニメ。分割2クールで作られており、リアルタイム視聴ではないので、感想は一期・二期ともにまとめて書いた。
主人公まどかと、異星人のランとムギナミという、生まれた星も立場も勢力も異なる三人が、ジャージ部という非公認の部活で同じ体験をし、同じ時間を過ごすあたりが、作品のキモになっている。いや「キモにしておくべき」だったのだ。
特にまどかは、自身が守りたい人達と世界が具体的に描かれている。非常に好感がもてる娘として登場している。健全な明るさが非常に可愛らしい。多少あざとさは感じるが悪い気はしない。
ランは、王女さまにも関わらず、まどかに対してはまるで忠実な飼い犬みたいだし、ドジっ子でポンコツ気味。外見はクールなんだけど、そのギャップが微笑ましい。
あざとさでダークな背景をひた隠しにしているムギナミも非常に良いキャラクター。この鴨女ジャージ部のまどか、ラン、ムギナミの関係性は実によく考えられていて、できるならSF要素なくてもよくないか?と思える関係性が見ていてついついにやけてしまう。
ただスケールのでかいSFにストーリーが傾き出すと、このほんわかした関係性が色々邪魔になってくる。敵が攻めてこようと、ピンチに陥ろうと、ジャージ部は日常時とほとんど変わることがないのだ。これが日常風景だと何も問題がないのだけど、シリアスなシーンで「変わらない」となるとちょっと首をかしげてしまう。要するにこれが緊張感をそいでしまうのだ。軽口たたくにしても見せ方次第では、うまくできたはずなんだけど、どうしてこうなったんだろう?
一期・二期ともシリアスな状況で、不自然なほど通常営業な会話は、奇妙な感じさえしてしまう。まあ、それが輪廻のラグランジェの魅力っちゃ魅力なんだろう。このSFシーンがまどかたちのキャラを描くにあたり、面白味を半減させてしまっている点はどうにも解せない。
しかもストーリーの土台である設定や世界観などは、一期・二期ともに説明不足な感が否めない。これは非常にもったいないとしかいいようがない。
せめてロボットSFか日常系か、どちらかに絞って描いてもらえたらなあ、という気持ちは否めない。なまじジャージ部の3人が非常に魅力的なだけ非常にに惜しいのだ。
佐藤竜雄総監督は、SFでも日常でも良作を残してきていて、双方を合わせた作品でも力量を発揮しているが、輪廻のラグランジェではやや欲張りすぎた感は否めない。日常とSFのリンクがもう少し丁寧に描かれていたら、後世に語り継がれるレベルの作品になれたものを…。
さらにシーズン2に限って言えば、広げた風呂敷を畳めてもいない。一期以上に内容をもっと絞り込むべきだった。最初から2クール作品として作られたのだから、3人のジャージ部ヒロインの個性や女の子らしさと、彼女たちが頑張る姿をより多く描くだけでも良かったんじゃあないだろうか。その上で練られたSF設定を、必要な分だけ付け加えていったら、「モーレツ!宇宙海賊」や「宇宙戦艦ナデシコ」みたいな佐藤監督の「代表作」に名を連ねられたんじゃあないだろうか?
全部で2クールもある尺の中で、シーズン2終盤の展開は正直劇場版ででもやれば良い内容だったのが、また惜しまれる。わざわざ二期にしなくてもよかったし、もっといえば「蛇足」。
唐突なシリアス展開が日常シーンとハレーションを起こしているようでは、見ているこちらは、ただただ困惑するだけだろう。視聴者との一体感によって生み出されるカタルシスみたいなものがこの「輪廻のラグランジェ」には、非常に乏しい。日常作品だったらカタルシスは必要ないんだけど、ロボットSFとしてみると、本当に食い足りない。
SFパートは客観的に見ても、謎解きや世界観を楽しめるストーリーになっていなかったし、一緒に熱くなれる展開にもなっていなかった。何気にキリウス達3人組が人間的な良い味出してる所もあったりするので、改めて色々惜しかった作品なんだなぁ・・・と思ってしまう。
ただ諸々のマイナス点はあるにせよ、明るくて前向きなまどかを見るだけでも「輪廻のラグランジェ」は一見の価値はあると思う。二期エンディングになっている「ジャージ部魂」こそが、本来の輪廻のラグランジェの魅力だと私は思っているから、そこの部分だけでもせめてきちんと描いていればよかったのだけど・・・本当に「惜しい」としかいいようのない作品だった。