[アニメ感想] 2013年秋アニメ完走分感想文 のんのんびより
2018/12/08
全校生徒が5人しかいない旭丘分校。
自転車で20分かかる最寄りの本屋はジャ◯プの発売が毎週水曜日だし、
レンタルビデオ屋は10駅向こう。野菜は置き売りされているし、家の鍵に至っては見たことすらない。
そんな田舎の生活だけど、旭丘分校の5人はいつも楽しく過ごしています。「なんにもない」がある、スローライフな日々。
………なんて気付く必要もなく、豊かな自然の中で豊かに毎日を過ごす少女たちの、
まったりゆるゆるなド田舎コメディ。(解説は公式HPより)
安心してフィクションの世界に浸れる
2018年夏に公開された劇場アニメ「のんのんびよりばけーしょん」から遡る形で、第1期を見始めた。きっかけは11月末に腸閉塞と診断されて、しばらく点滴生活になってしまったから。
とはいえ、最初の数日間はアニメ見る体力もなかったので、厳密に言えば点滴生活に別れを告げてからになるのだが、基本無理はしない、というライフスタイル上の大原則に従って、アニメもひたすら癒される作品を欲していたから、ちょうどよかったのかもしれない。
映画は1期の1話だけ見てから鑑賞したんだけど、別にそれでも困らない作りにはなっている。見ていてわかるのは、徹底的に「架空の田舎」が描かれている点である。これは、なまじ実在する田舎をモデルにして、現実の姿が透けて見えるような懸念がないように配慮されているという事でもある。
したがって私のようなリアルな田舎を知る視聴者は、安心してフィクションの世界に浸ることができる。これはフィクションの製作作法として、一つの正しいあり方ではないか、と私は思う。
徹底的に架空の世界を築き上げたのんのんの世界で、唯一リアルが絡むのが、原作にもある沖縄のエピソード(OVA一期13話には沖縄の前日譚が描かれている)で、これをテレビシリーズではなく、劇場版にしたというところにも、スタッフの「こだわり」が感じられる。
よくしたもので、2013年ならネットされていない作品を地方で見るにはそれなりにハードルが高かったのだが、5年も経つと公式配信が充実し、海賊版に頼らなくて済むようになった。配信の利点は大元が消されない限りは、いつなんどきでも見られて、しかも円盤のような場所をとらない点にある。
コレクターとしてのこだわりがあれば話は別だが、モノには限度というものがあるし、コレクションの収納に長く頭を悩ませてきた私としては配信というシステムは非常にありがたい。かつてアニメは都会でしか見られないものだった時代を嫌というほど体感してきた世代としては、夢のような話なのだ。
世界観やストーリーが負けていない
そんな、のんのんびよりだが、主題歌もまたいい。1期、2期、劇場版と同じメンツなのも非常にいい。のんのんの世界に浸るにあたって音楽面がしっかりサポートしている点は聞き逃せない点でもある。
唯一困ったことがあったとしたら、アニメ見るより先に流行語になったセリフ「にゃんぱすー!」が個人的にひっかかっていた点だった。日常系ではともすると、変わった言葉やセリフ回しがあざとく聞こえることもあるため危惧していた。
しかし、実際に見始めてみたら、それは杞憂に過ぎなかった。たしかに宮内れんげの「にゃんぱすー」はあざとかわいいのだけど、それに世界観やストーリーが負けていなかったのだ。
流行語って言うのは仕掛けて流行るもんではないし、計算があると昨今は敬遠されてしまう傾向にあるけど、のんのんびよりは全てが抜群のバランスの上に成り立っているため、違和感が非常に少ない。
2期終了後かなり時間が空いても劇場版が作られるくらい、衰え知らずの人気を誇る理由がよくわかる。そして今回みたいに自分の不調で思うようにならない時は、のんのんびよりに癒されようと思う。よく出来たフィクションは、時に現実を超える力がをくれる。リアルこそが絶対であり、至高の価値観だったら、私には窮屈でつまんない。
のんのんびよりはまさに私にとっては、至高の「フィクション」であり、日常系の中でも極上のエンターテインメントだった。それだけは間違いない。