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[映画鑑賞記] 機動戦士ガンダムNT(ナラティブ)

2018/12/04

U.C.0097――
『ラプラスの箱』が開かれて一年。
ニュータイプの存在とその権利に言及した『宇宙世紀憲章』の存在が明かされても、世界の枠組みが大きく変化することはなかった。

のちに『ラプラス事変』と呼ばれる争乱は、ネオ・ジオン残党軍『袖付き』の瓦解で終結したかに見えた。
その最後の戦闘で、2機のフル・サイコフレーム仕様のモビルスーツが、人知を超えた力を示す。 白き一角獣と黒き獅子、2機の脅威は、封印されることで人々の意識から遠ざけられ、忘れ去られるはずだった……。

しかし、2年前に消息不明となっていたRX-0 ユニコーンガンダム3号機が、地球圏に再びその姿を見せ始めた。
金色の“不死鳥”……その名は、フェネクス――。(あらすじは公式HPより)

ある程度は期待していたNT

あれだけ綺麗に終わったガンダムユニコーンの正統続編。機動戦士ガンダム生誕40周年プロジェクトの第一弾にして、テレビシリーズやオリジナルビデオアニメではない、劇場版オリジナル作品。

監督は富野由悠季御大の元で、「ガンダムGのレコンギスタ」の演出を手がけた吉沢俊一さんが、劇場版初監督を担当。脚本は機動戦士ガンダムユニコーンの原作も担当した福井晴敏さん。個人的にはユニコーンには大変満足していたので、ナラティブにもある程度は期待していた。

公開初日の11月30日は金曜メンズデーだったので、行こうかどうしようか迷ったが、結局体調の事を考えて、翌日の映画の日にした。が、この決断は微妙に裏目に出てしまう。

まず、パンフが売り切れ。次に土曜の映画の日というタイミングなんで、劇場は満員。どうしても両隣に人に座られたくない私は最上段の一番端で鑑賞することに。パンフの件はともかく、これは奏功して隣に誰かいない状態で見る事ができた。

さて、そこまでして観たガンダムNTはどうだったか?

①きちんと映画の尺内にまとまった…
②最後まで違和感がぬぐい切れなかった…
③NTとは結局…

という感想が残った。では順に書き連ねていこう。

劇場作品のクオリティでは

①の「まとまった」というのはストーリーであり、設定の事。富野作品は得てして情報過多な作品が多く、テレビシリーズでさえ、何回か見直さないと理解できない内容である事も珍しくない。その点、福井晴敏さんはもともと小説家でもあるため、映画には映画の情報がどこまで入れられるのか?きちんと計算していると思われるので、非常に見やすい。で、さすが小説家というか最低限面白くなるようにストーリーが構築されているため、思ったほど退屈はしなかったのだ。

この「見やすさ」というのは、同時に福井ガンダムの「欠点」でもある、と私は考える。おそらくだが、情報過多で下手すると物語自体が破綻しかねない冨野演出を「絶対」ととらえる層には「薄味」になっているのだ。それは福井さん自身が、冨野信者でもあるためでもあろうし、また一年戦争の世界を大切にしているがゆえに余計でもそう感じてしまうのかもしれない。

面白いもので、この情報過多現象、福井作品ではガンダムではなくヤマト2202の方で顕著に現れているというのが興味深い。ヤマトには詰め込みすぎるくらいの伏線を張っているのに、ガンダムでは比較的シンプルになっている。

で、②の話になるのだが、UCではその薄味を埋めて余りあるものに安彦良和さんのキャラクターがあった。しかし今回はスケジュールの都合なのかどうかはわからないが、安彦さんの絵は使われていない。UCと別世界を描くならまだしも、その続編にあたる作品としては違和感が残った。そもそも絵の完成度においても非常にクオリティーの高かったユニコーンと比べて、ナラティブの絵は魅力に欠けるうえに荒い。正直劇場作品のクオリティではなかったと思う。

私的にはファーストとZガンダムの関係で、UCとNTの差を考えてみたのだが、よくよく考えると絵柄こそ違えど、Zガンダムのキャラ原案は安彦さんであったわけだ。今回はその位置にUCのキャラクターデザインを手がけた高橋久美子さんが入っていた。ただ、そのせいかどうかNTという作品で新しいガンダムを描きたいのか?単純にUCの続編が作りたいのか?が、そもそもぼやけてしまっていた。これはクオリティ以前の問題といってもいいかもしれない。

結局NTとはなんだったのか?

加えてメカニックデザインも、あれほど洗練されたユニコーンガンダムの格好良さと比較して、ナラティブガンダムははっきりいって格好良くない。しかも動くと余計にかっこ悪いのだ。これがとうとう最後まで引っかかってしっくりこなかったのだ。

演出面で絵的なところでいうと、UCを手掛けた古橋一浩監督はいわゆる「冨野チルドレン」ではなかった。だからこそガンダムワールドを客観視できたと私は思っているのだが、今回初劇場作となる吉沢俊一監督は、Gのレコンギスタで冨野監督のもとで演出をしていた「冨野チルドレン」でもある。

冨野チルドレンにも二種類いて、たとえばGガンダムの今川泰弘監督のように、独自色を強く出せる演出家と、冨野引力に魂を引かれる演出をするタイプに分かれると私は思っている。で、吉沢監督はNTを見る限りどうも後者ではないかなと思ったのだ。

今回は基本コロニー落としを軸に話が進んでいっているのだが、このコロニー落とし自体、センセーショナルであると同時に、さんざん使い古されたネタでもある。このNTのコンテを見た時に冨野御大があまりいい顔をしなかったという話をネットの記事で拝見したのだが、その気持ちもわからないではないというのが正直なところでもある。NTはよくも悪くも冨野演出という重力の輪から抜け出せなかったのではないかというのが、見終わった私に感想として残ったのだ。

そして③。結局NTとはなんだったのか?単純にUCの続編だとしたら蛇足にしかなっていないし、ここであえてコロニー落としをもってきた意味合いも不鮮明だったような気がする。何より公開前から話題になっていた「ナラティブ組体操」って結局本編で見る限りはなんだったのか?それすら明確にはならなかった。結局個人的に一番テンションがあがったのは、映画化がすでに発表になっている「閃光のハサウェイ」の予告映像だけだった・・・というのも、しっくりこなかった一因だろう。

観終わって一日が経過して結局NTという作品の立ち位置がなんだったのか?全く答えを見いだせないままでいる。確かに映画としてはとてもよくまとまっていたし、まあ、UCの後日譚としてみたら悪い作品ではなかったとは思う。だが、それ以上に魅力あるものになっていたかどうかというと、かなり微妙な感じがした。コロニー落としを引っ張り出してまで、わざわざ新作映画として作る必要があったのかどうか?そこの部分が結局最後まで私にはわからないままだったのだ。これは作品としては致命的といわざるを得ないかな・・・。

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