[アニメソング] アニメ的音楽徒然草 S.F.(サイエンス・フィクション)
後世に名を残せなかった
今回はオリジナルビデオアニメ(OVA)「県立地球防衛軍」の主題歌になった、忌野清志郎 JOHNNY LOUIS & CHAR の S.F.(サイエンス・フィクション)をご紹介します。
原作は少年サンデー増刊(今のゲッサン)に連載されていた安永航一郎さんの同名マンガが原作です。結構ぎりぎりの線をせめることで有名な作風から、次第にメジャー誌からマイナー誌に活動を移していき、現在は同人活動に軸足を移しているそうです。
「県立地球防衛軍」は安永さんの初連載作品だったと記憶していますが、アニメ化された今のところ唯一の作品でもあります。しかしテレビではなくOVAだったという点もそうですが、そもそも原作と比較してもアニメ自体の出来が正直イマイチでしたので、こういう結果になったのは致し方ないでしょう。これらが後世に名を残せなかった要因だったのではないかと私は思っています。
なぜそう思うかというと、昨年マンガ読書会に参加した際、私は安永さんの「頑丈人間スパルカス」を紹介したのですが、月に結構な数を読む人でさえ、「スパルタカス」のことも「県立地球防衛軍」のことも知らなかったからです。
安永さんがデビューされた80年代当時は島本和彦さんをはじめ、非常に有能な才能が相次いでデビューし、週刊少年サンデーでは、うる星やつら、タッチのヒットもあって、いわばサンデーの黄金期とも呼ばれていた時代でした。
イメージアルバムとOVA
実はこの時期、アニメ化というのはまだまだ結構ハードルの高い時代でした。ですので、アニメ化が難しい人気漫画は「イメージアルバム化」という手で、メディア展開を図っていました。その発端は「超人ロック」だったと記憶していますが、このロックのシリーズがヒットしたため、色んな作品が「イメージアルバム」になりました。
もちろん「県立地球防衛軍」もイメージアルバム化されました。このイメージアルバムを手掛けたのはゴダイゴのタケカワユキヒデさんでした。私はアニメ版のサントラとともに、イメージアルバムも所有していますが、イメージアルバムでは原作の「特撮パロディ」的な側面はスルーされていました。これは当時ご存命で、タケカワさんの知己でもあった伊福部昭氏への配慮があったといわれています。
対して、アニメ版のサントラは故・羽田健太郎さんがてがけており、原作のパロディ路線を音でも踏襲しています。この中に清志郎さんの歌が三曲入っていまして、S.F.(サイエンス・フィクション)はそのうちの一曲です。OVA「県立地球防衛軍」ではオープニングとして使用されています。
この県立地球防衛軍に清志郎さんが参加した経緯というのは、マンガ好きなギタリストのCHARさんからのお誘いだったそうです。この時分、キャッツアイや、タッチなどでアニソンが普通のヒットチャートにランクインするようになってきたハシリの時代でした。
衝撃的な参戦
とは言え、すでにロック界の巨匠でもあった忌野清志郎さんとCHARさんの参戦は衝撃的でした。
しかしながら音楽のクオリティに本体のアニメが負けていたのは大変残念でしたね。少なくとも当時バカ高かったOVAで購入するだけの内容になっていなかったのは確かです。
さて、S.F.(サイエンス・フィクション)と、エンディングに使用された「かくれんぼ」はいずれも忌野清志郎さんのソロベストに収録されていますが、挿入歌としてサントラ盤に収録されている「プライベート」(忌野清志郎 JOHNNY LOUIS & CHAR版)は、私が知る限りでは、県立地球防衛軍のサントラ盤CD(2018年現在、廃盤)にしか収録されていないはずです。
「プライベート」の、のちにドラマ主題歌になったバージョンは、忌野清志郎 & 2・3'S の名義でCD化されてます。が、原曲のセルフカバー版になりますし、厳密に言うと「県立地球防衛軍バージョン」とほ異なります。
忌野清志郎 JOHNNY LOUIS & CHAR の楽曲はもとより、羽田健太郎さんのBGMも珠玉の名曲揃いなんで、是非とも再販していただきたいのですが、難しいでしょうねえ。