[アニメ感想] 2017年春アニメ完走分感想文 ゼロから始める魔法の書
2017/07/02
教会暦526年、魔女と魔術が存在する世界。
「獣堕ち」と呼ばれる生まれつき半人半獣の姿をした傭兵の「俺」は、自身の首を狙う魔女から逃げている最中、ゼロと名乗る別の魔女に窮地を助けられる。ゼロは自身が書き著し、何者かによって住処から持ち出されたゼロの書という本を探していた。その本は魔術に代わる魔法という新しい知識に関して記されており、それを読めば才能のある人間であれば、誰でも超常的な現象を引き起こすことができるという、悪用すれば世界をも滅ぼしかねない危険な魔法書だった。
ゼロに気に入られた傭兵は、自分を「普通の人間の姿に戻すことができる」というゼロの提案により、それを報酬に護衛として雇われ、失われた魔法書をめぐる旅に同行することになる。(あらすじはwikipediaより)
2017年春アニメ、個人的なNo.1作品。稀代の魔女にして魔法の書を書いたゼロと、ひょんないきさつからゼロに雇われるケモノ落ちの傭兵、そしてゼロの魔術師団に属するアルバスの三人が旅を続けていく、基本魔法ファンタジーなのだが、何処かロードムービーっぽさがあるストーリー。その切り口にまず興味をひいた。
それだけではなく、基本ゼロも傭兵も名前で呼び合わないというのも新鮮な感じがした。ゼロは「わっぱ」、傭兵は「小僧」としかアルバスのことをよばないし、敵となる魔術師は「13番」だし、このあたりは意図してやっているのがわかる。
しかし、ゼロが傭兵に心を開いて彼を雇うきっかけが、傭兵の作ったスープの味に魅せられたというあたりが非常に面白い。味というのはアニメでは直接表現できないのだが、それを逆手にとってキャラクター描写を綿密に演出しているのはなかなかだな、と私は感心しながらみていた。
魔法の書をめぐる謎を横糸としておりこんで、しっかりしたキャラクターの相関関係を縦糸にして、全12話とは思えないくらい濃密なドラマが見られたな、と私は思っている。
誰しもが怖れる魔女と、誰しもから忌み嫌われるけもの落ちの傭兵。この組み合わせだから描けた心理描写は実に秀逸だった。
際立つのは傭兵役の小山剛志さんと、13番役の子安武人さんの安定感ある演技も光った。他にもソーレナ役に榊原良子さんらベテラン陣が配されたキャストも注目に値するが、若手陣…中でもゼロ役で新境地を開拓した花守ゆみりさんは絶賛してしかるべきだと私は断言したい。
ありがちな設定でもしっかり描けば良い作品ができあがる。そんな見本のようなアニメだった。