[私的人物伝] アニメーションスーパースター列伝 金田伊功編②
2017/06/10
金田アニメの特徴としてはとにかく「楽しさ」が全面から伝わることにあります。しかもそれは模写していくと、模写した描き手にも伝染していくものと私は捉えています。
その証拠に金田アニメが隆盛を極めた80年代には金田タッチを真似た亜流の絵がアニメだけでなく、漫画界でも溢れかえりました。
しかし、当時こぞって模写していたアニメーター、漫画家さんの現在の絵柄は金田タッチからは遠く離れています。これはなぜなのでしょうか?
絵描きの端くれとして私は、金田タッチは突き詰めていくと、「本人にしか表現できない領域」があるのではないか?という仮説を立ててみました。
こう考えると金田タッチがご本家亡き後、殆ど見かけなくなった理由がなんとなくわかる気がしませんか?つまり金田タッチは描くととても楽しいし、ダイナミックな動かし方やパースは大変魅力的なのですが、ご本家が作り出すオリジナルにはどうしても届かない。
つまり、模倣からオリジナルを生み出せないくらい元祖の影響力が半端なく強すぎるわけです。
厳密にいえば金田タッチをアレンジした動かし方やエフェクトは、昨今のアニメでも散見されますが、それらの多くはもはや「金田流」ではなくなっているのです。それくらいオリジナルは絶対的に唯一無二であるため、継承が難しいわけです。
私も久々に原点回帰してイラストを描いてみました。高校時代は散々模写していましたから、やはり年月は過ぎても身体は覚えているものです。
こうして描いていると、とても楽しいですね。しかし、本家を超えるとか本家の完全コピーができているかというと違いますね。あくまでも私の絵は金田「風」というだけで、金田さんの模倣の域を出ていないのです。
剣術でいうなら、一刀流の系譜が現在に至るまで脈々と受け継がれている一方、宮本武蔵の二刀流は、一刀流ほど相伝されてはいません。金田スタイルはまさに宮本武蔵が生み出した二刀流のような存在なのかもしれません。
金田作画の特徴はダイナミックな点にあり、緻密さより迫力に重きが置かれているように私は思っています。従って一枚絵としてみた場合、昨今言われるような作画崩壊も辞さない金田タッチは、統一感を重視する昨今のファン層とは、最終的に相いれない感じが、私にはしているのです。