[アニメソング] アニメ的音楽徒然草 鉄のララバイ
今回は2017年4月に他界された、アニメーター・塩山紀生さんを追悼する意味で、「装甲騎兵ボトムズ・ペールゼン・ファイル」の主題歌「鉄のララバイ」をご紹介しようと思います。
ボトムズには万人が認める「炎のさだめ」や「いつもあなたが」という超名曲があるのですが、そこを紹介するのは、私としてはあまりに当たり前すぎて面白くないわけです。「鉄のララバイ」を推そうと思った理由は、ジャケットに描かれた塩山紀生さんの手によるキリコがなんともいえず格好いい!これが決め手になりました。
ボトムズの世界観になくてはならないメンバーだった音楽の乾裕樹さんは2003年に他界されており、ペールゼンファイルから新しく加入した前島康明さんと、柳ジョージさんが新しいボトムズの世界観を構築したのが「ペールゼンファイル」の音楽だったわけです。OVAシリーズではOPが「鉄のララバイ」EDがカップリングの「バイバイブラザー」になっています。
この物語はキリコというよりキリコを取り巻く陰謀を描いているため、主人公であるはずのキリコの出番がほとんどないという非常に珍しいシリーズでした。まあ実質主人公はレッドショルダー部隊創設者にしてペールゼン・ファイルの作成者であるヨラン・ペールゼン元大佐なんですけどね。ペールゼンは「死なない兵士」による理想の軍隊創設を目指している途中、驚異的な生存率のキリコに注目し、以来彼を観察し続けているという設定になっています。演じているのが故・大塚周夫さんで、48歳という設定が嘘なんじゃないかと思うくらい老獪で重厚なペールゼンを作り上げています。
このボトムズシリーズの外伝である「機甲猟兵メロウリンク」のキーク・キャラダイン中尉役で、大塚さんの実子・大塚明夫さんがアニメデビューしています。ペールゼン同様、キークも物語において暗躍する役どころなんで、こう考えると声質は違うのに、親子で同系の役どころを演じているって血のなせる業なのかとも思いたくなります。なんかすごいですよね。
ボトムズシリーズの中核である塩山さんを失ったことで、事実上「孤影ふたたび」以降のボトムズの新作は絶望的といってもいいかもしれません。テレビシリーズ以上の最終回はないといわれていた高橋良輔監督の言葉を借りるまでもなく、今となってはボトムズは未完の大作として終わったほうがいいのかなと私は思います。
ボトムズシリーズではありませんが、名作「超電磁マシーン・ボルテス℣」の最終回における炎に包まれるリヒテル、あるいは「無敵鋼人ダイターン3」の最終回の波乱万丈の哀愁を帯びた表情など、印象にのこる名作の最終回を多く手掛けてきた塩山さんを失ったということは、ボトムズの幕引きを実質的にできる才能を失ったことを意味してはいないでしょうか?これは塩山さん以上の仕事ができるアニメーターが登場しない限り難しいような気が私にはしています。だからこそ未完で終わってもいいのかなと・・・・。
でないと「散りゆく友」に「未練などない」といいきる高橋監督の強がりともいえる叫びが天国に届かないようなそんな気が私にはしているんです。