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[映画鑑賞記] パワーレンジャー

2018/08/10

17年7月15日鑑賞。

エンジェル・グローブの街に住むザック、キンバリー、ビリー、トリニー、ジェイソンの5人の平凡な高校生たちはリタ・レパルサ率いるエイリアン軍団により世界が滅亡の危機に瀕していることを知る。ゾードンによって選ばれた彼らは地球を救う唯一の希望となり、パワーレンジャーとして団結することを強いられる。(あらすじはwikipediaより)

1975年に第1作目となる秘密戦隊ゴレンジャーが放送開始されてから、2017年現在放送中の41作目となる宇宙戦隊キュウレンジャーまで、連綿と放送され続けている「スーパー戦隊シリーズ」。

そのスーパー戦隊をアメリカでローカライズした作品がパワーレンジャーである。世界的に有名になっているのは、こっちの方で実はスーパー戦隊ではないのだ。

ローカライズ版が面白いのは全てのスーパー戦隊がローカライズされているわけではなく、アメリカでは馴染みのない題材をフィーチャーした戦隊(例・烈車戦隊トッキュウジャーなど)は、パワーレンジャーとしては作られてはいない。

加えて、パワーレンジャーの場合、出自がアメリカンコミックスではないため、昨今のアメコミベースの作品のように、ダークサイドな描写をいれる必要がない。正攻法で、真っ当なヒーロー映画を作りたいクリエイターにとっては非常に魅力的な素材でもある。

更には戦隊という複数の主人公たちを描くため、非常にバラエティに富んだキャラクターを配置できる。ローカライズ版なので、そこは日本製と同じにしなくてもいいのだ。

今回のパワーレンジャーでは、人種、性別をこえ、かつ自閉症スペクトラムのキャラクターまで配置した5人を設定したことで、本家スーパー戦隊ですらなしえてないバラエティに富んだヒーロー映画に仕立てあげられているかどうかという点にも注目したい。

さて、肝心の本編がなんだが、正直これがスーパー戦隊なのか?と聞かれたら「うーん」としか答えられない。銀魂でもそうだが、なまじ予算があると「チープだからよかった」面までスポイルされてしまう。パワーレンジャーはまさに、東映本家が低予算の中で工夫してきた貴重な財産までごっそりスポイルしてしまっていた。

個人的に不満だったのは、

①変身するまでの場面が長すぎる
②巨大メカに乗り込むと、なぜか素顔がみえること
③巨大メカが変形・合体するシーンがない

点が大いに不満だった。

①はアメリカ青春映画としてみる分は悪くはないかもしれないが、観客が求めているニーズとのミスマッチ感が半端なかった。確かに5人を2時間枠の中で魅力的に描くには必要な時間かもしれないが、退屈極まりなかった。大きいお友達はもとより、小さいお友達のニーズにも応えられていない気がして残念だった。

基本的におもちゃの販促という側面がない分、変身アイテムもレンジャースーツもやたらリアリティを強調していたが、それがかえってオリジナルのスーパー戦隊に抱いている私のイメージとは大きく乖離してしまっているように感じた。

②は、いくら操縦席の中とはいえ、変身前の素顔がああもたくさんでてきてしまうと興ざめしてしまう。本家スーパー戦隊でもスーツアクターではなく、変身前の俳優がスーツ姿で出演する場面がないわけではない。

しかし、それは極めて稀であり、変身後のスーツアクターと素顔の俳優が二人三脚でつくりだすヒーローの「重み」がパワーレンジャーからは感じらなかった。大変残念というほかない。

パンフによると、なるべくスタントに頼らず生身の人間がやるアクションを重視したとのことだが、監督のこの意図は、正直JAC(現・JAE)と俳優が二人三脚で作り上げてきた財産を破壊してしまう行為に他ならないのではないか、と私には思えたのだ。

③は、おもちゃの販促という縛りがないからこそ、炎の中から巨大ロボが現れるのを、アメリカ人的にはヨシとしたのかもしれない。しかし、巨大メカはやはり合体してこそロマンがある。

合体はしてないけど、パシフィック・リムがアメリカにあるまじき?巨大ロボの浪漫をあますところなく再現していたのとくらべると、パワーレンジャーは、予算がかけてある分、私には逆にチープにみえたから不思議なものである。

観終わって感じたのは、やはり監督が影響をうけたのは、ローカライズされたパワーレンジャーであり、日本のスーパー戦隊ではないんだな、ということだった。

しかし、パワーレンジャーリスペクトといいつつ、スーパー戦隊にも寄せている表現が見え隠れしていたのも気にはなった。具体的には採石場が舞台になっていたり、敵の女性がセクシーな感じがしていたり。あるいは、デザインが完全にリアルではないレンジャースーツとか。

ただ、何回もいうけど、金かけた割には巨大ロボが変形も合体もしないので、残念だけどトランスフォーマー以下だなという印象しか残らなかった。本作には個人的に期待していただけに、非常に残念である。

アメリカでローカライズされると、大概原作リスペクトがおかしな方向にいく傾向が強くみられたが、近年のハリウッド版ゴジラなど、本家逆上陸を強く意識した作品も増えている(勿論不満な点も多々あるが…)とはいうものの・・・・

そういうことでいうならパワーレンジャーシリーズが、いずれ本家スーパー戦隊に対しての「黒船」的存在になってくれたなら、私的には大変嬉しく思うのだ。

ただ、今の段階では黒船にはなりきれていない。それが今のハリウッド版パワーレンジャーの限界なんじゃないか、と私は思っている。

やはり受け継がれるべきスピリッツがない作品を私はスーパー戦隊の系譜にはくわえたくない。だからパワーレンジャーはパワーレンジャーという「別物」なのだと思うことにしようと、映画館を出てから心の中で、私は決断していた。この無念さは8月公開の本家スーパー戦隊映画である劇場版キュウレンジャーで晴らしてこよう。









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