[アニソン] アニメ的音楽徒然草 メロスのように -LONELY WAY-
今回は1985年に放送された「蒼き流星SPTレイズナー」の主題歌「メロスのように -LONELY WAY-」をご紹介します。歌っているAIRMAIL from NAGASAKI(エアメール・フロム・ナガサキ)はもともとチューリップのコピーバンドからスタートしたグループで、プロとしての活動期間も一年足らずと短いものでした。
この当時、今で言うPVというものが世に出回り始めた時期でした。時を同じくしてアニメ誌によりブームになったアニメーター金田伊功氏の仕事が注目されるようになり、金田氏が手がけたオープニングアニメがステイタスになるようになっていました。
金田氏に限らずまだ世に出たての音楽PVに比べ、鉄腕アトムの時代から音楽に絵をつけてきたアニメ業界の腕前はこの時代で既に洗練されており、「メロスのように -LONELY WAY-」も、間奏部分に放送される回のダイジェストシーン(セリフ入り)を挟み込むという、かなり斬新な手法が試みられていました。そのため、「メロスのように -LONELY WAY-」をカバーしなTVサイズバージョンにはセリフを入れたものも存在します。
この「メロスのように -LONELY WAY-」を作詞したのはあの秋元康氏です。私的には秋元氏をプロデューサーだと思ったことは一度もありませんが、作詞家・放送作家としての才能は大いに認めています。
最近は作品に出てくるテーマやキャラクター、フレーズなどを詞に散りばめたアニソンがたくさんありますが、80年代は何方かと言えば主題歌というより、タイアップ優先、作品内容無視の歌がたくさんありました。しかしながら、「メロスのように -LONELY WAY-」は、一見作品とは関係ないようでいて、実は的確に主人公エイジをイメージできるよう巧妙に作られています。
作品内容と強いて関係があるプレイヤーをあげるとしたら、「蒼い流星」や「夜の銀河」といったあたりくらいなんですが、関連性が薄いはずの太宰治の「メロスのように」を持ってレイズナーの世界観を表現しているあたり、やはり秋元康という人は只者ではないことがうかがえると私は思います。
レイズナーは、当初2クール26話予定でスタートし、好調な視聴率から一時4クールへ延長されました。しかしスポンサーの不祥事による降板、並びにプラモデルの売り上げ不振が重なり、突如3クール39話で終了することになってしまいました。
しかも番組打ち切りがスタッフに告げらたのは39話放送二週間前だったため、急遽作り直された最終回は前の回との整合性に欠けたいびつなものになりました。
放送当時熱心にみていた我々も大変ショックでした。アニメ誌で報じられた打ち切りのニュースもそうですが、明らかに名作になりうる作品が大人の事情で無残な最期を迎えたことは大変残念でなりませんでした。後年ファンの声が届いて、レイズナーは全三巻のOVA作品という形で、最終回もきちんとした形で世に出たのですが、やはりテレビシリーズとして完結してほしかったなというのは今でも私は思っています。