プロレス的音楽徒然草 キャプチュード
格闘王の帰還と旋律
今回の「プロレス的音楽徒然草」でスポットを当てるのは、前田日明選手の入場テーマ曲『キャプチュード』です。
実はこの名曲、第一次UWF時代には使用されておらず、新日本プロレスへと「Uターン」を果たし使用され始めました。
正しい発音の秘密
日本では『キャプチュード』という呼称が完全に定着していますが、英語の実際の発音は「キャプチャード」に近いそうです。
オリジナル音源はイギリスを代表するプログレッシブ・ロック・バンド、Camel(キャメル)が1981年にリリースしたコンセプトアルバム『ヌードの物語 〜Mr.Oの帰還〜(原題:Nude)』の11曲目に収録されています。
銃声が響く入場劇
当時、新日本プロレスの試合中継を担当していたテレビ朝日の制作チームは、キャメルなどのプログレを好んで選曲していました。
新日本での試合において使用される際、イントロにマシンガンの連射音のような効果音がサンプリングされたのは、まさにテレビマンたちの遊び心とセンスの賜物と言えるでしょう。
金曜夜八時の記憶
当時はまだ「金曜夜8時」という黄金枠でプロレスが地上波放送されていました。
その過酷な「闘いのワンダーランド」で毎週のようにこの曲が流れたことで、「前田日明=キャプチュード」というイメージは、ファンの脳裏に決定的なインパクトとして刻み込まれたのです。
小野田さんの物語
アルバム『Nude』には「Mr.Oの帰還」というサブタイトルが付いています。
これは終戦から29年もの間、フィリピンのルバング島で任務を遂行し続けた日本兵、故・小野田寛郎さんをモデルにしています。
1974年に上官の命令解除を受けて帰国した小野田さんの壮絶な半生にインスパイアされ、この物語(アルバム)は紡がれたのです。
捕獲か帰還かという謎
『キャプチュード(Captured)』には「捕獲された」という意味があります。
小野田さんの人生を思えば「捕獲」よりも「帰還」という言葉がしっくりくるため、このタイトルには文化や視点の違いを感じずにはいられません。
しかし、前田選手が自らのスープレックスを「キャプチュード」と命名したことで、この言葉は「相手を捕らえて放さない」という強烈な強さの象徴へと昇華されました。
完璧な導入部の魔力
静かなキーボードから始まり、重厚なドラムが重なり、メル・コリンズのサックスが咽び泣くソロ……。この導入部はプロレス入場曲の中でも屈指の格好良さを誇ります。
しかし、新日本時代のバージョンではこの美しいイントロがカットされていました。
アルバムでは前曲と繋がっているため編集が難しかったのかもしれませんが、あの静寂から爆発するような展開こそが、ファンの「前田コール」を呼び起こすのです。
三銃士へ繋ぐ音色
イントロの静と動のギャップは、後に「闘魂三銃士」として一世を風靡する橋本真也選手や蝶野正洋選手のテーマ曲にも影響を与えたのではないでしょうか。
彼らがヤングライオンとして前田選手のセコンドに付いていた時代、この劇的な演出を間近で体感していた可能性は極めて高いと言えます。
スタン・ハンセン選手の『サンライズ』のような別曲合成ではない、楽曲本来が持つドラマ性が、後の「闘い」の演出を変えたのかもしれません。
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