プロレス想い出コラム~不死鳥との尽きない想い出の数々(2)
なんでももっていた
江崎英治という男はなんでももっていたと今でも思う。
精悍な顔立ちにシェイプされた肉体、抜群の運動神経だけでなく、絵を描かせればプロはだし。プロレスは言うに及ばず。
性格も気さくで冗談ごとも率先してやってしまう。
完璧超人
余談だがDDTがネタでやっている「肛門爆破」を最初にやったのは新弟子時代のハヤブサであり、ミスター雁之助である。
あまりの完璧超人ぶりに、師匠の大仁田厚が嫉妬していたという噂がまことしやかに囁かれてもいた。
全日ジュニア時代の悔い
真偽のほどは別にして、大仁田のプロレス人生に悔いがあるならば、やはり全日本のジュニア時代になるだろう。
おりしも最初に来た選手としての絶頂期に、ライバル新日本プロレスにタイガーマスク旋風が吹き荒れた。
華麗な空中殺法を繰り出すタイガーに何かと比較されることも多かったのだろう。
プロレスが出来る発明
全日本後期の大仁田は張り合うように空中殺法を繰り出すようになっていった。
だが、それは大仁田の選手生命を削ることになってもいった。
デスマッチ路線はもはやプロレスの出来る身体ではない大仁田が知恵を絞って考え出した「身体が動かなくてもプロレスができる」発明だったのだ。
大仁田にないものを・・・
しかし、大仁田がおのれの身体を刻んでまでプロレスに突き動かされているのは、少なからず全日本時代の後悔があったからではないだろうか?
そう考えると江崎…ハヤブサは大仁田にないものを持ちすぎていた。
ある意味大仁田の出来なかった空中殺法でお客の呼べるレスラーこそがハヤブサだった。
不死鳥は死なず
穿った見方をすれば大仁田は自身の引退試合におけるデスマッチの中で、ハヤブサの価値観を殺しにかかったとも考えられる。
だが、ハヤブサは死ななかった。
大仁田なきあとのFMWをエースとして率い、デスマッチとは違う新しい路線を模索し続けた。
商才と嗅覚
しかし、大仁田にあって、ハヤブサになかったのは商才であり、金の匂いに貪欲な嗅覚だった。
アイディアマンでありビジネスマンの大仁田こそが、ハヤブサからしたら完璧超人であったのかもしれない。
さらに皮肉なことに師匠大仁田同様、ハヤブサもリング禍に見舞われてしまう。
前を向き続けた
だが、敵対しながら同胞でもあった冬木を失い、自らの翼も折られてなお、ハヤブサは前を向き続けた。
愚直なまでにリハビリに励み、常に明日を信じて生きていた。その生き様はまさにプロレスラーであり、長い間ハヤブサが求めてきたであろう、師匠大仁田とは異なるレスラー像をついに手に入れたんだと、私は今でも信じてやまない。
それだけに若くして旅立たれてしまわれたことが残念でならない。