プロレススーパースター本烈伝・力しか信じない・掟破りのサソリ語録
[プロレス読書感想文] プロレススーパースター本列伝
まえがき
力でのし上がってきた男だと思っている俺には、自分自身の力の他に何もない。俺から力を取ったら何も残らない。たった一つの宝だ。
そしてこの宝が本物だということを俺は信じている。まがい物の力ではない。ちょちょいと突かれるとひっくり返ってしまうような力ではない。力には自信を持っている。(まえがきより)
34歳の長州
1985年6月に刊行された「力しか信じない」は、ジャパンプロレスとして全日本プロレスに乗り込んでいった時代の長州力(当時34歳)が書いたとされる本。
そもそも長州本人は当初、このリングネームを気に入っておらず、「剛竜馬のような格好いい名前にしてくれ」と関係者に懇願したといわれている。
猪木命名では…
剛竜馬がかっこいいかどうかはおいといて、故郷である徳山市は周防国(防州・周州)であるため、長門国(長州)は厳密には長州力の出身地ではない。
しかし、アントニオ猪木さん自ら「山口県出身だし、力道山先生から力の一字を採って『長州力』にしよう」と命名したという逸話があるため、逆らうに逆らえなかったのだろう。
「力しか信じない」のあとがきに長州はこう書いている。
本物の力
最近最近世の中乱れきっていると感じる。いじめ家庭内暴力。聞いただけで気の滅入るような力の言葉が連日新聞紙上をにぎわしている。
本物の力を知らぬ子供達が偽の力を振り回す落としているのだ。弱いものが自分よりさらに弱いものを叩く。これは力ではないただの暴力だ。
世相も力で
といった感じで、リング上のことだけでなく、世相も「力」で切っているのが、いかにも当時の長州らしい。
あくまでも、これは笑いのネタとしてあげているわけではない。
一言一句に熱狂
実際、昭和60年代の私たちは、長州の一言一句に熱狂していたし、だからこそ「力しか信じない」も何のためらいもなく購入している。
それでも、2022年時点で70歳になる長州が「力しか信じない」を読んだらどうなるだろう?とは思ってみたことはある。
その後の歴史を
あとがきに「読み返すと照れくさい部分も多い」と書いているくらいだから、「俺も若かったなあ」という感想くらいは漏らすのだろうか?
前にも書いたように、「力しか信じない」は「昭和60年時点」での長州の主観であるので、その後の歴史を振り返っていくといろいろ整合性にかける部分もあったりする。
人間らしい
それはそれで人間らしいともいえるので、「あの時はこういっていたではないか」というつもりはない。
ただ、お金の件について触れている一節は、のちのWJに纏わる騒動を思うといろいろ感慨深いものがある。
プロは金だ
長州曰く
プロは金だ。だから金だけのためのプロになりきるのもいい。一度は俺もそれを目指した。
しかし結局今はいつどこでも自分を自信を持ち続ける男でいたい。そのために収入が半分になっても守るべきものは守ろうと考えている。
すっからかんになったらどうするか?との質問が飛んできそうだ。それはその時のことだ。なってみなきゃわからん。
実際のところ、レスラーが、自分に自信を持っていれば、そうなることはない。
と断言している。
こんな善玉の本
まあ、実際お金ではいろいろあったけど、一文無しにはなっていないし、ああなっても力を信じた結果、現在の長州があるのだと思うと整合性はあるのだ。
そんな34歳の長州力は「俺にもこんな善玉の本は一冊ぐらいあってもいいだろう 」という一文をあとがきに残している。
真実は語られない?
往年の名台詞にひっかっけた一文と思われるが、ここだけは本当に本人が言ったのかどうか?個人的には引っかかった部分ではある。
現役を引退後、プロレスについては極端に口の重くなった70歳の長州力が「真実」を語ることはないだろうけど。